<COMBAT>

 戦闘関連に付いては語るのが難しい。何故ならばこのゲームでは戦闘に関連して幾つものSkillが存在しており、プレイヤーのSkill値がどの程度なのかによって難易度が変化して行くからである。命中率、弾一発当りの威力、照準の広がり具合、Armor&Healthの最大値、First AidやArmorを取った時の回復値、最大所持弾数等、ほぼ全ての要素がSkillによって異なってくる様になっているので評価が困難である。

 一般的なデータから話すと、前作同様にArmorがダメージを吸収する様になっているが、一方でArmorが無くなってしまうとHealthはダメージに耐え難い仕様になっている。特に今回は敵側もHeadshotを狙ってくるようで、序盤等はHealthだけの状態だと一気にやられる事もあった。難易度変更では敵から入るダメージ量が大きく変化し、Hard以上ではSkillレベルが高くないと撃ち合うにはちょっとキツ目のバランスである。
 銃は多少のブレるアニメーションは入るが、実際には照準の形状で散らばりを見る方式(やや分かりにくい)。特に横移動時に照準の開きが大きい。ライフル等のスコープは姿勢によって揺れが異なる。

 総合的に見た場合、戦闘に関する難易度は1より上がっていると言える。前作はAIは良く出来ていたが、戦闘に関してはそれほど難しいバランスでは無かった。これは回復用のアイテム(Armor)が結構な数マップ内に存在していたからというのが大きいのだが、今回はそういった回復アイテムの数が極端に減っている(その代わりFirst AidでHealthの回復が出来るようにはなった)。その為ダメージを受けると回復するのが難しく、Skillがある程度上がるまでは相当死に易いバランスとなる。ただ難しいのは序盤1/3だけで、その後キャラクタの成長もあって緩和されて行くので、全体を通しては普通レベルの難易度である。

 動いて攻撃する時の照準のブレが大き目なので停止して撃つのが望ましいが、それだと敵から格好の標的になってしまう。そこで障害物に身を隠してのLeanによる攻撃がベースになっているという印象である。1ではLeanが出来ない分敵の射撃精度が抑えられていたが、今回はLeanして隠れられる分それをしない時の敵の射撃の命中率は上がっている。
 それと今回はRespawnが行われるエリアが存在しているので、それに対応した戦い方というのを考えないとならなくなっている。ゴリ押しは最も不味いやり方で、とにかく攻撃して敵を倒してから目的の物を探索していたのでは、Respawnして来た敵と遭遇してしまう確率が高くなってしまう。つまり戦闘で行くにしても最初の内は出来るだけ探索を優先させてやり、目処が付いた時点で一気に攻撃に出て倒してしまうという方が有効である。



 敵は特殊な者を除けばほとんどが人間型であり、その多くは所持武器が異なっている程度の変化になる。その中で特徴的な敵としてはまずは日本の忍者が挙げられる。屋根に飛び乗ったりとか煙幕で姿を隠したりとかで動きが捉え難く、一気にジャンプしてこちらとの間合いを詰めてくるのも厄介。それとMimesと呼ばれるパントマイム集団が存在しており、彼らは戦闘中でもパントマイムをしながら行動したりする怪しい奴らだが(前に壁が有るように見せるパントマイムを行うが実際には壁は無いので撃てる)、銃弾に対する耐久力が若干上がっており倒しにくい敵になっている。他にも実に変なのがいたりするのだがそれはプレイしてのお楽しみに。

 AI自体の賢さと能力のUPには触れておかないとならない。これまでも物陰に隠れたりとか伏せて攻撃して来りとかというAIはあったが、今回のNOLF2のAIはそれらを自らで考えてやってくるという点が凄い。どこに隠れられるのかをアサインされていたり、ここで伏せて攻撃せよと教えられているのでは無い。一度誘い出してしまえば最初からアサインされている場所以外には、隠れられるスペースが有っても隠れようとはしないAIとは異なっている。視覚から周囲の環境を理解しているので、マップ内のどこに引き出されようと同じように隠れられる場所を判断して戦う事が可能になっているのだ。Proneも固定ではなくて臨機応変に使って来る(一度伏せるとずっとその地点から攻撃してくるといった事が無い)。
 集団行動面でも進化しており、廻りにいる仲間の動きを見て自分の行動を決めて来るので非常にやりにくい相手となる。例えば遠方から集団で来る時は仲間が進むのを援護する為にある者は伏せて弾幕を張り、残りはプレイヤーへの接近を優先するといった戦法を使って来る。また意識して広がろうとする傾向が強く、アウトドアの広い場所ではある者が右へ行けば自分は左といった感じにそれぞれが展開してくるので、こちら側の攻撃方向が絞り難くなっている。
 近距離戦についても手強い相手となる。まず感じるのは動きが読みにくい事で、非常に素早くサイドステップして狙いをずらしたり、左右前方へ回転して幻惑という手法も前作同様に使って来る。更にこの動きが速いので厄介である。FPSに慣れたプレイヤーならば敵の動きを追う事自体にはそれ程の問題は感じないと思うが、敵の動きを追って銃を左右に素早く振ったり、敵の攻撃をかわす為に自分が左右へのステップをすると照準がブレてしまうので当り難くなるというのが問題となる。

 一方では優れた部分と裏腹に欠点も抱えている。周囲の環境を判断して行動する事が出来るというのは素晴らしいコンセプトである。しかし実際にはマップ(特にアウトドア)は多種多彩で複雑な形状をしている訳で、それらを完璧に分析して動けるというのは相当困難であるというのはちょっと考えれば分かる(負荷的に計算には限界があると言っても良い)。その為に時々変な方向へと移動したりとか、壁があるのにこちらに向けて撃って来りというおかしな行動を見せるケースも見られる。或いは集団で動く時にお互いが相手の動きを分析するので、ループの様な状態になってしまって動きが変というのにも遭遇した。ただ滅多には無いのでキズと呼べるレベルでは無い。後はリロードをしたりする際には隠れる傾向が薄い事とGrenade系への反応が鈍い点が気になった。



 マップのデザインも重要な要素となる。ステルス系にアサインされているマップでも行動はどちらでもOKとあるが、実質ステルスで移動しないと難しい個所も多く存在している。特に最初の1/3となるM1-5辺りはステルス色が強く難易度も高い。この範囲は自分自身のSkillが低いので戦闘能力も低いというのもあるし、ステルスで動く事を基本としたマップでは敵がすぐにアラームで仲間を呼んでしまう上にRespawnするので倒してもキリがないからだ。
 特に最初の日本ではプレイヤーが弱いのと、重火器が無くCrossbow主体、それと敵から手に入るのは刀と手裏剣という状態の為、ゲーム全体でも特に難易度が高いパートと言える。少なくとも漫然と突っ込んで行く方法では辛く、倒して行く内に弾が無くなって来て手裏剣や刀主体となってしまい、その状態では次々に出てくる忍者を相手にするのは無理がある。続く(非常に長い)ロシアではある程度は戦えるマップが出てくるものの、相手もAK47を所持している為に殺傷能力が上がっており戦闘が難しいのは確か。この辺までは仮に戦闘主体に成長させても敵の数と強さに追い付かないというバランスであり、ステルス主体で動いた方が順調な進行の為には利口である。
 一方で中盤から終盤に掛けては(順調に成長させていれば)段々とプレイヤー側が強いバランスとなり、展開としてもスピーディーになって来る。ただ逆にNormal程度では物足りなくなる可能性も高い。私もNormalで進めていたのがM11辺りから簡単な感じに思えてきたので、途中でHardに変更して緊張感を保った状態で進めたりしていた。戦闘寄りに成長させていればラストのマップも含めてかなり簡単で呆気無い(Normalだと)ので、バランスが悪いと感じた時点での変更をお勧めする。

 戦闘には他にも重要な要素があって、それはSkillの一つであるSearchingである。これは何かを探したりする時に掛かる時間に関わるSkillなのでステルス系で重要なイメージがあるが、実は敵の体を探った時に発見するアイテムにも関連している。つまりこれが上がると敵の体からHealthやArmorを拾える確率が高まるのだ(何が出てくるかはランダムだが、Skillが高いほど良い物が出てくる可能性が高い)。よって戦闘重視で進む場合でも非常に重要な能力となる。マップ自体に置かれているHealth&Armorが少ないので、敵の体から取れるというのは大きい(これが有るので少ないとも考えられる)。


 総合的に見て今までとは違ったレベルのAIと戦闘出来るのは非常に新鮮であり、FPSのAIレベルを1ステップ上げた物と言える。かなり動きは人間的で頭は良いが、それでいて適度に弱い部分も有ってシューティングゲームとしての爽快感も同時に保っている。また実践的で変化に富んでいて戦闘その物が面白い(同じ個所をロードしてもその後の展開が変って来る)。ステルスが主体で戦闘が苦手という人はその個所をEasyに、物足りないという人はHardやSuperspyに随時上げて楽しめるので、バランス的に破綻する部分もまず出て来ない。やや不満点としてはもう少しバラエティに富んだタイプの敵がいればという所だろうか。

 それとこれは欠点というより好みの問題だが、ステルスをミックスして自由度を優先したデザインなので、ずっとバリバリと撃ちまくれるゲーム性では無い。またマップのタイプに関わらず探索の比重は大きいので、それに掛かる時間も長いというのは戦闘系マップでも共通している。全体的なゲーム時間が長いので戦闘を行っている部分の合計プレイ時間は確かにそれなりに長くなるが、ゲーム全体に占めるその比率はそれほど多くないタイプのFPSとなっている。ただ戦闘自体の手応えは前作よりも上がっており、アクション系のFPSが好みのプレイヤーにはこちらの方が面白いと感じられるだろう。



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