<GAMEPLAY>
Mafiaの最も優れた点はそのストーリーに有る。よく映画の様なストーリーといった宣伝文句が使われるが、このゲームに関してはそれが見事に当てはまる、というよりも逆にこれだけ面白いストーリーで魅了してくれる映画はそうは無いだろう。アクションゲームというジャンルはストーリーの展開に関しては自由度があまり無いのでRPGやAdventureといったジャンルと比較して不利と言えるが、そんな中このゲームのストーリー展開は素晴らしい。重厚というか壮大というか或る種の凄みさえ持っており、終わった後に虚脱感に襲われるような圧倒的な存在感を誇っている。これだけゲームのテーマとする雰囲気(Mafiaの世界)を見事に再現しているゲームはそうは無いはずである。
ゲーム全体のボリューム感もかなりの物で、全20ミッション(正確にはダブっているのがあるので21)で25-30時間程度掛かるというのが一般的な様だ。ただしゲームは後半になると結構な数のサブミッションが出てくるので(基本的に新しい性能の良い車を手に入れる為の物で、本編のストーリーとは関係無い)、これをどの程度こなすかでも変って来る。
基本的にはストーリーはギャングの抗争という設定で、ミッション毎にそれほど意外なパターンを用意出来る訳では無く、実際に行われるミッションはある程度定番化した物なのは確かである。しかしMafiaではこれを2つの要素で上手く扱っている。一つは先の展開をあまり見せないという手法を取っている点。ミッション開始時点では何が起こるのか分からない物が結構有り、幾つかは事件が起こる雰囲気すら感じさせない物となっている。それが突然事態が展開してストーリーの中に投げ込まれるので、プレイヤー側の惹き込まれる度合いが大きいのだ(同じチェコのOperation Flashpointをプレイした事のある方はああいった感じだと思ってもらいたい)。一つのミッション内でも急に展開が変化したりという物も多く、これも面白さに貢献している。
もう一つは或る意味欠点と取る事も出来るのだが、実際にプレイヤーにゲーム内を(運転して)移動させている点。通常の手法ならばミッション内容の解説ムービーの後に移動を省略していきなりその肝心の場所からスタートしてしまう所を、ほとんどの場合実際に時間を掛けて移動させる事でゲーム内世界に実際にいるかのような感覚をプレイヤーに与えて感情移入度をアップさせている。
そのストーリーの中では特に最終3章(M18〜20)の展開は見事。割とラスト付近はアッサリ、或いは尻すぼみ的な物がアクション系では多い中(最後は一番強い奴と戦うというのが見えてしまうというのもある)、このゲームでは予想外の方向にストーリーは進んで行き収束する。上手く噛み合っていた歯車が徐々に狂って行く感じで進むラストまでのストーリー展開の面白さは相当なレベルであり、私の場合も途中で止められずに結局朝まで7時間位連続して終るまでプレイしてしまった。
次に登場人物達の造形の深さも見逃せない。これくらい登場する人間を生き生きと描いたゲームはシューティングのジャンルでは稀だろう。ゲーム全体も重厚な雰囲気を見事に出しているが、登場する人物達の存在感も凄い。ボスとして時には圧倒的な存在感を持つDon Salieri、その右腕の事務系人間Frank、短気で直情的な兄貴分のPaulie、対称的に寡黙にして目立たない男Sam、それと忘れてはならない少々頭は足りないが一流整備士のRalph(特に印象的で忘れられない登場人物だろう)といった様々な人間が見事に描写されている。ほとんど素晴らしい配役の映画並といった感じだ。ストーリーの展開説明にも相当な量のムービーが使われており、これも人物表現に厚みを与えている。
中でも主人公のTommyの”一人の人間”としての描写には見事な物がある。元々は単なるタクシー運転手だったのが、ある事件に巻き込まれたのをきっかけにしてファミリーへと加わり、その後Mafiaの一員としての人生を歩む事になる。彼自身はこれを「しがない運転手から人生の成功者となる為の一つの選択肢」といった感じで運命として受け止めるが、決して彼は無作為に悪事を働く殺人マシンとしては描写されていない。ファミリーの一員として人殺しといった犯罪に手を染めていてもどこか最終的には非情になれない面を持ち合わせており、単純な「一介のチンピラが活躍してのし上がる」といった陳腐な設定にはなっていない。この主人公の魅力的な人物設定はゲームの面白さとして非常に重要な要素となっている。またMafiaのゲーム進行はやや変っていて、ゲーム全体がTommy自身が過去に自分のやって来た行為を警察相手に回想という形で話すという形式で進むようになっており(プレイするミッションは全て過去の回想部分をプレイしているという形になる)、それ故話の途中で何回か彼の倫理観や人生観が語られる個所があり、これも非常に興味深いし主人公にリアリティを与える上でも効果的に働いている。
ゲームの面白さに重要な役割を果たしているのが架空の都市Lost Heavenのリアリティである。都市のマップを読み込んでやる方式のゲームの中ではもちろん一番だし、これよりも綺麗なグラフィックスの街中をコースとして用意したレースゲームは存在するが、”本当に街中を走っている感覚”を味わえるという点ではこのMafiaの右に出るゲームは現在の所存在しないと言える。この”生きている街”を舞台として走れるという点はMafiaの大きなポイントである。
車や通行人のAIには多少問題が有るとはいえこれまでのゲームに比べたら進歩しているし、これだけの通行量を考えるとあまり細かくは出来ないという面は仕方が無い。車に関してはちゃんとこちらが突っ込むと避けたり止まったりするし、動きも単調では無くバラエティに富んでいる。人間もちゃんとぶつかるのを避けるし、銃を撃てば伏せたり逃げたりと動きも多様である。意思を持った人間が街中を歩いたり車を運転している感じがするというのは雰囲気作りとして効果は大きい。これはGTA3には欠けている点である。
車だけで無く路面電車もちゃんとそのコースを運行しており、高架を通る電車も適当に走らせているのでは無くちゃんとマップ上をダイヤに沿って運行している。こういった物に乗ってボーっと景色を眺めながら街中を移動した場合も、見える風景は生き生きとしておりリアリティが感じられる。跳ね上げ式の橋が実際に動作してその下をちゃんと船が通ったりする描写も細かく、工場地域ならそれにあった人間が多く歩いていると言った変化もちゃんと行われている。
Mafiaの特徴は街の再現性に徹底してこだわっている点にある。とにかく本当に航空写真を元にしてそれをそのまま作成したのではないかという位のリアリティが感じられる。街は当初想像していたほどは広く無いがその分想像以上に作り込みが細かくて、シングルプレイ中には訪れないしFree
Rideでも人によっては来ないのではないかと思えるような場所まで細密に作成されていたりする。
しかしこれは或る面では冗長性を生んでいるというのも確かだ。例えばGTA3では街を徹底してリアルにする事にはあまりこだわっていない感じであり、ゲームとして面白さを損なうならばそういった要素はカットしてしまうという方向性が見受けられる。例えば街はそれほど広く無いので単に街中をドライブしても気分は出ないが、その分ゲームとしてはタイトでアクションが連続して起こるし、ゲーム中の様々な要素にも短時間でアクセスし易い構成となっている。一方ではMafiaは単にドライブしていてもリアリティが感じられる位に広く街を作成しているが、それ故広過ぎてイベントの起きる間合いが開いてしまうという面を持っている。あまりにもリアルさにこだわった点が、逆にマイナス要素になってしまうケースもあるという事である。個人的にはこのリアリティは評価したいと思うのだが、アクション性は若干犠牲になっているのは否定出来ない。
<戦闘>
Mafiaは三人称視点だが後方固定でカメラ位置切り替えでは無いので、戦闘時の感覚はFPSとそれ程変化は無い。ただしリアリティ重視という面とゲーム的な面が混在しており、慣れるまでは戸惑う事もあるだろう。
*体が隅に行ってしまった場合等はカメラが自動的に一人称に切り替わって視界を確保してくれる
*所持はスロット方式で、ピストル系の武器は多数持てるが大型の武器は数が限られる
*大型で隠せる武器は一つだけであり、その為構える物と合わせて最大で2個しか所持出来ない。街中で武器を出せない場合は一つだけとなる。
*撃った際の反動はかなり大きく、連射すると照準がブレまくる
*ダメージは武器によって大きく異なり、ただのピストルではほとんどダメージを与えられないし受けない。
*Headshotが非常に効果的である
*Shotgunを近距離で受けるとヘルス100でも即死する
*Grenadeも有るが、希少だし狙いは付け難い
操作面には若干の不満が残る。動作としてはWalk/Runを切り替えられるのは良いのだが、それならばCrouchもToggleにして欲しかった(このゲームではCrouch姿勢を取る事が多いので)。更に落ちている武器を拾うとかの行為の際に、そのオブジェクトが小さくて分かり難かったりするのと、三人称なので真下が見難いという面がある(自分自身が邪魔になる)。一人称であれば対象物にカーソルが当るとそれが変化するとかがあるのだが、このゲームでは単に何かが出来る個所では!マークが出るだけなので、落ちているはずの武器を拾う為にUseするべき位置が掴みにくい事がある(他の物何にでも反応してしまうので)。
キーのバインドはパッド系を考慮して2つ可能な物が多く、車と徒歩では設定が分離されている。詳しく検証した訳では無いのだが、中には重なってアサインすると問題が出る物もあるので注意が必要である。
以下は重要事項の解説。
◎敵の弾数に制限がある
敵の武器は弾数無限になっていない。よって相手に上手く弾を撃ち尽くさせれば有利になる。一方でこちらの弾数が厳しいケースが結構有り、こういう場合は早目に倒してそれを奪わないと、拾った際に確保出来る弾数が減ってしまうというジレンマがある。
◎Reload
時間が非常に掛かるので自分に取っては大きな隙となるし、逆に敵が行っている際は大きなチャンスである。従って単純な撃ち合いでは無く戦術性も高い。それとReloadすると現在のクリップごと捨ててしまうので注意が必要(何発残っていようがそれごと捨てる)。戦闘が一段落する毎にReloadして弾を補給しておくという定番の手法は使い難くなっている。最大クリップ数もあまり多くないので(5,6程度)Reloadには細心の注意を払わないとならない。
◎Health
HPはスタート時は100でArmor等は存在しない。問題は回復薬がほとんど無い点。これは本当に少なく、自分が見過ごしているのでは無いかと思って探し回ってしまう位だ。デモのミッションの様にマップ内に2個所も有るといった恵まれた物は少なく、一個も無いマップも結構存在する。更に全然目立たない上に奥まったり隠れた場所に有ったりもするので、ただでさえ貴重なのに見過ごしてしまう惧れさえある。どれだけ回復出来るかはその場所によって変るが最大でも50のようだ。ゲームの中でも最もアンバランスと感じる個所である。
まず基本的には座る事で被弾面積を減らし、自分の弾のブレを減らすというのが重要。それと大事なのが方向キーを2回連続して押す事によるローリングで、これを戦闘中に使わないと厳しいケースも多い(ローリング中は当り判定が無い様だ)。障害物の陰からローリングで出て攻撃し、危なくなったら同じくローリングで素早く戻るという事を繰り返す等。
問題点としては物陰にいる時にあまり接近するとその障害物自体に弾が当ってしまうのだが、これがちょっと分かりにくい点。それと同じく距離感の問題で、バットでの攻撃時に張り付く位まで近付かないと当らない点。これは画面上の見た目と距離感が一致しないという意味である。同じく素手による殴り合いでも間合いが非常に分かりにくく、パンチの種類も変えられないので適当に打つだけで勝負は偶然といった感じになってしまう。
それとこちらが三人称なので物陰から周囲を覗えるという利点はあるのだが、逆に敵は一人称で見ているので場所によっては自分が気がつかない場所から撃たれるケースが出て来てしまうのは難点だろう(特に段差のある場所に居る場合)。
敵のAIに関してはそれほど動きはパターン化されていないし、ある程度は賢いと言える。ただし配置が固定されている敵が多く、持ち場から動こうとしない事も多々見られる。それと銃の弾数にはまるで頓着しないし、弾が切れて素手になってもこちらに向かってくるのはおかしな点といえる。後はミッションによってはやたらと目が良くてこちらをすぐに発見して攻撃してくるのと、一方で背後から接近しても全然気が付かない位鈍いという問題点はある。
非常に困るのはこちらが隠れて待ち伏せていてもその角に来た瞬間にこちらに気が付いて攻撃してくる点で(文字通りに姿が見えた瞬間にもう自分に向けて撃ってくるという感じ)、この時の攻撃のタイミングを掴まないと厳しい。
感想としてはそれほど問題があるシステムとは思えないのだが、この難易度でセーブが出来ないとなるとストレスが溜まる物へと変貌してしまう。これだけの難易度であれば、もっと正確性のある一人称でのプレイが出来ればとどうしても感じてしまうのは確かだ。ショットガン一発で即死というのもちょっと厳し過ぎると感じた。それと味方のAIが突撃型で問題がある上にFriendly Fireまで有りなのはちょっとやり過ぎだろう。
映画的な要素を重視しての三人称視点採用という事なのだろうが、個人的な好みとしてはやはり一人称の方が臨場感が出て良いと感じる。武器のサウンドも悪く無いのだが、どうしても後方からの視点なのでちょっと離れた場所で鳴っている感が有り、これも一人称に比べると迫力面で今一つ。少なくとも切り替え可能にはしてもらいたかった。
次のページ