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シ ス テ ム |
キャンペーン 難易度は無し。アイテム持ち越しの二周目やクリア後の別モードは持っていない。 セーブ&ロード 機能無し。ゲーム自体が短く一回のプレイで最後まで到達する事を目的としているので未対応とあるが、実際には機能を導入するだけの制作コストや時間的な余裕が無かったからだと思われる。セーブ機能を設け難いゲーム構成というのは理解出来るが、ゲームが途中で落ちることもある訳だしチェックポイントセーブ機能はある方が理想。 OBJECTIVES 現在の目標の参照機能や矢印による方向ガイド機能は無し。ミニマップを含めてのマップ表示機能なども持っていない。 英語 字幕有り。会話文は文章が短めで難解なやり取りでもないが、全体のボリュームからすると割合としては結構な率を占めている。そしてストーリーや背景設定は会話からの情報が大部分となる為にある程度の理解力は必要。よってゲーム内の英語をあまり詳細には読んだりしないという方には不向きである。 その他 *キーアサイン可○, マウス感度設定可○, マウス反転可○, 明るさ調整不可× *一人称視点固定, FOV調整機能有り(ただし一定値よりも拡げると警告が出る) *スプリント○, 屈み○, ジャンプ× *照準(カーソル)無し *Steam実績対応 Steam版にのみ用意されている実績機能は特殊な設定となっており、ゲームの終了後に一覧画面においてそのプレイ中に解除された物が順番に明らかにされていくという仕様。従ってゲーム内のどのタイミングにて解除された物なのかは確認出来ず、また実績の説明文自体も何をすれば解除されるのか意味が解らない物が多い。更に途中セーブが出来ないので解除し損ねた物に再チャレンジするには最初からその都度やり直さないとならないと、コンプリートを狙うプレイヤーにとっては非常に難易度が高い物となっている(攻略ガイドは既に存在している)。 |
BASICS |
Tangiersとはゲーム性が異なるが、世界観や雰囲気に関してはデヴィッド・リンチ, ダダイズム, インダストリアル・ミュージック(ノイズ系)等の影響を受けているのは同じ。そして小説家ウィリアム・S・バロウズの影響がここでも強い様で、彼の幾つかの作品における「カットアップ」(文章をバラバラにしてランダムに繋げる実験的手法)的な表現方法がこのParatopicでも使われている。 カットアップ的な構成としてはThirty Flights of Lovingとの類似性が指摘されているし、謎めいたストーリー展開としてデヴィッド・リンチの影響が覗えるVirginiaが比較対象に挙げられたりもしている。ただ同じく類似性が指摘されている定番作品のSilent Hillはプレイしたことが無いそうだ。 ジャンルやタイプは?と聞かれても何とも言い難い作品で、ホラーに分類されているが一般的な意味でのホラーでは無い。通常の意味での“怖がらせる”といった意図は持っておらず、ジャンプスケア的なシーンは一箇所のみだしグラフィックスが非常に粗い為にそのシーンも恐怖感は感じられない。流行りのサイコロジカルホラーでも無くて、このタイプでは少なくとも「何を持ってしてプレイヤーを怖がらせるのか」は明確だが、Paratopicではそれすらハッキリしていない。ホラー作品におけるウォーキングシミュレーターという分類も見掛けるが、制作側はウォーキングシミュレーターという分類を固く否定している。 事前に語れるストーリーの内容としては、Assassin(暗殺者), Smuggler(密輸業者), Birdwatcher(バードウォッチャー)という3人のキャラクターが登場する構成で、時代としては1980〜90年代であろう。密輸品として扱われているVHSビデオテープの中身の謎に関する話となっている。 ゲームの進行は一人称視点による3D空間の移動によるが、グラフィックスの見た目は3Dのポリゴンが利用される様になった最初期のPS1レベル。映像表現としてこの方が相応しいという意味での意図的な選択なのか、グラフィックスのクオリティを上げるには予算が足りなくて無理という意味からの妥協が含まれているのか、あるいはこのレベルしか無理という条件下から生み出されたというゲームなのかその辺は不明。 アクセス出来るアイテム類はハイライトされる仕様で判り易いが、特に意味の無い物が大半を占めている。パズル的な要素は持っておらず、何かを考えて達成しないと先に進めないといったゲームではない。スキルを要求されるアクションシーンやゲームオーバーも無し。進行方向のガイドは無いので迷う可能性はあるが、マップが広大という訳では無いのでうろつき回っていればその内にゴール地点へと到達出来るはずであり、クリアまでに詰まるシーンはまず無いとみてよい。 |
GAMEPLAY |
一回のプレイ時間は40〜50分程度。途中セーブは出来ない。リプレイ性有りというかリプレイしないと理解出来ない部分が多いので、実質的には2,3周はする事になるだろう。 全体のボリュームからすると会話シーンの割合は結構多目で、ここは選択肢にて進められる方式。その選択に応じた分岐方式となっており、一度の会話にて順番に相手の全ての返答を読むことが出来るという風にはなっていない。そしてここでの選択肢により、その後のイベント発生に分岐が生じる箇所も一部ありとなっている。 ストーリーの進行は一本道だが、寄り道的な発見をしないとアクセス出来ないエリアも用意されている。 ストーリー構造の最大の特徴はカットアップで、3人の操作キャラクターが何らかの明示やアナウンスも無しに突然切り替わる。そして今誰を操作しているのかすら判然としないシーンもあるという点。その理由としては、まず切り替わりの前に暗転や説明文と言った切り替えを具体的に示す案内が一切存在しない。次に視点が一人称で自分の体は見えない仕様であり、所持アイテムも複数のキャラクターでかぶっている物が有ってそれだけでの特定は完全ではない。更に会話時に自分の操作キャラクターの方は音声が出ない為にそれでの区別は不可。突然シーンが切り替わったりする際にも、それが同じキャラクターで切り替わったのか、別のキャラクターに切り替わったのかが明確には判別出来ない事がある。そしてゲームの進行が必ずしも時系列に沿っていないという所も混乱を招く元になっている。 結果的にどこが誰のパートなのかが特に初回プレイでは判別し辛く、どういう話なのかという大凡の外観&展開を掴んだ上でのリプレイによって段々と理解出来てくるというストーリーになっている。とは言っても私は三回リプレイしたが、それでもまだ全てにおいて誰のパートなのかを確実に把握しているとは自信を持って言えない状態である。この辺りは掲示板におけるストーリー論議でも意見が分かれたりしている。 ストーリーの内容に関してネタバレにはならない範囲で解説を試みてみると、第一に「まるで訳が解らない」といった話ではない。この手のアバンギャルドな作品(どちらかと言えばゲームよりも映画の方に思い付く物が多いと思うが)においては、「このシーンは一体何を比喩(暗喩)しているのか解らない」,「何が起きているのか理解不能」, 「そもそも何を伝えたい作品なのか?」, 「何回プレイ(視聴)しても判然としない部分が在る」といった物が多い。しかしParatopicはそれほど意味不明な作品では無く、何が起きているのかは概ね理解出来るというレベル。詳細な解説が用意されている訳では無いので背景設定などはハッキリしないが、何が何だか根本から意味不明というタイプのストーリーでは無いのは確かである。 ある種のホラー的なテーマの話なのだがそれ自体が特別に怖いという内容では無いし、徹底してプレイヤーを怖がらせるようと押してくるといった展開でも無い。怖さのグラフィックス表現としてもその低解像度の粗っぽさが逆に効果を挙げている箇所はあるものの、反面それが弱点となっているという印象もあり万全とは言えない。敢えて言うなら不気味な雰囲気によって心の不安定さを煽る様な作品なのだが、気味の悪いホラー作品と言うならこれよりも上の作品は他に幾つか有る。そして非常に面白いゲームなのかと言われると答えは「No」であり、“面白い”というのとはちょっと異なった魅力を持っている。 そのParatopicの魅力を説明するのは難しいが、それはユニークで不可思議な感触にあると言えよう。個人的にはゲームというよりはある種の音楽を連想させる作品で、奇妙なアンビエントノイズの鳴る中を浮遊しながら悪夢の世界を漂っているかの様なイメージ。上記の様に非常に怖いという内容では無いのに、何故こんなにも不安感や気持ち悪さを感じさせるのだろう?という「良く解らない異常さ」を持っている。どこからこんな発想(内容ではなくストーリーの構成方法)が出て来たのだろう?というのが理解不能であり、理解不能な事はある意味で人に恐怖感を与えるというのが良く解る作品でもある。今までに体験したことも無いし、他にもこんなゲームは無いだろうという珍しさを備えている。 最後に欠点としては、車を運転するシーンが全体のボリュームの割には長い。初回プレイではそうでもないのだが、リプレイ時には展開が解っているだけに長く感じられてしまう(3,4分程度の搭乗シーンが三回出て来る)。 |