<GRAPHICS>
グラフィックスエンジンは自社製作の物を使用しており、主にこの面でIllusion Softworksの技術的なサポートを受けているという事らしい。クレジットを見るとMaifaで使われたモーション・キャプチャーデータを使ったというコメントも見られる。発売前の情報ではミッションの多くはアウトドアで行われるという話だったので、広大なアウトドアを描画する系統のエンジンかと想像していたのだが、種類としてはスタンダードな「広さよりもディテールを重視する」タイプで、各マップはそれ程広くなく長いミッションでは随時ローディングによる切り替えも発生する。
ゲームの設定からして密生して茂った草木によるジャングルの表現を最重視したと思うのだが、その点では十分に合格点が与えられる出来であり、前方の視界が確保出来ないくらいに木々が描画されても特に重さが増すと言った事は起きない。その草木の種類も多彩で風に揺れたりプレイヤーが通った事でガサガサと動いたりといったアニメーションも含まれており、ジャングルの中を歩いている雰囲気がよく出ている。雨の降るマップも多いのだがこの際にもfpsの落ち込みは感じられない。ただこういった部分に負荷を掛けているという事からなのか、細かな部分については不満が残る個所もある。
例えば地面を含めてTexture系はそれほど高精度の物が使われていない。遠距離描画についても(Mafia同様に)設定をMaxにしてもある距離から先は描画されずにカットされた状態になってしまう。空は単純な一枚画だし、マップの端の部分には単調に塗られた壁が存在しており進めない様になっている仕様。地形やオブジェクトの描画についても滑らかな隆起や曲面ではなくて、カクカクとした折れた角(ポリゴンの頂点)がハッキリと分かる個所が結構多い。
キャラクタ自体を構成するポリゴン数やTextureはそれほどでもなく旧世代の物という感じがするが、そのアニメーションはかなり細かくトップクラスの出来栄え。PointmanのNhutはハンドシグナルを出して状況を知らせるし、各人の歩いたり走ったりの動きはよく出来ている。障害物となる倒木等はちゃんと手を掛けて乗り越えるアニメーションが再現されているし、敵を発見した時にダイブして障害物に隠れたりする動作は他のゲームでは見られない物。敵の死体を探る動作も行うし、時には死を確認する為に倒れている死体を蹴ったり頭を撃ったりもする。それとプレイヤーならば、障害物に接近すると武器を脇にちゃんとどけるという動作が再現されているのも細かい。敵の動きも腰を落として移動する等現実風であり、弾が当たった時のリアクションもちゃんとしてくれるので当たっているかは分かり易い。逆に倒れるようなアニメーションを見せてから起き上がってきたりもするので、死んだのかどうかは分かりにくかったりもする。
欠点としては旧来のエンジンと同様に、壁と死体との接触判定が曖昧な点。ある程度はそこに障害物が有るという判定は行っているようだが、壁の中にめり込んだり死体同士が重なったりというケースが相当目立つ。そしてこのゲームはこの点が大きな問題となってしまっている(問題点を参照)。壁との間の接触判定にも問題がある感じで、壁を通して敵の銃の先が出てしまうとか、それに絡んで壁の向こう側のAIに自分が見付かってしまうという事も起きてしまう。更に敵と接触する距離まで近付いた場合に、敵の体の中に自分がめり込んで向こうが透けて見えてしまうという事も起きる。
それとUK版においてもBlood&Gore関連については非常に控え目であり、またリアリスティックでも無い。爆発によって手足が飛んだりというのは起きるが、SOF2なんかに比べると適当である。血も真っ赤という表現ではないし、流れているという風でもなく出来は悪い。遠距離から当たった時に血飛沫が飛ぶのが見えたりするのは役に立つが(US版ではどの程度なのか未確認)、それを除けばあまりUK版にしても意味が無いという印象。
ゲーム全体に茶色と緑が中心というカラフルさに欠けた構成だが、その中でロケーション毎に多彩なバリエーションを付けており、この条件下でこれだけ綺麗に見せている点は高く評価出来る。総合的にグラフィックスのクオリティは高く水準以上の出来と言える。ただしあくまでも世代としてはDX7世代のグラフィックスであり、Medal of HonorとかSoldier of Fortune 2といった2002年リリースのゲームと同じ水準である。DX8世代のShader系の新テクノロジーは特に見られない。
<SOUND>
良く出来ている点は3Dサウンドの臨場感。EAXをONにした際の定位感は非常に良好である(Audigy+4SP)。臨場感も素晴らしく、敵との戦闘になって10人以上の人間がそこら中で銃を撃ち合っている時の銃声の迫力は物凄いものがある。音質はMedal of Honor等の最高レベルのゲームに比較すると若干落ちる感じはあるが、その反面3Dサウンドに対応していないMOHに比較してこれだけ定位感のあるサウンドを提供しているのは大きな強みである(後発のCall of Dutyは3Dサウンドに対応しており、これには劣るが)。
しかしその代償として大きな負荷は掛かるようで、CPUが速くないとfpsに大きな影響が発生するそうだ。それと45音同時再生とあるが、その限界を超えているという事なのか時々自分の銃声が消えてしまう場合がある(すぐに直るが)。
銃声は悪くないがMOHやSOF2辺りのレベルに比べると落ちる。相当数の武器が登場するのだが物によっては差がそれほど感じられない。Grenadeや砲撃の爆発音も迫力不足だが、一方で爆音が近くでした時に耳がキーンとなってしばらく音が聞こえなくなる演出はよく出来ている。虫や鳥の声等の環境音はちゃんとしており、断崖等の狭い場所ではエコーもちゃんと効くようになっている。
BGMはゲーム中には無いが、ミッション前の拠点となる自分のBunkerではラジオからDJが放送を流しており、これは雰囲気も有って非常に良い感じ(現実にもベトナムにてラジオ局からDJ放送を流しており、娯楽の無かった現地では大変人気があったようだ。「GOOD
MORNING VIETNAM」という映画も有る)。ムービーシーンも含めて当時の60年代ロックを何曲かライセンスして使用している。
問題として大きく取り上げられているのはボイス関連。ここはForumでもかなり批判されている個所になる。まず個人的に気になったのは主人公のHawkinsの声が若く迫力が無い印象で違和感がある点。これはやはり批判が多いようだ。通信にノイズを入れたりと凝っている部分もあるのだが、砲撃要請の返答音声とか棒読み調の個所もある。チェコでは英語をネイティブとして話せる人を調達するのが難しく、適当な所で間に合わせたのではないかという意見も出ているのだが.....。敵のベトコンはちゃんと現地語を使って喋るようになっている。
全編通してSubtitleは可能であるが、現地語には訳が付かない。それほどゲームの進行には英語は関係しないタイプのゲーム。
最後にUK版とUS版の音声の違いについて。グラフィックス的には18禁となっているUK版でもそれほど表現のリアリティ(残酷度)は上がっておらず大きな差は見られないという話をしたが、この音声表現面では大きな差が有る様だ。ForumにUK版を取り寄せたという米国のファンのコメントが載っているが、この内容では米国ではMatureのレーティングでも無理でX(ポルノ系で一般の店では販売禁止)でないと販売出来ないのではないかと話している(これだけ酷い言葉使いなのはKingpin位しか思い当たらないという意見も見られる)。
ベトナム戦争の映画「Full Metal Jacket」の有名な前半部の鬼教官が新兵達を徹底した罵詈雑言で扱き下ろすシーンはTutorialにて再現されているし、ムービーシーンなんかでもかなりの数のFour
Letter Wordsと言われる類いの単語が登場する。shitやfuck等は強調語としてTeenのゲームにでも登場するが、son-of-the-bitch,
Cocksucker, Motherfuckerといった言葉はどんなゲームであってもまず見られない単語である。US版とどの程度の差があるのかは両方試した訳ではないので何とも言えないが、かなり雰囲気が変わっているのは確かな様だ。例えばデモではマシンガンを撃ち捲くる時に"Rock
'n' Roll ! "と叫んでいるが、UK版では"Mother Fuckin' Roll !"
と叫ぶとか。
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