<戦闘>
ここではFPSゲームのメインとなる戦闘について分析していこう。まずRTCWでは通常の3DFPSとはかなり異なった戦闘システムを採用しており、この部分を理解する事が重要となる。このゲームは戦闘の難易度が比較的高い傾向にあるので、ゲームに合った戦闘方法を十分に理解していないと、それに加えて更なる苦戦を強いられる事になりかねず注意が必要だ。戦闘の難易度はミッションによってかなりバラツキがあるものの、普通の3DFPSの様に戦っていると大変なマップが結構有る。
簡単に言えばこのゲームの特徴とは、銃弾のブレが非常に大きいので簡単には当らないという点になる。照準が立ったままでは安定しないとか、フルオートで連射すると大きくブレるといったゲーム自体は別に珍しく無いが、RTCWではそのブレ度合いがシングルプレイのアクションFPSとしては非常に大きい部類のゲームとなっているのだ。確かに照準の広がりは画面表示上で確認出来るのだが、単にそれはどの程度広がっているのかという”程度”を表しているだけで、実際に表示されている広がった照準の範囲内に弾が散って飛んでいるという意味にはなっていないので注意しないとならない。
Leanして体を隠しながらや、フルオートではなくセミオートに切り替えて撃つといったデザインのFPSならこの命中率でも不思議は無いのだが、一般的なアクションFPSのスタイルをとっている中では最も弾が散ばる部類に入るゲームとなっている。ゲーム画面から受ける大量の敵相手のアクションFPSというイメージで、正面からまともに撃ち合っていたのでは到底体が持たないバランスである。
第一の重要点として、座った場合と立った場合の銃弾の散らばりに大きな差がある。通常のアクションFPSでは動かずにその場に留まっている事は一番に避けないとならない事項になっている。つまり常に動いて敵の狙いを定めにくくして、自分の照準は動きながらも敵に合わせ続けるのが生き延びる為の重要なテクニックになるのだが、このゲームでは実はそれは効果的では無い。すなわち武器を撃つ時はその場に座って動かない事で命中率を高める事をまずは心掛けるべきだ。
マニュアルにもちゃんと「座って撃つ事で武器の反動によるブレを押さえて正確性を増す事が出来る」とあるのだが、問題はこれが”如何に違うか”という所までは書いていない事だ。実際にやってみると分かるが(壁に向けて撃って付いたDecalを確認する)、「正確性が増す」というレベルでは無くて「全く変わる」というレベルである。
まず動いてしまうとそれだけで照準がブレるし、更に立ったまま撃つと弾道は大きく広がってしまう。確かに武器にもよるのだが、立った状態で前後左右にステップしながら敵に向かって撃ち続けても相当当りにくい設定になっているのが分かるはずだ。立ったままで左右に動きながら撃ち合ってはクリア出来ないとまでは言わないが、この方法だと敵が中距離以上にいる場合や多数の場合は、撃っても当らないので全て倒し切るまでにリロード動作が数回入ってしまう可能性が高く、この間も長めで3秒程攻撃出来なくなるので余計に危険性を生む事になる。かと言って命中率を上げようと接近してしまうと、今度は敵の弾を浴びる可能性が高くなって死に易くなってしまう事になる。
よって攻撃する時はまず座ってから銃を撃つというのがこのゲームでの基本中の基本。もちろん戦闘中ずっと動くなと言う意味では無くて、動いて移動する時は移動に徹して、移動先で再び座って攻撃をするという事だ。勿論何時でも座る必要がある訳では無くて、近距離で雑魚兵士が1,2人という時にまでこだわってやる事はない。ただシューティングの爽快感が減るし座るのは面倒という考えから、普通のFPSの様に常に立って走りながら攻撃していたのでは辛い。上手く行くまでに何回もLoadしてやり直す羽目になるだろう。サブマシンガンで言うとThompson程度の精度が有るなら立って撃っても通用するのだが、この武器の弾は少ないので使用箇所は限定されてしまう。
第二に適した間合いを取るのが重要となる。座って撃つ事による不利点とは、当然動かないから敵に照準が付けられ易くなるという事になる。そこでどうするかと言うと、距離を置いて戦うという戦法を利用する。このゲームでは立って撃ったのでは正確性が低いという要素は敵側にも適用されており、サブマシンガンの様な武器を持った相手に立ったまま乱射されても、ある程度の距離が離れていればそうそう当らないという設定になっている。よって距離がある場合で相手が立っているならばそれほど脅威を感じる必要は無い。
敵の種類によって使っている武器はほぼ固定されているので、その武器に応じた距離を取って安全範囲に逃げ込むというのが大事になる。ここで重要となってくるのが「座って動かない」という戦法で、敵は基本的に立った状態で攻撃を仕掛けてくるので、距離を取る事で非常に有利な立場に自分を置くことが出来る。つまり座っている状態だと弾のブレが少ないので立った状態よりもはるかに遠距離が射程範囲となり、座っている自分から見ると相手は射程距離だが、立っている相手からは自分は射程範囲外という状況を作り出す事が出来る。戦闘時にスペースが有るのならば武器に応じた距離を取る為に、必要とあればSprintでダッシュして離れてから攻撃を仕掛けるという方法。これを実践すれば4,5人いる相手に一方的に撃ち勝つ事も可能になるのでかなり楽になる。逆にこれを使わないとダメージの大きな武器を持っている敵に対して辛くなる。自分も立ったままで行くとなると、武器の射程範囲内に相手を入れる為に自分も敵の射程範囲に入らなければならなくなるので。
第三にバースト射撃を心掛ける事。マルチプレイだとマシンガンの予備クリップが最高でも2つしかないので、あっと言う間に弾切れになってしまう為に多くの人が実践している手法であるが、シングルプレイではなまじ弾数があるのでつい勢いで撃ってしまいがちだ。連続してフルオート状態で撃っている時の弾の散り具合は見た目の照準の開きよりもずっと大きいので注意。よって小刻みにマウスから指を離しては再度押すという動作で少しずつ弾を出すというバースト射撃をしないとならない。これによって照準が開き切る前に戻しては撃ちという状態になるので、弾の散りを最小限に抑えられる。間合いを取ってそれほど当らない安全圏に逃げていれば、バーストの間の撃っていない瞬間に当てられる心配も減るので安心だ。広がり切った状態で撃ち続けても効果は少なく、またリロード動作に入る前に全ての敵を倒せる確率が減るので不利になる。
オーバーヒートで撃てなくなるStenの様な武器ではより重要である。出来るだけオーバーヒートさせずに1クリップを撃ち尽くせるようにコントロールしないとならない。
命中率以外の厄介な点としては、ダメージを受けた際に画面に掛かる赤いエフェクトが相当画面を見え難くするので、近距離戦になって連発で弾を受けてしまうと大変にやり難くなる。HUDのHPやArmorの数値がやや見え難く戦闘中に確認し難いというのもやや問題か。
総合的に戦闘はアクション性は持っているが、そこに高い戦略性が加わった物となっており、出会ったら即攻撃というやり方ばかりではなく、頭を使って優位に運ぶというのも重要なゲームとなっている。スプリントを使ってすぐに距離を取って安全地帯に逃げてから作戦を考えたりとか、リロード時には同様に逃げて隠れてから行ったりする。武器も距離によって効果の有効範囲が異なるので、ケースに応じた使い分けが重要となって来る。
敵も同様にリロードを行うので、障害物を挟んで姿を見せながら戦い弾を消費させて、リロードの音がした時点で飛び出して攻撃したりも有効。良いポジションが有るのなら、一気に敵の中をSprintで突っ切って後方へと抜けてしまうという手も使える。他にはドアを開ける前に座っておいて開いた瞬間に即攻撃可能にしておく。Leanでは撃てないので、座れば体を隠せるような障害物を探してその後ろに隠れて有効にカバーとして使用する等。
<AI>
敵は一般的な兵士の他に女性親衛隊やBlack Guardといったエリート兵士系と、X-Creatureと呼ばれる実験型モンスターや呪術により蘇えったゾンビ系モンスター、それと機械化されたProto
SoldierやSuper Soldierといった強力な敵が揃っている。全体的な種類は少ないのだが、敵それぞれが個性的なのでそれを補っていると言えるだろう。
人間系では女性親衛隊が非常に手強い。武器には遠距離でも正確性の高いStenを使い、また目まぐるしくローリングして動いてこちらの狙いを外して来るので厄介な相手になる。1対1でも結構厳しいのに4,5人固まって出て来る場所もあり、まともに行っては瞬殺されてしまう程の脅威となる。ゲーム中を通じてはそれ程頻繁には登場はしないが、最強レベルの敵の一つだろう。ヒムラー直属のBlack Guardは動きはそれほどでもないのだが、FG42という強力な武器を持っているので距離を取る方法があまり有効にはならない為に、対処の仕方を考えないと手強い事には変わりない。
X-Creatureは動きは単純なのだがそこそこ耐久力がある上に、壁を通して電撃を放ってくるので戦いにくい相手の一つ。飛び跳ねるので狙いも付け難い。ゾンビ系は動きが遅いのでそれほどの脅威は無いのだが、突然壁等を壊して出現したりするので怖い。また盾を持っている者がいて、これに向かって撃つと自分に弾が跳ね返って来るという面白い設定も見られる。それと中には髑髏の弾を放って来る奴もいて、まとめて来られると苦戦する可能性も。Soldier系は動きは遅いが強靭な耐久力を持っている敵で、それなりの武器でないと太刀打ちが出来ない。
残念ながらAIの出来自体は期待を裏切るものとなっている。プレビュー版をプレイした発売前のメディアの評判で相当なレベルという事を聞いていたし、ゲームの宣伝でも大きくAIの充実を強調していたので期待をしていたのだが....。決して悪くはないし全てのゲームの中で言えば水準以上とは思うのだが、発売前の煽りが大きく期待が高かっただけに肩透かしを食った感じだ。FPSゲームでの「AIが凄い!」の宣伝は実物を見るまでは信用出来ないというのは何回も体験して来たはずだが、今回もまたそれだった様な気がする。
まず近くの障害物へ隠れるという事は出来るのだが、それほどこれを使わずに単純に突っ込んで来るというケースが結構多い。その場に突っ立って攻撃して来る事もかなりあるし、状況に応じての動きに柔軟性が無い様に感じた。噂では隠れられる障害物が無ければ自分で近くの机等を蹴倒して作るというのを聞いていたが、事前にスクリプトとして設定された場所以外ではそれは見られなかった。防御では手榴弾を避けたりといった事は出来るが、身を屈めたりといった事はほとんどやらない様である。
ドアの向うや壁の反対側にいる場合は基本的に向こうから仕掛けて来ないので硬直状態の様になってしまうし、スクリプトとして固定されている感じの敵が結構多く、一度攻撃を受けても持ち場を動かないケースも見られた。チームとしての行動もそれほど特筆すべき物は無く、基本的に仲間が多くいる場合は有利と判断して積極的に向かって来るのと、少ない場合は仲間を呼びに行くという位。これは今となってはそれほど珍しく無い能力である。
基本的に音声に対する反応は鈍い方で、ゲーム上で感じる銃声の大きさ程は周囲には聞こえていないという設定らしく、それほど敵の反応に敏感になる必要は無い設定。これはゲームのシステム上の設定なのでまあ良いのだが、ちょっとその感覚を摘むまでに時間が掛かるのは確か。またバグと思われる個所もあって、同じ部屋の中で銃撃戦をしているのにそっぽを向いてこちらに気が付かないというケースが数回あった。
総合的に見て今要求される水準からすると普通というレベルだろうか。このゲームでは敵が強いので、総合的な強さである「単体での戦闘の強さ+AI能力」はかなり高い物があるが、純粋なAI能力という面では1年前のNOLFに反応のリアルさや作戦能力という面で劣っている。また同年発売のOperation FlashpointtやCodename:Outbreakの様に新しさを感じる部分も無く、冒頭に書いたように私としては期待外れという結論になる。
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