<PLAYING GUIDE>

 自由にプレイ出来るという事を繰り返し述べてきたが、では具体的にどんな感じでこのゲームは作られているのか? このゲームの最大の特徴を仮想のプレイを通して味わってもらおう。本来ならば実際のゲームを例にするのが一番良いのだが、それはプレイしていない人に取ってはネタバレになってしまうので。


 例)今ここに一軒の屋敷があり、テロリストが占拠している。あなたはこの家の中の書類を奪還しなければならないとしよう。深夜門を開けて庭に侵入したプレイヤーが目にしたのは庭を巡回している一人のテロリスト.....。

 (注)以下の選択肢は単純に列挙しているだけで、その前までにどんな行動をしているかで選択不可なものは存在する。また当然自分の持っているスキルやAugs(改造能力)、所持アイテムによって出来ない事がある。


◎Player Aの場合
  まず玄関から正攻法で入ろうとするタイプ。ここで製作側が用意している選択肢としては
    *テロリストを殺す。倒す方法はライフルで狙撃/真っ向から戦闘する等
    *戦闘は仲間が気付く可能性があるので、闇にまぎれて玄関に接近
    *やはり見張りは厄介なので、うまく背後に回り込みProdで音を立てずに気絶させる
  玄関には鍵がかかっている。
    *庭の植え込みを探ると出てくる鍵を使って開ける
    *Lockpickのスキルを使ってこじ開ける
    *ロケットランチャーやLAM(手榴弾)でドアごとぶち壊す
  玄関ホールに侵入。頭上には監視カメラ、天井には自動砲台が取り付けられており正面のドアまでは結構距離がある
    *Multitoolを使って監視カメラを無効化する
    *カメラの動きを読んで、部屋にある机や家具を利用して姿を隠しドアまで前進する
    *砲台やカメラをロケットで破壊してしまう
    *Radar Transparencyを使って機械から透明化して堂々と進む
    *EMP Grenade(電子機器破壊)を爆発させ、一時的に機械の動きを止める
    *Spy Droneを使って安全な位置からカメラや砲台をEMP攻撃して破壊する
    *Thermo Camoを着込んで透明化する
  ドアには鍵が掛かっていないので次の部屋に侵入。一人の人間がいてこちらには気づいていないようだ。
    *騒がれるのは困ると判断。殺すか眠らせる
    *話しかけてみる。その結果脅されている家の使用人と判明。彼は次のドアの電子ロックの暗証番号を教えてくれる。
  次へのドアには暗証番号を入力するロックが掛かっており、破壊は不可能な耐久力を持っている
    *聞き出した暗証番号で開ける
    *部屋の中を探す。鍵の掛かった引出しをLockpickで開けるとDatacube発見。データを読むと暗証番号が判明
    *暗証番号はわからないので、持っているMultitoolで解除してしまう
    *机のコンピューターを操作。これには前の玄関ホールである場所を探していたら発見していたLogin名とパスワ−ドを使う
    *同様に机のコンピューターを操作。パスワードは分からないのでハッキングしてLoginする
  開いたドアから廊下に出る。右手に長く延びており突き当たりが目的の部屋となる。途中には2Fへの階段がありテロリストが巡回している。
    *テロリストを銃で倒す
    *仲間が何人いるのか分からない。戦闘を避けて見付からないようにドアへ移動
    *Cloakで透明化して移動
    *Thermo Camoを着込んで透明化する
  ドアには鍵が掛かっている
    *倒したテロリストを探ると持っていた鍵を使う
    *Lockpickで開ける
    *音を立てて仲間のテロリストを呼ぶ危険性はあるが、LAM等で破壊する


◎Player Bの場合
 玄関の他にもどこかに入り口があるのではと考え庭を探索。庭の隅に錆付いた地下への入り口を発見する。中に入り進むとレーザーのトラップが行く手を阻んでいる。作動させると撃退用のbotが動き出すようだ。
    *無視してレーザーを横切り、アラームで動き出したbotを戦闘で破壊する
    *EMP Grenadeでシールドを切る
    *シールドの発生装置自体をMultitoolで無効化する
    *Spy Droneでシールドを切る
    *シールドの発生装置その物をロケットで破壊してしまう
    *レーザーを横切った後に、Radar Transparencyでbotから身を隠す
 先へ進むと壊れた機械が有り、そこからは電気が漏れていて進むとダメージを受ける。止める為の制御盤はその漏れている範囲内にあり、その範囲内には同様にアイテムの入った箱が数個有る。更に先のドアには暗証番号式のロックが掛かっているようだ。また床には鍵の掛かったハッチがある。
    *ダメージ覚悟で突っ切り、死ぬ前にMultitoolでロックを解除
    *アイテムが欲しいので制御盤に向かい、死ぬ前に制御盤にハッキングでLoginして操作し電気を停止させる
    *手前の床のハッチをLockpickで開けて水中を進んでパスする(距離が長いのでそれなりの能力やアイテムが必要となる)
    *Energy Shieldを使いダメージを軽減して作業する
    *Hazmat Suitを着込んでダメージを軽減

    電気を停止させた場合、隠されていたDatacubeを発見してドアの暗証番号が分かるのでそれで開けられるようになる

 先へ進み突き当たりの梯子を昇ると、ようやく屋敷の中に出る。どうやら階段の下にある小部屋のようである。部屋の中には制御パネルがある。
    *そのまま出てテロリストを倒す
    *隠れてやり過ごし、目的のドアへと進む
    *Cloakで透明化して移動
    *Thermo Camoを着込んで透明化する
    *制御パネルにハッキングしてLogin
    *小部屋の中を捜すとパネルのパスワードがわかるので、それでLogin

      Loginに成功した場合2Fの監視カメラ&砲台の制御が可能な上、目的のドアをUnlockも出来るようになっている。
         *カメラをOFFにして後で2Fの探索時に備える
         *砲台を制御してテロリストを逆に撃ち殺す
  ドアには鍵が掛かっている
    *事前に制御パネルで開けてあるのでそのまま通る
    *倒したテロリストが持っていた鍵を使う

    *Lockpickで開ける
    *音を立ててテロリストを呼ぶ危険性はあるが、LAM等で破壊する


 Player Cの場合
 家の回りを探索すると大きな箱が転がっているのを発見。Microfibral Muscleにてパワーアップして箱を移動、Speed Enhancementにて高く跳躍し飛び乗り2Fの窓から侵入
    *2Fの奥の部屋にまず探索に向かう(これはまた別のケースになるので省略)
    *目的の部屋は1Fの為階段に向かう
  階段を昇り降りしているテロリストがいる。横をパスして通るのは無理のようだ。また監視カメラも動作している
    *監視カメラの動作は無視して正面からテロリストを倒す
    *ライフル等で倒し、監視カメラの動作を避けて階下へ(或は何らかの方法で停止させる)
    *何らかの方法で透明化して横をパスする
    *踊場からRun Silentを使い音もなく階下へ飛び降りてパスしてしまう
  その後はA,Bに同じ.....



 このゲームでは全編を通してプレイスタイルがこんな感じになっている。一言で言うならば「こうしないとならない」という制約がほとんどないのである。様々な進行ルートが有り、どこを通るかはプレイヤー次第。難易度の高いルートもあれば他に比べて簡単な所も存在する。そしてまたプレイヤー自身のスキルとAugsにより同じルートが簡単にも難しくもなる。
 結局の所このゲームの目指した物とはプレイの自由度であり、シナリオの自由度ではない。実際ゲームの主軸となるストーリー展開は最後までほぼ一本道である。だがそこに至るまでにプレイヤーが体験する事は全ての人間で異なる様になっている。

 例えば幽霊屋敷を探索するゲームを作るとした場合、通常のアプローチであれば如何にプレイヤーを驚かすかに工夫を凝らす。だがどのようにゲームを作ったとしたも、実際にプレイヤーがその足で現実の幽霊屋敷内部を歩いているよりも怖くすることは不可能に近い。それであれば、怖さに凝るのではなく「実際に自分が幽霊屋敷の内部を歩いているように感じさせる点に全力を注ぐ」方が怖くなるのではないか?という発想だ。
 このゲームをやってみて感じた事だが、これは往年のRPGの大傑作ゲームDungeon Masterにプレイ感覚が通じるものがある。このゲームが何よりも優れていたのは、リアルタイム性と直感的なインターフェイスにより「プレイヤー自身が現在迷宮内をその足で探索している」ような感覚を覚えさせる点であった。それ故多くのゲーマーがモニタの中の世界に没入して、時間を忘れて遊んでしまうという事になった訳だ。
 DXの底知れぬ面白さも詰まる所その点に集約されるのではないだろうか。直感的なインターフェイスと一人称視点、そして出来る限りプレイヤーが自分の思う通りの行動を取れるようにする事で、プレイヤー自身がJ.C.Dentonとしてモニタの中の世界に存在している事を感じさせるようにこのゲームは作られている。「ここを通るにはこうするしかない」、「まずは必ずこちらから行かないとならない」といった類の事を出来るだけ排除してやり、プレイヤーが「まあこれはゲームなんだから自由に動けなくて当然だよな」と感じて現実世界に引き戻されない様にする事、それがこのゲームの根幹であると思う。どんなにリアルなグラフィックスよりも、現実の様にリアルに幅広い行動が出来る事の方がバーチャル・リアリティ度が高いという意味になるだろうか。それが素晴らしいストーリーラインと結びついて、このゲームは歴史に残る傑作となったのだと感じる。



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