補 足 |
以下はレビューにはネタバレになるので書けなかったいろいろな情報。当然クリア後に読むことを強く推奨するが、もしキーボードでプレイ済みでコントローラーでやり直してみようかと考えている方が居れば以下は見ない方が良いと思う。 <以下ネタバレ注意> コントローラーを操作に使わせる理由についてより詳しく。兄が死んでしまうのは物語のクライマックスの一つと言えるが、映画的な視点からするとこのシーンをどれだけ悲しくインパクトのある物にするのかは映像やサウンドに全てが掛かっている。だがゲームはそうではなく、映画には無いインタラクティブな要素を持っている。それはキャラクターをプレイヤーが操作するという所。そこでそれを行うコントローラーを用いた演出が何か出来ないかというのが始まり。 結果的に生み出されたのが左右の手でそれぞれの兄弟を操作するというシステム。具体的に言えば演出の狙いはこうなる。ゲームの開始時点からずっと両手を使って操作をさせておくので、兄が死亡した時点で左手側が空いてしまうことになる(カメラ操作を除く)。以降は右手の弟だけを操作する形になるので、それまでずっと使っていた左手を使わなくなる事による違和感が生じる。言ってみれば「映像による心理的な兄の喪失感」という映画的な手法だけではなく、それまで使われていた片腕がある意味で“無くなる”ことによる「人体の物理的な感覚による喪失感」をプレイヤーに味合わせるというのが目的。これはゲームにしか出来ない事だとしている。 キーボードではダメというのは、KBの操作ではこの感覚がコントローラーに比べると劣るから。左右でのキー操作はコントローラーほど連動性が出せないので片側が無くなっても効果が薄まる, KBではコントローラーの様に操作感覚が左右対称にならない, 操作キーの割り付け方によっては兄弟のバランスが崩れる等。最悪のケースとしてKBでの操作に苦労していた場合、片側が無くなった事がむしろ楽になったと捉えられてしまう危険性も考えられるだろう。Co-opを無くしたのも同じ理由からで、別々に操作していたのでは根本から話が違ってしまうし、死亡後も片方が何もしなくなるだけで狙っている効果が生じない。 なおコントローラーの操作設定を変更出来ない件。特に兄弟を操作する側を左右スワップ出来ないのには理由がある。大抵のこのタイプのゲームではキャラクターの移動に左スティックを使用する為、居なくなった際の違和感を強調するには右手では無くてその左手側の喪失の方がより効果的であるという意味合いから兄の操作が左側固定にされている。 振動付きのコントローラーでプレイされた方には説明するまでも無いとは思うのだがエピローグの弟操作のシーン。泳げないので先に進めないという弟に、振動によって死亡した兄(の精神)が語り掛けるという演出で振動機能が使われている。そこで左側のトリガー(アクション)を併用することで、兄の精神的な助けを借りてそれまで一人では出来なかった行為が達成出来るというシーンになっている。これは最初から在ったアイディアでは無く制作途中に思い付いた物だそうだ。当然これは振動しないKBでは行えない。察しの良い人ならそういう意味合いかと理解出来るのだろうが、中にはKBでの操作がおかしくなるバグではないかという人までおり、その辺も嫌で何としてでもコントローラーで操作するゲームとしたかったのだろう。 死亡した兄を埋めるシーンはJosef Faresの実体験に基づいている。レバノンに居た7歳の時に死産した弟を母に命じられてこのゲーム内の様に墓を掘って埋めた経験があり、その時のイメージがこのシーンの描写に影響を与えている。 最後のシーンで家のドアの前に目立った形で花が置かれているが、これは弟の花への対応の変化を示すという意図。ゲームのスタート時にも目立った感じで花が咲いているが、ここで花にインタラクトした際と、最後に花にインタラクトした際の違い。そしてラストでは兄と同じ様に花に接しているというのを見せて弟の成長を表現している。 以下雑記。 ・途中で助けた女性の身体能力が異常だという点は、プレイヤーに何か裏が在るのではないか?というヒントを与える為の物 ・元々は左右バンパーもアクションボタンにしてもっと複雑な行為を可能にする予定だったが、単純化した方が良いとなってボツにされた ・兄の名前はNaia、弟の名前はNaiee ・弟の声優は実際には女の子である |