FREELANCER

                                   03/03/07


          150MB    Microsoftより発売中


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<概要>

 Digital Anvil製作によるスペースフライト(コンバット)シム。製作自体がアナウンスされた当時は大変な話題作でその後もE3開催の度に話題になっていたが、ここ1,2年は注目度も下がり「本当に出るのか?」といった雰囲気も漂っていた作品(3DFPSで言えばDNFか)。開発に掛かった期間は6年という長さで、その間に当初の内容からはかなりの変化が有った。

 製品は03/04に無事USではリリースされており、欧州でもこの後順次リリースされる。日本ではMSではなくメディアクエストから日本語版が発売される予定。このデモはシングルプレイ専用でマルチには対応していない。

 ここ5年位の間にPCゲームの世界に入った人にはピンと来ないと思うが、90年代初頭から中盤に掛けてはスペースコンバット・シムというジャンルは、PCゲーム界でのメジャーな物の一つだった(まだMS-DOSベースのゲームが中心だった頃)。中でも人気と評価が高かったシリーズの一つがLucasartsからのStar Warsの世界をテーマにしたX-Wing, Tie Fighter系の一連の作品、そしてもう一つがOriginからのChris RobertsデザインによるWing Commanderシリーズである。これは傍系作品も含めると10本を越えるシリーズ物。
 Originと聞けば多くの人はRichard Garriott(Lord British)を連想すると思うが、90年代に入ってからはむしろ表に出ていたのはChris Robertsの方で、当時のゲーマーで彼を知らないという人はいなかっただろう。Strike Commanderというフライトシム系の名作も手掛けており、歴史に名を残すゲームデザイナーと言って間違い無い人物である。その彼がWing Commanderシリーズに続いて自らの会社で作り上げる新たな作品となれば注目されない訳が無く、このFreelancerはDigital Anvilの目玉となるはずだった作品と言える。しかし先に述べたように開発に時間が掛かりすぎたのと、その間にゲーム界におけるこのジャンルの勢力が目に見えて落ち込み(今では正直な所私の様な門外漢にはどの位作品が出ているのかも分からない)、それに伴って注目度は落ちているのは確かだろう。「あのFreelancerが遂に出る」と聞かされてどの程度の人間が反応するのか疑問だし、スペースコンバットシムをプレイした事があるゲーマーが今どの程度いるのかも見当がつかない。
 私はこのジャンルに関して詳しい訳では無いので開発がどのような経緯を辿ったのかは良く分からないのだが、会社はMicrosoftに買収されて参加に入り、何より完成を前にしてChris Roberts自身が既に退社してしまっている(Starlancerという作品は彼のいる間にリリースされている)。ゲームは彼が抜けた後に残ったメンバーによって完成までこぎ付けた訳で、彼のデザインが結局の所どこまで生きているのかとかは分からない。


<FREELANCER>

 簡単にこれはどういうゲームなのか、内容について解説しておこう。ゲームの設定は、地球上での紛争に勝利した西側諸国が宇宙への殖民を目指して旅立った。ただこの際に大きな勢力がそれぞれ独立して別の星系へと旅立ったという事になっている。その勢力(Faction)は米、英、独、日本の4つで、彼らはそれぞれが独立して発展を遂げ勢力を拡大していった(それぞれの星に自分達の地球上での地名を付けているのはその名残)。しかし宇宙への開拓が進んでから800年が経ち、勢力範囲の拡大と星間移動技術の発達によってそれぞれのFactionは宇宙空間でも遭遇するようになり、取引といったプラス面は勿論だが、新たな紛争をも生み出す事にもなった。そこで現在では調停役として評議会が設けられており(今で言う国連)問題発生時の解決に当たっている。プレイヤーはこの世界に降り立ったEdison Trentという人物としてプレイを進めていく事になる。

 Freelancerの一番の売りとして挙げられている点はその自由度という事になるだろう。ゲームはちゃんとしたストーリーモードを持っており、これに従って進んで行く事は勿論可能である。冒頭ではTrentの居たFreeport7という宇宙ステーションが謎の攻撃によって破壊される所から開始されており、この後全ての星系に跨って企まれているという謎の陰謀を暴く為に行動していく事になる。この場合は特定のNPCとの間に数々のイベントが起こって進行していくスタイルとなる。会話等から得られる情報によって謎を探っていくというADVゲームを組み合わせた物と考えて良いだろう。
 その一方でストーリー進行の合間や、或いは完全にストーリーモードを無視して自由気ままにFreelancerの世界を冒険する事も可能となっている。例えば一例として以下の様な物がある。

*賞金稼ぎとして宇宙での犯罪者の処罰や逮捕に手を貸す
*商人として物資の販売ルートを開拓し、輸送時の差額利益によって巨万の富を築く
*軍隊に所属して平和と秩序の為に働く
*海賊として輸送船を襲い、強奪した物資で金を儲ける
*テロリスト組織に属して犯罪者としての活動に身を染める

 またこのゲームではプレイヤーにレベルが存在しており、これによって(自分の能力ではなく)購入出来る機体やパーツに変化が出てくる。これはNet Worthの値によって決まる(装備と所持金から計算される)。Reputation(評判)というパラメータも有り、これはそれぞれのFactionや各組織に対しての自分の印象度を示し、デモの段階でも20種程度の対象が存在する。これが緑側に伸びればその組織から良い仕事が回ってきたり特別な情報を聞き出せたりするが、反対に赤方向に伸びると相手にされなくなるか飛行中に敵対している組織から攻撃を受ける事も。なおこの値は賄賂によってある程度改善可能であるが、敵対している物同士だと相対的に変化するので全ての物に好印象というのは不可能である。
 それぞれのFactionによって購入出来る機体には差が有るし、組織によって受けられる仕事には差が有るので、一度のプレイではゲームの全てを体験する事は出来ないという仕組み。悪の道に入らないと会えないNPCがいたりとか、特定のFactionと仲良くならないとアクセス出来ない場所が有ったりする訳だ。



<INTERFACE>

 このゲームの大きな話題の一つにその操作性が挙げられる。このゲームはマウス+KBで操作するようになっており、Joystickでの操作をサポートしていない。これは相当大胆というか異例の決定であり、発売前から賛否の一番起きている点となっているようだ。これは3DFPSで言えば、マウス+KBの入力をサポートしないと言うのと似た状況だろう。
 元々このジャンルでは操作はJoystickが標準であり、それが仕様としてプレイには必須である物も珍しく無かった。これは当時のハードではパッドはデジタル入力のみであり、アナログ入力をサポートする物はJoystickだったというのが理由である。私も当時安っぽい2ボタンのみの物を購入してプレイしていた。

 このマウス操作にした理由として、まず「プレイにJoystick要では広い範囲にアピール出来ない」という点を挙げている。「多くの人間はJoystickなど持っていないから、それだけでプレイヤーを限定してしまう」というのが理由の第一としてコメントされている。確かに近年パッドのアナログ化・多機能化に伴いJoystickの方はより専門化している感があり、価格の方もそこそこはするようになっている。私としてもゲームを快適にプレイするにはそこそこの機能を持ったJoystickが必須であり、その為に別に\10,000前後の出費をしないとならないとなったら、他に使い道も無いと思われるのでかなり購入を躊躇するのは確かだ。これは他の人(フライトシム系に興味の無い人)でも同じだろう。
 次にゲーム画面のI/Fを分かり易いようにマウスでのクリック操作にデザインしており、この明快で分かり易い仕様を活かすには全ての操作がマウスである事が望ましいと述べている。Joystick操作を認めてしまうと、その度にプレイヤーは交互に持つデバイスを切り替えないとならなくなってしまう(Joystickでポイントを指定するのは難しい)。
 最後に「”絶対にJoystickでなければプレイなど出来ない”というプレイヤーをゲームのテスターとして集めてプレイテストを行い、彼らにマウス操作で問題無いと納得させたという自信が有るから」ともある(何割のプレイヤーが納得したのかは書いてないが)。

 私としては現在所持していないのでこの仕様はありがたいし、実際に違和感は特に感じなかった。戦闘時以外のI/F系も含めて非常に考えられてデザインされている印象で、全体的にストレスをほとんど感じない優秀な出来である。ただ私はレースゲームはプレイするので、Joystickサポートを外した事に怒る人の気持ちは分かるつもりだ。仮に本格的なレースゲームでハンコンのサポートが外された場合、製作側から「パッドでの操作を十分にテストして問題が無い事は確認済み。ハンドルは所持者が少ないし、通常操作時に邪魔になるのでパッドが最適である。」と言われても、「そういう問題じゃないんだよ。レースゲームをプレイするのにハンドル握らないと気分が出ないだろう」とは思うはずで、機体を操るには操縦桿を握らないと気分が出ない(ゲームに入り込めない)というのは理解出来る。
 しかし「マウスでも操作出来る」ではなく、Joystickのサポート自体を外す=Joystickというデバイスの否定というのは、金を出しているのがそのデバイスの有数のメーカーであるMSである事を考えると不思議な感じもする。キャッシュバック・キャンペーンも出来ないしね。それで日本ではメディアクエストに版権を渡してしまったのかな?

 最後に英語はSubtitleが出せないのでムービーシーン等は問題有り。会話内容に関してはログに重要事項は残るのでそれほどは問題無いだろう。



<GAMEPLAY>

 デモでは開始からストーリーモードに沿ったミッションをプレイ出来る。これはクリアまでにそれほど時間は掛からないし、機体が初期型なのでそれほどは戦闘は面白くない。しかしその後フリーモードとなり自由にその世界をプレイして回る事が出来るようになっており、この部分の遊びがいは相当有る。全体で10個以上のSystem(基地等)を訪問出来るし、機体も数種類購入可能で装備のカスタマイズもある程度可能。バーでの会話で依頼されるミッションや自動的に生成されるランダムミッションを選んでプレイして遊べるし、勝手に宇宙をうろついて遭遇した相手に戦闘しても良い。キャラのレベルが上がるまでプレイ出来るようだが、6時間程度遊んでもまだそこまで到達しない(私の場合)。それほどバラエティに富んだミッションが有る訳ではないのでその内飽きるのは確かだが、これだけ遊べるデモというのは珍しくこの点には高ポイントを与えたい。

 操作体系はちょっとWing Commanderを思わせる部分も有り(私には)割と馴染み易かった。それとマウス操作中心の分使うキーも全体的には少な目という感じがしたし、かなり取っ付き易いゲームである。少なくともこのジャンルでは私が苦手とするフライト(ヘリ)シムの様に、キーの説明を見てもその意味自体が分からない(これを使うと何が変わるのか分からない)という事はない。視界は後方とコクピットの切り替え式で、前者は周囲が良く見えるが若干ミサイル系の狙いが付け難い印象で、コクピットでは一人称なので狙いは付け易いが周囲が見えないという欠点がある。なおこのゲームでは右や左を向いて見る事は出来ないので(後方のみ)自機をそちらに向ける必要があるようになっている。
 操舵系は先に述べたようにマウスで行い、これは感度調整も細かく出来るので特にストレスは無し。敵はターゲットを自由に切り替えたり出来るし、画面外に消えれば矢印で方向が出るので困る事は無いだろう。何よりフライトシムと違って”墜落”しないのでその点は楽である。その一方で周囲にオブジェクトが無い場合は、加速してもスピード感が感じられないという面はある。慣性のシミュレートについてはそれほど考えて動かなくても苦労はしない造りのようだ。

 戦闘に関してはレベルが低い状態なのでそれほどいろいろな武器を使える訳ではないのだが、敵の各種シールドに有効な武器と船体その物に有効な武器等が分かれており、その辺の使い分けは考えないとならない(デモだと敵のシールドは1種類の様なのでそれほど悩む事はないが)。レーザー系の基本武器はほとんどパワー系への影響を考える必要が無く撃ち放題(貨物船は多少影響あり)。一方でミサイル系はロックオン機能が無く、またそこそこ高価なので滅多やたらに撃つ事は出来ない。このミサイルはある程度慣れないと命中させるのが難しい面もあるが、それだけに上手く命中させるのは面白い。ただし逆に撃ち返してくる敵がほとんどいないので、慣れると簡単に成り過ぎるとも言えるのだが。MineやCounterは使うほどではないという段階。

 ゲーム自体はそれほど難易度が高い訳では無く(このデモではだが)、修理アイテムや武器の弾を多く持っていれば最悪物量作戦で勝てるのがほとんど。ただしレベルは所持金額で決まるので、成功した場合の賞金分の装備を使っていては何時まで経っても先に進めない。如何に無駄遣いせずに効率的に勝つかというのが重要となる。
 後は普通に航行中に敵(海賊等)と遭遇して攻撃されたり、警備隊に積荷を違法でないかスキャンされたりといった”生きた世界”の演出も見受けられた。或いは戦闘中の2つのグループに遭遇したりといったケースもある。この辺はバリエーションが多くなれば雰囲気作りに効果大だろう。

 一方で欠点なのだが、どうもシステムが単純という印象を受けた。私の様に大してこのジャンルのゲームをプレイした事の無い人間が言うのも何だが、ちょっと深みが無いと言うか簡素化され過ぎでは無いだろうか。例えば機体のパワーを各部分に配分するといった概念は無い様だし、シールドも全体で一つという扱いらしい。それとデモだけかもしれないがほとんどパワー出力に気を掛ける必要が無く、レーザー兵器は撃ち放題でAfterburnerは使い放題(補充が非常に早い)と雑になりがち。何よりこのゲームではあくまでも単独行動であり、ミッションで他のNPCと協力する事はあっても基本的には一人で戦うのみ(これは製品版でも同じである)。これはWCが好きだった私としては非常にガッカリした部分である。同行する人間を選んだり、そのメンバーにミッション中様々な指示を出せるという部分はシリーズの大きな魅力だったのであるが。



<GRAPHIC・SOUND>

 このジャンルの最近の作品と比較してどうなのかは分からないが、光や炎や爆発といったエフェクト系は非常に綺麗である。様々なオブジェクトや敵機の書き込みも細かく、Textureの質も悪くない感じ。最近のFPSゲームをやっているプレイヤーには驚きは無いと思うが、グラフィックは及第点の部類だろう。特筆すべき点としてエフェクト系が派手だったり画面表示のオブジェクトが増えてもfpsの落ち込みがほとんど感じられない点で、この辺は普通クラスのマシンでも快適に動くようにという配慮かららしい。
 ムービーシーン等での人の造形や表情のアニメーションも良く出来ているし、それぞれのSystemの雰囲気なんかもグラフィック的な変化が付けられている。なおデモサイズを抑える為にTexture等は使い回しをしているそうで(例えば人の顔とか)、製品ではもっと綺麗で多様になっているそうだ。

 サウンド面では武器のせいなのか低音があまり聞いていない感じなのが気になった。戦闘時のBGMもデモだと種類が無いので飽きてくる。3Dサウンドの効きは360度回転するので分かり難い面も有るのだが、自分を掠めて後方に消えて行く敵機の移動音は迫力があって良い。

    フルサイズ                     


<動作環境>

HARDWARE 必要環境 推奨環境
CPU 600 MHz processor 1 GHz or faster processor
MEMORY 128 MB RAM 256 MB RAM
VIDEO 16 MB video card 32 MB video card

対応OS: Win 98/2000/ME/XP
Direct X 9.0以上要


 一応警告が出るが私の場合DXは8.1でも問題なく動いたし、一度も落ちることなく安定していた。必要環境ではこれに限った事ではないが、XPの場合メモリ128MBでは正常動作しない可能性もある。この場合は設定を可能な限り下げるしか無いだろう。一応FPSゲームに比較すると要求するスペックはかなり低いので、普段そちらがメインの人はパフォーマンスは問題無いのでは。

 以下Readmeにある物で多くの人が遭遇しそうな問題点。

*Radeonにて一度に多くのテキストが表示されるとパフォーマンスが落ちる。これはATIの新ドライバで修正予定のようだ

*SB Live!でドライバが古いとサウンドに問題が出る

*ラップトップ系PCにて最初のCPUクロックテスト時に、その仕様から値が正常に検出されず警告が出る。これは無視して進めれば実際のゲームには問題は無い

*ゲーム中のサウンドが欠けて再生される件はCodecの問題なのでそれを修正しないとならない。これはNOLF2でも問題になっていたが、結構今後も出てくる問題かも。修正は複雑なのでReadmeを見ながら行って欲しい。



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