<MULTIPLAY>

 RTCWでは当初拡張パックとしてリリース予定だったRTCW: Enemy Territoryを無料のコンテンツとして2003/05に公開しており、これはダウンロードしてインストール(パッチを含めて)すればこの本編を持っていない人でも自由にプレイする事が可能である。ゲーム自体の面白さと完全無料というのもあって、現時点(2007/02)でも大変な人気を保っており、プレイするサーバーには困らないタイトルである。

 このETはRTCWをベースにして内容を拡張したマルチプレイとなっており、基本的には同じルールで幾つかの点を拡張・改善したゲームとなっている。ETについては日本でもクランやファンサイトが多く、検索すれば多数の解説サイトがヒットするはずなので、最新情報等はそういったサイトにて学んでもらいたい。

 ここではRTCWのマルチプレイがどの様なゲーム性なのかを簡単に解説しており(発売当時の初期バージョンでの解説)、ETの内容については触れていない。



Axis(枢軸側:独)とAllies(連合側:米)に分かれてのチーム戦(個人戦は存在しない)
◎両軍ともに各プレイヤーは4種類のクラスから選んでチームを構成
◎最大で32人まで参加可能(それ以上も可能だがサポート外)
◎ゲームモードは3つ存在しており、一般的なデスマッチは存在しない



☆Wolf MP
 最も基本的なゲームモードでマップによって攻撃側と守備側の陣営は固定されている(つまり攻守は入れ替わらない)。マップごとにメインの目標が存在し、制限時間以内に定められた目標をクリア出来れば攻撃側の勝利で守り切れば守備側の勝利となる。サブの目標が存在するマップもあり、これをどうするかは攻撃側の自由である。

☆Wolf SW(StopWatch)
 MPと同じルールだが、先に攻撃した方のクリアタイムを基準として攻守が一順毎に入れ替わる。第一戦でAチームがAlliesで6分でクリアしたならば、次戦はAチームがAxisになって6分間の制限時間で守るという形になる。なお交代順序はサーバーの設定による(ABABとかABBA)。UTのAssaultと同じ物と思ってもらえばいい。

☆Wolf CP(CheckPoint)
 マップ上に6箇所程度の旗が存在し、これらを両チームで取り合うゲーム。全ての旗を同時に占拠したチームの勝利。もしも時間内に達成できなければ終了時に多い方の勝ち。同点ならばサドンデス。


◎基本的に死亡回数には制限は無いが、サーバー設定によっては個人別に回数制限がある
◎死亡した後生き返るというのではなくて、援軍として再登場するというスタイルを採用(後述)
◎敵をどれだけ倒したとかは全く勝敗に関係が無い。スコアも同様。
◎Respawn場所は通常御互いの陣営になるが、これはRespawn用のポイントの確保によって変化する
◎武器(メイン)は一つしか持つ事が出来ない
◎マップ内にはMedipackや弾薬は一切落ちていない




<CLASS>

 プレイヤーは4つのクラスの内から一つを選択してゲームに参加する。このクラスはゲーム中に何回でも変更が可能である。ただし生きている時に変更は出来ず、死亡して再度入って来る時に変更可能だ。

*SOLDIER: 一般的な兵士 
*MEDIC: 他のメンバーの復活や、ヘルスパックを供給する
*ENGINEER: 爆薬の設置及び解除。固定機関銃の修理。
*LIEUTENANT: 弾薬の供給。空爆及び砲撃の指示を出すことが出来る。


 最初にゲームに参加する際はメニューからどちらの軍に所属するかをまず選択。次に自分の好みのクラスを選択する事になる。なおEve Teamの設定だとその時点の人数配分によっては好きなチームに入れない場合もあるが、クラスに関しては制限は無い。通常チーム変更はゲーム開始前の設定用インターバルに行うのだが、ゲーム進行中に行う事も可能だ。以下はプレイヤーが選択可能な4つのクラスについての一覧。なお内容はMPやSWゲームに関してで、CPについてはまたちょっと変わってくる。

SOLDIER ENGINERR MEDIC LIEUTENANT
Primary Weapon 全て使用可能 選択不可 選択不可 3種類から選択
(マシンガン)予備CLIP
Grenade
Special Abilities ダイナマイト設置 MediPackを落とせる AmmoPackを落とせる
壊れた固定銃の修理 負傷者を復活 Air Strike を呼べる
敵のダイナマイトの解除 Artillery Attackを使える




           Readmeに付いている説明画像でHUDの解説

1.Objective Info
 クリア状況を簡易表示する。Objectiveをクリアする毎にマークが自軍の物に変わる。
2.Team Overlay
 Q3同様のチームのStatus表示。各人の状況を詳しく見る事が出来る。これはON/OFF可能。
3.Power Bar
 Special Abilityを使用する時のエネルギーバー。それぞれが一定量のエネルギーを消費するので、回復を待たないと使えないケースも存在する。
5.Compass 
 方向を表すが、仲間からの呼び出し等があった場合の方向表示も兼ねる。
6.Lives
 復活回数に制限がある場合はここに残り回数が表示される
8.Sprint Bar
 Sprintキーを押している間は高速で移動が可能になるが、そのエネルギーバー。当然ここが無くなると補充されるまでは高速で移動出来なくなる。


 RTCWでは特別なRespawn(復活)システムを採用しているので、これを理解することが非常に重要である。ゲーム内ではスタート時点からReinforcements(援軍)タイマーという物が動いており、予め設定された数値(マップ毎に異なり、両陣営でも異なる事有り)からカウントダウンされて0になると再び元の値になるという事を繰返している。ゲームではこの値が0になった時に援軍が到着するという設定で、すなわちこのタイミングでしか復活出来ない。つまり死体から復活するというのでは無くて、死んだプレイヤーは新たな援軍隊員としてそのままで待機状態となり、タイマーが0になった時に[その時点で待機状態だったメンバー全員]が援軍として新たにスタート地点に到着(復活)するというイメージになる。
 よってこの援軍タイマーが30秒の設定だった場合、ちょうどタイマーが残り数秒の所で待機モードに入れればすぐに復活可能だが、リセットされて30秒になったばかりの時に死ぬと最大で30秒待たなければならなくなるという事になる。

 基本的にゲーム中に死んだ時には二つの選択肢がある。一つは死んだ場合に現在のタイマーの値が白字で表示されるので、ここでジャンプキー(普通はspace)を押してLimbo Menuに入るという選択(タイマーが赤字に変化する)。この時にLimboメニューに画面が変わり、死んだ仲間同士でのチャットや状況確認が可能。Score表示させれば現在のチーム状況が見れるので、タイマーが0になるまでに右端のクラス設定を変えてやり、別のクラスや武器を持って復活する事が出来る。後は左下のサブ画面が観戦者モードとなって味方の視点でゲームを見学することになる。他の人に切り替えたい時はESCでLimboを抜けてマウスクリックで変更可能。

 もう一つは死んだ場合にMedicによる治療を待つという手段がある。厳密に言うとHPが0になっても死ぬのでは無くて怪我で倒れるという設定なので、ここでMedicによる治療を受ければその場で復活することが可能なのだ(ヘルスは半分の状態)。ただしGrenade等で体がバラバラになってしまったらこの手段は不可である(強制的に待機モードになる)。
 ここで難しいのは援軍タイマーとの兼ね合いである。Medicに治療をしてもらうのが理想的なのだが、短時間に自分の所に来てくれるのかどうかは確実では無い。もしも援軍タイマーが0になるまで待つとその回に復活することが出来ず、次の援軍到着時まで(更に30秒とか)復活出来なくなる。よって死んだ状態でMedicの到着を待つか、すぐに復活するかという判断が必要となる。
 タイマーが残り少ない場合ならばすぐに復活を選択するのが普通だが、もしもMedicが近くにいるのにやってしまうと損をすることに。基本的に残り数秒まで待って来ないならばLimboへというのがセオリーだが、この場合待った分の時間が無駄になる。しばらく待って切り替えた瞬間にMedicが来るという事もあるので難しい。なおタイマーのタイミングを逸すると,長い時間待った上にスタート地点からと言う最悪のケースとなる可能性もある。

 Respawnする場所に関するルールだが、最初はマップ両端のそれぞれの陣地に現れる(マップによっては複数箇所)。しかしマップによっては旗を立てるポールが存在しており、ここを攻撃側のチームがタイマーが0になった時点で押さえていると(触れて旗を上げるていると)、その時の復活はその地点に行われる。当然移動距離が短くなるのでこれは攻撃側に有利。よってDF側は旗が上げられているならば、再度ポールに触れて旗を降ろして復活地点を元に戻してやり攻撃を遅らせないとならない。
 これに関してはCLASS変更画面にて設定タブが存在し、ここは通常はAutopick(デフォルト)を選択しておけばその時点での最前線に復活出来る。もしも望むならば敢えて後方をマニュアルで選択してやる事も可能。



<GAMEPLAY>

 このゲームの面白さ或いは成功の理由は、アクション性を重視してストレスになる要因を排除し、クラスシステムも非常にシンプルに仕上げたという事にある。普通クラス制を取るゲームならば、凝った構成にして7,8種程度のクラス分けをしたりとかになる事が多い。そうでもしないとわざわざクラス制を取る意味が無いという意味合いである。逆にストレートなFPSのファンからしたらクラス制は面倒という風調がある。全員が同じ能力でもCTFを初めとしたチームゲームは十分に面白いという事で、両者の間には溝があった様に思う(プレイヤー層の違い)。WolfMPはその中間地点に位置するゲームであり、ややもすれば中途半端として両サイドからソッポを向かれかねない所を、絶妙なバランスの上に着地して面白さを発揮していると言える。

 基本的にはスタンダードなアクションの性の高い3DFPSに付加機能としてクラス制を導入したという印象で、開始前の面倒な知識やゲーム上のストレスを軽減するような造りになっている。よって今までのクラス制FPSが好みの人には単純過ぎてそれほど受け入れられないかも。実際の所プレイヤーの大半はクラス制のゲームは普段はやらないという層ではないかと思う。主な単純化の特徴は以下の通り。

*クラスによる移動スピードの変化を排除。移動が遅いというクラスを無くし、重い武器を装備した時のみにハンデを付けている。
*SPRINTという高速ダッシュをスタミナ要素と共に取り入れて、どのクラスでも高速移動を可能にした
*クラス特有の能力発揮時の操作の簡略化
*戦闘能力の一元化。MedicやEngineerでも特別に戦闘能力に劣るという事は無く(弾薬の問題はあるが)技術専門職を無くした
*Power Barによる時間制限にして、多くの特殊能力の発揮回数には制限を設けていない
*所持武器によるクラス分けをせずに単純にSoldierというクラスにまとめ、能力値に変化を付けていない
*復活には時間制限を設けて、それほど一度の死の意味を重く無くしてアクション性を高めている(サーバー側に制限を任せている)


 特に大きいのがサポート専業というクラスを設けなかったという点。戦闘というスタンダードなFPSの根本的な要素を排除していないので誰でも戦えるという点は大きかったと思われる(もちろん個人の好みで徹底してサポートに回っても良いという自由度もある)。それ故展開が非常にスピーディーでアクション性が高く、ごく普通のシューター好きの人間の心も掴んだという所だろう。それでいてクラスの配分や各々の仕事はチームの勝利に大きく関わって来るというバランスであり、クラス制のゲームとしても実によく出来ているという凄さだ。改めて見てみるとどうしてこんな単純なシステムが今まで無かったのか(思い付かなかったのか)という感じなのだが、普通にやったらどっちつかずの詰まらないゲームになってしまう所を絶妙に処理したNerveの凄さに感心させられる。

 もう一つの成功点としてオブジェクト・ベースのゲーム性になっている事が挙げられる。ゲームのシステムはクラス制だがやる事その物は旧来からのCTFというゲームが多い中、WolfMPではマップ毎に異なった目標設定を設けてのゲームとなっている。それほど目標にバリエーションがある訳では無いのだが、これもまたゲームの魅力に一役買っていると言える。
 別にクラス制に限った事では無いのだが、一般的なチーム戦の欠点に途中で勝負がついてしまう事が多々あるという事が挙げられる。例えばCTFで5対0とかにされてしまうとお互いのチームのそこまでの実力から言って逆転は不可能という感じになるケースがあり、こうなると時間切れやポイントリミットでゲームが終了するまでの間のプレイの緊張感が薄れてしまうのは否めない事実。
 ところがこのゲームでは最終的な目標が達成されるか否かで勝敗が決するので、気持ちが途切れる事が無いのだ。序盤に激しく攻め込まれて最後のオブジェクトだけになってしまってもそこから団結して死守する事で守り切って勝てたりするし、攻撃側ならばずっと攻めあぐねていたのが終盤に怒涛の攻めで逆転勝ち出来たりもする。ここでのポイントは、両者の力(作戦)に差があった場合一方的になったりもするが、この場合でも1ゲームその物がそこで終わってしまうという点が大きい。つまり先のCTFの例の様に一方的になった状態でゲームが続くのでは無くて、スパっと負けは負けで終わって次で勝負という風に切り替わるので、ずっと緊張感を持続したままプレイを続ける事が出来るのだ(たまに時間が迫って来て、進行状況から言ってこれはダメだという事はあるが)。
 この「オブジェクトを達成しなければどれだけ有利に進めても負け。つまり逆転される(守り切られる)危機は常にある」「オブジェクトを達成されればそこでその回のゲームは終わりでまた改めて次の勝負」というシステムは非常にうまく機能しているという印象だ。単純なデスマッチやCTFのモードを設けなかったのは実に鋭いと言える。



   次のページ