<GRAPHICS>

 ゲームの描画エンジンには自家開発のVital Engine ZLを使用しており、これは基本的にはアウトドア環境に適した描画プログラムであるが、インドアになるとその分重くなるといった欠点を解消した物ともコメントされている。メインのテクノロジーはこの頃流行となっていたLOD(Level of Detail)であり、これはそれまでの描画エンジンの持つ問題点を解決する技術である。
 当時の一般的なエンジンでは描画の重さは画面内のポリゴン数で決まっていた。そうなると広いマップを製作した場合、遠くまでを見渡した際に画面内に含まれるポリゴン数は飛躍的増大する為に一気に重くなるので、広大なマップは製作し難いとなっていたのである。そこで遠景描画時に、遠くの方の物はそれ程正確に見えなくても影響が少ないという点を利用して、遠くに有る物ほど自動的ポリゴン数を減らして調整する機能を組み込んでやり軽くするという手法が考え出された。後はそれをどれだけ上手くプログラムとして実現するかという事になり、このゲームでは軽さという点では相当高いレベルでそれを実現している。

 しかし実際の所、アウトドアは軽さと綺麗さのバランスはかなりの水準であるが、インドア系は今一つの出来である。アウトドアに適したエンジンはインドアでは弱いという点は、このエンジンでも解決されていない。

 このゲームで特徴的なのはその枯れた色使いというか地味とも言える色彩であり、ほとんどが暗い色で作成されていて明るいと感じる部分はほとんど無い。例えば青や赤といった色があったとしても色としては沈んだ感じのイメージの色彩になっており、明色系の部分がほとんど見当たらない。ゲーム性から言って暗い部分が多いのは当然なのだが、これだけ地味だと綺麗に見せるという観点からは大分損をしているというのは確かだ。例えばアウトドアに関してはリアルな描画で実際にその場に存在しているかのような感覚は十分に感じるのだが、鮮やかさやゴージャス感とは無縁という印象である(ゲーム性は全く違うがSerious Samの様な広い上に明るくて綺麗といった感じが無い)。インドアはそれに比べると明るい色が使われてはいるが、その出来映えからしてむしろもっと地味な印象さえ受ける。

 アウトドアに関してはこのゲームの売りの一つとなっており、特に良い部分は木々の表現だ。これは高い普通の木とかでは無くて下の方に生えている草木の部分なのだが、この表現の出来は非常に良い。草木が覆い茂っているという感じが良く出ていて、伏せたりして姿勢を低くする事でこの中に隠れる事も出来る。この森を中心に使ったマップは3つあるのだが、どれもグラフィックス的にはゲーム中で最高の出来映えだろう。特に南の島での青々と茂った草木のマップは唯一明色系の色が目立つマップでもあって非常に綺麗。伏せると全然何処にいるのか分からなくなるし、立っていても敵味方含めて姿が見えにくい位に草が茂っておりゲームとしても面白い。個人的にはもう少しこういった明るい感じのマップを多く使うべきでは無かったかと思える(特にここは最後のマップなので)。
 森ほどでは無いにしろ他のアウトドアマップも水準以上の出来ではある。ただ全体でアウトドア系のマップは9個あるのだが、この内普通のアウトドア(デモにもあった様な茶色い道や土にやや林の部分が混ざったタイプ)が5つあり、その他森系が上に述べたように3つと砂漠が一つとなる。これならばもっと別のバランスに配分した方が良かったような感じがするし、ちょっと前半部分に普通のタイプが偏り過ぎている感があって目先の変化で楽しませるという点でもマイナス要素だ。


 インドア系のマップは全部で5つあるが、やはりアウトドア系に比べると落ちる。アウトドア系に比較すると実際にそこにいるというリアル感も低い。こちらも全体的に沈んだ感じの色合いであり、”綺麗さ”という面でも今一歩と言える。後半の二つのマップ(オイルリグと工場)は構成的にも工夫されていると思うのだが、前半の3つが印象が似通っておりマイナス要素になる。どうせなら全て大きく違った構成のグラフィックを見せてもらいたかった。

 特に問題を感じるのがテクスチャ系の粗さと様々なオブジェクト類のモデリングである。元々の製作者である2人は、エンジン自体は自分達でほぼ完成までは持って来られたが、その中に配置する様々なグラフィックス関連のデータについてはとても自分達だけでは無理と考えてGSCと契約したという事なのだが、それが成果を挙げているのかというと疑問符が付く。ゲーム内の各種オブジェクトのモデリングは相当に原始的であり、隊員の乗る輸送用戦闘機や敵の戦車等はプロの仕事とは見えないような出来だし、建物のデザインも外に建っている物はマップが変っても皆同じ物だったりする。
 キャラクタデザインやアニメーションに関しても、個人的にはあまりデザインは好みでは無い。隊員のArmorも格好良いとは思えないし、敵のキャラにしてもどこか体のバランスが変な感じの者が多い。モンスターのデザインも平凡。また使われているTextureにしても、全体的使い回しが多くてもっと多種類で高度な物が使えたのでは無いかと思わせる。やはり低予算で製作されたのでこうなったという事なのだろうか?

 エフェクト類に関してはやや劣る印象。火炎で焼いた時、爆発の効果等も派手さが無いし綺麗でも無い。水の表現も今となっては平凡か。それと影に関しても省略されている。バイオレンス表現に関しては非常に厳しいロシア圏とあってか、血は撃った時に控えめな表現があるだけで死体から流れ出たりとかは一切無い。爆発でバラバラにはなる事があるが、これも残虐と言った感じの表現では無い。
 あと一つ付け加えておくとこのゲームでは色合いの変更(Saturation)が出来るようになっており、これを動かすと結構印象が変わる。ここで使っているのは標準値での画像だが、公開されているものはやや赤みが掛かった濃い色のスクリーンショットが多く、この辺は好みで変更すればいいだろう。

 ムービーは通常のゲームのクオリティの簡単な物がミッション開始前に流れる以外はほとんど無く、唯一オープニングに別撮りの奇麗なムービーが見れる(これにだけは金を掛けている感じがあるが)。

 重さに関してはOption系がデフォルトの設定では1024*768*32にてそれほど問題は無かった。大して速いマシンで無くても十分に動いてくれるようで、その辺は優秀と言える。ただし自動デグレードをOFFにしてLODを上げるとかなり重くなる。この方が当然遠くは奇麗に見えるのだが、その分例えば急に遠くを見た時とかズームから戻る時などに一瞬止まる感じがして重い。自動デグレード機能が付いているので、目標FPSを設定しておけば自動的に描画をサボってカクつきを押さえてくれるようにはなっている。

 最後にマイナス要因として発売時期を挙げておこう。このゲームがデモとして出た2000年末の時点では確かにグラフィックは綺麗という印象だった。しかし発売が大幅に延びてしまって、その間に同系統のアウトドア物でOperation Flashpoint, Ghost Reconといった物が出て来てしまい、ユーザー層へのインパクトは相当ダウンしたのは確かだ。



<SOUND>

 サウンドはEAXに対応しているがこれは良い出来。サウンドの定位感が優れており、例えば自分の周囲を付いて来る隊員の足音でその場所がハッキリと判る。歩いている場所によって足音のエフェクトもちゃんと変えているし、昼と夜でちゃんと変化する環境音もなかなか良い。ただ武器の音は平凡な感じである。

 セリフ系は訛りがある感じの物が多く、これはアメリカ版では採り直しされるそうだ(未確認)。基本的に重要なメッセージは表示可能なので英語系の難易度はそれほど高く無い。

 BGMは基本的にマップには無く、戦闘時に鳴る方式。ただそう種類がある訳では無いので単調な感じはする。


<MULTIPLAY>

 マルチプレイは4モードあるが、デスマッチが存在しないという珍しい構成になっている(TDMも無い)。独自性を出そうとしての決定だと思うのだが、やはりTDMが無いと盛り上がらないのではないかという懸念はある。その所為なのか不明だがマルチプレイは寂しい状況であり、サーバーは5つあれば良い方で通常は2,3個。更にそれらがどれも人が居るとかでは無くて、大抵は一つのサーバーに人が集まっている程度だ。
 アメリカ発売を機に盛り上がれば良いのだが、OFPの盛り上がりやGhost Reconもすぐに出る事を考えるとあまり期待は出来ないか。マルチの面でも発売の遅れは大きい。後はやはりSDKがリリースされてMODの開発が活発になったりしないと辛いかも。それと参加人数が16人までというのはマップの広さからすると少ない印象。これも拡大されないとマズイだろう。 追記: その後も結局盛り上がらずに終わった

 基本的にはGamespyを使用して接続するのだが、どうもマスターサーバーがロシアに有るのかPingが600〜1000程度というのが普通。これは接続するとまともな値になるし、仮にPingが高くてもマルチ自体はかなり軽い。多少安定性に問題はあるものの初回バージョンでこれだけ動くのは優秀な部類に入るだろう。

 CTFとCoop以外のモードに関して簡単に説明。

[Crystal]
 マップ上に4つのクリスタルが落ちていて、これを拾って来て自陣にある4つのフォルダのどれかにセットすると10秒につき1ポイント入るというゲーム。敵陣のフォルダに入っているクリスタルは奪う事が出来る。

[Black Box]
 マップ上に一つだけあるBoxを拾ってきて自陣にあるDecipherにセットする。このモードでは得点カウントが独特で、まずBoxをセットしているチームは1秒につき1ポイントの計算。ただしBoxを所持している方のチームは敵を倒してもポイントは一切入らないのだが、相手側はBoxを持っているチームのメンバーを倒すと、マップ毎に決められた設定値を人数で割った値がポイントとして入る。またBoxを持っていない方はすぐにRespawn可能だが、所持側は30秒待たないとならない。



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