<STEALTH>
このゲームではステルスの占める割合が結構多くなっており、特にゲームの前半1/3(M1-5)となる日本&ロシアのパートはかなりステルス色が強い。よってこの序盤は展開もスローペースとなり、単純に撃ちまくれるといった爽快感は控え目でそれが長時間続く事になるので、ステルスが嫌でシューティング部分をプレイしたいという人には辛い個所となるかも知れない。
このゲームのステルスのシステムに関して簡単にまとめると、
1.敵の巡回経路はパターン化されていない事が多く、タイミングを計算して切り抜けるというのは難しい
2.Non Lethalの手法の場合は眠らせるという方式になり、これは一定時間経過すると起きてしまうようになっている
3.殺して排除する方法だとRespawnしてしまうマップが多い
という感じであり、以上の事から完全にステルスにて行動するというのは相当難しい。特に1の巡回パターンが固定されていないという点が難物で、幾ら観察していようが安全に抜けられる瞬間を確実に計る事が出来なくなっている。そこでこの難しさを補う為に今回新たに加えられた大きな変更点がHidingになる。これについて製作側は前作における大きな失敗として「ステルスでの行動が難しくて、結局の所戦闘になってしまうケースが多かった」という点を挙げており、それを解消する為に生み出されたシステムでもある。
*マップ内にHideアイコン(眼のマーク)が出るエリアがあり、「ここには隠れる事が出来る」という意味になる
*その場所にて止まるとバーが現れ、これがHidingの進行を表す。完全に消化した時点でHiding成功となる
*Hidingの状態では基本的に敵に発見される事は無い
*Hidingに掛かる時間はステルスのSkill値によって変る
*Hidingのエリアから出てしまうと解除される
*Walk状態ならエリアを動けるが、Run状態の場合は一歩でも動くとエリア内であっても一度解除される
*その状態からの攻撃や、武器の持ち替えを行うと解除される
*敵に見られた状態では例え該当エリア内に入ってもHidingは出来ない(アイコンにXが付く)
*電気を消す事でHidingエリアを新たに作る事が出来る。ただし敵が電気を付けるとその場で解除されてしまう。
*Hiding状態でも敵にかなり接近すると気が付かれる危険性有り
このHiding機能の目的は、一度見付かっても再度敵を撒いてステルス状態を維持出来るという点にある(1では一度解除されたらそれまでだった)。そもそも他のほとんどのステルス系ゲームの様に、敵の巡回経路がプレイヤー側から読み切れるのならばこんな能力は必要が無い。見付からずに突破出来るタイミングを計って動けば良いだけである。しかしこのゲームではAIの項にて詳しく解説したように、敵の行動パターンがランダムで読めない為に見付かってしまう危険性は常に付き纏っている事になる。更に明確に示された目的を達成すればそれでOKというケースは少なく、経験値を上げたり目的の物を発見する為には敵の多いマップ内部をかなり丹念に探し廻らないとならないケースもある。他のステルス系ゲームに多い[目的のアイテムの奪取や暗殺さえ達成すればOKで、余計な場所へは別に行く必要が無いし現場の地図も提示されている]といったデザインでは無い。
この設定で「一度見付かったら完全解除」としてしまうと厳し過ぎて、プレイヤーがステルスでプレイを楽しむ事が出来ない。そこで見付かった場合でも再度ステルスに持ち込めるという余地を残しておいて、ステルスでの目的達成を援助するという意味で組み込んでいる。追っ手はその時点での警戒レベルにもよるようだが、ある程度の時間が経つと「どうやら逃げ去ったらしい」と判断してその場を離れて巡回に戻る様になっている(時間はステルスのSkillレベルが高いほど短くなる)。これによって或る程度は発見されても逃げ切る事が出来るのでステルスでのプレイを維持する事が可能になり、わざわざリロードしてやり直すという手間が無い。
このシステム自体の評価としては、上記のルールの様にHiding出来るといっても万能では無いし、簡単に維持出来るというバランスでは無い点も緊張感が有って良い。確かに隠れるのに成功さえすれば相当近くでも敵に見付からないというのはリアリティーの面からは変な感じもするが、AIが優秀なだけにそれを相殺する為のゲーム上の機能としては上手い手段だと思う。
その他のシステムとしては1では使われていなかったLeanが可能になった。これは体を出している時間が長いほど見付かり易いというシステム。それと場所にもよるが、SWで電気を消したり電球を撃って壊したりバルブを緩めてやったりして暗闇を自分で作り出せるのも新規な点だ(今では珍しくも無い要素だが)。また今回は敵を担いで移動出来るようにもなっており、AIは死体に気が付いて探索を始めるので見付からないような場所に移動するのは重要となる。なお死体を消し去る事の出来るGadgetであるBody Removerは今回も健在。
ステルスを達成する為の武器としては新アイテムのUtility Launcherが大活躍する。これはTracking Device(敵に気付かれずに撃ち込めて、刺さるとコンパス上に位置が現れる)、Tranquilizer Darts(敵を眠らせる),Camera Disabler(監視カメラ無効化)といった矢を放てる武器。後は充電式のTaser(スタンガン)は近距離にて使用、殺傷タイプの物としてはCrossbowやSilencer Pistolが用意されている。直接的な戦闘を避ける為の物としては、SleepやStun, Laughing等の各種Grenadeと、敵を一時的に止まらせるBear Trapや転ばせて一瞬気絶させるBananaがある。
眠らせた敵は時間が経つと起きてしまうのだが、その代償というか利点として敵の体をSearchして所持品を奪ってしまう事が可能になっている。死体を含めて倒した敵の体をSearchする事で武器を取り上げることが出来るので、眠りから起きた相手は一時的に無力化されている事になる。通常眠らせた事自体は攻撃を受けたという風には取られないし、眠っている敵を仲間に発見された場合も起こされたりするのみで、敵が侵入したとは取られないようになっている。
敵の注意を逸らすには1同様にCoinを主に使い、固定されて持ち場を離れないガードに対しては屋内ではこれを使ってその隙に行動したりする。危険ではあるが武器を撃って敵を引き付けておいて、上手くかわして進むという方法も可能だ。なおマップ中にはビンが置いて有る場所が多く、これは倒して音を立ててCoinのようにして使う事も可能である。逆に注意して移動しないと触って倒してしまい音を出してしまうという事も起きる。
実際のプレイ感覚に関してだが、多くの場合AIの動きを読み切る事が出来ないので、確実なタイミングを計って行動するという事が出来ない。敵がいなくなった時点で思い切って侵入して部屋を探す、こまめに場所を移動するといった行動しか無く、その為発見されるかもしれないという緊張感が常にある。現実に潜入して行動する時はこんな風になるだろうという感触が感じられて、これはこのシステムの大きなアドバンテージと言える。
一旦自分のいるルートから消えたAIが何時戻ってくるかが分からないのでSearch中も焦るし、もし見付かった時にどうするかを考えながらの行動が必要となるのも面白い。目的の行動を起こす前に出来るだけ周辺を探索して隠れられる場所を予め探しておいて(もちろんこれ自体難しい場合がある)、見付かってしまったらそこに逃げ込むとかを計画しておかないと逃げ切れない場合も出て来るのは良く出来ている点だ。敵の動きはTracking
Deviceを撃ち込めばコンパスである程度は追えるのだが、マップが出る訳では無いのでどこでも役立つとは行かないし、全く別の敵がやって来る可能性もあるので油断は出来ない。
探知行動についてはどうなのかというと、AIの項にて書いたようにそれほど知覚の範囲は広く無く、適度に気が付かないという感じで、ある程度はステルスはやり易い調整となっている。これは敵の行動が読めないので難しいという面とのバランスを取っているのだと思われる。どこまで逃げても敵が付いて来るといった不自然さは無いし、見付からない場合は各人が持ち場を分担して探索行動に出たりするのもリアル。引出しの開け放しや電気のON/OFF等の周囲の環境の変化にちゃんと気が付く点も優秀で、これを利用して逆にAIを誘き出したりとかが可能なのもゲームを面白くしている点だ。それとHidingして再度持ち直せるのは確かだが、何でもかんでもHidingすれば通るという風にはなっておらず(その周辺に逃げ込んだ事を見られた場合、その場所を探すので動きにくくなる)、あくまでも敵を撒いた状態で隠れてこそ効果が有るという辺りも実践的である。
その他書き残した点を幾つか。
*ステルスのSkillが低い内は足音が大きいので、より慎重に歩く場所を考えてやらないとならない
*敵の死体は他の仲間が見付けると消える
*監視カメラは破壊しても気が付かれる。しかし一度壊せばそれまでなので、ステルスでなければ壊してしまうというのも一つの手段。
*基本的に電気が最初から消えている部屋には廻って来ないので、それをベースに行動する
*自分で電気を消した部屋は必ずAIに電気を点けられるので、長く潜むには適さない
以上のように非常に良く出来てはいるのだが、やはり完璧とは行かず気になる点も存在している。まずあまり敵を騒がせずに進めて行くというのは可能だが、殺傷をしないで進行させるステルス行動というのは難しい。敵を眠らせる事は出来るのだが、このゲームではその相手が起きてしまうし、その時間も結構短い。気になったのは武器を奪った状態で担いで移動させたりして放り出した相手が、その後どうなるのかの法則性が掴めない事。まずは起き上がると「武器が無い」と騒ぐまでは固定。その後どこか隅の方に逃げ込んで震えていたりする事もあれば、遠くの方に逃げて行ってしまう事もある(確認が取れない)。困るのはしばらくすると立ち直って歩き出し、どこからか武器を再度手に入れて持ち場に戻ったりとかが有る事。こうなると再度相手を排除しないとならないケースも有って面倒な事になってしまう。或いは特に無害な研究員達は殺さずに眠らせるだけにしたいのだが、一度眠らせても起きると何事も無かったかのように仕事に戻ったりもするし、最悪の場合には起きるとアラームを鳴らしたりもしてしまう。
だからマップからいなくなるようにするには殺してしまって排除しないとならないケースもあるのだが、Respawnが有効なエリアではこれも無駄になる可能性がある。Respawnしてしまうのはシステム的に仕方のない事ではあるのだが、もう少し復活或いは眠りから起きるまでの間隔を開けるとかの方が面白くなったのでは無いかと感じる。
次にHidingした場合に敵が探しに来るのだが、この時に入り口付近にて動かなくなる事があるのも気になった。敵が探索を諦めるまでの時間はステルスのSkill値によって変化するそうだが、最大レベルでも動かなくなる事がある。こうなると別の場所から上手く逃げるか、それが無ければCoin等で気を逸らして移動させてその間に逃げ出すかしか無い。しかし狭い部屋となると攻撃して何とかするしか無くなってしまう。最初からそういう場所を隠れ場所として使うのが問題という考え方もあるが、この点は常に或る程度時間が経ったら諦めるという風にして欲しかった。
それと事前の情報と違っている点に付いても触れておこう。今回は見付かった時点で終ってしまうミッションは無いという話だったのだが、実は完全ステルスを要求されるミッションが存在している(武器を使えない)。このミッションでは確かに見付かってもゲームオーバーにはならないのだが、スタート地点に戻されてしまうので実質同じ事になってしまっている。
次にAIに関する製作側の説明では全てにおいて事前にスクリプトはされていないという事だったが、実際には何もしなければずっと居眠りをしている等の敵は存在しているし、ほぼ同じ順路を通っている者も中にはいたりする。
見付かった瞬間に終わりとなる様な設定の箇所はほとんど無いが、幾ら敵を倒そうが「製作側がステルスを推奨するエリア」では倒した分だけ敵がRespawnして来るので、戦闘で強引に押し切るというのは難しくなっているし、ステルスで敵を全部眠らせて(殺して)からゆっくりと活動という事も出来ない。
確かにこの敵がRespawnしてしまう事への不満は結構見られたが、最初からゲームのデザインに対する考え方が異なっているのでそれだけを取り上げて責めるというのは無理がある。Respawnを無くして敵を固定数配置にした場合、これでは従来のゲームと同じで目新しさが無くなってしまう。AIにこのゲームで実際に行っている様な高度な処理を行わせようとなったら頭数は減らさないとならないので困ってしまうし、逆に増やしてAIを単純化するのはこれまでのステルス物と同じ事で進歩が無いという事である。また数がそれ程多くない上にRespawnが無いならステルスなど使わずに全部攻撃して殺してしまうという手段が取れてしまうし、それならとステルスを意図したマップでは常に最初からプレイヤーの武器を取り上げてステルスでのプレイを強要するのは自由度に欠ける。つまりRespawnを無くすならば、これまで同様に数多いAIが固定された順回路を回っているのを見切ってかわすというゲーム性になってしまうので、新しい事をやりたいという観点から作られたシステムでは、何等かの要素にシワ寄せが行ってしまうのは仕方が無い。今回はそれがRespawnという要素であったという話である。
ゲーム全体から受けた印象としては、完全ステルス型のゲーム性(侵入した事さえ気が付かれないとか)を狙った物では無く、見付かっても上手く逃げてかわす事をプレイヤーに味合わせるのを目的として作成されたステルスというデザインで、Thiefの様なゲームとはコンセプトからして違っていると感じた。ただしどちらが上かという話ではないので注意。
確かに敵が固定された巡回路を延々と回っており、そのパターンを観察して隙を突いて動くという方式だとゲーム的でありリアリティは薄くなる。だからこのゲームでは敵の動きを人間的にランダムにして読めなくしたという事になる。しかしパターンを読んで突破するという方式はステルスのゲームとしては面白いシステムの一つであって、リアリティが無いからダメで劣っているという事ではない。あくまでもアプローチの仕方の違いに過ぎない。
NOLF2のステルスで高く評価したい点は、新しいアプローチにチャレンジして、それを上手くステルス性のゲームとして成立させるまでに作り込んでいるという点である。このやり方が一般的な巡回ルートを読むスタイルに比べて絶対的に上のランクにある物とは私も考えてはいない。
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