<OVERVIEW>
まずは基礎的な点から説明しておく必要があるだろう。このMafiaはGrand Thief Auto III(GTA3)との共通性を持って語られる事が多かったゲームであり、それは発売後時間の経った今でも見受けられる。かく言う私も発売前はそう思っていた口で、「GTA3風のバイオレンス性を持つが、よりストーリーを強化した物であり、ミッションベースの進行の為にGTA3並の自由度を売り物にしたゲームでは無い」といった程度の認識だった。この印象がどこから来たのかというのは明白で、それは発売までに公開されていたムービーやSSの内容に起因している(主に2001
E3の物)。そこでは主人公が、一般人を射殺・街中を暴走・車に向かって銃を乱射・運転者を引き摺り降ろす・バットで人や車を殴り付ける・警官と格闘、といったシーンが映し出されており、正にその姿は”GTA3その物”といった感じであった。GTA3を既にプレイしている人がこれを見たら、似たようなゲームと受け取るのも無理は無いと思われる。
しかし実際にはどうなのかというと、MafiaはGTA3とは大きく異なったゲームである。では何故この様な食い違いが起きたのかと言うと答えは簡単で、実は上で述べたような映像はMafiaのシングルプレイとはあまり関係が無いのだ。Mafiaは本編としてシングルプレイのシナリオを持っているのだが、その他にサブゲームという位置付けでFree Ride(最初から遊べる)とFree Ride Extreme(クリア後に遊べる様になる)というモードを持っており、これらのバイオレンス系映像はほぼそちらのモードに関係する物である。Free Ride系2つのサブゲームとGTA3との相違&類似性に関しては他の頁で詳しく話すとして、とりあえずここで言いたいのはメインとなるシングルプレイはGTA3の様なゲーム性では無いという点になる。両者に共通しているのは「一つの大きな街を舞台としてその中を行動するゲーム。車が多種多彩で運転の比重も大きい三人称視点の3Dアクション」という点程度しかないと考えてもらいたい。
Mafiaのシングルプレイは基本的にその他のミッションベースのアクションゲームと何ら変りは無い。ストーリーはミッション毎に区切られており完全には連続しておらず(所持品等のStatusがリセットされる)、ゲーム中に随時ムービーが流れて話の進行を解説していくという形式である。普通のゲームと異なる点は主人公の立場がMafiaという一般的に”悪”と認識される組織に所属している部分になる。
それに絡んでバイオレンス性に付いても言及しておくと、このゲームから受ける暴力的なイメージというのは実際はかなり低い。GTA3における無軌道で反社会的な暴力と言った物とは掛け離れたゲームである。主人公は組織の一員として働くので無軌道といった面は感じられないし、ミッションの多くはMafiaと聞いて連想される”悪事”といったイメージでは無く、組織としてこなす”仕事”といったイメージとなっている。GTA3では(ミッションはともかくとしてフリーでのプレイは)その世界を破壊し混乱させるという背徳的なイメージが強かったりするが、Mafiaではその辺は非常にストイックな感じであり、犯罪行為を行っているという感覚はあまり無い。警官と対決したりも有るが、それは逃げる為に止むを得ずとかそういう場合がほとんど。そもそもゲームのストーリーが、主人公の属するSalieri
Familyと街の縄張り争いで対立するMorello FamilyとのMafia同士の抗争が中心の為、「悪(主人公)vs善(社会)」では無くて「悪vs悪」という構造になっているのも、プレイヤーが”悪”という感覚を薄れさせている要素になる。
といった感じでFree Rideといったモードはあるものの、これらはあくまでもサブゲームといった位置付けでしか無く、メインとなるシングルプレイに関してはGTA3とは大きく異なったゲームという事が言える。「GTA3が面白いからやってみよう」とか、逆に「GTA3が詰まらなかったからこれもパス」
といった判断はどちらも早計である。
次にゲームの構成に付いて。このゲームを三人称の3Dアクションに、ギャングならではのカーチェイス(アクション)が付加された物と考えているならばそれはちょっと違っている。ゲーム全体としてみた場合、Mafiaでは徒歩によるアクションのパートよりも車に乗っている時間の方が長い。これに関してはちょっと特殊な構造が取り入れられているのが関係している。それはゲーム内での移動は全てプレイヤーが実際に車を運転して行うという決まりである。
ほとんどのミッションはアジトとなるSalieriのバーからスタートするようになっており、ここから車を選んでミッションのスタートとなる地点へと向かうという行為を、プレイヤーが”実際に自分で”行うようになっている。ミッション内容の説明となるムービーが流れた後に、「ここからスタートなのでそのマップがLoadingされて開始される」という風にはなっていないのだ。これはゲーム中でも同様であり、ゲーム内での展開として別の場所に移動する必要が出た場合はもちろんの事、ミッションが終った後にアジトまで帰って来るのも全部自分で車を運転して行わないとならない(一部の例外を除いて)。或いは電車で移動するシーンも有るのだが、これもまた実際にマップ内を通行している電車に何分間も乗って行うようになっている。
ここでの留意すべき事とは、この運転シーンは文字通りのドライブであって何かが起きる訳では無いという点。このパートを”ドライブ”という呼び方をさせてもらうと、このドライブではシナリオ上のイベントは何も起こらない。単に運転して目的地に到着させるのみである。更に書いておくと、この間は法規もちゃんと守るという安全運転が基本となる。実際にはドライブ中にゲームのルール上はプレイヤーは何をしても構わない。上に書いたような数々の犯罪や暴力行為を働く事自体は可能である。しかし金やアイテムといった物が手に入る訳でも無く、良い車が盗める訳でも無い(車を盗むには条件が要る)。或いは暴走して警察とカーチェイスをしても何ら得る物は無い。個人的な趣向としてそういう事をしたいという人はいるだろうが、それなら金銭の概念が有る別モードのFree
Rideでやれば良いだけの話になる。しかも「何ら得る物は無い」だけだったらまだ良いのだが、逆にこういった行為は大きな不利益を生む事がしばしばだ。
そういった行為をして警察に追われる羽目になった場合、多くの場合はそれを振り切って”Wanted”の状態を消さないと目的地に着いてもマップが切り替えられないし、難易度的にパトカーを振り切るのは相当面倒。更には自分自身や車にダメージが少しでも加わったり、銃を発射して弾薬を無駄に使う事が後々の進行に深刻な問題を引き起こすケースもある。そうなったらドライブのスタートマップをLoadし直して最初からやり直しである。まとめるとゲームを最もスムーズに進行させる事を考えた場合、ドライブにおいては一切の犯罪行為や暴走行為は無駄であり、キッチリと制限速度を守って信号等の法規を遵守し、人を轢いたり撃ったり警察と揉めたりといった行為も慎んで、ただ目的地を目指すという事だけを考えるというプレイになる。つまりそれが良いか悪いかは別として、MafiaのシングルプレイにはGTA3の様な自由度は存在していない。
この特異なドライブパートをどう受け止めるかというのは個人差があるだろう。このパートはゲーム全体では結構な分量が有り、概算だが比率としては[アクション]:[車でのミッション]:[ドライブ]=2:2:1程度の割合になっているように思える。つまりゲーム全体でいうと20%程度はドライブのパートであり、ミッションパートは徒歩と車は半々だが、このドライブパートがあるので車に乗っている時間の方が長いという状態になっている。
製作側の意図としては、ドライブとして全てをプレイヤーに行わせる事でよりゲーム世界にドップリとハマれるようにする、という狙いなのは間違い無い。そしてそれは確かに効果を挙げてはいる。グラフィックスやサウンドを含めてLost
Heavenの街は非常にリアルに作成されており、その中をドライブする事自体が楽しいし、また世界に深く入り込んで行けるのも確かだ。しかしちょっとやり過ぎという感じもあって、後半から終盤になると面倒に感じる面も出てくるのは否めない。特にミッションが終って「もう何も起きない」となっている時点でも、実際に運転して帰らないとならないという点が億劫に感じる。確かに全く無意味と言う訳では無く、最初の内は道を憶えるのに役立つとか、目的地にて車を止める個所に意味が出て来たりとか、壊さずに持ち帰った車は以降のミッションで選択可能になるとかはあるが、個人的にはゲーム全体として見るとちょっと長過ぎる印象。
暴走行為が出来たりする訳では無いという点からやはりこれを嫌う人は存在しており、「死ぬほど退屈」・「大きなキズ」といったレビューも結構見られた。普段レースゲームなどやらないし興味も無いという人でもGTA3は楽しめると思うのだが、Mafiaのドライブパート(車でのミッションでは無く)に関してはかなりの苦痛になるかも知れない。
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