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シ ス テ ム

キャンペーン
 難易度は無し。アイテム持ち越しの二周目やクリア後の別モードは備えていない。


セーブ&ロード
 所々に置かれているカセットデッキを再生するとセーブされる。再生するテープが必要となるとかの条件では無い。これを持って動かせる訳では無いが、セーブのタイミングをある程度はズラす事は可能(周囲のアイテム類に全てインタラクトしてから行うとか)。1箇所のみを上書きする方式でチャプター等の選択は出来ない。


OBJECTIVES
 現在の目標の参照機能や矢印による方向ガイド機能は無し。移動中のミニマップは無いが、全体マップ表示は地図を手に入れれば可能となる。


英語
 字幕機能は有り。日本語には非対応


その他

*キーアサイン可○, マウス感度設定可○, マウス反転可○, 明るさ調整可○
*一人称視点固定, FOV調整機能無し
*スプリント○, 屈み×, ジャンプ×
*照準(カーソル)無し
*Steam実績対応

BASICS
 舞台となるのはニューメキシコ州の人里離れた僻地に位置するBlack Sage Ranch。事件後に閉鎖されているこの場所には当然誰もおらず、そこにある人物が訪問して内部に侵入するという設定。集団自殺が発生したのは1993年だが、この訪問が何時の事なのかは明確では無い。しかしかなりの後なのは確かで、例えば現在付近という風に捉えても問題は無いだろう。

 ストーリー設定は1978年に起きた人民寺院における集団自殺(ガイアナ, "ジム"・ジョーンズ, ジョーンズタウン, 死者918人)との関連性が見て取れるが、その他にも様々なカルトを含めた宗教団体の活動内容についても影響を受けているそうだ。


 先にネタバレとならない範囲内でのゲーム内容の説明。このSagebrushは探索型のアドベンチャーゲームであって一般的な意味でのホラーゲームでは無い。確かに設定としては「自殺した人間の怨霊が出現して襲われる」, 「実は跡地内に人間が居て...」といったホラーゲーム的な展開も可能なシチュエーションだがそういった出来事は無し。より具体的には戦闘やステルス, 隠れたり逃げ回ったりというゲームプレイは含まれていない。

 ただしある種のホラー要素を持っているとは言える。集団自殺の起きた既に誰も居ない跡地を一人で探索するという事から薄気味悪さの雰囲気は十分に感じられるが、ジャンプスケアの要素は無し。プレイヤーを突然ビックリさせるような仕掛けは無いのでその辺りが苦手という人でも大丈夫である。


 ストーリー内容について。最初のアイディアではプレイヤーが探索を続けて行くと、最後になって「実はこの宗教団体は集団自殺をしていた」という事実に突き当たるという風にしようと考えていたが、人民寺院の件もあってその結末には簡単に予測が付いてしまい意外性が生まれないとして破棄。始めからその事実はプレイヤーに知られているという設定に変えて作り直している。

 個人でしかも本業の合間に制作するという状態、かつ予算も無いという件からかなり内容を絞り込んでおり、この教団がどの様な教義を持っていたのか等の宗教的な説明は簡素に済ませている。メインとなるのは教団内で起きていた人間ドラマと言うか事件と言うのか、個人間の対立や教団運営の問題に関連したゴタゴタなどである。宗教的な考え方の違いに因るある意味高尚な議論における対立というよりは、もっと個人的で人間臭い原因によるトラブル等が扱われている所が面白い。日本においてはアメリカとは異なりキリスト教に詳しい人は少数となるが、キリスト教の知識が少ないという点はこの物語を味わう上でのハンデにはならないのは良い所と言える。

 マップ内を探索してみての農園内の施設類の物理的な規模の印象からすると、この教団の構成人員数はせいぜい全体で30人程度ではないかという感じである。しかしそれが作者の意図する教団の規模なのかとなると断定は出来ず。例えば戦争物のFPS/TPSなどにおいて、実際には非常に大規模な戦場にて数百〜数千人規模の戦いが起きているという設定なのだが、そんな巨大な戦場をマップとして作り込んで描画するにはPC性能が足りず、また多数のAI兵士を動かすのも困難。なのである程度の広さのマップに数十人程度しか居ないという風にしか出来ない。後はプレイヤー側に、その辺は理解した上で「実はここはもっと広くて物凄い数の兵士が戦っているのだと脳内補完をして下さい」と暗にお願いするというケースは見られる。それと同じで実際にはもっと大規模な集団であったと、同じくプレイヤー側で脳内補完をして下さいという話なのかもしれない。

GAMEPLAY
 クリアまでは3時間弱。文書を読んでいる時間が多くを占める為に英語ネイティブならもっと早いはず。制作側も2時間以内のボリュームとしているし、実際に2時間以内でのクリアという人が多い。エンディングは一つだけで、実績目当ての人とかでもない限りはリプレイ性はほぼ無い。もうちょっと長い方が良かったとは感じられるが、値段も安い方なのでこの短いという点は大きな欠点とは言えないと思う。

 基本的には教団の拠点の跡地内を探索して、発見した文書類を読み集団自殺に至るまでの間にどんな事が起きていたのかを理解していくという構成。先に書いたようにあまり文章量、すなわちストーリーの内容は豊富ではなくアッサリとしている。人員と予算があるならもっと複雑化させてボリュームを数倍に引き伸ばすことも可能だったと思うのだがそうはなっていない。

 それに応じて文章の量はそこそこであり、長文を延々と読まないとならないというゲームでは無い。また文章の内容も手紙やメモが中心であって難解では無い。とは言えそれがメインではあるので、とにかく英語を読むのが嫌という人には全く向かないゲームであるというのは確か。読むのを飛ばしたのでは何も理解出来ないし、当然面白くもならない。

 問題点としては、文書のみで各人物の顔グラフィックスなどが出ない為にどれが誰だったのか混乱する面あり。一度見た文書を後に自由に閲覧する参照機能が無い。ボイス再生時は字幕の流れが結構早い等が挙げられる。


 こういったタイプの探索物ではそこで起きていた事を後追いで知るだけになるので淡々とした展開となる事がままあるが、このSagebrushではそうなっていない。理由の一つ目はストーリー自体が興味を惹かれる内容となっており、それで次はどうなったのか?と先に進めたくなる展開を用意しているから。またホラー的な驚きは無いと書いたが、ストーリー展開的には驚かされる要素を含んでいる。それと途中までは、この跡地を探索している(自分が操作している)人間は一体誰なのか?、また(セーブポイントにもなっている)カセットテープから再生される声の主は誰なのか?という謎もプレイヤーを先へと引っ張るモチベーションとなっているというのもある。総じてストーリーの内容及びその展開のさせ方(見せ方)は良く出来ており高評価が与えられる

 なお完全に最後まで単に文書を見付けては読み続けて終わりという風に進むのかとなると、そこは未プレイの方には答えられないとだけ書いておこう。終盤の展開をどう捉えるかは人によるだろうが私としては肯定的に評価している。後はここまで読んで「なんかXXXがXXXなのって設定がおかしくないか?」という違和感を持たれた方も居ると思うのだが、それに関しては最後までプレイすればその違和感は解消されるので気にしないでOKである。


 マップは基本的には一つだけでプレイ中にローディング画面は入らない構造。そのマップ内に全ての施設が存在しており、建物内部に入った時などに切り替えは発生しない。これはそういう風に世界をデザインしたかったからというシンプルな理由から。地図を入手すれば随時それを参照可能だし、見た目としても目印となる教会が高台に有るので方向を見失うことも発生しない。このローディングによる切り替えが無いのと短時間で終了するという点から「これはゲームの中の話である」との意識が希薄となり、まるで実際に内部を自分の足で探索しているかの様な感覚を得られるのはプラスになっている。

 ある程度マップ内は自由に移動可能だが進行ルートは一本道。先に進めるには鍵等のアイテムの発見が必要な箇所が幾つか有って、それ等の通過は決められた順番にしか進める事が出来ないという構造だからである。


 時間の流れは存在しておりちゃんと昼夜が切り替わる。それと関連してだが、暗い状態ではフラッシュライトが無いと特にアウトドアでは周囲が良く見えない。またインドアについては灯りのスイッチが数多く用意されており、昼夜の状態に関わらず建物の発電機を稼働させるなどして灯りを付けないと「暗くて読めません」となってしまう設定。ただこのフラッシュライトの使用は絶対では無く、重要な文書を読まないとクリア出来ないという設定では無い為に、このライトの存在に気付かずに(or必要なアイテムを入手出来ずに)クリアまで進んでしまったというプレイヤーも居る様だ。

 まずフラッシュライト自体は(インベントリーには無いが)最初から持っている設定で、見付けないとならないのはバッテリーの方。これは使用時間無限なので一個だけ発見すればOK。ただ全般に粗いグラフィックス故に見た目としてそれがアイテムなのか判別し辛いという件もあり、その存在を見逃してしまう恐れもある。よってこの件はもっと判り易くするべきだったのではないかと思える(バッテリーの入手場所を複数にする, バッテリーの存在を仄めかす等)。ヒントとして入手出来るのは結構早期のうちで、灯りのスイッチが無い場所で「暗くて読めない」と出るならそれはフラッシュライトが必要という意味であり、それが出る場所に到達しているなら今の時点で行かれる場所にバッテリーは存在しているという意味でもある。


 謎解き要素は簡易であり、頭を悩ますような物は含まれていない。その辺りを期待される方には向かないと言えよう。むしろ厄介なのはグラフィックスが粗いだけにアイテム類の見落としが発生する可能性がある所。干渉可能なオブジェクト類はハイライトされる点は良いのだが、そのホットスポットが小さなアイテムも有りうっかり操作出来るというのに気付かない恐れもある。これは文書類も同様であり、文書類にやるべき事やヒントが書かれているのでそれ等はちゃんと全部見付けて読まないとならない。

 インターフェース上の問題点を他に挙げておくと、

・カーソル表示が無い為に対象となるオブジェクトに上手くハイライトを合わせられないケースあり
・インベントリー内のアイテムは使用してもう要らなくなったら自動的に消える物と残る物が混在している
・ドアは片開き。また自動で閉まるので面倒なケースも発生する。

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