<GAMEPLAY>
このゲームの舞台は1960年代という事で、グラフィックスはもちろんサウンドについても当時の雰囲気を醸し出すように作られている。そしてもちろん007ことボンド映画の味付けも取り入れて、当時のスパイ映画やTVシリーズ物の再現という意図が見て取れる。
それとユーモアもゲームの重要な要素となっている。映画オースティン・パワーズとの共通点を指摘するレビューが多かったが、かなりギャグやユーモアの要素が含まれている。敵キャラの会話を盗み聞き出来る場面が多いのだが、そういった所では当時の時代を反映した話題からたわいない冗談まで実にいろいろなトークを聞く事が出来る。
ゲームの構成はミッションを基準にしている。ゲーム全体で15のミッションが存在し、それぞれが幾つかのレベル(マップ)から構成されており合計では60以上のレベルから成っている。ゲーム全体では30時間程度は掛かりそうな相当な長編ゲーム。高ランクを目指してアイテムを探し回ったり、途中でリプレイしてアイテムを増やすといったプレイスタイルならばもっと長時間掛かるであろう。またミッションの合間にストーリーの展開を示す長いムービーが挟まれる事があり、それらだけでも合わせて2時間程度有るのではないだろうか。新しく開発されたアイテムについては随時その訓練が行われるようになっており、それはミッションの合間に挿入される。
ストーリーについては分岐等は無く完全に一本道。ただし面白くて良く出来ており、分岐が無いのは全く問題とはなっていない。最後に待っている結末の意外性も中々良いのではないだろうか。非常にストーリーを重視しているゲームであり、しかもそれに成功している。アクション系のFPSの中では珍しく充実した面白いストーリーを併せ持ったゲームとなっている。
ゲーム性としては謎解きを重視しており、とにかく常に次に進む為のルートを探して進んで行くタイプのゲームと考えて良いだろう。ほぼ八割方は簡単だと思うのだが、中には難しいというか意地の悪い場所や分かりにくい個所があり、おそらくは最後までに数カ所は詰まる事になるはず。
このゲームでは各ミッションにおいて採点制が取られている事もあってミッション(レベル)毎の独立性が高い。展開が非常に目まぐるしく、ミッション或いはその中でもまたレベルによって全然違うゲーム内容になったりする。そのバラエティぶりは相当なもので、中にはシューティングというよりもミニゲームと言った感じの物まで存在し、更には一切の戦闘が無く尋問作業のみという物まで有るのだ。そういう観点からすると統一感とが薄い印象はするのだが、逆にプレイヤーに飽きさせずに最後まで遊んでもらうという面ではプラスに働いているとも言える。これだけ目まぐるしくレベルの内容が変化して行くFPSは他に無いのではないだろうか?
とにかく敢えて完全にバラバラに配置したのではないかと思えるようなバラエティさで、流れを辿るのが大変な位。終わった後に最初から順を追ってレベルの内容を思い出せる人はほとんどいないだろう。その位に多種多様である。このゲームでは基本的に本部にて受けた指令により世界各地に飛び、そこでのミッションが終了すると又本部に戻るという流れなので、それぞれのミッションに独立性を持たせる事が可能なのだ。完全にバラバラに配置されたミッションを、合間のストーリー部分でつないでいるという感じである。もっと内容に整合性を持たせようと思えば可能な所を、意図的に続けて2回と同じ様なプレイ感覚の物が続かないようにわざとバラして並べてあるように思える。
その為に次にはどんな物が来るのかという興味で飽きない。相当FPSをやり込んだ人間からも新鮮な構成であり、楽しく遊んでもらうという意味では非常に優秀な作りとなっている。その反面あまりにもバラバラの為に統一感という点では今一つ。またミニゲーム的なレベルについてはFPSでちょっとこれはどうなのか?と感じる人も少なく無いのでは。それと独立性を強調するあまりに、話としてつながっている別のミッションで装備品が変更可能という不自然さも生んでいる。
システムの項で解説したようにリプレイする事を前提としたデザインについては問題も感じられた。2回目以降のプレイ時に、難易度選択だけで無く持っていく武器やアイテムの戦略性という楽しみが加わり、ミッションの内容を検討しつつ最も役立つ組み合わせを見付けていくという面白さがあるのは確かで、また1回目では行けなかった場所を探索するというのは更なる面白みを追加する事にもなっている。
しかし2回目以降を考えているという構造は或る意味”いびつ”なデザインのレベルを生んでおり、初回プレイ時には決して到達出来ない場所が有るというのはどこかしっくり来ないというか、消化不良の感は否めない。しかも何らかの方法やルートでそこに行けるのか不可能なのかを判別する方法が無いケースも多く、意味も無く詰まってしまったりするのは困り物。それとこういう構造をしている事はマニュアルのヒントにちょこっと書いてあるのだけなので、最初の知らない内はこれが分からずに詰まった事もあった。明らかにアイテムが置いて有るのが見えるから行けるはずなのだが、行く為の方法が見付からないのでその場で立ち往生。結局そこはゲームの後半に手に入るアイテムを使って2度目以降の挑戦で行く事が出来るという場所だった訳だ。
Stealthか戦闘かを選択出来るゲーム性については、自由度が与えられているミッション(箇所)もあれば、どちらかで行く事を余儀なくされるように設定されている場合もあり、完全に自由に選択出来るという訳ではない。ただ切り替えが可能は点はゲームプレイに幅を持たせており一応の成功を収めている。けれども自由になっている分、選択を誤ると戻ってやり直しとなるというケースはどうしても出て来てしまう可能性を持っている。例えば戦えるように見えるのだが、実際問題として戦闘での突破は無理という感じにされている場所も在ったりとか。
ゲームのユーモアという点では微妙な位置に在る物となっている。私は元々アドベンチャー・ゲームのファンで、このジャンルに於いてはギャグ・ユーモア・ドタバタといった要素をテーマにした物は一つのサブジャンルを形成している位にポピュラーなテーマであり、私自身もこのジャンルは好きでよくプレイもしている。ただFPSにはシリアスなイメージが強く付き纏っており、銃撃戦による敵との戦いにユーモアが入り込むのはどうなのかというのが問題となる。Redneck Rampage等別にこの手のゲームが無かった訳ではないが、全体としてはユーモアFPSの比率は相当に少ない。
もしもこのゲームが60年代を舞台にした女スパイの活躍する物であれば、これは普通のFPSと変わりない。あくまでもシリアスな舞台設定にシリアスな敵キャラ、そして現実感重視のゲーム設定であればこれは一般のFPSとしてプレイが出来る。しかしこのNOLFは見てお分かりの通りに、どう考えても潜入捜査には不釣合いな見付けて下さいと言わんばかりの派手な衣装の主人公、そして同様にあまりにスパイらしくない目立つ格好の仲間エージェント、こんな奴いないよという感じに滑稽過ぎる程戯画化された敵のボスキャラ、各所に散りばめられたギャグの要素、そして忍び足等のアクションを見せる時の各キャラの(観客に)見られている事を意識した大袈裟な動作等々、全てにおいてユーモアを意識して製作されている。
その為に架空の世界で戦っている感覚が強くてゲーム内世界への没入感が薄くなるし、非常に能天気なイメージなので命を掛けて戦闘しているという緊張感が湧いて来ない。FPSにおいてバイオレンスというのは非常に重要な要素と思うのだが、このゲームには血の匂いが皆無である。戯画的なキャラにユーモアもあってほのぼのとした感じが漂っているというそれとは対極に位置する雰囲気となっている。確かに”ゲーム自体”は面白くて熱中は出来るのだが、私としてはどうしてもそういった要素が邪魔をして今一歩踏み込めず、妙なFPSという気持ちがどうしても残ってしまう。
(追記) その後FPSの世界にはユーモアを携えたゲームも増えて来ており、またこのゲームの続編NOLF2は見事な出来栄えで、私の持っていた違和感を吹き飛ばしてくれた。よって現在ではこのゲームの持つユーモアへの違和感は既に払拭されている。
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