<GRAPHICS>
グラフィックスは製作に関わったMonolith自前のLithTech Engineの最新バージョンJupiter Engineにて作成されている(正確にはグラフィックスのみではなくゲーム製作に関わるシステム全体の総称)。これはDX8の機能を使用した新しいレンダリングエンジンを搭載した物であり、その前のLithtech Talon(AVP2等)の30倍のポリゴンを扱えるようになり、Particle systemやCubic Environment
Mappingにも対応している。
ゲームをプレイしてまず目に付くのが新しいアニメーション・システムの効果である。体のパーツをより細分化して独立して動かせるようになっており、その動きの自然さには目を見張る物がある。おそらく私が今まで見たFPSゲームの中では、最も優れたレベルのキャラクタ・アニメーションと言える。その凄い所は体の全てのパーツが連動してそれらしく動く点にある。人間というのは単一の動作をする場合でも細かく見ると微妙に体全体を動かして動作を行っている。例えば手を伸ばして目の前の物を取る時でも、体全体は若干捻れる形で動いたりする。しかし多くの3Dゲームでは手だけが伸びて動作を行うという感じになっており、体はどんどん多関節になって動いてはいるが動作全体にはまだぎこちない部分が感じられた。しかしこのゲームのキャラは非常に人間に近い形で各部が連動して動いており、ギクシャクとしているのではなく曲線的に体全体が滑らかに動いているという印象を受ける(ポリゴンという事を感じさせない)。ただモーションのパターンはそこそこという感じで、ムービーの時ほどは多彩な動きは出来ない。
Facial Animation及びExpressionのレベルも相当に高く、目は独立してキョロキョロと動くし感情表現の際の豊かな表情もトップクラスだろう。最近はこの分野に力を入れているゲームが多いが、その中でも一番の出来と思う。これらは特にムービーシーンにおいてその力を発揮している。ゲーム性から若干コミカルでデフォルメされた顔立ちが多いのでリアリティの無い顔の者もいるが、それでもアニメーション自体は非常に高度である。特徴的な髭の描画は独自のshaderプログラムにて実現されているそうだ。更にリップシンクも口をパクパクと単純に動かすだけで無く、なるべく発音に沿って口の形状を変化させるように動かしている。最後にCate自身の顔はかなり前作から変化しているが、これは好みの分かれる所かも。
次にこれは多用されている訳では無いが、水面の表現も現状ではNo.1と言えるのでは無いか。OptionにてPolygrid Bump Mappingを選択する事で水面に周囲の情景がリアルタイムで移り込み、更にPolygrid Fresnelにて水面が揺らめく際の反射効果がリアルに表現されている。Shadowに関しても光源によってはちゃんと伸びて投影されたり濃さも変化するようになっており、これもまたかなりのクオリティだ。
一般的なエフェクト系は武器が普通なのでそれほど派手では無いが、忍者の煙幕や吹き出す炎の効果等所々に見られるパーティクルの効果は綺麗である。雪の効果はそれほどでも無いが、自分の走る方向に応じてちゃんとアニメーションが変化する点は細かい。また足跡も短時間ではあるがちゃんと残る。このエンジンでは御馴染みのChrome効果(金属表面の鈍い光沢)も使われており、これも今までよりも綺麗になっている。一方で1ではあった鏡面効果は何故かカットされている。
Textureは非常に高度という訳では無いが十分に綺麗な出来。地面の部分はリアルと感じられる程度のレベルだし、看板系もハッキリと認識出来る所まで書きこまれている。Texture表面に対する光の反射等のエフェクトもマルチパスで付け加えられている様だ。それと表面にDecalを付けるのにそれ用の物を別に用意するのではなく直接Textureを変形させる技術が使われており、これがVRAMの負荷を大きく軽減しているらしい。
気になったのが一部に見られる服のTexture?である。通常はモデリングされた人間に対して薄べったいTextureを貼り付けているだけで、それを立体的に書き込む事で立体感を出すという手法を使っている。しかしこのゲームの一部のキャラは本物の布で出来た服を着ているように見える。現実同様に空気の層がキャラクタのモデルとの間にある感じで、体が動くとちゃんとその服が微妙に膨らんだり凹んだり捩れたりしており、これは今までに見た事が無かった効果と言える。
それと大きな進展として今回のJupiterはかなり軽い。P4 1.7GHz, 512MB, Geforce3 Ti200にて1024*768*32でMax設定でも、一部を除いてはほとんどストレスを感じなかった。確かにUT2003クラスの綺麗なマップに比較すると質はやや落ちるが、その分この軽さは大きな武器と言える。或いはTextureの質をもっと上げればUT2003クラスの画像を同等の重さで可能という可能性もある。ある意味現時点でも幾つもの点で新Unrealエンジンよりも綺麗。
これまでLithtechエンジンはFPS界の二大エンジンであるUnreal&Quakeに次ぐ第三勢力という位置付けだった。しかし今回のJupiterバージョンは少なくとも肩を並べるクラスまで到達したという感がある(新Unrealエンジンの実力がどの程度なのかはまだハッキリしない面もあるが)。ライセンス料は他の2社に比べてかなり安いらしいし、開発ツール自体にInGameエンジンでのムービースクリプトが入っているそうなので、未知数のネットコードはさて置いてシングルプレイを主体とするゲームにおいては今後採用する会社も増えてくるのでは無いか。
それと最近のゲームには多くなったが、最低環境に高いスペックを要求している事もあって、グラフィックス系の設定をLowまで落としても目立ってクオリティが落ちるという感じも無い。うまく処理をカットしている感じだ。例えば非常に重要な顔の描画とかはLowでもちゃんと行われている。
Jupiterエンジンは物理計算モデルも内蔵しており、階段等で死んだ場合に転げ落ちたりといった表現は出来る。また担いだ敵を降ろした時の倒れ方も一応は細かい。しかしKarmaの様な専用エンジンに比べるとパターンが単純であり、周りのオブジェクトとの重なりも従来通りに起きる。死亡時のアニメーションも種類が少なくて、ここには物理計算は適用されていない。この辺は今後の課題だろう。
プレイ前にもデモ等でクオリティの高さは想像していたのだが、その予想を上回るレベルの出来であり、アウトドア・インドア含めて綺麗である。特にアニメーションは見事。総合的にハイレベルで弱点が無いタイプのエンジンという結論になる。
<SOUND>
サウンドその物のクオリティは全体的にハイレベルで、低音はそれほどでも無いが非常にクリアで澄んだサウンドを聞かせてくれる。3DサウンドではEAX 2.0に対応しており、Audigy使用で4SPシステムでは定位感は良好。登場人物のボイスのクオリティも非常に高く、それぞれが当該人物の性格を表現するかのような見事な演じ振りでゲームの雰囲気を盛り上げてくれる。
BGMは前作でも重要な要素として存在していたが、今回も昔のスパイ映画をイメージさせる物が使われている。メインテーマは新しい物が使われており非常に良い出来で、その他の曲も種類はそう多くないもののクオリティは高い。曲調がコミカルな雰囲気の曲も多く、シリアスなゲームの最中には不似合いな感じもあるが、この辺はこのゲームの色という事で納得。発見されるとダイナミックに曲調が変化するようになっており、ステルスプレイ時の判断にも使える。
英語関連ではムービーも含めて字幕表示が可能なシステム。現在の目的は常に参照出来るし、英語の内容を詳しく理解しないとクリアが出来ないといったゲームでは無い。またゲーム中のムービーの量は前作に比較して半分以下に減っている。ただし今回は画を見ていれば内容は凡そ分かるといった部分が少なく、意味合いを理解するには英語を読まないとならない部分は多くなっている。それと会話部分にヒントがあるシーンもあるので、ある程度は追わないと問題が起きるかもしれない。またゲーム中大きな要素を占めるユーモアに付いては、盗み聞き出来る会話や見付かる文書にあるので、飛ばしてしまうとこの辺が味わえ無いという事にも。
<MULTIPLAY>
前作ではマルチプレイは盛り上がらずに失敗に終わったのを踏まえて、今回はCoopのみに対応というスタイルでマルチプレイ部分を大幅に削る形でリリースされている。またこのCoop自体もシングルプレイをそのまま全てプレイ可能な訳ではなく、分量としては大して含まれていない。このCoopについては当サイトのCoop道場の方に詳しいのでそちらを参照してもらいたい。簡単に言えば前作では力を入れた割には人気が出ずに失敗したので、今回はシングルプレイの充実に絞ってマルチには予算も人数も割かなかったという事である。
しかし予想外?にゲーム自体が高評価を受けて人気も上昇し、この2から新規にやって来たFPSプレイヤーからは何故対戦型のマルチが存在しないのかという要望が強くなり、それを受けて後にパッチで新モードや多数のマップ、それとDedicated
Server機能が追加されている。
独自のモードとしてはDoomsdayが追加されており、これはマップ内に存在する3種のパーツを組み合わせて"doomsday
device"を製造したチームが勝利となるモード。パーツの内2個はそれぞれの陣地にSpawnし、最後の1個はランダムな地点に出現するようになっており、これを全て自陣に集めるのが目的となる。独特なルールとしては死んだ仲間は他の生きているプレイヤーが右クリックすれば復活させられるという点。
今回は1に比べると大きくネットコードの面で改善が図られているという話だったのだが、残念ながらパッチによる追加にも関わらずあまり人気は出ないで終わってしまっている。
次の頁