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問  題  点
 ここまで触れていなかったその他の問題点について。

 ストーリーが意味不明。ストーリーに関する情報としては、ゲーム内のムービーと時折マップのローディング時に表示される情報が主になるのだが、それを見ても細部に関してどういう話なのかがスッキリしない。印象としては今後の続編を含めた大枠の背景設定の中の一部のみを明かしただけという感じで、主人公の位置付けを含めて謎を残したまま終わってしまう。公式掲示板等でも訳が分からないという人が集まって自論を述べていたが、個人的にはシックリ来る解説は無かった。最後のムービーの中で一番最後に起きる出来事はどういう意味なのかも不明。

 同じくストーリー関連として、ゲームの流れが散漫でマップ構成に問題を感じる。一応ロケーションはバラエティに富んでいるが、どういうストーリーの流れで今ここに居るのかがあまり伝わって来ないので、しっかりしたストーリーに乗っかってプレイしているという感覚が希薄である。別々に作り上げた各ロケーションを、無理やり繋げて一つの話にしたという印象を受ける。今回レビューを書くに当たってプレイした時のSSをバラバラにして眺めて見ても、どういう順番でそれぞれの場所をクリアして行ったのかが印象が薄くて思い出せない。


 バイクを運転するシーンが何箇所が出て来るのだが、これがかなり操作し辛い。相当スピードが出るし、またスピードを出す必要がある場所も多いのだが、ハンドルの切り角がデジタル処理的に急ハンドルとなるので”ガツン”という感じで急に曲がってしまう。そして障害物に当たるとそのまま突然スピードがゼロになって止まってしまう為に運転が困難でストレスが溜まる。


 制作側が初回プレイ時は即死の危険性が高いと想定している箇所の前ではちゃんとオートセーブされる。しかしそれ以外の場所ではセーブの間隔が長かったり短かったりとバラバラで、死んでしまうとかなり前まで戻されてしまう事もある。セーブが行われた時の表示が小さくしか出ないので、何時セーブが行われたのかが分かり難いのも不親切。クイックセーブは可能だが、その全てのセーブを保持してしまうので、頻繁にやっていると今度はロード画面からお目当ての物を探すのが面倒になる。

 またムービーが再生される場合にそれを飛ばせない場合もあって、死に易い地点の前でセーブされた箇所から進むとムービーが挿入される場合、復活する度に何回もそれを見ないとならなくなる。


 このゲームではズーム操作と2ndアタックが両方含まれており、多ボタンのマウスでないと操作がやりにくいかも知れない。近年はMB2にズーム(アイアンサイト)を割り振るFPSが多いが、そうすると2nd Attackを別のキーかボタンに割り振らないとならなくなる。逆に2nd AttackをMB2に割り振れば、別のボタンかキーをズームにしないとならない。MB4,5といったボタンが付いているならそれに設定すれば良いのだが、MB3までしか用意されていないマウスでMB3にリロードを割り振る人だとやり難くなるだろう。



GRAPHICS
 エンジンは自社製のSaber 3D Engineを使用。旧Atari版からレンダリング・エンジンは全面的に変更され、キャラクタのポリゴン数は2,500前後から5百万レベルに(ベース・モデルでの数で、これをNormal Mappingを使って低ポリゴンに変換している)。アニメーションも手書きからモーション・キャプチャーを使用した物へと改められている。


 この作り直されたバージョンで目に付くのはやはりモデリングの作り込み精度。周囲の建物や各種オブジェクト等のリアリティが大幅に増している。ゲーム内世界をリアルに見える様に作り込むのは「その世界に実際にプレイヤーが存在している」という感覚を増す意味で非常に重要だが、これは実際のゲームプレイにはほとんど影響しない。(周囲の建物がどれだけな複雑な3Dモデルでも、ただの直方体に絵を描いただけの物であっても、要は背景に過ぎないのでプレイ中の撃ち合いにはあまり関係が無い)。そしてこのパートは非常に手間(コスト)が掛かるので、どうしても低予算のゲームではおざなりにされてしまいがちである。

 しかしTSではSierraからかなりの予算の援護があったのかモデリングのレベルは高く、一般的なロシア産のFPSでの粗いモデリングというイメージは払拭されている。アウトドアを含めてマップの作り込みは細かいと感じさせられるし、また全てでは無いようだがオブジェクトにはNormal Mappingが導入されており、ゴツゴツしたレンガの感じなどは良く出来ている。

 キャラクタにはNormal Mappingが施されており、近年のトップレベルに比べると劣るがやはり質は大きく向上している。アニメーションとしては戦闘中に撃たれた際のリアクション等は良好だが、普通に行動している時の味方の動きなどを見るとちょっと固い感も受ける。近年流行の表情の複雑なアニメーションが導入されていないのもリアリティを欠いている原因か。


 エフェクト系では石畳に跳ねる雨の描写はなかなか印象的であり、動作するオブジェクトに応じてリアルタイムで投影される影も良く出来ていると思う。Soft Shadowとしてボヤけた感じもちゃんと出ている。爆発で派手に吹き飛ぶ破片や煙の描写や、炎による大気の揺れ、振動による画面のブレも導入されている。だが肝心の時間操作時の3種類のエフェクトはあまり印象的ではない。色が変るのと周囲がボヤける感じになるのだが、もうちょっと格好良く作ってもらいたかった。

 Blood&Goreのレベルはかなり高い部類。やはりFPSでは派手に血が飛んで体がバラバラにならないと、と考えている人でも満足が行くレベルだろう。(苦手な方はカットも可能)。


 パフォーマンスとしても優秀で、私の環境(E6850, 2GB, 8800GTS 640MB)では各種設定を最高にしてもfpsの急激な低下や変動の問題は見られなかった。なお設定は相当細かい項目に分かれているが、アンチエイリアスは含まれていない。しかし実際の見た目としてはあまりジャギーが目立たない様にはなっており、自動的に何等かの処理が行われているのかも知れない(例えばGRAWのFSAA処理の様な物)。

 解像度は2048 x 1536まででワイド画面対応。ゲーム側の望むブライトネスとコントラストを正確に調整出来るようになっている点にも好感が持てる。

SOUND
 EAX Advanced HDに対応しておりX-Fiの使用を推奨している。5.1CH Musicという設定を持っているが、OFFでもサウンド自体はちゃんと3Dで定位するようになっている。

 武器の銃声そのものは質が良い物が多いと思う。しかし周囲の環境音等があまり無いという印象で、音数的には寂しい感じを受ける箇所も多かった。BGMもテーマ曲以外はあまり印象には残っていない。

 時間操作時にはそれに応じた効果音が流れるが、Slowの時は武器の速度が変化しないので銃声には変化が無い。Stopした時にこもった様なエフェクトが掛かる程度。特殊効果音としては普通の出来である。

 字幕機能はあり。ゲーム内の会話量は少ない方。

 トラブルとしては数回セリフの音が聞こえなくなる事が有った程度。


MULTIPLAYER
 マルチプレイの最大の特徴は、シングルプレイ同様に時間操作の要素が加わっている点になる。しかし個々のプレイヤーが時間を止めたりしていてはゲームにならないので、Chrono Grenadesという要素を導入している。時間操作のキーを押すと代わりにそれに応じた三種類のChrono Grenadesが投げられて、一定範囲内の空間を短時間だけ時間操作の影響下に置く事が可能になる。

 例えば敵の攻撃を目の前に投げたSlowで遅くしてしまいシールドとして使う。また敵をStopの中に入れてしまってから周囲を動きながら内部に様々な方向から攻撃し、時間が動き出した瞬間に全ての弾が敵に向って飛ぶといった攻撃方法も可能。CTFでは旗を持った敵の速度を遅くするようなブロックとしても使える。時間エネルギーの補給はリチャージ以外に補給アイテムが置いてある。

 人数は最大で16人までが参加可能。DM, TDM, CTF, 1on1の他に、Meltdown Madnessと呼ばれる敵の陣地のマシンをChrono Grenadeで停止させるというモードと、King of Timeという特殊なアイテムを奪い合って長時間保持するのが目的のモードが用意されている。サーバー側でルール変更が可能なオプションも豊富であり、移動速度・ダメージ量・低重力・使用武器制限といった項目を自由に設定出来る。botはサポートされていない。


 だが結果としては人気を得る事は出来なかったようで、今回(2008/03)試してみた限りでは既にサーバー数も人数も少ない。多い時でも20人程度しかプレイヤーは居ないようだ。将来的に同じSierraのF.E.A.R.の様に無料配布でもしないと巻き返しは不可能と思われる。

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