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SYSTEM
 前作に比較するとリアル寄りの設定になっているが、リアルさを組み込んだミリタリー系アクションFPSであれば普通は組み込まれている設定が導入されていなかったりとちょっと変ったシステムを採用している(正確に言うならこの後FPS界はもっとリアルさを追及するような方向にシフトした為で、この作品はアクションからセミリアル系への過渡期の物となる)。

*連射すると照準が開き、同時に銃身自体も跳ね上がる
*走って移動しても照準は開かない
*Crouch, Proneが可能。ただしProneでは銃は撃てない。
*座って撃っても照準の開きは小さくならない
*Lean可能でそのまま撃てる
*フルオート・バースト・シングルの発射モード切替が可能(武器による)
*回復はHealth/Armorで行う

 注意点としてしゃがみジャンプ動作が有り(ジャンプした瞬間にしゃがんで足を縮めて高い所に乗る動作)、これをジャンプ時に自動的に行うようにする設定も可能。これが出来る事を知らないと(チュートリアルで学べる)、ゲームの某所で詰まる可能性がある。

難易度
 プリセットの4種類に加えてCustomから好みの難易度を製作する事も可能。セーブ可能回数・武器やアイテムの所持数制限・武器の命中精度のON/OFF(連射した際に照準が開く要素を使用するかどうか)が加わっている。難易度はゲーム中に変更は出来ない。

武器の所持数制限
 この機能も継承されているが、占めるのは1か2スロットとなり簡素化された。所持可能な武器数は難易度によって変化するが、難易度によってどういう風に変化するのか詳細は未検証。未知のミッションの前に推奨装備の確認は出来るし、ミッション中に武器を落として交換する事は可能である。

セーブ・ロード
 今回も難易度によってミッション中のセーブ可能数は変化する。Quicksaveも可能だがこれも数にカウントされる。なお前作では難易度Normalにてデフォルトのセーブ回数(5回)でバランス的に問題は無かったが、このSOF2に関しては難易度Customを選択してセーブ回数を”無制限”にしてから開始する事をお勧めする(途中では直せない)。
 セーブデータはSS付きで保存可能で、Auto&QuickSaveは8つまで履歴を取って置いてくれる。マップが切り替わる地点に来るとそれを知らせてくれる機能も親切。

GAMEPLAY
 最初は褒められる要素から。SOF2はFPSゲームの各構成要素においてはいずれも標準以上のレベルをキープしており(全て当時においての比較になるが)、グラフィックス良し、サウンド良し、AIも全般的に出来が良いといった感じで、実際にゲーム自体の出来も良い。革新的な要素を取入れている訳ではないが、それは別に面白いゲームに必要とされる要素ではない。
  そしてこのゲームの最も優れている点は、”撃つ”という事と”敵を倒す”というFPSゲームにおけるコアの部分の表現力が非常に良く出来ている事である。武器のサウンドが優秀な為に迫力があって”実際に撃っている”という発射感覚が優れているし、敵に攻撃が当たっているという表現も多彩なアニメーションによって優れた出来である。売りとしているバイオレンス(残虐表現)のクオリティも前作から数段階レベルアップしている。

 ただし”問題”というよりは”残念”な点が存在しており、それ故個人的には「傑作」というまでには至らなかったゲームである。では何が問題なのかというと、単体では優れた各要素の組み合わせ方に不味い面が有って、ゲームとしてはバランスが取れていないという点になる。言い換えると、本来であればもっと面白くなったはずのゲームが、バランス調整の失敗によってそのポテンシャルを発揮出来ないでいるという意味になる。

 SOF2はその開発段階から、よりリアリスティックな路線への変更を仄めかしていた。これは予想出来た流れで、元々「ミリタリー専門誌Soldier of Fortuneとの提携」、「ベトナム戦争に特殊部隊として従軍したJohn Mullins氏をアドバイザーに迎える」といったシリーズのプロジェクト開始の時点から、本来ならSOF1(2000)がそうなるはずだったと言うかそう予想されていたゲームであり、逆に1は当初そのシューティングゲーム寄りのスタンスを意外に受け取られた位である。しかし今回は”武器のモデリングや使い勝手のリアリティのUP”、”リアル系ゲーム寄りのダメージ量”、”ステルスの重要性を盛り込む”といった要素が早くから明らかにされており、リアル系シューティングへの修正が図られるというスタンスになっていた。この頃のあるインタビューでは「前作のアクション性へのファンも多いと思うが、その辺のサポートは考えていないのか?」という問いに対して、「それは当然我々にも分かっており、敵をなぎ倒していく爽快感も味わえるようにする事を考えている」という返答をしている。私はこれをArcadeとSimulationモード、或いは難易度変更によって好みに調整して遊べるシステムにするのだと考えていた(1のシステムがそうだったので)。しかし実際の製品はそうなっておらず、それがこのゲームの問題点となっている。

 最も普通と思われる難易度Normal(Gun for Hire)でのプレイについて。ベースはリアル路線という事にされてSOF1に比べると大きな変化が見られる。

*敵からの被弾ダメージが大きくなっており、特に手榴弾は高い威力を持つ
*回復用のHealthやArmorが多い訳ではなく、正面からまともに撃ち合うには厳しいバランスとなっている
*連射すると照準が開くと同時に武器自体が跳ね上がるようになり、特にフルオートでは命中率が大きく落ちる仕様
*敵の感知能力や射撃精度が上がっており、よりステルスでの先制攻撃が重要となっている


 こういった要素はSOF1のアクション面のファンには不満かもしれないが、これはこれで一つのゲームとしては悪い事ではない。問題はそこではなくて、これらに追加して以下の要素が存在する点にある。

*異様に大量に敵が登場する
*スクリプトとして(ある個所を過ぎたりすると)敵が背後等に発生したりする


 この2点はそのゲームが普通のアクションFPSであれば別に問題は無い。しかしリアル系バランスのゲームに導入してしまうとおかしな事になる。まずゲームのデザイン意図として「プレイヤーにリアルな戦闘感覚を味あわせたい」と考えているなら、これだけ多くの数の敵はそれを台無しにしている。リアリティとして許容出来る範囲の数であれば良いのだが、「現実だったらこれだけの数の敵を相手にするなんて無理」というレベルの数が出てくるので、雰囲気としては”リアル”ではなく”ゲーム”という感覚が強くなってしまっている。またある地点を過ぎると閉まっていた扉等から敵が後方に出てくるという要素もいただけない。特に何も無いはずの空間にまで敵が発生するのはリアルを謳うならば問題有り。
 結果的にこれらを強引に組み合わせてしまった為に、意図していたリアリティが損なわれているのは勿論、難易度の高いゲームとなってしまっているのが大きな問題となる。SOF1同様に5回までしかセーブが許されていないのだが、適度に緊張感を持たせてバランスも取れていた前作に比べると、この回数では厳しいと言わざるを得ない。ダメージが厳しい上に敵の数も多い為に遥かに死に易くなっており、気軽にセーブしながら進む訳にも行かないとなるとやり直しで同じ個所を何回もやらないとならない羽目になる。クリアしたはずの後方から敵がいきなり登場するというのも厳しい。AIについても出来自体は良い方なのだが、このダメージバランスだとむしろ不快に感じるレベルの能力を持っているという印象で、バランスが上手く取れていない。

 つまりリアル系のゲームとして見るなら敵が多過ぎる故に難しくなっているという事で、そういうゲームにするのであれば敵の数はこの半分以下で良かった。また敵をクリアしたはずのエリアにスクリプトで発生させて不意討ちを狙うというのも最小限にすべき。そうすればAIはそれなりに優秀なのだから戦闘が緊張感を持った濃い物となってバランスが取れただろうし、ステルス面も面白い物となったであろう。
 逆にアクション系FPSとして見た場合だと、大量の敵を多彩な武器で倒して行くという面は確かに味わえる。また前作で最大の弱点と言われたAIは改善されており、戦い甲斐のある敵に進化している。しかし被弾ダメージが大きくなっている上に武器は連射すると激しくブレて当らないようになっており、「敵の前に出て行って面と向かって撃ち合える」と言うには厳しい箇所が多過ぎるゲームである。確かにSOF1でもスナイパーライフルで遠距離から敵を倒して行くのが基本のゲームだったが、適度に何人もの敵との正面切っての撃ち合いが出来る個所を取り入れて爽快感とのバランスを上手く取っていた。しかし2では例えばフルアーマーの状態でもShotgunを食らうと相当のダメージが加わるようになっており、1では爽快感の有った近距離からShotgunで敵をなぎ倒していくというのは難しくなっている。マシンガン系もフルオートでの散らばりが激しいので、シングルにして一発ずつ慎重に撃ちながら倒すという方法が必要になる。そして1ではHealthとArmorがフル近くならば多数の敵の目の前に出て行ってもそこそこ戦えたが、2では敵が少なくないと同じフルの状態でもキツいバランスである。よって生き延びるには徹底して障害物に隠れてLeanで撃ち合って倒すか、上手く誘き出して一人ずつ倒すという方法になりがちで、全体的にスピード感に欠けたスローペースなゲーム性となっており、爽快感が大きく減少した物となってしまっている。

 総合的に、リアリティを取るならその方向性を突き詰めてバランスを調整し、シューティング路線で行くならそれなりのダメージ調整をしてもらいたかった。残念ながらどういうゲームを作りたかったのかが今一つ不鮮明なデザインである。一応今回もカスタマイズ可能な柔軟な難易度設定が有るので或る程度はこれで調整は出来るが、ゲームの途中で難易度の変更は出来ない点を考えるとDefaultでちゃんとしていないのは大きなマイナス点だ。
 発売後数ヶ月してから掲載されたリードデザイナーの回想には興味深い事が書かれている。それは当初SOF2のシングルプレイはこういうゲームにするつもりではなかったという話だ。当初の案ではリアルな武器バランスに沿ってステルスを重視したゲームとし、プレイヤーの選択によって戦闘で行くかステルスで行くかを多くのマップにて自由に選べるようにするというデザインだったそうだ。しかし相当開発が進んでから、このマルチルートの手法はAIとの兼ね合いで無理という事になり(気が付くのが遅過ぎたとある)、ゲーム性が今の様に変更されたという事らしい。これはステルスを可能にするにはAIの認知能力を下げねばならず、そうすると戦闘中心で進めるプレイヤーからは敵の反応が遅くて格好の標的となってしまうという問題が出て来てしまうという意味だろう。それ故今の様なステルス性の薄いゲームになったという事である。

戦闘・AI
 戦闘はとにかく障害物に隠れてLeanの状態から撃って倒すというスタイルで、敵の前に体を曝さないようにするのが基本。その分ストレートに撃ち合える機会が減るので爽快感はかなり減少している。しかし先に書いた武器のサウンドの迫力や命中時の敵のリアクション、Goreの表現度のUPでその辺については面白さは補われているという感はある。

 武器の種類は増えており、両手持ちが可能なMicro UZIやAutomatic Shotgun等面白い物が加わっている。一方で今回ロケットランチャーや火炎放射器が無くなってしまったのは痛い。グレネードランチャーとM4に装着されたM203グレネード弾がかなり手に入るので、これを使って敵を吹き飛ばすという要素は加わっているが、ヘリとの戦闘でのロケットランチャー使用や敵を燃やせる火炎放射器が無くなった穴は大きい(RPG7がRMGでは使えるのだが、これがシングルプレイで手に入るのかは未確認)。またリアルさ追求で若干のラグが生じる武器等が有って、例えばGrenade系は少々使い難い武器となっている。特に新型兵器として投入されているOICWは(実物はこうなのかも知れないが)非常に面倒な使い勝手で、どう使うのか分からないという質問がForumには相当出ていた(これの入手場面で訓練をクリアしないとならない)。Grenade Launcherとしても使えるのだが、その複雑な使用方法を覚えても使い所は少ない(撃つまでに時間が掛かり過ぎる)。

 味方との共同戦闘要素は期待していたのだが、これはスクリプト性が高過ぎて楽しめなかった。無敵モードなのか味方が死なないので、大抵の個所は彼らに任せておけば良いという感じで面白味が無い。

 AIは前作からは相当改善されており、チームを組んで攻めて来るようにもなった。単純にこちらにやって来るのではなく、障害物から次の場所へと体勢を低くして移動したりとか納得出来る動きを見せてくれる。周囲の遮蔽物も使える能力を持っており、棒立ちになるケースも減っている。また手を撃たれると武器を落とすのだが、この時他の仲間が落とした物を拾って再度攻撃して来たりもするし、こちらが投げたGrenadeを投げ返すという能力まで持っている。リロードを平然と目の前で行う・障害物の無い箇所でLeanしたりする・近くで銃撃戦なのに反応しないといった問題が時々見受けられるが許容範囲だろう。
 他にはAIはグラフィックス的なデコレーションを透過して見る事が出来るようになっているので、言わばグラフィックス設定を最低にした状態での視界を基準に周囲を認知している。よって設定をMaxにした状態だとプレイヤーだけが見えなくて相手からは見えているというケースが発生してしまい、ロケーションによってはかなりの問題となってしまう(例えば霧やジャングル)。

 戦闘とAIにおける大きな問題点はGrenadeである。まずGrenadeの威力がとにかく高過ぎる。効果の半径も広く、火炎型GrenadeだとHPがMaxでも即死級のダメージ。よってGrenadeが来たら逃げないとならないという事自体は緊張感を与えてくれて面白い要素なのだが、そこに問題点が潜んでいる。ただ単に投げられたなら目視で追えるので問題は無い。しかし戦闘中だとなまじ武器の音に迫力があってマズルフラッシュ等のエフェクトも派手な為に、投げられたのかやそれがどこに飛んで来たのかが相当分かりにくいのである。通常時も逃げ場が横や背後に有るなら良いが、無い場合には敵の方へと突っ込んで行かないとならなくなるので危険となる。しかも取り合えず今の場所を動いてもGrenadeがかなり跳ねる仕様なので、その着地点に逆に行ってしまうというケースも出て来る。
 更に厄介なのがAIがGrenadeを乱発するようになっていること。更に敵の数が多いので、正面以外からだと投げられたのに気が付かない場合も有るので厄介。それとそれほど正確にはGrenadeを投げられない上に(近くにある障害物に当ててしまって自爆したりする)自分の投げた物からは逃げないので、倒した敵の近くに駆け寄ったらそいつ自身が投げたGrenadeが足元に転がっていてそれで自分も一緒に吹っ飛んでしまうという事も起きる(Goreが凄いので地面がハッキリ確認出来ない)。Grenadeの威力が1/3から1/4程度であれば適度な緊張感によりゲームとして面白くなったと思うのだが、実際の所はストレスでしかないという印象だ。

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