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ストーリー
 ストーリーのコアは2つ有って独立している。「村人が全員いなくなっている」件と「妹のエリザベスの行方」の2点で両者は別物。村に滞在している妹を訪問してみたら村人諸共いなくなっていたという話ではない。よってその解決へのストーリーをどちらも面白いと感じるか, 片方だけか, 両方詰まらないと感じるかは異なるので評価は通常よりは複雑になってくる。個人的にはエリザベスに関連する謎と解決の方が面白かったかなという印象で、村人消失の方はそれ程では無いという評価に落ち着く。それとは別にストーリー展開の方は良く出来ており、イベントも多く最後まで一気にグイグイと引っ張られる様な感じで進められる(それが短いと感じられるという逆効果に繋がってしまっている可能性はある)。

 この作品の面白い所は意外性に有り、ミステリは意外性が重要なのでその意味では高い評価を与えられる。だが意外な犯人とか驚くべきトリックなどで評価されている作品でも100%の読者が気付かないという事は無いし、意外に思うかどうかの保証はもちろん出来ない。それと詳しくは書けないが、ミステリの中には多数のタイプやジャンルが存在しており、ミステリのファンではあるがこういった作品を好まないという方も居る事は書き添えておく。例えば密室トリックにてそれが意外性は有るがリアリティには欠ける物であった際に、「現実味がないので駄作」と受け取るか、「意外性こそが最重要なのだからそれは問題無い」となるのかは人に因るなど、意外性さえ高ければ皆から高く評価されるとは限らない訳である。

 付け加えると自動ノートの様な機能は有るのだが簡素であり、登場人物の名前と人間関係などは混乱する恐れもあるので手書きで簡単にでもメモなどを取っておいた方が良いだろう。


 ここからはおそらく最も批判が多いと考えられるある事項について説明する。全てのプレイヤーからという意味ではないが、ゲームの評価がそこそこに落ち着いてしまっている原因であるのは確かだ。それは真相について詳しくは語られないという一件。誤解の無い様に正確に書くと、「村人が全員いなくなってしまった理由」, 「妹のエリザベスの行方」というメインの2点の謎に関してはちゃんと解答は提示される。なのだがその細部までは詳細には語られずに終わる。特に村人消失の事件においては幾つかの重要な件に対して明確な答えは与えられない。その曖昧に終わってしまう点をスッキリしないとして批判されているのである。

 Ragnar Tornquistはこの件に対して「一部のゲームメディアからのレビューやユーザーからは曖昧な結末に対して批判を受けたが、それに対して反論するつもりは無い。意図的にそういう風にしたのだが、批判はもっともでありそれは受け入れる。シナリオライターである私の頭の中には細かい部分まで実際にはどういう事が起きたのかについての答えは存在しているが、それを明らかにするつもりはない」とコメントしている。では曖昧(オープンエンド)にした理由とは何かと言うと、繰り返し書くがこのゲームで最優先に重要な事項とはエドワードとリッシーの会話であるからだとしている。

 エドワードとリッシーの会話は全てスクリプトで選択肢も無いから全プレイヤーが同じ物しか見ないとするなら、シンプルに全ての謎に対して明確な解答が与えられる方式で構わない。ところがこのゲームでは選択肢によって会話内容は変わるし、任意の時に発動キーで行える自由会話の内容は各プレイヤーがどこでどれだけ利用したのかによって体験が変化する。そうなると事件の内容に関して2人の間でどんな意見交換があったとしても結論は変わらないという方式では、その各プレイヤーによる会話の体験変化が活かされないと判断したという事である。そこで2人の会話やプレイヤーの選択肢に応じて「ある謎に関してはこういう真相だったのではないか」というのを臭わせる様な会話内容を提示してやり、そういう事だったのではないかと思わせて終わらせる方が2人の会話の内容を活かす形になるとしてそれを採用したそうだ。

 よって別のやり方としては会話の内容に応じて異なる真相のエンディングに誘導するという方法もあった。しかしこれでは結局“本当の真相”は曖昧なままとなって明確な結論の存在しないストーリーという点は変わらない事になる。結局はどの方式を採っても一長一短で欠点は生じるので、プレイヤー別に体験が異なる2人の会話内容を最大限に活かせるという長所を採る代わりに、曖昧なままに終わると言う欠点は受け入れる事にしたという話である。問題があったとすれば「任意の場所やタイミングでリッシーに話し掛ける事が可能で、またそれによってプレイヤーが体験する会話内容がかなり変わってくる」というシステムをプレイヤーに対して強くアピールしなかったが為に、誰がプレイしても会話の内容は大して変わらないという誤解を与えてしまい、曖昧なままで終わらせる理由を想定していたほどには理解して貰えなかったという点になるだろう。

GRAPHICS & SOUND
 Unreal Engine 4を使用。グラフィックス設定のプリセット4種。個別の設定項目は多数。画面モードは排他的フルスクリーン, ボーダーレスフルスクリーン, ウインドウの3種。

 目を惹くのはモーションキャプチャーを使っているというリッシーの動きの滑らかさ。様々な動きを行ったりするが自然である。表情の変化の方も多彩。フィヨルド地形の風景も綺麗だし、インドアの方も調度品が細かく揃っていたりと力を入れているという感想。ただしロケーションは少な目でありバリエーションには欠ける(少ない箇所故に力を入れられたとも取れる)。


 ボリューム調整可○, 3Dサウンド対応(一部非対応の箇所もあり), ボイス有り。そこがメインだけあって主役二人のボイスはクオリティが高い。全体的にエフェクト系の音数は少な目。BGMはクラシック調の落ち着いた物が多く使われている。

BOTTOMLINE

[PROS]

○主役2人のキャラクターの会話の多彩さ
○惹き込まれるようなストーリー展開
○ストーリーの意外性
○自然な進行ガイド機能
○リッシーのアニメーションや表情変化
○日本語翻訳は優秀



[CONS]

×ボリュームは3〜4時間程度と短い
×ハッキリとは示されずに曖昧なままで終わる謎も有る
×状況が記録されるノート機能は内容が少なく役に立たない
×タイトルはゲームの内容を的確に表しておらず不適切
△ストアの説明不足でどんなタイプのゲームなのかが事前には判り難い




 まず最初にこれはホラーでは無くミステリである。かなり軽度のホラー要素は含まれるがモンスターに襲われるとかの話ではなく、村人の消失の理由と自身の妹の行方という二つの謎を追跡するストーリーになっている。タイプとしては謎解きアドベンチャー系では無く、プレイヤーによるパズルの解決や推理の提示システムなどは含まれない。ゲームプレイに当たる要素はほとんど存在しない為にミステリ[小説・映画・ドラマ]に近く、ストーリーを追って行くだけで最後まで到達する事が出来る様になっている。

 最大の魅力も2人の主役の会話になっており、推理内容に関しては次点の扱いというナラティブな要素が強い作品。その意味では特にミステリが好きではないという人でもキャラクターの出来映えの方で充分に楽しめる可能性は持っている。

 価格の割には短いが既にセールも多いし大きな問題では無い。お勧め出来るのかについては評価を分けるであろう(未プレイの方には説明し辛い)件も存在しているのだが、多数のプレイヤーにとって問題視されるほどの事では無いので好みに合いそうだと感じるならとりあえずやってみて欲しいとは書いておく。

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