<GRAPHICS>
このゲームに使われているのはQuake2エンジンを改造したGHOULと呼ばれる新開発のグラフィックスエンジンである。主な特徴としては、近距離から見てもテクスチャがぼけないVertex
Compression、非常に多くの光源を設定してオブジェクト単位でライティングを変化させられるGhoul
Lighting、ポリゴン単位で被弾した時の衝突反応を正確に計算して表示出来る機能が有るが、見た目として大きく目立つのは出てくる人間の顔が多彩な点である。
このエンジンにはMultiple Skin(体や顔のパーツを組み合わせて非常に多彩な人物を作成)、Bolt on Model(基本のモデルに違和感なくメガネやヘルメット等のアタッチメントを付加)という機能が有り、用意された基本モデルにランダムに髪型や目鼻等を変化させて付けて表現している。よって個別に顔を用意するよりも遥かに少ない量のテクスチャデータで、大量の異なった外見の敵を出せるし、ランダムに出現もするので単調にもならない。例えばこれは同じ日本のマップの一シーンなのだが、同じモデルが変化して表示されているのが分かる。それと副次的な作用としてパーツとして人体に装飾が加えられている関係上、サングラスや帽子のみを狙って弾き飛ばす事も可能となっている。
話題となった特徴は当時としては先進的にハードウェアT&Lに対応している事だが、これをONにしてもゲーム中の画質自体には顕著な変化は見られない。唯一持っている武器への光の反射が綺麗になる位だ。これを利用して更に綺麗なグラフィックスを表現するといった方向では無く、フレームレートの向上という点に主眼が置かれている。
SOFのグラフィックスで一番有名な点と言えば、その暴力表現の凄さになるだろう。ある意味それが先走り過ぎて、その事だけだけがやたらと強調されている感も否めない。ロックを掛けたりして制限も出来る暴力関連の設定項目は以下の5項目。
*Damage Skins:撃たれた部分のテクスチャを書き換える
*Death Animation:死ぬ時のアニメーションの有無
*Blood:流血表現の有無
*Dismembered Limbs:手足や頭が吹っ飛ぶ
*Adult Texture:死体等の表現に専用のテクスチャを張り付ける
全部OFFだと相当印象が変化するが、ではONの時の残虐性はそれほど問題にするほどのものなのだろうか? 細かくその残虐性について見ていく事にしよう。まず血が流れたり手足や頭が吹っ飛ぶというのはそれほど残酷ではないし、そのグラフィックス表現も特にリアルでグロいという感じでもない。内臓がはみ出したりという場面もあるのだが、これもそんなに表現的にリアルという事はない。その一方で凄い所はそのアニメーションと物理特性である。
人間の動作のリアルさは相当なレベルで、滑らかさには欠ける部分もあるが動きの自然さに関しては現実風の出来となっている。特に撃たれた場合のリアクションは多彩であり、体全体が26箇所に分けられていてそれぞれの部分について別々の反応が用意されているという細かさだ。武器を撃たれて飛ばされれば手首を振って痛がるし、腕なら悲鳴を上げながら、足なら飛び跳ねながら実に見事なアニメーションを見せてくれる。更に死ぬ時のアニメーションも非常に秀逸であり、倒れ方とかは実にリアル。のたうちまわりながら悲鳴を上げたり、断末魔の声を出してしばらく起き上がろうとした後にガックリと力尽きたり。また炎で焼かれた時の暴れ方はKingpinよりもリアルかも知れない。なお付け加えると撃たれた際の叫び声もかなり凄い。
更にこれを輪をかけるのが人体の物理特性、すなわち”人間もしょせんは一つの物体”に過ぎない事を認識させてくれる物理計算モデルである。武器の弾丸にはその弾速や発射距離に応じて運動量があり、それに応じて撃たれた人間の体は反応をするようになっている。至近距離でShotgunを撃たれれば、その多数の弾の力により人間は吹っ飛ばされる(これがまたリアルに飛ばされる)。弾速が速く重量のある弾丸が体に当たると、体が後に押し戻される所が再現されているばかりか、手や頭等であればその部分だけがぶっ飛んだりという所まで細かく計算されている。手榴弾等での人体の吹っ飛ばされ方も非常にリアルに仕上がっているし、また死体を撃つと体が小さく跳ね上がったり、流れ弾が当たった時に手足がピクピクと痙攣するのも凄い。
中でもこれは!と思ったのは”Death Dance”。 軽量級のマシンガンで人体を撃つと、体が前に倒れようとする力と弾丸が押す力が釣り合って倒れなくなる。しかもこのマシンガンの弾が結構散ばるために、死体になった状態で体中から血を吹きながら手や体をくねくねと動かして(弾に跳ね上げられて)ダンスを踊っているようになるのだ。
結論としてはSOFの残虐表現はかなりのハイレベルと言えると思う。ただそんなに目くじら立てて批判される程の物でもないと私は感じるのだが。しかしこれは普段FPSをやる者にしか適用されない感想かもしれない。コンシューマーしかやらない友人何人かに見せて反応を見たが、こんな物が普通に店で買えるというのは問題があると言うか、ヤバいんではないかという反応だった。確かにこれが「正義の為に世界平和を脅かすテロリストを排除する」というテーマのゲームで無かったらもっと問題になっていたかもしれない。
キャラクタのアニメーションは撃たれた時の表現を含めて良く出来ており、このジャンルでもトップクラスであるのは間違いない。武器を弾き飛ばされた時には怯えながら手を上げて降参したりするし、足を引き摺って歩く姿も非常に秀逸である。よく見ると瞬きまでちゃんとしている。影の表現もリアルな描画で良いのだが、それに反して鏡面効果等は使われていない。お馴染みのEnvironment
mappingについても上手く使われているとは言えないと思う。
テクスチャについても多彩な物が用意されており、撃たれた場所に応じてリアルタイムでテクスチャが書き換えられる。死体用に用意されているテクスチャの数も非常に多い。けれどもややシャープさに欠ける印象があるのと、
最後のドイツ以外は色使いが比較的地味な感じかも。なお対応ビデオカードにて対応したドライバを入れると圧縮テクスチャ画像が選択出来るようになる。GeforceのDetonatorでいうと5バージョン以降の物であればOKのはず。グラフィックスオプションにてDXTC,S3TCが選択肢に出るようになり、全面的に使用されている訳ではないがかなり印象は変わる感じだ。
グラフィックス全体という点では合格点はあげられるものの、特別綺麗・凄いという感じではない。バイオレンス系の描画は高く評価出来る点だが、一般的なグラフィックス面での美しさでは同時期発売のゲームに対して抜きん出て目立つという様にはなっていない。欠点としてはかなり重い事。Geforce系を使っている限りはそれほど問題を感じないが、Forum等での発言を見る限りでは相当な重さのようでビデオカードが古い人には問題がありそうだ。