GRAPHICS & SOUND |
・グラフィックス設定のプリセット無し&個別の設定項目は無し ・画面モードはフルスクリーンかウインドウでF4にて切り替え ・ウインドウの解像度は1280*720で固定(昔のバージョンのツクールよりは高解像度) ・フルスクリーン時はF3キーにて描画画面サイズを全画面とウインドウと同一サイズへの変更は可能 などユーザー側に変更の余地はほぼ無い。何も変えられないという点に不満は残るが、RPG Maker製のゲームは有料作品でもほとんどこんな程度であって、このゲームの制作者が特に対応をサボっているという訳でも無いので減点対象とは言えず。RPG Maker製のゲームに慣れている方なら特に問題は無いだろう。 描写は多色のカラフルなシーンはほとんど無く、モノクロ系の暗いシーンにアクセントとして単色カラーの組み合わせというのが大半。水彩画的な滲んだイメージの色彩が使用されている独特なグラフィックスの描画シーンも含まれている。キャラクターの立ち絵のクオリティが高いのは確かなのだが、ちょっと美形揃い過ぎるのではないかという印象は受ける。日本の文化に強い関心があるという話なので、やたらと美男美女ばかりという漫画やゲームのキャラクターデザインに影響を受けているという可能性はあり。ホラー要素を強めるのならばもっと普通っぽいキャラクターデザインの方が良かった様に思う。 それと理由は解らないのだが、ゲーム内のキャラクター画像(動くキャラクターでは無く、ゲーム内に写真などで登場するキャラクター画像)とは、同じ人(実際どうなのかは未確認)が描いているとは思えない位に差が有り違和感がある。だがこっちの方が崩れている分だけ気味悪さがあってホラー感は出ている。同様にあえてこういう風にしているのかは解らないが、凄く粗っぽいグラフィックスになっているシーンが幾つか存在しており手抜きの様に見えてしまう。 ボリューム調整可○, 3Dサウンド非対応, ボイス無し。やはりストーリー重視であるならボイスは欲しいなとは感じる。発言者は表示されるが、声があるなら誰が喋っているのか解り易い(一部逆効果になる箇所はボイスをカットすれば良い)。BGMは平穏な曲が多いのだが、対して環境音的な効果音(BGS)は不気味な物が多い。ここまでホラーゲームが多くなるとサウンド面で抜きん出るというのは難しいのだが、そんな中でもBGSの方はかなりのクオリティの高さを誇っている。 |
BOTTOMLINE |
[PROS] ○意外な事件の真相(ストーリー) ○二転三転する展開はスリリング ○事件の内容は“現実”でありホラー要素とは別物(呪いや超能力等は真相に関わりが無い) ○登場人物に魅力的なキャラクターが多い ○中国社会を舞台にしたゲームは日本人視点からすると新鮮さあり ○ホラー系の効果音 [CONS] △中国国内が舞台となっており、国民の感覚や知識が要求されるという面は一部あり △英語I/Fだと名前が英語読み表記だけなので、立ち絵の無い登場人物の区別が判り辛くて混乱する △RPG Maker製故の制限や不満点が存在 |
ストーリーを最重視しており、そしてそのストーリーが非常に面白い作品。一種の推理物だが真相の意外性は高く評価出来る(正確には事件が起きるキッカケとなった理由の意外性)。主人公は死後の世界とコンタクトが出来る能力を備えており、それを使って情報を得ながら真相に迫るという設定なので本格推理物では無いが、ストーリーの意外性を重視される方には強くお勧め出来る物となっている。 中国社会を舞台にしているのでその背景設定が絡んでくる一面はあり、その辺りはキーワードで検索したりして事情を学習したりする方が良いとは言えるが、それ無しではストーリーがまるで理解出来ないという設定では無いので過度に心配はしなくてもOK。 ホラー要素は薄め。ジャンプスケアなどは無いし、敵から逃げ回るといったスキルを要求されるアクションシーンも出て来ない。よって怖さを重視してそれを求める人にお勧め出来るタイプではない。 パズルは結構出て来るが難易度は低めで、手応えがあり解いていて面白いといった物はほぼ無いのでパズルの面白さを重視する分には不向き。 |
ストーリー関連 |
登場人物情報。ネタバレは含まれないがある程度はゲームの序盤に明らかにされて来る情報を含んでいるので、最初からでは無くどれが誰なのか混乱してきたら確認するという使い方で良いだろう。 ・Tian Xiangrong Tian家の家長。記載は無いが年齢としては60〜65歳程度か。自尊心の塊の様な人物で、昔は金が有ってそれを誇らしげにしていたのだが現在では貧乏となっている。働いていた銀行を解雇された件には「解雇では無い」と反発し、金に困っているのか?との問いに怒ったりと、他人から自身が低く見られる事に我慢がならないという性格。 ・He Guilan Xiangrongの妻。夫婦仲は良くもないが険悪でもない。立場的にも亭主関白でもかかあ天下でも無しといった関係だが、夫のXiangrongにはズケズケと物言いをしたりもする。 ・Tian Yu 上記夫婦の長男。てんかんの発作を起こして2年前に病死。夫婦からは非常に可愛がられていた。死亡しているのもあってほとんどゲーム中に人物像の描写は無い。仕事が無く父親のXiangrongが必死に探したりしていたが、単なる就職難だったのか本人にやる気が無かったのかなどは不明。 ・Zhao Xiaojuan Tian Yuの妻。写真が趣味。Tian Xiangrong夫婦の義理の娘となる。娘を溺愛している。夫が死亡してからは精神的に不安定と周囲からは見られていた。ゲーム開始時点で警察からは3人の毒殺犯でありその後自身も自殺したとされている。 ・Tian Fangfang Yu夫婦の子供。結婚は9年前なので7,8歳程度と思われる。夢想家で学校では出来の悪い子供として問題視されている。 ・Chen Quingsui 臨時教師としてTian Fangfangのクラスにやって来た人物。Fangfangを通じてZhao Xiaojuanとは知り合いで、彼女が事件の犯人とはどうしても考えられないとして独自に現場調査を行ったりしている。 ・Ye Jingshan Tian Yuが発作を起こした際に運び込まれた病院の医師。父親のTian Xiangrongからは息子の死亡の責任は彼にあるとして激しく憎まれている(He Guilanからはそうでもないが、この病院は利用するなとZhao Xiaojuanには命じている)。それを理由に暴力を振るわれて骨折し、更に責任を問われて損害賠償をもさせられている。Jingshan自身はこの一件をもう気にしていないとしているが、外部から見るとTian一家殺害事件の動機を持った人物とは言える立場。 ・Wang Jincai 商店の主人で放火事件の発生した葬儀場における棺桶の中の故人。Tian家との関わりあり。 ・Ms Zhang シャーマン, 占い師, まじない師, 霊能力者等のいずれか。それを宣伝して商売をしている女性。 以下はストーリー関連の簡単な解説。完全なネタバレなので注意。 昔Tian XiangrongはWang Jincaiと組んで墓荒らしを行っていた。墓の中に入れられた貴重品(骨董品等)を発掘しそれを売り捌いて金を稼いでいたという事である。この窃盗はTian Xiangrongが金に困った状態になってから再度行われる様になっている。 息子のTian Yuの死後、母親のHe Guilanは息子の霊魂とのコンタクトを可能にするという霊能力者Ms Zhangの元を訪れてそれにハマる様になり、最初は疑っていたTian Xiangrongもそれに倣う様になってくる。そこから彼等は息子の妻であるZhao Xiaojuanに息子の霊魂を宿らせようと考え出す。 Zhao Xiaojuanは義理の父親であるTian Xiangrongが医師Ye Jingshanに暴行を働いた件でコッソリと謝罪に行った時からYe Jingshanとは親交を持っており、この乗り移りの儀式に関しても彼に相談を行う。そこでYe Jingshanはこの一件を現在の問題の解決に逆に利用しようという案を持ち出す。現在の問題とは子供であるTian Fangfangをその才能を活かす為に市の大きな学校へと転校させようという臨時教師Chen Qingsuiの提案に、義理の両親がOKを出してくれないという件になる。だが最もTian Xiangrong夫婦に対して説得力を持っている人間は誰かと言えばTian Yuに他ならない。だからTian Yuの霊が本当に乗り移っていると信じさせる事が出来れば、そのTian Yuの口から子供(&妻のZhao Xiaojuan)を市へと引っ越しさせるべきだとする説得も可能になるという作戦である。 本当にそんな事が可能なのかと疑うZhao Xiaojuanに対して、Ye JingshanはTian Yuの特徴を聞き出す。まず喫煙の習慣があったという情報から、喫煙の振りをする事で偽装を図る事にする。Ye Jingshan自身も喫煙はしないが、タバコを持っている事で偽装に成功していると語る(タバコを止めるようにと患者に日頃言っている立場上大っぴらには吸えないし秘密にしているのだが実は喫煙者なのだ、とタバコを見せる事で主人公も騙している)。また夫は魚料理が大好きだったが自身は一切食べる事が出来ないという情報から、それなら魚を食べてみせれば信用させるのに効果的だとして、吐き気止めの薬を処方するので訓練をしようとも提案する。 この偽装作戦は成功し、Tian Yuの振りをしての説得によりZhao Xiaojuanと子供のTian Fangfangは市へと引っ越しが決定した。しかしその成功が事態をトンでもない方向へと変えていく。息子の霊に会える様にはなったものの、この儀式は7日に一回しか行う事が出来ないという制限があった。何とか息子とずっと一緒に居られないものかと考えたTian Xiangrong夫婦はMs Zhangに相談し(この時点では逮捕されており金を積んで相談したといった記述あり)、その結果息子の霊魂を入れておく体が必要だと教えられる。その体となれば現在でも一時的に霊魂を宿す事が可能になっている妻のZhao Xiaojuanの体以外には考えられず、霊魂の入れ物にする為に彼女を殺そうと思い立つ。ただし体を傷付けてはならないから毒殺という方法を採る事にして、殺鼠剤にすり替えた錠剤を彼女が常用している睡眠薬のビンの中に入れる。 子供のTian Fangfangは錠剤が何なのかは知らなかったが、母親から「これを飲むと気持ちがスッキリとする薬」だとは聞かされていた。そこで祖父も祖母も元気が無いし、これを皆で飲めば気分がスッキリするのだと考えて朝粥の中に錠剤を混ぜ込んでしまう。そして悲劇が起きてしまった。 Zhao Xiaojuanが遺体を見て何を思ったのかは記述が無いので解らない。彼女は殺鼠剤へのすり替えを知らないのだから、何で全員が毒らしき物で死んでいるのか、何が起きたのかを全く理解出来なかったはずである。医者を呼んではいないので娘は完全に死んでいると判断したのか、それで完全なパニック(絶望)状態となって首を吊ったという事になる。 なおTian Yuは死後の世界において盗品を返さなかったという罪により長きに渡って拷問を受け続ける状態となっていた。墓荒らしの犯人では無いがその恩恵を受けていたからという記載が残されている。 Ye Jingshanは喫煙家だと見せ掛けていた事実を利用して、車内での喫煙による事故で焼死したという偽装を試みたが、骨の分析により2年前の骨折の跡が見当たらない事から彼の死体では無いと気付かれてしまう。死体は最初の葬儀での放火事件における死体であったWang Jincaiの物。 Ye JingshanはなぜそこまでZhao Xiaojuanの市への脱出に協力的だったのか。それは彼と同じく彼女が人身売買による被害者だったからである。彼女の精神の復活はその状態から抜け出す事しか無いという考えから、積極的にその為の工作に関与していたという訳である。この人身売買という件が中国作のストーリーとして重要な役割を占めており、レビュー本文において私自身が感覚的にちゃんと掴めているのかハッキリしない件としていた物になる。中国, 人身売買といった単語で検索すれば中国社会の闇とも言えるこの件についての解説記事は沢山見当たるので、興味のある方は読んでみると理解が深まるだろう。 Chen Qingsuiについて。彼女の正体はある雑誌の記者であり、Tian Xiangrongによる墓荒らしの事件について調査を続けていた。そこで学校の先生になりすましてTian Fangfangのクラスを担当。そこから母親Zhao Xiaojuanにコンタクトする。Chen Qingsuiの目的は盗品をさばく際の取引の記録として残されている証拠の台帳。そこで彼女はTian Fangfangを市の学校へと推薦する代償として、Zhao Xiaojuanに家の中からTian Xiangrongが残している可能性のある台帳を探してもらうという取引を行う。そして入手した証拠の台帳は会社へと送られたが、購入先の取引主に雑誌社に関係を持つ人物もいた事から問題視される。最終的には記事になって公開されたとあるがどこまで公開されたのかは鮮明ではない。 Chen Qingsuiは最後の方では水難事故に遭ったのではないかとされて捜索中になっており、それから主人公とはまた過去(死後)の世界らしき場所で遭遇はしているが既に死亡しているのは確実。そしてこの死亡の件なのだが、実はゲームの冒頭時点から既に彼女は死亡していると考えられる。つまり主人公がゲームを通して会っていたのは、彼の死後の世界とのコンタクトが出来るという能力によって遭遇していた死者のChen Qingsuiであったという話。本文でも書いたように彼は自分の能力を自発的に発動したり出来る訳ではないので、今現在能力が発動しているのかが自身では判らないから、目の前の相手が実在しているのか死者なのかが判別出来ない事になる。 死亡の根拠としては、彼女の水難事故は貼り紙としてアナウンスされているが、この貼り紙はゲームの冒頭で既に貼られている(最初の店の並びの掲示板), 主人公しか彼女を視ていない, 主人公が訪れた複数の死後(過去)の世界に一緒に付いて来ている, 彼女の傘が死後の世界に置いてある, 発見された手紙は長時間水中に有ったとされている等。 |