<GAMEPLAY>

 まずはテーマともなっているホラーに関して。一概にホラーと言ってもいろいろあり、怖いモンスターが登場する物、霊魂や呪いといった心霊的な恐怖物、日常的な恐怖を描く心理的な物、登場人物が次々に残虐に殺されていく流血&グロテスクなショック系の物etc。私のイメージとしてはBarkerは最期のショック&グロテスク系の作家という感じだったので、この作品もそう言った類の物なのだろうかと想像していたのだが、これはそういったホラー要素を追求したゲームでは無かった。次々に登場するショッキングな映像・突然大きな音で鳴り恐怖間を煽る音楽・恐ろしげなBGM・大量の流血と血飛沫・飛び散る四肢や首・グロテスクなオブジェクトの数々.....。こういった要素はほとんどこのゲーム内には存在しない。映像も音楽もそういう意味ではかなり控えめだし”直接的”な効果を狙ったような部分は無く、流血等についても他にもっと残忍なゲームが幾らでもある。

 ではこのゲームの恐怖はどんな感じなのかというと、ジワっと効いてくるタイプの恐ろしさである。「気味が悪いという怖さ」とでも言おうか、何もいないはずの静まりかえった場所を歩き回る時の様な恐怖である。ほとんど音がしないだけに小さな音でも逆に怖いという事もあるし、なまじ薄暗くて辺りが見えるだけに突然現れる物にビックリさせられたりするのだ。特にメインとなる屋敷の中は非常に薄気味悪くて怖い。もう一つはモンスターの怖さだろう。確かに異形の物は少数なのだが、突然出現するのと自分が比較的弱い為に逃げ回らなければならないので、いつ追い付かれて攻撃されるのかという切迫した追われる恐怖が存在する。
 具体的にどんな風な演出が有るのかというのはちょっと書き難い。というのはビックリさせるタイプの驚きが多いので、ここで書くとネタバレになってしまうからだ。それに関して一つ大きな特徴を書いておくと、主人公Gallowayには特異な霊能力があり、普通の人間には感じ取れないものをアイテムの力を借りて見たり聞いたりする事が出来る。それを使うと過去にそこで起こった出来事を聞いたりとか、通常では見えない物を見たり出来るのだ。これがホラーの演出として非常に効果的で、一見して何も無い場所でこの能力を発動させた時に突然目の前の風景が変わったりとか音が聞こえて来たりするのは相当怖い。直接ショッキングな映像を見せられるよりも心理的な面で成功していると言える。

 ただそれでも全体的には想像していたよりもはるかに開放的な感じで、全面的に「恐怖のゲーム」として宣伝したり評価されたりするのはちょっと違うかなという気もしないでもない。私としてはこの様な静かな心理的恐怖タイプが好きなのでこれは文句の無い所なのだが、もっと直接的なホラー映画的な物を期待する向きには拍子抜けかも知れない。なお海外のレビュー等では椅子から飛び上がるぐらい怖いとか、小便をチビリそうな怖さとかのコメントが多いので、これは人によるのかも。恐怖感を味わうには部屋を暗くしてサウンド重視でプレイするのが良いだろう。辺りがシーンとしているほどこのゲームは怖いと思う。
 欠点としては世界毎にバラエティに富んだ物にしようという意図が空回りしたのか、2番目と5番目(最後)の世界は”恐怖”という点からは疑問が残るプレイ感になっており、全体の雰囲気にそぐわない印象となってしまっている。


 ゲームはCovenant家の邸宅を中心にして、周辺の別の場所へ行ったり異世界へとテレポートしながら進んでいく。そして呪われて姿を変えた4人の兄弟達プラスKeisingerと順次対決して行く事になる。異世界が存在するというのもあって章によって雰囲気やデザインは大きく異なり、また思っていたよりも暗い”いかにもホラー”な場所は全体的には少ない。その分バラエティに富んでいるので飽きが来ずに遊べるようにはなっているが、先に書いた様にホラーの要素は薄れている。
 ストーリー的にはムービー(別撮りのCGでは無く、シネマサイズになったそのままのグラフィックス)が随時挿入されて説明されたり、Gallowayが手に入れる記録や彼自身の書き込み(Journal)を読む事で進行して行く。作家がストーリーを監修という事からもっと詳細な(テキスト過多な)物を想像していたのであるが、結局のところムービーも含めてそれほど数は多くない。

 ゲームの進行自体はオーソドックスに進路を見つけて進んで行くタイプ。ある場所を開けたり作動させたりする為のアイテムを探し回るというもので、今後何をすべきかはJournalで確認できるし、開かない場所等は何が必要かというのが表示されるので基本的には簡単な部類と言える。ただし幾つかは分かりにくい部分も存在する。例えば独自の特徴としてScryeのスペルを使用しないと分からないという謎が存在し、これは使う事に気が付かない限りは進む事が出来なくなる。
 根本的に謎解き型ゲームというよりは戦闘重視型ゲームという作りであり、じっくりと落ち着いた感じで進んでいくタイプではない。謎解きよりも戦闘の方が難しいというバランスのゲームだ。

 ゲーム全体のボリュームは標準よりもやや長いかという程度で、20時間前後かと思われる。兄弟のキャラクタ毎にブロック化されているのだが、これにはちょっとした問題も有り(これは難易度の項を見てもらいたい)。それとエンディングなのだが、どうも良く分からないと言うかすっきりしない部分が多い。意図的にこうしているのかは不明だが、ちょっとモヤモヤしたものが残る終わり方である(これは後で知ったが、続編の予定の為にそうなっていたそうだ)。

 付け足しとしてジャンプ系アクションはこのゲームにもそこそこ必要な場所は出てくる。ただしこのゲームではFlightの呪文と組み合わせたりHasteの呪文でスピードを上げたりという事が可能なので、一般的なゲームとはちょっと感触が違う。慣れるまでは勝手が違うので戸惑うが、ジャンプの難易度自体はそれほどではない。ただし落ちて死ぬとロードが面倒というのには閉口させられるが。



<MONSTER>

 全体で約20種類程度で、モンスターではなく普通の人間の敵も存在する。デザイン的には奇妙な姿・異形の格好をした者はそれほど多く無く、とにかく怖さやグロさ優先で作成しましたという感じはしない。割と真っ当なデザインであると言える。ただ攻撃方法や動きが変な奴が多く、そういった意味からはユニークで気味が悪いし、またそこが面白くもある。攻撃の仕方等が変わっているので逃げ回ったりして対応しないとならず、追われる怖さというのは充分に味わえる。なお登場するモンスターは大体章(Quest)毎に区分けされており、同じタイプの物が集中して出てくるという感じになる。
 全体的な強さというのはちょっと難しい所で、このゲームではプレイヤーが徐々に強くなっていく為にそのバランスとの兼ね合いもあるし、どの程度その時点で魔法系をパワーアップ出来ているか・習熟しているか・どの魔法のレベルを上げているか、によっても変わってくるからだ。そして後半になるほどバランス的にGallowayが強くなるので、モンスターは相対的に怖く無くなったりする。だから絶対的な強さとしては後半の方が強くなるのだが、プレイヤーの感覚では初期のレベルの低い頃に出るモンスターの方が強く・怖く感じるだろう。

 知能が高いという印象の敵は存在せず、攻撃そのものはストレートである。基本的にこちらに向かって来ながら攻撃を仕掛けてくる物が多く、後は魔法使い系の様に離れた場所から魔法攻撃を仕掛けてくるかだ。ただこのゲームでは空を飛んだり跳ね回ったりする敵が多く、動きは単純ではない。その動きのパターンが読みにくいので、攻撃をかわすのは結構厳しい部類になるだろう。たまに集団で出てくる時に散らばって別々の方向から攻撃して来たりもするが、これが思考によるものなのかは不明。知能の低い敵だと味方の放った攻撃が当ると味方同士で戦ったりもする。
 バグとして壁に向かってスタックしてしまう事が稀にあるのと、大量の敵が出現した時に処理落ちなのか動きが止まる奴が出て来る事があるのが気になった。

 具体的な敵の種類としては攻撃や移動が風変わりな奴が多く、正統的な攻撃を仕掛けてこない物も多い。例えば当ると視界がグラグラと揺れる光線を出してくるとか、こちらを吸い寄せてしまう物とか、前にいるのに後ろや横から攻撃してくるとか、こちらの攻撃が素通りしてしまう物とか。基本的に攻撃力は雑魚敵でもかなり強目で、油断すると一気に殺されたりとかもある。空を飛ぶ敵が多い事から普段では無いような上や下から攻撃を食らったりもするので、立体的な視点移動が必要な敵が多いとも言える。

 人間型の敵も数種類登場するのだが、一部の例外を除いて非常に弱い部類に入る。攻撃力は高いのだが、対処さえ間違えなければ簡単に倒せる相手であり、この辺はもう少し知能的な設定にして欲しかった所だ。頭の方が弱い上に何故か転んだりする。最初のQuestの後半の特定箇所と、第2のQuest全般に渡って登場するが、こういった場所はヘルスパックの稼ぎ時という感じになってしまう。



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