SPATIAL FEAR
04/01/12
公式サイト
SCREENSHOT
ヒントの頁
以下のレビューはV1.0での物なのでヒントを含めて相違点がかなり有ると思われる。
<概要>
UTエンジンを使用して作成されたシングルプレイ専用のTotal Conversion Mod。オリジナルUnrealのストーリーとは関連性が無く、武器やモンスター、TextureやMusic等はほとんどがオリジナル作成による物(単に作るのにUTのエンジンを使用しただけというレベル)。そのSystem Shock 2を思わせる雰囲気や美麗なグラフィックから、以前よりシングルプレイのファンからの注目度が高かった作品である。事前に予告されていたリリース日には間に合わなかったものの、無事に年内にリリースされる事となった。製作はLiquid Elementでプロジェクトは全体で12人とかなり大規模、作成には1年以上掛かっている。
なおこれはストーリーの冒頭部分でサブタイトルとしてPrologue(プロローグ)が付けられており、これだけでは話は完結していない。以後続編が作成される予定となっている(この続編は2k3エンジン使用)。
<INSTALL>
03/12/19にV1.2がリリースされた。これはバグ修正以外にゲームの内容自体を変更しており、モンスターの登場個所からNPCの数まで変更されている。UTのV436以上が必要でBonus
Packに関しては言及が無い。Unrealには未対応。
ゲームはINFやSFの様な専用exeによる起動方式(Oldskoolは使用していない)。Modはumodではなく独自の物を使い(97MB)、これによってUTのフォルダに専用のフォルダが作成されてその中にファイルが収められる。ただしSystem系ファイルの幾つかはUTのSystemフォルダに入る。なお私の場合最初に「iniファイルのBackupを作成します」といったメッセージが出たが、これは単にこのゲームの設定ファイルのDefaultをBackupフォルダに保存するだけの事のようである。後はショートカットから起動してやり、UT同様に各種設定をしてやるだけ。
ただ問題として私の様に大量のModをインストールしている場合、UTのバグとして一定以上のキーバインドが表示されないという点があって、それ故このゲーム用のキーがメニューに出て来なかった。この場合はUTのSystemにあるSFのiniを開いてマニュアルで特殊なキーは設定してやらないとならない。この時SFのフォルダのBackupに作成されたDefaultも参考にすると良いだろう。
<STORY>
主人公は女性科学者のJael。時は遥かなる未来、人類はWormholeを利用した次元ワープ航法を開発して宇宙に進出しており、彼女の役割はそのワープの為に人口のWormholeを作り出す装置の制御である。或る日Cold
Sleep装置から目を覚ました彼女は、宇宙船内部が破壊されており何等かの只ならぬ出来事が起こったのを知る。彼女は事態の究明と共に自らの脱出を賭けて船内を一人探索する事となった。
<GRAPHIC>
ゲームをプレイして最初に目に付くのは何と言ってもそのグラフィックである。独自作成しているという多くのTexture関連のクオリティは非常に高い。元々UTのリリースから時間が経っているという事も有って、マシンパワーを考慮してある程度ハイクオリティの物が使用されている印象であり、表面がボケた感じも無くシャープなイメージがある。武器系のデザインや作り込みの細かさもかなりの物だし、エフェクトも独自の物が幾つか用意されている。
どうしてもテーマから連想してしまうのはSystem Shock 2になるが、やはり年代的に言ってグラフィックはそれよりも全体的に綺麗であると言えるだろう。暗い場所も多いのだが、その辺の不気味さの表現も秀逸である。ただ人間のモデルはもう少し力を入れて欲しかったと思う。
フルサイズ 1 2 3 4
<SOUND>
BGMの種類も10種類以上と豊富であり、全てオリジナルでUnrealやUTの物は使用されていない。クオリティも高くゲームのテーマに合った不気味な感じの物が多くなっている。効果音関連はある程度オリジナルの物を借用したりしており、こちらは特に言及すべき点は無い。
<GAMEPLAY>
まずは良い点から述べると、一番はやはりその雰囲気だろう。Unrealの設定を活かした大作というのは他にも存在するが、これだけ全部自前で用意してこのクオリティの物を作ってしまうというのは凄い。基本的に「SF世界での恐怖をメインに据えたサバイバル物」というコンセプトだが、その雰囲気を出す為のグラフィックとサウンドのクオリティも非常に高いレベルと言える。またプロローグとは言えMap数は10個以上、プレイ時間も初回だと5時間以上は掛かるのでは無いかと思える分量であり遊びがいも十分にある。長さ等を考慮せずに雰囲気だけならUTエンジンで作成した製品版としても通用するレベルである。
しかし逆に悪い点も有る。まず根本的な問題としてI/Fに大きな問題を抱えており、これはこのゲームにおける最大のガンと言って間違い無い。SFではドアを開けたりするのにUseキーを使うというシステムを採用しているのだが、このUseのトリガーが無茶苦茶である。扉やアイテムといった反応する物の前に立つとアイコンが出るのだが、その出る位置が場所によって完全にマチマチであり、その度に離れたり近付いたりして出る位置を合わせないとならない。しかも出ているのに反応してくれない個所や、逆に出ていないのに反応する個所も存在する。なお悪い事にゲーム中の大部分をこのUseキーによる操作で進んで行く仕様の為、クリアまでにはそれこそ何百回とこの操作をしなければならず、余計にお粗末さが目立ってしまう事に。
次にあまりにも謎解き要素にこだわり過ぎという欠点もある。ゲーム性から言って戦闘よりも探索を重視というコンセプトは分かるのだが、それにしてはあまりにも探索の方の時間が長過ぎる印象。それとこの場合謎解きそのものが面白ければ気にならないのだが、基本的に多くが単なるアイテム探しに終始してしまう。「Aを開けるという目的が有って、その為にはまずBに入る必要があるようだ。そのBを開く為にはカードCが必要なのでそれを探さないとならないが、その為にはDに入らないとならない.....」といった入れ子式の旧来からのBlueやRed Key探しのタイプ。探索面に力を入れるならば、もっとバラエティに富んで解いていて面白い物を多く収録する努力をすべきだろう。
また謎が無駄に分かりにくいという感も強い。何をするのかの目的は会話等で分かるのだが、その為には何をすべきなのかが漠然としているのでそこら中をうろつき回るしか無いといったケースが多いのだ。難しい謎でも答えが分かった時に「なるほど!」と感心させられるような物ならばそれは面白いゲームだが、このゲームは残念ながら「そんな事なの.....(・・;)」といった物が多くなっている。とにかくクリアの為に行ったり来たりを相当な距離繰り返し、更に上記の様にその移動がUseキーの問題からよりストレスとなるといった風になってしまっているのだ。
それでもやはりゲームとしては面白いと言える。モンスターは全般的に良く出来ていると思うし(同士打ちしてしまうのはともかく)、武器も暗視ゴーグル付とか衝撃波発生とかユニークな物があって面白い。それに無重力のMapとか、途中に挿入される最初は「何が起きたのか!?」と意表を突かれるMap等、アイディアも豊富である。ただ個人的には事前の期待が大き過ぎたという面もあるのか、細かな面で気になる点が他にも結構有った。
まずSF的な光線型武器中心なのでUnrealのような使い分けの面白さに欠ける。それと武器の強さが分かりにくく、どれが効果的なのかが最後までハッキリしなかった。例えば最初の方で手に入るElectric
Projectorはそれほど強い武器では無いように書いて有るのだが、これは使って見ると全体でも強力な部類に感じるし、Hard
Wave Rifleも見た目とは裏腹に全然効果が無いように思えたり。アイテム系もLaserSightとか使っても効果が無かったり?、その他も効果が分かりにくい物が多い。モンスターも確かに逃げたりとかもするのだが、それほど賢いという感じでは無く手応えがあまり無い。そうかと思うと無茶苦茶に強い奴がいたりとアンバランス。それとテーマ的にもう少しグロテスク系の物がいても良かったのでは無いかと感じる。
最後にマルチパスという話だったのだが、特に分岐は見受けられなかったような.....。解決方法が複数有るとかも無いようで、この点もちょっと期待外れという感じだ。
<INTERFACE>
独自のHUDというオリジナリティは認めるが、反って分かりにくいというのはどうだろうか? 最初左下が何を意味しているのかよく分からなかった位だ。アイテムのアイコンも小さくて見難いし、メッセージ系を途中で止められない上に再度同じ物を拾ってしまうのも問題。後でログとして見られるのは良い点だが。それでも会話時には独自のログWindowが開いたりとか、外部視点に切り替わったりとかの独自性は評価したい所。
後はVoiceキーを押してしまうとポインタが出てしまう点や、Useキーで箱が持って動かせる点についてTrainingで言及されていないというのは修正してもらいたいと思う。それとFlashlightはワンキーでOn/Off出来るようにしてもらいたい(なんかキーが有るような記述がiniにあるのだが有効にならず)。ゲーム中カード類が小さくて見落とす危険性が有るのも問題か。総合的にI/F関連はUseの問題も含めて平均以下の出来と言わざるを得ないだろう。
<総論>
総合的なクオリティは高いので、時間が有ればプレイする価値は十分に有ると言える。これも無料というには凄いという類のModと言えるだろう。戦闘重視と言う人にはそれほどお勧め出来ないが(難易度選択も無いので)、面白いシングルプレイを探している人には十分な価値のある作品だろう。プレイ時間もノーヒントでやるならば相当掛かると思うので、存分に楽しめるはずである。
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