<GAMEPLAY>
ミッションは部隊を率いての行動と単独で行う物があり、その割合は半々といった所。ミッションの数に関してなら部隊行動の方が多いが、実際のプレイ時間からすると同じ程度という印象である(単独行動の方が難しくて時間が掛かる物が多い為)。全体のプレイ時間も人によって大きな差があり、15-30時間程度と幅が広い。これにはゲーム性がリアルな方が好みという事で最大難易度のVietcongでいきなりプレイする人が結構な数存在していて、この場合難易度が大きく上がるので時間が掛かるという点と、ミッションによっては非常に難しい或いは分かり難い物が存在しており、こういった場所でどれだけ長い時間費やすかによって大きく変わってくるというのが原因。個人的には先を急ぐ方ではないというプレイスタイルもあって、Normalで25時間ほど掛かった(若干繰り返してプレイした個所も含めて)。
アクションでは無くリアル寄りのゲーム性となっている理由として、第一に武器の所持制限が有る点が挙げられる。メインの武器を一つしか持てないという点はゲーム性に非常に大きな影響を与えており、これが(スナイパー)ライフルとサブマシンガンを両方持てるという仕様だったらまるで違ったゲームとなった事だろう。通常の両方持って移動出来るタイプのゲームならば、遠距離の相手はライフルで狙撃し近距離戦ではマシンガンという使い分けが可能である。しかしVietcongでは一つしか持つ事が出来ないので、ミッション開始前の武器選択ではどうしても無難なM16かThompsonを持って行くという選択になってしまう。
ライフルは確かにHeadshotを出し易く強力ではあるのだが、これメインで進んで行くというのはちょっと難しい。スコープ付きのM1
Garandかドラグノフを選べるが、どちらも視界が狭い上に倍率固定なので普通のゲームのライフルに比較すると使い難く、当然敵に近距離に迫られると不利になってしまう。更にこのゲームでは敵を照準に捉えた状態でズームしても敵をスコープには捉えられないようになっているので(ズームしたら再度敵の位置を捉え直さないとならないというリアル仕様)、他のゲームに比較して数段狙撃は困難である(双眼鏡を使うというテクニックはあるのだが)。
よって既に内容を知っているミッションで最初の内これを持っていると有利(役目が終わったら死体のマシンガンと交換する)という物か、仲間が一緒にいるミッションで自分は後方からの援護に徹するかでないと最初からは選びにくい(途中で敵から奪える事はまず無い)。従って無難なM16等で進めて行くしかないのだが、結構な場所にて「ここでライフルさえ有れば」と思わせるケースが出てくる。しかしながらサブマシンガンで戦うしかないのでカバーを使って敵との距離を縮めないとならず、その間に敵からの攻撃を受ける危険性が増すのは避けられないという事になっている。
次なる特徴として「弾が当たらない」、或いは「敵が倒しにくい」という面を持っている。一般にリアル系と言われるゲームでは撃たれれば自分が簡単に死んでしまう分、敵を倒す際にもそのルールが適用されるようになっている(急所に当たりさえすれば簡単に殺せる)。またマシンガンをフルオートで連射すると弾がバラけて命中率が著しく落ちる、突っ立った状態や移動中は照準が安定しないという設定になっている反面、Prone姿勢になってシングルモード(セミオート)にして一発ずつ慎重に撃てば相当当たり易くなるというバランス設定が多い。Vietcongではこの辺の設定を「自分が簡単には死ににくい代わりに、敵も簡単には死なない(お互いにHeadshotが出にくい)」、「フルオートでもそれほどはブレないが、シングルモードでも精度がそれほど上がらない」というバランスにしている。
まずやっていて感じるのはHeadshotがとにかく出ないという点だろう。確かに頭に当たれば一撃で敵は倒せるのだが、相当近距離にでもならない限り狙ってやるというのは困難である。照準が微妙にユラユラと揺れるという要素を導入しているので、銃眼視点にて敵の頭に狙いを付けるというのが難しい。次にProne姿勢になれば確かに安定度が増すのだが、草木が茂っている上に巨大な倒木や岩が転がっている場所が多くて、伏せてしまうと前(敵)が見えないというケースが多々生じる。よってしゃがんでそこそこの距離から撃つしかない場合が多く、この為にHeadshotが出にくいので敵が中々死なないといった戦闘になりがち。付け加えるとヘリ等から備え付けのマシンガンで攻撃するケースも有るのだが、この時も移動に連れてマシンガンが慣性で揺れ動いてしまうので非常に扱いにくい。
そして勿論敵の居場所が分かりにくいというのはこのゲームの特徴である。これはジャングルでは草木が茂っているからという理由も有るが、AIの動きが優れていると言うのもある。また天候が悪いとか夜間で明かりが無いといったシチュエーションでの戦闘も結構有るのも影響している。肉眼での暗闇の戦闘は非常に難しく、多くのリアル系ゲームにて使用出来るNightvision
Goggleが如何に有り難い物だったのかはこのゲームをやると実感出来る。マズルフラッシュ(銃口から出る閃光)やTracer(銃弾の通った跡の光の筋)は見易いのゲームなので撃たれれば敵の居場所は掴めるのだが、それでもキチンと敵を視界に捉えるのは背景に溶け込んでいたりすると結構時間が掛かる。その為にあの辺にいるはずだという当たりを付けて銃弾を撃ち込んだりGrenadeを投げ込んだりするのは、他のゲームでは体験する事はほとんどない面白い要素であると言えよう。見えない場所からの敵に撃たれて死んでしまう事も当然有るが、死んだ後にカメラが殺した敵の場所へと俯瞰するので、繰り返し同じ場所から撃たれて敵の居場所が分からないというストレスにはならないようになっている。
倒しにくいと言えば、敵が被弾するとちゃんとリアクションしたり血が飛んだり(UK版)が見えて当たった事は分かるのだが、それで死んだのかどうかは慣れないと分かり難いのは確か。レーダーがONだと敵のマークが消えるので判断出来るが、そうでない場合は障害物の陰に隠れている敵が今ので死んだのかの判断は難しいし、目の前の敵も苦悶のアニメーションをした後に持ち直して攻撃してきたりするので。戦闘後に死体を発見しても自分が倒した敵なのかすらよく分からないケースが有るし、そもそも敵の死体を捜す事自体が大変だったりする。
この辺のバランスは当時の武器の精度というの再現しているのかも知れないが、Vietcongの戦闘をユニークに特徴付けているポイントとなっている。そう簡単には敵が倒せない、或いは今ので敵を倒したのかを確認するのが難しいというジリジリした感覚は他のゲームでは味わえない独特な物がある。
ミッションその物の内容については、その種類が非常に多彩である点が大きなプラスとして挙げられる。どうしてもベトナム=ジャングルというイメージが強く、デモのジャングル面は面白かったが製品版を通してこんな感じのミッションが多いと単調になるのではないか?といった不安も内心では感じていた。しかし製品でのミッションは非常に多彩な物が用意されており、確かに草木の茂ったロケーションは多いが、それぞれのシチュエーションに変化が付けられており、単調さで飽きが来るといった事は最後まで無かった。
ほとんどがアウトドアという設定だが、明るい昼から真っ暗な夜までの時間帯の変化や雨や嵐といった天候、また開けている場所から見通しの悪い場所といった変更が行われている。自軍の拠点に攻め込んでくるベトコンとの戦闘もあれば、敵の居場所に奇襲を掛ける物も存在する。また車を運転する役の物も有るし、ヘリやボートからマシンガンにて攻撃するといったケースも有る。個人行動も有れば部隊行動も有り、遂行する任務の内容も実にバラエティに富んでいる。
いきなり何の予備知識も無く突発するミッションが有ったり、長い物では次々に異なった展開を用意したりとか工夫もされている。また素晴らしいサウンドの効果も有って臨場感溢れるミッションが多く、特にRadion
Relayはゲームの一つのハイライトと言えるだろう。視界の悪い豪雨の中で丘の上の拠点に陣取って、それを攻め落とそうと登って来る100人にもなろうかという大量のベトコンから丘の上の通信塔を死守するミッションで、味方の怒号や銃声が飛び交うこのミッションの迫力は凄い物がある。その他普段の仲間以外にも多数の味方兵士が加わっての乱戦となるSeizing
the Hillや、景観の綺麗なStreamなんかが個人的には印象に残っている。
ゲームの半分程度占める部隊行動において味方は相当に死に難いという設定にされている(Normal)。こういう風にした目的としては「引き連れているメンバーに対して愛着が湧くので、部隊としての連帯感が高まる」、「随時挿入されるムービーにて固定したキャラクタを使えるのでストーリー性を出し易い」といった点が考えられる。実際に長い時間一緒に行動するので連帯感は出るし、ムービー中の各人のやり取りも個性が感じられて面白い(減らず口を叩くHornsterとツッコミ役のDefortのやり取り等)。
その一方でこの設定に対する不満がForum等で出ているのも事実。この設定だとメンバーを常に固定している為に、プレイヤー以外のメンバーを死なせる訳には行かないという問題が出てきてしまう。そうなると「プレイヤー以外のメンバーが死んでもゲームオーバー」か「味方は不死身」というルールを取り入れるしかない。そこをこのゲームでは両方を併せて、「出来るだけ他のメンバーが死に難いようにするが、誰かが死ねばゲームオーバー」というバランス調整で解決しようというアプローチを取っている。撃たれてダメージを負ってもMedicが直してしまうので無敵といった感じが強いし、その分命知らずといった感も有る攻撃的な動きが可能なので、この点にリアルさに欠けるとして不満が生じている。
基本的にメンバーが死んでしまう可能性としては、プレイヤーの誤射及び砲撃要請やGrenadeによる誤爆、敵のGrenadeによる攻撃といった物しか無く、ほとんどのミッションではメンバーが死んでゲームオーバーといったケースには御目に掛からないと言っていい(Normal)。HPが大きく減るとその場で助けを呼んで動かなくなるが、通常はMedicの治療が間に合ってしまうので同じ事である(それに対して敵側が止めを刺しに来るといった要素が無い)。よって部隊で行動している際には、プレイヤー自身は慎重に振る舞って後方から危険を冒さずに攻める事に徹してやり、危険な前線は味方に任せるという手法が通じてしまうミッションも多い。という風なので、Hard以下の難易度では不自然な感じがするのは否めない。
難易度Hardになると味方のHPが赤くなって動かなくなってから治療までの時間が短い?のと、多数の味方がそういう状態になり易く治療が間に合わなくなる。難易度Vietcongでは味方もアッサリと死んでしまう事になっているようでリアルさは出るが、今度はその分味方が一人でも死ねばやり直しといったストレスが強調されてきてしまうというデメリットがある。よってリアルさは欲しいが難易度はそれ程上げて欲しくないという人には適した難易度が無いとなり、そこは欠点と言える。しかし死んだらそのままでメンバー入れ替えの制度にしてしまうと連帯感は生まれなくなり、メンバーも無個性となってしまうという問題が有り、或る意味では仕方の無い要素でもある。
個人的にはこれはそういうゲーム性として納得出来る設定であるが、要望としてはもうちょっとバランスを考えてもらいたかったという不満は有る。例えば各人のMedicの治療回数には限りが有って、それ以降の怪我を負った仲間は死ぬ事は無いが一緒に付いて来られるだけの状態となり、(そのミッションの)以後の戦闘には参加出来なくなるとか。或いは一度倒れると治療しても復活までには時間が掛かるとかにして、もっとプレイヤーが積極的に動かないとならないといったバランスにして欲しかった。
部隊のマネージメントという点では、残念ながらこのゲームは部隊をコントロールするという面白味には欠けており、コマンド体系も単純ならそれほど指示を出せる個所も少ない。自由にしておいてもちゃんと動いてくれるというプラス面は有るが、部隊を自在にコントロールするのに面白味を感じる人には物足りないだろう。逆に言えばそういうのは面倒という人には気軽にプレイ出来るゲームにはなっている。慎重に動かさないとメンバーが減っていくようなゲーム性であれば戦術性も出てくるのだが、そこまでの厳しさはVietcongレベルで無いと出て来ない。またメンバーを個別にコントロール出来ないのも弱点である。
このゲームのAIは相当良く出来ており、ゲームの大きな売りとして評価されている点でもある。一番の特徴は自分自身を危険に曝す事が少ないという点。ジャングル等のカバーに使える障害物が多い場所では積極的にそれを利用してくる。こういった事が出来るAIは他のゲームにも存在するが、Vietcongのそれはより安全性を重視して行動してくる点が異なっている。木の陰からLeanして攻撃する際、岩陰から頭を出して攻撃してくる時、どちらにしても自分の体を曝す時間を最小限にしている。つまり「敵を倒す可能性を上げる為にはある程度自分の体を危険に曝すのはしょうがない」という発想ではなく「自分の命を守る為には危険は最小限に」といった攻撃姿勢であり、最小限の面積だけちょこっと顔を出して攻撃しては完全に隠れてしまい、またしばらくすると顔を出して攻撃して来るといった方法を取ってくる。戦闘中も同じ場所には留まらずに姿勢を低くして別のカバー箇所へと移ったり、移動中にはマシンガンを乱射してこちらを牽制したりという行動も取ってくる。多くのリアル系と呼ばれるゲームでも、伏せたりしているが完全に体はこちらから見えているとか、物陰に隠れてはいるが完全に隠れたりはしないでその状態のまま攻撃し続けるといったAIが多く、そういう物と比較すると非常に優秀と言える。
それ故非常に倒しにくいのは確かで、上手く敵が姿を見せるまで待たないとならないし、頭を出しても銃の命中率が高くないのでその瞬間に的確に当てられるという訳でもない。移動中は体を見せるのでそこが狙い目なのだが、ちゃんと頭を下げて移動したりするのでその敵に当てるのはまた難しかったりする。もちろん慎重なだけではなく、数が多い場合やこちらに対して攻めて来るミッションでは集団となって強引に押し寄せて来たりもする。
欠点は視認性が高い点で、お互いの見つけ合いでは到底敵わない。Normalであれば射撃精度がさして高くないのでそれほど気にならないが、難易度Vietcongでは明らかに不自然に感じるレベルとなってしまう。また夜間の様にこちらの視界が極端に悪くなる時でもそれほど視界が狭まらないので、こういったケースでの戦闘は相当不利になる。また壁を通してこちらを認識してしまう個所が有り、或るミッションでは大きな問題になってしまっている。一方で音声の認識に関しては間近の銃声を感知しなかったりと不自然な点も持っている。
味方のAIも良く出来ていて、敵の攻撃が始まると散らばって障害物を探して隠れるし、時には近くの物陰へダイビングして伏せるといった動作も見せてくれる。攻撃方法もLeanしたりとか撃っては隠れたりとかリアルな動きを取る。ただしこちらはMedicが付いているので死ににくいという事もあって、ややアグレッシブ過ぎるという感じはする。一方で射撃はあまり優秀ではなく、それほど敵を倒したりは出来ないしGrenadeは危険という事からか使ってこない。これはプレイヤーにやる事が無くなると詰まらなくなると考えれば適当なバランスではある。
移動については様々な障害物を跨いだりジャンプしたりして乗り越えて移動出来るし、引っ掛かって移動が出来なくなるという事もまず無い。しかし普段の行動の道筋にはパスが定められており、これを愚直に辿ろうとするので一度後ろのWaypointへとわざわざ戻ったりとか、その道筋に仲間がいると押し合いになってしばらく動けなかったりというケースはよく見られる。同様に狭い通路に陣取って動かなくなってしまうケースが有り、この場合はそれを自分の手元に呼んで動かさないとその場が通れなかったりする(もしも指示が出せないマップではどうしようもなくなるケースも)。他には自分へのFollowを命じて或る程度動いてから再度前進を指示すると、元の通り越してきた場所で通っていなかったWaypointまで一度戻ってしまうといったケースもある。ジャングルで通れる道が少ないのでキッチリとWaypointを通してやらないとならないというのは理解出来るが、この移動パスを愚直に辿ろうとする点は数少ないAIの欠点にはなっている。
総合的に見てAIは優秀であり戦闘に面白味を増している。このゲームの面白さの相当な部分はこのAIによるものと言っても良い位だ。逆にAIの問題で出来が悪くなっているミッションは確かに数点存在しているが、これはAIの問題というよりもミッションのデザインに問題があるといった方が正しい。
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