<問題点>
このゲームでは行動の拠点となる屋敷も含めて行動範囲はかなり広く、特に屋敷内は相当広いので迷い易い。またマップが細かく区切られておりローディングが結構多くなっている(特に屋敷内部)。通常ロードの時間は数秒と短いのでそれは良いのだが、問題は元に戻れない場合が多いという点。例えばある場所から左右に道が分かれているとしよう。ここで右へ行くとアイテムが有ったりとかで行き止まりとなり再びスタートへ戻って来られるのだが、左に行くとそのままマップが変わってしまい戻れなくなったりするのだ。約半数程度はマップが切り替わると元に戻れないという箇所が存在し、ちょっと行動がしにくい構造になっている。
もちろん行き忘れた場所があるからといってデッドエンドになるような作りではなく、やらなければならない事が残っている場所にはちゃんと戻れる様になっている。ただし貴重なアイテム等を取り忘れるという危険性は常に存在しており、探索をしっかりせずにマップが切り替わったからといって先に進んでしまうと損をする場合がある。例えば屋敷では同じ場所へ何度も戻って来たりするのだが、その時にはもう設定が変わってしまっている事が多い。つまり最初に入れる可能性があった時と、ストーリーが進行してから2回目3回目にその部屋に入った時とでは状況が変わっているという事で、1回目に入っていれば有ったアイテムはもうそこには無いという意味。ただ逆に2回目以降に現れるアイテムという物も存在し、「もうここはアイテムを取ったから」と考えて入らないと取り逃がすという可能性もある。
進行に合わせて、同じ場所でも別の時に来た場合は開かないドアや入れる場所が変化するので、その都度全ての場所に行って今回はどうなのかというのを確認して回らないとならず、少々面倒なのは事実である。かと言って直線的に進んでしまうとAmplifierの様な重要なアイテムを見逃したりする事態にもなりかねない。中盤以降は謎解きで困っていてそこら中を探索しないとならない場合を除き、進めるのならばアイテムを集めずにそのまま飛ばして行ってもそれほど問題ではないと思うが、序盤はこういったアイテムの取り忘れが非常に痛いので特別な注意を払うべきだろう。
そう言った意味からはあまり親切な作りとは言えず、対策としてはQuick Saveだけでなく通常のセーブを定期的に行って確実に探索をしながら進んでいくしかない。もしも不本意に未確認のエリアが有るのに次のマップがローディングされてしまったら、戻ってやり直した方が良いケースも多い。
難易度・ゲームバランスという面では改善の余地有り(Normal難易度にて)。ゲームは兄弟のキャラクタ毎に大きく5つのQuestに分かれているのだが、まず最初のLizbeth Questについては難易度が高目である。これにはGallowayの攻撃力が弱くMedikitも少ないので死に易いと言った点が関係している。ところがこれ以降はGallowayが強くなり過ぎてしまう箇所が出て来てしまう。特に次のQuestから手に入るスペルが強力になっていくのでバランスが崩れ、敵のタイプも関係するのだが2番目のQuestはかなり簡単になってしまう。その後3,4番目は普通に戻るのだが(成長が遅れているとやや難しいかも)、また最期の物は簡単となってしまう印象である。
もう少し細かく説明すると、序盤はMedikitや弾薬の数がそれほど無いのに対して、中盤以降は結構な数のMedikitや弾薬が手に入る様になる。特にMedikitは携帯型でいつでも適用出来るので、序盤の様にMedikitの残りを考えて大ダメージを負ったらLoadしてやり直すという作業も必要無く、負った分だけ回復してもOKという場所が増えてくるようになり、その分ゲームの進行も早くスムーズに感じられるようになる。もちろんボスキャラ戦を含めて強い敵が出た時、また大量に敵が出た場合等難しい場面も出ては来るのだが、序盤の様に「大抵の対決が難易度が高い」という様なバランスでは無くなる。要するに最初のQuestの難易度が特に高いので、それを抜けた後は普通の難易度になっていても反動でより簡単に感じられてしまうということ。この辺もう少し全体のバランス調整を考えて欲しかった所だ。
パワーアップ用アイテムを或る程度取り逃がしている可能性や、どのような攻撃方法が有効なのかを考えずに直進的に進んでくるプレイヤーを考えての調整なのかもしれないが、ちゃんと探索してレベルアップしている人間にとっては、最初のQuestの難易度からすると以降はバランス的にどうなのかという感じがどうしてもしてしまう(それと探索せずに進むというスタイルも考慮しているとしたら最初が難し過ぎるだろう)。
また対ボス用の武器であるScythe of the Celtの威力に問題有り。これは接近戦専用であり使いにくい面も持ってはいるのだが、それを差し引いてもある種の魔法と組み合わせて使うと強力過ぎる。ボス用ということで最初のエピソードで既に手に入ってしまうのは仕方ないのだが、それならばいっそのことボス専用にすれば良かったような破壊力だ。特に接近戦が多くなる(ただでさえ一番簡単な)2番目のエピソードでは、自分から使うのを自粛してしまう位の殺戮マシーンと化せる。やる前にこれを読んでいるのであれば、この武器はボス専用にする事をお勧めしておこう。
LizbethのQuestは最初という事でゲーム全体の導入部分レベルも併さっている為に相当に長いのだが、その後のQuestは全体的に短くなり、特に4番目は呆気ない位。この各Questの分量バランスという面でもおかしな配分になっている。そして最後のQuestについてはデザイン的にゲームの色に合わないようなロケーションで行われるので、他のQuestと比較して違和感が大きいというのも非常に気になった。
<GRAPHICS>
Unreal Engineを改良しての使用であり、行動の基本となる邸宅はデザイン的に同じエンジンのWheel of Timeを思わせるもので荘厳なイメージを持っている。ゲーム全体としては圧縮テクスチャを使っている訳でもないし、高度な機能を打ち出してもいないのだが非常に綺麗な仕上がりである。特に雰囲気が非常に良い。例えば屋敷についてはいかにも”出そう”な感じで良く出来ているし、何よりも凄く現実感があるグラフィックスであり、実際にその場に居るかの様なリアルさが漂っている。ゲーム的というよりも写実的なグラフィックスであり、派手さは無いが個人的にはかなり高得点をあげたい。また影が非常に良い出来で、この時代のUnrea系エンジンとしては類を見ないリアルさと言える。光源によりちゃんと伸びたり縮んだりもするし、戦闘時に複数の敵にもちゃんとリアルタイムで影が描かれるが画面がカクついたりもしない。ただし自分の影は映らないし、固定のオブジェクトに関しては光源が変化しないので影はそのままという物足りなさはある。Unrealエンジンは有ったとしても単純な影しか付けることが出来ずに弱点の一つとされていたが、このゲームの影を見る限りではそのハードルはクリアしたような感じがする。
人の造形も素晴らしく表情等がリアルな仕上がりで、まばたきもすればしゃべる時はリップシンクもするし表情まで変化する。その代わりにパターン的には人の種類はそれほど用意されていないようなのは残念な所。なお残虐さという面からはそれほど表現はキツクないし、血の表現も思っていたよりは控えめな感じだ。血は確かに出るのだが死体共々すぐに画面から消えてしまう。特殊効果系のエフェクトは普通の出来で、むしろ現時点では地味な方かも。それとたまにだが相手が扉等にめり込んで表示されるという事が起きる(この状態だと扉越しに撃てたりする).
建物のデザインも実際の物を参考に画を起こしたのか非常に細かい部分まで書き込まれており、複雑な形状の物が多くなっている。現実ではない世界もゲームには登場するのだが、こちらの方のデザインも個性的で良い点を与えられる。
パフォーマンス面では、Unrealエンジンのゲームには32bitカラーにすると極端に重くなる物とそうでない物があるが、こちらは後者でGeforceにて1024*768*32でほとんどの場面は問題無くスムースに描画される。ただしこのエンジンの特徴は変わっておらず、雨のシーンは極度に重くなるし開けたところに出た時等に急に重くなる等、若干問題点も存在している。
別撮りのCGムービーは用意されておらず、ゲーム内のエンジンを使用したカットシーンで構成されている。また死んでしまうと敵のモンスター別に異なったムービーが用意されているのは凝っているのだが、基本的に途中で飛ばす事が出来ないので(ある程度流れた後ならばSPACEで飛ばせる様だが)繰り返されるとちょっと面倒。
<SOUND>
ゲーム前の予想からするとちょっと意外なのだが、非常に地味な感じというか静かな感じの環境音がほとんどである。大抵の場合バックにBGMも流れていない。では怖くないのかと言うとそんな事は無い。シーンと静まり返っている分突然音がした時の効果は大きく、かなりドキっとさせられる(それを狙っているのだろう)。怖い音がする恐怖ではなくて、音が何もせずにシーンと静まり返った恐怖感である。間断無く恐怖感を煽るような音がするのではなく、時折効果的に異様な唸り声や不気味な物音がどこからともなく聞こえてくる。そういう意味からすると出来は非常に良いと言える。
環境音に絞っている分その音はよく出来ており、実際に自分がその場にいるかの様なリアルさがある。なお3DサウンドはEAXに対応で音源の定位感はかなり優秀。後ろでドアが突然閉まったりしたときなど効果大だ。その面から言って是非ともこれはEAXによる3DサウンドONでやってもらいたいゲームである。
このゲームは完全日本語版が出ているのだが、英語版の場合に理解力がどの程度必要になるのか気になる人も多いだろう。まずシステムとしては残念ながらSubtitle(字幕)を出す機能は無い。よってムービーや会話については英語音声のみである。しかし全体を通してもそれほど英語の分量は多くない方。またゲームに付いて来る小冊子(Jeremiahの日記)についても読んでいないとゲームを解けないという種類の物ではない。やるべき点もJournalを読めば分かるのでそれ程の問題は無い筈だ。
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