次の頁      TOP

シ ス テ ム

キャンペーン
 難易度はEasy / Normal / Hardが選択可能だが、おそらく選択画面がそのまま残されているだけで設定は無いと思われる。プレイ中に変更したりしてもHL2とは違って「変更中」のメッセージが出ないし、実際に変化も感じられない。チャプターは最初から選択が可能。


セーブ&ロード
 どこでも自由にセーブが可能(クイックセーブ含む)。オートセーブもあり。


OBJECTIVES
 具体的に必要となる物、もしくはやるべき行為のヒントがその場で表示されたりするだけで、現在の具体的な目標を参照する機能は持たない。地図やコンパスの類も無し。


英語
 字幕機能無し。次のパッチで対応する予定とされているのみ。

 書類の形態で用意されている物はそのまま読めるが、一方でテープとして用意されている物や語りのパートには字幕が付かない。ログの形でインベントリー画面に残せる様にもなっていない為に、もう一度参照したければその場に戻ってくるしかない。

 困った事にプレイヤーを助ける存在のキャラクター(人間では無い)が低い声でボソボソと喋るという設定で、更に周囲の効果音に対してボリュームも低目という設定にされており、何を言っているのか非常に聞き取り辛い。時々くれる具体的なアドバイスは比較的聞きとり易いのが救いであり、またそれを理解出来ないとクリア出来ないという訳ではないので致命的な欠陥には至っていない。

 テープによる音声は主にストーリーを語る事に用いられており、それぞれが数分間程度と結構長目である。字幕も無いので無視して進めてしまう方も多いと思われるが、こちらはゲームのクリア自体には関係がない内容となっている。

BASICS
 Half-Life 2のModとしては珍しい特徴を備えており、一つ目は三人称視点でのプレイになるという点(一部例外あり)。もう一つはプレイヤーの操作するキャラクターは武器を含めてあらゆるアイテムを手に装備する事が出来ず(デフォルト所持のフラッシュライト以外)、またオブジェクト類を掴んで投げるといった行為も不可能にされている。つまり敵に対する一切の攻撃手段を持たず、逃げるという行為しか残されていない


*左右へのサイドステップは行えず、左右キーはその方向への回転振り向き動作になる
*マウスでも左右回転操作を行えるが、上下方向への視点移動は不可能
*ジャンプ, 屈み操作は持っていない
*移動は小走り程度の速度で、スプリントや歩き操作は無し
*フラッシュライトは無限に使用可能で、通常移動時は常時点けっ放しになる
*その他の操作はUseが出来るのみ


 重要なステルスとハイジャックシステムのルールについて解説。LMBボタンを押下した状態にするとキャラクターは屈み姿勢になり、同時にライトも消してステルスモードに切り替わって、この状態ならば敵に発見され難くなる。

 敵が徘徊しているエリアに入ると画面周囲に赤いエフェクトが掛かってそれを知らせる。この状態からはRMB押下にて徘徊しているグールの視界をハイジャックする事が可能になり、複数居る場合には押下する度に異なる物の視点に切り替わる。もしその視界内に自分自身が捉えられた時には、黄色の照準でその位置が表示される。なお即座にこの視界をキャンセルしたい際は移動すれば元に戻る。

 グールがこちらに気が付いている状態で、一定以内の範囲に入ってしまうと掴まったと判定され、画面が暗転してゲームオーバーになる。見付かっていない際にはその様に判定されないが、仮に背後からであっても非常に近くに行ってしまうと同様にアウトになる。

GAMEPLAY
 全部でチャプター数は6個となり、最初と最後はイントロ&アウトロになっている。総計でプレイ時間は6時間弱程度だった。前半のチャプターとなるCP1〜3までがとても長く、一体最後までにはどれだけあるのか?と思わされたが、後半のCP4〜6は前半の半分も掛からないだろう。難易度設定も無いようだし、リプレイ性は薄いゲームである。

 なおこのゲームでは敵はゾンビでは無くグールと称している。両者の違いはグールの方は悪霊(悪魔)が取り憑いている, 悪魔が化けた物といった設定になっているそうで、知能を持っていたりするケースもあるという話の様だ。


 プレイし終えてみて、予想していたのとはちょっと違うゲームだっという点にまずは触れておこう。第一に敵の視界をハイジャックするというシステムを全面にフィーチャーしているのだと想像していたが、実際にはこのシステムを使うシーンは全体の半分位ではないかという印象。前半部分にはこのシステムの使用パートが多いが、後半パートでは限定されたシーンにしか出て来ない。それと必ずしもプレイヤーがそのエリアに居る間中ずっと敵が存在しているのではなく、イベント発生によって突然周囲に出現し、その後目標をクリアすると今度は忽然と消えてしまうといったケースも見られる。

 案内文にパズル, 探索, ストーリーに力を入れているとあるように、パズルを解かせるパートや探索を行うパートが数多く登場し、その間は敵を出現させないという設定も出て来る為、ハイジャックシステムはこのModのユニークな特徴ではあるが、特別にそこには頼っていないデザインとなっている。逆に言うとこのシステムに非常に興味を惹かれてプレイした人に取っては、そんなに重点が置かれていないという件に失望する恐れもある。


 第二に「敵の視界を通してその移動ルートを観察し、その合間を見付けてステルスで通り抜ける」といったゲーム性だと考えていたのだがそういう訳でもなかった。敵の視界を観察して行動するのは確かだが、アクションゲームの様な設定の場面もあったりと、ステルスを常に要求されるという風にはなっていない。それと幾つかの問題からこのハイジャックシステムが上手く機能していないという欠陥も存在している

 中でも大きな欠点はグールのAIと追尾能力で、発見されてしまったとしても十分に逃げ切れる程度の追跡能力しか持っていない。これは物理的な追跡速度という面でもそうだし、追尾能力という面でも低レベルである。プレイヤーを何所までも追って来られる能力はなく、自分が通れない箇所に逃げ込まれてしまうとそこで追うのを止めてしまい、また以前の巡廻ルートへと戻ってしまう。そもそも逃げるこちらに追いつけるだけの速度を持っていないので、大抵のケースでは見付かったら逃げればそれで平気となっている。周囲にオブジェクトが有るとそれを投げ付けてくるのが怖いくらい。またステルスゲームにおけるライトソースのゲージ(どれだけ明るいかというメーター)を備えておらず、プレイヤーの持つライト以外の灯りには反応しない模様。つまりステルスモードにしておけば、見た目に明るい場所にいても暗い場所と同じという扱いにしかならない(純粋に相手との距離で決まる)。

 その為に最初の内は怖いのだが、追尾能力の低さに気付いてしまうと、ステルスモードを使わずに普通にライトを点けながら移動して、見付かったら逃げる程度の姿勢でOKとなり、グールに襲われる怖さは無くなってしまう。広いエリアならば逆にこちらをわざと発見させてしまい、誘導してから空いた方を使って通り抜けるという程度でクリア可能。結果的にハイジャックを使って敵の移動ルートを分析しないとならないシーンは少なく、このシステムが活かされていない

 こちらに気が付いている状態のグールに一定距離まで接近されるとゲームオーバーというルールだが、その判定距離が相当短く設定されており、それもまた難易度低下に拍車を掛けている原因となっている。作者は専門がプログラムでは無く、AIのレベルの低さを自分でも認めているが、それならばもっとアウトの判定をシビアにしてバランスを取るべきだったのではないかと考える。クイックセーブが何時でも可能という点も治すべきと言えるかもしれない。やはりこのハイジャックシステムは、敵AIに発見されたら危険という設定でこそ面白くなる要素であろう。


GAMEPLAY(続)
 力を入れているとされる他の項目について順に述べていく。まずは探索要素だがこれはかなりシンプルである。干渉可能なオブジェクトやアイテムにはハイライトマークが出てそれを知らせる親切設計だが、ドア等に関しては実際に試してみないと開くのかどうかは判定不可である。何々が必要だと出るケースではそれに当たる物を探す事になるが、インベントリー機能などは備えておらず何を現在持っているのかは確認する事が出来ない。単純にそれをUseした際に必要なアイテムを持っていたならOKという方式なので、大抵は必要なアイテム類は近くに在り、一個ずつ順番に目的を解決していくという構成が多く、多数のアイテムを持ち歩いて必要だと思われる物を選択して使わないとならないというシステムにはなっていない。

 上下方向へと視点を動かせないという仕様だが、上下方向を見ないとならないというケースはほとんど無い。以上の事から進行の為のアイテム探し(ルート探し)は特に難しくは無いが、同時に面白味も持ち合わせておらず平均的な出来栄えである。


 パズル(謎解き)を行わせる箇所はそれ程多くない。タイプとしてはメカニズムを作動させる形式が多く、その内容は抽象的・非論理的な物が揃っている。何をしたら良いのか自体が示されず、まずはそこから考えないとならない物も出て来る。言わば“パズルを解かせるという目的の為にだけ用意された、存在理由の曖昧なパズル”であり、ゲームの背景設定からすると違和感があるし、また個人的にはこの種類のパズルは好みでは無い。その他は箱を押すとか単純な物になる(押せる物には手形が付いている)。

 アドベンチャーゲームのファンならばこの手の議論は目にした事があると思うが、そうでは無いという人も居るだろうから簡単に解説すると、実際に登場するパズルの一つとして、「広い小屋の中に4個のスイッチと4個の扉が有り、扉は左右へとスライドして動く様になっている。小屋の中は金網のフェンスで迷路の様に仕切られており、目的は反対側の出口へと到達すること。各スイッチに応じて左右逆側の位置へと動く扉は決まっているので、スイッチを押す順番を考えて扉を上手く移動させ、出口までの通り道を塞いでいる扉が同時に開いている状態を作り出さないとならない。ただしスイッチの位置は仕切り内で離れているので、押したいスイッチに到達出来る様にルート確保の仕方も同時に考える必要がある」というのがある。

 このパズルを解く面白さ自体はともかくとして、問題となるのはその存在そのものである。つまりこんな物が現実世界に存在するはずが無いという話であり、在るのだとするなら何が目的で小屋の中にこんな物が作られているのか?という事になる。私を含めてこのタイプのパズルを嫌う派の理由は、こんな物を用意されても、これは「作者がパズルを解かせるという目的だけの為に用意した物」なので、それに気が付いた時点でゲーム内世界から現実に引き戻されてしまって没入感を損なうという点からである。あくまでゲームなので現実に反したルールや設定を導入するのは一向に構わないが、世界観を損なう類の物は止めて欲しいという意味。

 当然アドベンチャーゲームの制作側もそれに関しては承知しているので、このタイプの非現実的なパズルは現実世界ではない架空設定(ファンタジー, SF, 異世界等)のゲームで採用される事がほとんどである。サバイバルホラーのゲームで考えるなら、サイレントヒルは異世界が浸食しているという設定なので、この手の非現実的なパズルを用意されても大きな違和感はない。一方でバイオハザードの方はSF的な要素は含むがあくまでも設定は現実世界となる為に、「勝手に開けられては困る扉だけど、横に付いているパズルを解いたら誰でも開けられるよ」みたいな非現実的設定を出されると不自然になる。或いはゲームのシステムとしては有効だとしても「アイテムボックス」という概念には違和感があるという件も、これがサイレントヒルの様な世界であれば大分それが軽減されるというのも同じ意味合い。

 話は戻ってこのFleshについては死者を蘇らせるという超常現象的な要素(+悪魔という存在)を含んでいたり、この世界には存在しない要素が一部に出現したりもしているが、あくまでもプレイヤーが存在しているのは現実世界という印象で、既に異世界に浸食されている別世界という感は持っていない。ストーリーの一部となる完全なる異世界にてこの手のパズルを出されたなら「そういう世界である」の一言で解決可能だが(実際に似たパズルが登場する)、その他の場所でこういった現実には存在しないはずのパズル(設定)を出されても違和感を生むだけである。よってパズルの内容自体が世界観にミスマッチという感想であり、そのパズル自体も他所で良く見かけるタイプのバリエーションであり新鮮味は無い。


 ストーリーは先に書いたように、肝心のセリフが字幕が無い上に聞き取りにくいという問題があり、ユーザーの理解度という面からも成功しているようには思えなかった。ストーリーを理解させる事が重要だと考えているのならば、テープ再生の内容だけでもメモとして後に参照可能にするとかシステム面での改善も必要だろう。それと異世界へと旅立つパートが一部に含まれているが、これも成功しているとは言えない。内容構成は探索とパズルだけであり特に異世界を導入した必要性が感じられない上に、グラフィックス面のクオリティに問題もあり異世界の雰囲気が上手く表現されていない。悪魔と思われるキャラクター達のアニメーションや造形は粗いし、或いはここでも金網のフェンスで通路を区切るという手法が使われているのだが、それが色調の面から視覚的に見辛いという状態になってしまっている。


 ホラーとしてはプレイヤーを突然ビックリさせるような演出は少な目。対して特に前半のパートは不気味な雰囲気が醸し出されており、ここは高得点を与えられる。敵の怖さがあまり感じられないのは残念だが、それを雰囲気面の良さで補っていると言えるだろう。フラッシュライトはバッテリー無しで常に使えるが、作者曰く「真っ暗で周囲が見えない状態よりも、暗い中をライトで照らして探索している方が怖い」という観点からこういう設定にしたそうで、確かに特別に暗くないという点が恐怖感を損なっているとは感じられなかった。

GRAPHICS
 エンジン自体を改造はしていない様だが、エフェクト類を多用したりしているシーンで重くなったりは発生している。

 制作のリーダーは本来2Dのグラフィックスが専門であり、テクスチャー等は綺麗な物も用意されている。しかし一応担当者は別に用意されているがグールのモデリングやアニメーションの方にはかなりの粗さが感じられて、この辺はパッチで出来れば治したいと表明している。

SOUND
 専任担当者が用意されており、その出来は非常に良い。環境音も良い出来だし、BGMの方は特に優れている(サントラも配布中)。どんよりとした暗く重い曲だけでは無く、金属質で耳障りな物がアクセントとして効果的に働いている。

      次の頁      TOP