EPISODES |
以下は各エピソードの中身について簡単な感想(注意点も含む)。 *EP1: プロトタイプのフリーゲームとして先行リリースされていたエピソード“The House Abandon”。中身は簡単なテキストアドベンチャーゲームを解く事に終始するという形で難易度は低く、すんなり進めば20分程度と一番短い。これが最もストレートなホラー作品と言える物でシンプルに怖い。 *EP2: 装置とモニターが用意されており、指示に従って装置を動かすという形で進められる。モニターの表示が操作マニュアルになっており、装置の操作方法はそこにアクセスしてやり方を理解するという方式。マニュアルの表現は簡素で難解では無いし、指示される操作順に番号が振ってあるので解り易い。 このエピソードの面白さの一つは意外性。途中からとても事前には予想も出来ない様な展開になって本当にビックリさせられる。もう一つはここでもモニターに向かってテキストアドベンチャーゲーム風の事をやるのだが、実際にやる行為はテキストアドベンチャーゲームでは無い。このテキストアドベンチャーゲームとやる事は一緒だが実際には異なるというアイディアは秀逸で感心させられる。 <注意> ゲームの冒頭によく見る「Epilepsy Warning」(高速で明滅する強烈な光による影響)の警告文が出て来るのだが、このEP2内において実際にその高速明滅する光の中の記号を読み取るという作業をするシーンが出て来る。読み取る記号が複数なのと相当に判読し難い設定の為に正解するまでにはある程度の時間は見続けないとならず、実際に気分が変になったりする人も出たりと問題視されている件にもなっている。個人的には普通はこの警告があっても「どのシーンの事を指していたんだろう?」程度が多いのだが、このゲームの物はかなり強烈なので確かに問題と言われても仕方がない(少なくとも眼が疲れる)。代替の表現方法を選択可能にするという要望に対して開発側は「ある程度は調整しているし、あくまでも表現方法を優先したい」という立場で回避する方法は用意されていない。ただし公式に解答画像へのリンクが案内されているので、それをヒント集の項目に載せておく。見続けられないという方はそれで回避して欲しい。 *EP3: ここは設定としてはEP2と似通っており、片方の装置をもう片方のマニュアル画面を参考にして指示通りに動かすという形式。ただし内容は異なっており、個人的には一番出来が悪いEPという感想である。なんでダメなのかあまり詳しくは書かないが、マニュアルの参照方法がひたすら面倒で、様々な調整をしなければならず手間が掛かる。別に手書きでメモを取らないとならないシーンも多い。そしてそのマニュアルから読み取って装置を動かすという行為自体が面白くない。EP2では短いし単純だから気にならなかったが、こちらは長い時間掛けて手間の掛かる解読作業的な行為を続けなければならない。アドベンチャーゲームでも中にはこういったスタイルの作業を要求する物は有るが、私の好みでは無い。 しかしこのEP3も意外性という観点からならば評価が出来るのが救い。こちらでも途中から予想だにしていない展開になるのでそこは楽しめる。なので私同様にこの様な作業が嫌いな方も、我慢してやり続けて何とかそのポイントまで進めてみてもらいたい。 *EP4: ここでそれまでのエピソードとは何だったのか等の解説が行われる。目まぐるしく展開が変わる内容でもあり、意外性はこのEPにおいても高い。EP1の直接的な続編とも言える。 |
GRAPHICS & SOUND |
Unityを使用。ゲーム内にグラフィックス関連の個別設定は一切無い。起動時のランチャーにて3段階を選択出来るのみ。グラフィックスの表現力が重要というゲーム性では無いので、特にこの点は欠点になっているという印象は無い。だがトラブルの項目に書いた様に画質の割にはパフォーマンスが良くなく、しかもランチャーでのみ変更可能というタイプで、また途中で終わるとセーブされないという仕様なので、性能が低いPCの方は低めの設定で起動させた方が無難というのは問題点。 ・上下黒帯は仕様。昔の連続ホラードラマシリーズを意識しており、そこからの映画的な表示デザインとなっている。 ・Vsyncの設定が無く、高速のビデオカードではFPSが上がり過ぎてビデオカードが過熱するという問題が発生。その為に現在は上限が60FPSにキャップされている。 3Dサウンド非対応。ヘッドフォンでのプレイが推奨されている。私の環境では他のUnityのゲームに比較しても音量が全体的に小さめで、更にゲーム内ではボリューム調整が不可という設定なので外部から調整を加えないとならなかった。この件も含めてだがゲームにおける各種基本的な調整機能を備えていないというのはマイナス印象となる。 BGMは昔のホラー映画やドラマを想わせるシンセミュージックが中心でこれはなかなか良い。ゲーム内ボイスは有り。しかし男性陣のボイスの方は全般的にあまり質が高くない様に感じられる。 |
BOTTOMLINE |
[PROS] ○体験した事が無いタイプのホラー演出が多くてオリジナリティが高い ○予想もしない意外な展開の連続で驚かされる ○純粋に怖いのでホラーゲームとしても優秀 ○ゲームの進行にテキストアドベンチャーゲームを使うという手法は新鮮で面白い ○各エピソードはバラエティに富んでおり飽きが来ない ○BGM [CONS] ×各EPの途中ではセーブ出来ない ×EP3における面倒な操作(無駄に長い) ×EP2での高速明滅する光のセクションは眼が辛い ×グラフィックスのパフォーマンスが悪い ×設定(オプション)画面におけるゲームの基本的な調整機能がほとんど用意されていない |
第一に言及しておくべき点としてこれはホラーゲームである。実験的でオリジナリティが高いがあくまでもホラー。テキストアドベンチャーゲームを解く形で進行するという構成であって、純粋な(テキスト)アドベンチャーゲームでは無い。ホラーをテーマにしたテキストアドベンチャーゲームがプレイ出来る事がメインという訳ではないので、アドベンチャーゲームのファンの方は注意。逆にアドベンチャーゲームは好きでは無いという方にでもホラーゲームとして楽しめるので、アドベンチャーゲームが苦手だからといって敬遠しないように願いたい。 テキストアドベンチャーゲームはゲームの進行に使われるのであって難解では無い。文章量も少ないし頭を悩ませる様なパズル系はほとんど出て来ない。それと英語だがそれほど英語力は必要とはしないタイプである。そのテキストアドベンチャーゲームを解く形で進められるのは半分程度で、他はマウスを用いたポイント&クリックやオブジェクトの操作系のゲームとなるがこちら側の方が難易度は高い。 とにかくこれくらい先が読めない意外な展開が連発するゲームというのも珍しい。「何が起こっているんだ?」と唖然とさせられる事もしばしば。ホラーで奇抜というとシュールな風景を多用した異世界(精神世界)をテーマにした物が多いが、そういった類とも異なっておりオリジナリティが非常に高い。そして単に奇抜なだけではなくて怖くて面白いともなっており、その点で非常に高く評価したいゲームである。 2017年にリリースされた多数のホラーゲームの中でもトップレベルの一つと感じるが、残念ながらそこまで知名度が高い作品では無い。その理由として逆にそのオリジナリティの高さが災いしていると考えられる。おそらく私のこのレビューを読んでくれたとしても、実際にプレイしてみての内容はプレイ前の想像とは大きく異なる物になる可能性が高い。つまり意外性が重要なだけにネタバレが控えられてもいるのだが、それだけにどういったゲームなのかやその面白さを未プレイの人に伝えるのが難しくなっており、それが原因でホラーゲーム界でも面白さの評判が上手く広まっていないという状況にあると言えよう。(大評判となった“The House Abandon”も狭いフリーゲームの世界においてである)。 価格は安いしホラーゲームのファンには強くお勧めしたい。既に何度かセールもされている。ただしセール時に買うつもりならば無料公開されているEP1(デモ)はプレイしない方が良いだろう。これをプレイしてしまうと続きが気になってセールまで待てなくなる可能性が高い。 |