<戦闘>
戦闘に関して一般的なFPSに比較して難しい点を幾つか先に挙げておく。
まずこのゲームでは基本の構えというのが存在しない。普通のFPSでは取りあえず急に敵と遭遇してもこれを持っておけばという武器が有るものだが、このゲームにはそれが無い。敢えて言うならば敵をはじき飛ばして時間稼ぎのできるStoneと謎解き用のScryeになるが、敵のタイプによって適した効果的な武器と魔法が異なるので、出現してからそれ等を素早く選択するという形になってしまう。しかしながら敵が突然出現するというパターンが多く、尚且つすぐにこちらに接近(攻撃)して来るので、もたもたしていると構える前に第一撃を先に食らってしまうのである。また構えれば良いと言っても、敵のタイプだけではなく戦術的にここはどう行くのがベストなのかをHPの値等によって変えなければならないともなっている。
直接的な(肉体的な接触)攻撃を受けると、仰け反ったり屈み込んだりで視点が強制的に別方向へランダムに飛んでしまう、というのが厄介な点である。よって攻撃を受ける度に敵にマウスで照準を合わせ直さないとならなくなる。しかしこれがやってみると結構難しく(自分が本当に攻撃を受けているとしたら足を基準にしてどっちに視点が行っているのかすぐ分かるが、これはゲームなのでそれが分かり難い)、最初はかなり苦労させられる事になるはずだ。特に壁等に追い詰められるか集団に囲まれると、打たれて飛んだ視点を合わせる前に再度攻撃されてまた別方向へ飛ばされるの繰り返しでハメ技状態になって一気に死んでしまうこともままある。
敵の攻撃が強力で且つ変則的なタイプが多い。序盤の敵でも結構なダメージが入るようになっており、連続で食らうと一気に危なくなる。更に敵は何も無い所から突然沸いて出てくるというパターンが多く不意打ちも多い。また空間をダイナミックに移動して来る物が多く、その攻撃を避ける為には相当な距離を高速であっちこっちへと移動しないとならなくなっている。左右へのステップだけでは対応し切れないケースが多くなっており、戦闘の行われているフィールドを縦横無尽に走り回って有利なポジション取りを行う必要が有る。
またこちら側は遠距離攻撃の手段を終盤まではほとんど持たないので、危険を冒して接近するしかないケースが多いというのも難しい点。同様にして敵との距離によるダメージの違いが顕著(特にRevolver)なので、自分の直前まで引き付けてやるのが効果大なのだが同時に危険ともなる。
序盤の難敵であるHowlerの存在も厄介で、ゲームバランス的に言って全体で見ても有数の手強さを誇る。単純にこちらに向かって走ってくるのだが知能は高くなく、立ち止まって辺りをキョロキョロ見回したり戦闘の最中に一息入れて止まったりとかするので、極度に獰猛という感じではない。だが逆に行動パターンが不規則な為に動きが読みにくく、的確に弾を命中させるのが結構難しい。近くまで引き寄せて飛び掛かる瞬間に頭へ撃ち込めば効果的なのだが、立ったりしゃがんだりして向かって来るタイミングが掴みにくい。尚且つ驚異的なジャンプ力と長い腕を持ち、突然遠くから飛び掛って来られると逃げる間合いが分かりにくい。一撃でも食らうと視点が別方向へ向けられてしまうので、連続で攻撃を叩き込まれる危険性が高いのも厄介な点だ。特に集団で現れるとかなりの難敵となる。
このゲームのハイライトの一つは緊張感のある戦闘である。両手の武器と魔法を同時に使う上に、それを非常に高速で行わないとならないという、ちょっと今までに無かった感じのFPSである。このコンビネーションが戦略的に自由度が高く、反射神経と同時に頭を使うという点で新鮮なプレイ感覚を持っている。単純に両手を使って攻撃すれば良いというゲームではなく、武器や魔法で防御と攻撃を行えるので使えるパターンが多い上に、武器のリロード時間が長いのと、魔法ではマナの回復時間を考慮しないとならないので、戦闘中に臨機応変に随時これらを切り替えていかないとならないという面も備えている。
攻撃方法 | 利点と欠点 |
---|---|
両手同時攻撃 | 武器と魔法で同時に攻撃する。一気に決着を付けられる可能性があるが、両方が同時に尽きた場合に危険。またバラバラに広がって攻撃してくる相手には向かない。 |
両手相互攻撃 | 両方で攻撃するが交互に使用する。攻撃力は弱まるが、リロードやマナの回復の間にもう片方で攻撃可能なのでスキが出来にくい。 |
武器攻撃・魔法防御 | 攻撃は武器で行い、防御系の魔法で自身を守る。死ににくい反面、全般的に武器の方が倒すのは大変となっており、特定のタイプの敵相手に有効な手段。 |
武器防御・魔法攻撃 | 武器では無くStoneを持って魔法のレベルをアップ&マナ消費を防いでやり、魔法での攻撃を強化してやる。しかしマナが尽きた時には攻撃出来ない為に、切り替えるか復旧まで逃げるしかなくなる。 |
両手防御 | 体制が非常に不利になったり、逃げるという選択肢を取る際に、Stoneと防御魔法で防御力を最大に上げてやる。または戦闘中に一時的に死なないようにして時間を稼ぐのにも使える。 |
これだと決めてそれで通せれば簡単なのだが、戦闘中の状況の変化に応じて上記の各スタイルを切り替えて行かないとならない。よって戦闘中は頭をフル回転させながらも常に動いて逃げ回り、その間に武器変更や魔法変更を実行し、Medikitの適用等を行って回復させてから再度攻撃に移るという感じになる。難しいのは動きを止めてしまえばほぼアウトというゲームなので、敵をかわしながらこれらの操作を別の指でやらないとならない事だ。もしも退路が無くなったら逆に敵をかわして前進してから反転し逆方向に逃げるとかも必要だし、その間の時間稼ぎの為に一時的に攻撃を再開するかの判断も瞬時にしないとならない。よって武器や魔法をサイクルキーで選択したりとかでは間に合わないケースも多く、使う可能性のある物は全てショートカットにする位でないと上手く戦えない。なにしろMedikitも含めてアイテム選択まで戦闘中に行う可能性がある(弾薬タイプを交換したり、ダイナマイトの様な武器を使用したり)。更に使える武器や魔法が増えて来ると、敵により効果が違うとなればそれだけ選択肢が増すので更に複雑化してくる。
という具合でこのゲームは相当キーの操作と頭の回転が忙しい。敵に狙いを付けたり攻撃をかわしたりする反射神経だけでなく、状況判断をして何を使うのかを早急に決めてから、それを実際に呼び出せないとならないからだ。通常のFPSの操作の何倍も指の動きが忙しいと言える。普通は武器を選択するだけなのが両方選択しないとならないので慣れるまでは難しいし、特に反射的に思った物を正確に装備出来るキー配置を掴むまでは誤操作が絶えないだろう。
ただこの要素が両手同時操作と絡んでゲームを戦略的にも面白くしている。戦闘時の状況判断、敵は何で後どれ位いるのか、自分のダメージは今どの程度なのかを判断して、一時的に逃げたり逆に留まって引き付けて一撃必殺を狙ってみたりとか、狙いに応じて動きや武器・魔法を変更して戦うという面白さがある。武器に自信があれば武器偏重で攻撃しても良いしもちろんその逆も可能である。相手がなかなか全滅しないと結構パニック状態になったりもするのだが、そういう時に瞬間的な判断で窮地を切り抜けたりすると快感でこれもまた面白い。惰性になりがちな戦いがほとんど無く、常に緊張感を持って遊べるのが非常に魅力的である。
特に正統的な敵相手のFPSのシングルプレイ(その場から動かないか単純な動きで攻撃してくるので、弾を避けながらの左右ステップ程度で何とかなるような物)はもう飽きたという人には、このゲームの戦闘は新鮮で面白いと思う。ずっと動き続けながら反射神経を研ぎ澄ましての戦闘なので熱中度が高く、一つ一つの戦いが”濃い”という感じになっている。
とにかく如何にして敵から攻撃を受けないかが第一であり、とにかく逃げて、逃げて、逃げまくるゲームともなっている。これだけ戦闘中に前後左右へと動き回らないとならないゲームはそうは無いだろう。まず近距離戦では一撃でも受ければ向きを変えられてしまう為に、その場に立ったままで撃ち続ける事が出来ない(どっちが先に死ぬか?のような止まっての撃ち合いが不可能)。遠距離攻撃の場合は受けても向きは変えられないが、攻撃速度が速くかわすのが困難である(左右にステップしてある程度惑わすことは可能なのだが、弾を見て避けるというのは難しい程度の速度である事が多い)。また敵が頻繁に移動する上にどこからでも出てくるので、前だけを警戒すれば良いというゲームでもない。
更にこのゲームではマナの回復は早いがその分魔法の効果の持続時間が短いという特徴があるので、戦闘中に何回も魔法を掛け直さないとならない場合が多く、この為に一度逃げて操作する間を作る必要が出てくる。またマナ消費量の高い魔法を使えば当然回復するまで逃げ回らないとならない。
よって戦闘中はほとんど移動しっぱなしで、閉じた空間であれば上手く回り込みながら背後を獲られないようにして逃げ回らないとならない。後ろが壁とかで追い詰められたら危険というゲームである。なおゲーム中には逃げないと敵が無限に出て来る場所も結構有るので、そういう場合も逃げるテクニックが必要である。後ろを見せるとShieldを張っていても危険なので。
ちょっと実際の戦闘がどんな感じになるのかをシミュレーションしてみよう。取り合えず通常左手にStone、右手にScryeというのが移動中の基本姿勢となる。この状態で敵に遭遇した場合、敵が来るまでに余裕があるのならば装備を決めて整え、不意を突かれたりで時間が無いのであればまずは「逃げる」という事になる。例えば近距離ならばStoneで相手を弾き飛ばして時間を稼ぐとか。
そして逃げながら右手にShieldを装備して防御の魔法を使う(或いは常に張っておくという手もある)。次にHasteを使い速度のアップ。もし敵との距離が危うい間合いであれば先にHasteでその後にShieldという判断をしなければならない。またここでStoneを持ったままでマナ消費を押さえるのを優先するか、すぐに武器に持ち替えて魔法を掛けている間も攻撃するかという判断も必要になる。もしも暗い場所であれば先にScryeを掛けて明かりも確保しておく。ここから武器や攻撃魔法を敵に合わせて選択して本格的な攻撃に入る事になる。もちろんこれら防御をせずに一気に攻撃という選択肢も有りだ。ただし失敗すればすぐに死ぬ可能性が高いのは言うまでもない。
これで済めば単純なのだが、戦闘がちょっと長引けばHasteやScryeは切れてしまうし、長く持つShieldもダメージを受ければそれに応じて短時間で破壊されてしまう。そうなったらその瞬間にShieldやHaste、Scryeの魔法を掛け直すのか、このまま押し切るのかを判断しないとならない。とはいえコンマ何秒という間に的確な判断が出来る訳も無い、となれば判断が付くまでの時間稼ぎとして逃げるという選択肢になる。同様に「マナが尽きたから魔法が使えず不味い」、「HPが少なく死にそうだが、アイテム選択が今はMedikitでは無い為にすぐには使用出来ない」、「武器がリロードで使えない」、「どうやって今後戦ったら良いのか考える時間が欲しい」といった際には逃げながら余裕を作ってその間に体勢を立て直し、その後再度攻撃に移るという形になる。こういったリアルタイムでの、「戦闘か逃げるか」、「どういう組み合わせで攻めるべきか」の判断が面白いゲームとなっているのである。
なおこの様に書くと「物凄く難しいのでは?」と思われるかもしれない。確かに難易度は全体としては標準よりは高目であるし、一切セーブを行わずに全ての戦闘を初回のトライでクリアして行くというのはより困難となる。敵の出現が背後や上下等突然なのでかわしようが無い場合が多く、ダメージを或る程度は負ってしまうのに対して、それを随時回復しながら進むにはMedikitがそれほど無い。特にMedikitの少ない序盤では多くの戦いをほぼノーダメージで行く様にしないとキツいバランスだし、中盤以降はヘルスも増えて来るとは言え、結構存在する戦ってはならない場所の判断が初回プレイ時にはやりようが無い。この戦ってはならない場所とは、「敵が無限に出てくるので逃げるしかない」、「目的地点に到着するまでは無限に出てくるので、とにかく早くそこまで駆け抜ける」、「戦うよりは逃げた方がいい」の3通りあるのだが、これは一度やってみないと当然分かる筈が無い。
その代わりに一度敵の出る場所や数が分かればやり直して進むにはそれほど難易度は高くない。何回もやり直しても突破が出来ないというような高難易度のゲームではないと言う意味。来る敵が分かっていれば予め理想の装備で待てるのでそれだけでも随分違うし、出現ポイント前で魔法を掛けてから戦闘に望む事も可能となり戦術も練る事が出来る。初回遭遇時にそのまま倒せればスリリングで面白いが、一方でその戦闘シーンの状況を或る程度把握した上で作戦を立ててから挑むというのもまた面白い。確かに2回目以降の戦闘には憶えゲー的な要素が入って来る事にはなるが、戦闘時の敵の動き自体はダイナミックなので単調さは感じられないし、この独特な戦闘スタイル(バランス)を崩してまで全体を簡単にするよりはずっと良いと思える。
それと順調に魔法の能力を成長させられたならば、それだけ難易度は下がって行くようになっている。またQuestで言うと2,5番目が相対的に簡単なバランスとなっているので、全編を通じて厳しい戦いを要求される訳ではない。
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