<戦闘>
このゲームのメインとなるのは間違い無く戦闘部分であり、そしてこのパートは緊張感があって面白い。特に前半部は怖さも手伝って非常に良い出来だと思う。三人称ではある程度Autoaimというシステムなのだが、実はちょっと独特なシステムが導入されておりそれが緊張感を増している。ポイントとなるのは映画の様に”Thingを倒すにはそれを焼き尽くすしかない”という所。ゲーム上では小型の敵を除いてはこのルールが適用されており、敵に止めを刺すには火炎放射器やFlame
Grenadeを使うしかないようになっている。基本パターンとしては銃にて照準が赤くなるレベルまでダメージを与えてやり、その後火炎放射器によって焼いてやるという手法を取る。
しかしこの火炎放射器が曲者で、この武器についてはAutoaimが作用しない上に吹き付けられる距離が非常に短いのだ。操作性で述べたようにこのゲームは三人称視点では上下方向には視点を動かす事が出来ず、その為に火炎放射器は角度を変えて放射が出来ない。よって目算で3M程度しか届かない様になっており、小型の物では足元にしか放射が出来ない。その為に敵を倒すには相当引き付けないとならず、それなりの危険を犯さないとならないのだ。まず火を付けたThingが一度逃げてくれればいいのだが、そのまま突っ込んで来られると自分に火が付いてしまう可能性がある。次に床に向けて放射するのでその床がしばらくは燃えてしまい、そうなると部屋の中を逃げながら戦っているとうっかりして炎を踏んでしまう事も。しかもこのゲームはダメージに対してはかなり弱い設定となっており、更に炎の効果範囲とダメージが大きい。よって炎からのダメージで自爆してしまう可能性も有るし、周囲で戦っている味方の隊員にダメージを与えてしまい、それで死なせたりとかTrustを下げて逆に攻撃されたりとかも起きる。一人称視点にする事で噴射方向は変更出来るので正面に向けて吹き付ける様には出来るのだが、この方法だと射程が若干伸ばせる代償としてその場から動くことが出来なくなる。また一人称では敵のStatusが見られないという欠点もある。よって敵がそのまま突っ込んで来た場合の反応が三人称に比べると遅れる為に、攻撃を受けたりとか火を自分に点けてしまう危険性が増加するという具合。最初から炎での攻撃も効果的なのだが、使えば使うほど危険性は増す事になる。特に敵が複数となると更に厄介な事になる。
上手く戦うにはやたらと炎を噴射せずに、効果的に一人称と三人称を素早く切り替えて使い分けないとならない。また床を燃やす事で敵を近づけないようにする事が出来、それによりうまくバリアを作成して戦うという戦術的な要素も存在している。この様に戦闘には相当気を使ってやらねばならず、反射神経に加えて判断力も要求されるので面白い。
武器関連はそれほど用意されておらず、基本的にピストル、マシンガン、ショットガンに火炎放射器という構成。特殊な武器としてはGrenade
LauncherとSniper Rifleがある。このゲームでは4種類存在する手榴弾の扱いが難しく、思った所に投げるのは困難だし爆風範囲が広いので自爆の危険性も存在している(付け加えると壁を通してダメージが来るバグが有るので、部屋の中に投げ入れて壁に隠れるというのは注意しないとならない)。その点Grenade
Launcherは狙った場所に攻撃出来るのだが、一人称視点で無いと意味が無いので使い所はかなり限られる。強敵相手に使用するのが基本だろう。Sniper
Rifleは前半では近距離戦が多いのでほとんど出番無し。またThing相手にはあまり効き目が無い印象である。後半パートで特定の場所にて活躍する武器となるだろう。ズーム機能が遅いので使い勝手は悪く、命中率もそれほど高くは無いので結構苦労させられる武器である。
基本的にはAutoaimで、武器は全て2個まで持てるのでアイテムスロットに悩む事も無く、また弾薬も豊富な為に戦闘のバランスは割と普通で難しくは無い。味方にも豊富に武器を渡せるので援護も期待出来る。ただしデフォルトのセーブ限定でやると自分や味方の隊員の失敗(FF)で死んでしまったりするので厳しい一面もある。ヘルスはMedicさえいれば平常時ならば幾らでも回復出来るし、ゲーム中にアイテム画面を呼ぶとポーズを掛けられるのでそこで戦闘中でもヘルスパックを自分に使うことも可能。ただしヘルスパックの配置バランスには妙な面もあって、あまり気軽に使えるという設定では無い。どうにもならなくなって多く使った所の少し前からやり直さないとならなくなる可能性は十分に有る。一方の弾薬も有る所には有るが無い場合はしばらく無いという風になっていたりもするので(全体の9割は困らないだろう)、この辺は難しいとも言える。あとこのゲームでは銃をリロードをするとクリップごと捨てるので注意が必要である(何発残っていようがそれごと捨てる)。よって余程の事が無い限りはリロードはしないのだが、その為に戦闘中に一瞬隙が出来るケースが多い。
問題はゲームの後半パートと言う事になるだろうか。シューティングゲームとして詰まらない訳では無いのだが、"The Thing"の映画としての雰囲気は確実に薄れてしまうからだ。詳しくは言わないが敵に人間が登場したりとか、ロケーションに開けた場所や明るい場所が多くなったりして密室(閉塞)感が無くなってしまうのが大きな原因である。それと後半になってもThing自体の形状パターンが増える訳では無く、その意味で恐怖感もやや後退してしまう。新しい武器の使い所が増える事で面白くなる、パターンが変化して単調さが回避出来ると肯定的にも取れるのだが(割と他のレビューではこちらの意見が多い)、個人的には前半のテイストで最後まで行って欲しかったと感じる。
その他に問題に感じる点はやはりセーブの方式。まだ最初のセーブポイントに到達していないマップにおいて死んだ場合、そのマップの最初からやり直すというオプションは出るのだが、一度ゲーム自体を終らせてデスクトップに戻ってしまうと前のマップの最後のセーブポイントまで戻らないとならなくなる。つまり一度終らせたければそのマップの最初のセーブポイントまで行かないとならないという困ったシステム。(これはQuickを可能にする改造で修正される)。
他にはアイテムの適用範囲が曖昧な点。特に貴重なヘルスパックの場合、通常画面では自分に適用するキーと隊員に適用するキーが同じActionなので、自分に適用するつもりが近くに隊員がいるとそちらが優先されてしまう。よってアイテム画面にて使用するか十分に離れないとならない。
<AI>
味方の隊員のAIは優れた部類に入り、Followさせての移動中にパスを見失うという事はほとんど無く、連れて歩く事自体にストレスを感じるようなゲームでは無い。敵との戦闘中でも非常に頼りになり、特にMedicやEngineerの攻撃力が落ちるという設定でもないので相当使えるというバランス。自分が急に動いて前に出たりしなければFFもしないし、かなり大量の敵相手にでも対抗可能である。Medicの回復行為も自動的に判断して自分や他の隊員に対して行ってくれる。問題があるとすれば火炎放射器を持たせるのはやはり危険と言う事。Trustを上げるのには役に立つが、他の武器と違って味方へのFFを考えないので危ない。それとマップのクリッピングの問題なのか、敵の検知が壁越し等変な時に行われてしまうという欠点も有る。
敵のThingの行動パターンでは、小型の物は単純に攻撃してくるのみだが大型の種類の物はなかなか良く出来ている。単純にこちらが死ぬか自分が死ぬかまで攻撃してくるのではなく、ダメージを負うと逃げてから再度攻撃して来たりする。移動パターンも複雑で読みにくく、火の付いたまま突っ込んで来たりもするので油断出来ない。階段のような段差も越えて追って来れる。
一方で人間タイプの敵は粗が目立つ。旧来の普通のレベルのAIであり、音声への反応とか行動パターンに疑問が残る出来。言ってみればかなり鈍いという事で戦闘自体の面白さに欠ける。
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