<GRAPHICS>

 Unreal Engineを採用しているが、当時の海外のレビューではこの項目については評価が真っ二つに分かれていた。リアルで雰囲気もあって素晴らしいという物と、その逆に良くないという評価である。ただし良くないという評価には非常に重いという事も加味されているので、純粋なクオリティとしてどうかとは一概には判断出来ない面もある。なおこの点については発売から年月が経過した事で相対的に軽くなった反面、グラフィックス自体は時代を感じさせるようになっってしまったという感がある。

 まず第一に気が付くのは暗いという事だろう。Brightnessは調整可能だが一杯にしても暗い感じである。もっともこれはゲームのコンセプトとしてステルス行動が重要視されているので意図的に闇の部分を作っているというのもある。野外のマップは全て夜だし、屋内についてもシチュエーション的に暗い場所が多い。という事で「鮮やかさ」という印象は希薄であり、単純に綺麗なグラフィックと感じる部分は少ない。そして確かにゲームのイメージに合った雰囲気作りという面ではダークなイメージというのは成功していると思うが、それを考慮してもグラフィックスに特筆すべき点はそう無いという印象である。
 海外レビューには「今時(初代)Unreal Engine?」みたいな評価が少なからずあったが、確かにオリジナルから大きな改良が成されて更に美麗になったというプラス面がもっと欲しかったところだ。そんな中で良い点としては、ゲーム内建造物のスケール感は非常に良く出来ている。たまにグラフィックの綺麗さ以前にゲーム世界のスケール(寸法)が変な感じの物があるが、その点はこのゲームは素晴らしく現実にその場にいるような感覚を終始得られるようになっている。

 もう一つの難点は人の顔のグラフィックパターンが少ない事。(少なくとも見た目は)同じにしか見えない物が使い回しされており、人間描写が重要なゲームとしてはもうちょっとパターンを増やして欲しかった。別に他のゲームよりも劣っているとは言わないが、Soldier of fortuneなんかを見た後だとちょっと不満が残る。
 武器には未来型の物がほとんど無い為基本的にエフェクトは地味、全体的に派手な演出効果というものは使われていない。キャラクタの動きは結構細かく良く出来ていて、特にクラブで踊っているシーンなどは面白い。モデリングもリアル指向で如何にもゲームのキャラという感じが無くて良いと思う。ただちょっと走り方がちょこまかとしているのが気になった。

 総合評価としては自分がその場に実際に存在するようなリアルさを感じさせるという点で、十分合格点を与えられるのではないかと思う。



<SOUND>

 典型的なスパイ・サスペンス物の音楽という感じはそれほどなく、イメージ的には静けさを思わせる部分が多い(Unrealの作曲者が担当している)。基本的に環境音的な要素が強く、強く押し出して来るタイプの音楽ではない。戦闘時には派手な感じの音楽に切り替わるのだが、普段はあまり鳴っている事を意識させないような使われ方をしている。個人的には非常に良い出来と感じる。

 3Dサウンドについては普通の出来で、それほど効果的には使われていない。それとA3Dには対応はしているようだが、推奨はEAXの方になっている。これは本家Unrealと同様という事なのだろうか。

 声優の出来については日本人なので何とも言えないが、ゲームにマッチした雰囲気は良く出ているのではないか。特に主人公Dentonの声は非常に気に入っている。香港やフランスでの出来がよくないという批評が見られたが、そのヘタな?英語は我々日本人からするとかえって聞きとりやすく、それほど気にはならなかった。


<INTERFACE>

 右クリックでオブジェクトを操作、左クリックで武器操作や実行となっており、直感的で分かり易い。この辺は海外レビューでも共通して褒められていた点である。初めはちょっと戸惑うかもしれないが(特に3DFPSはやらないという人には)、やっている内に早く慣れる事が出来るだろう。そうなるとリアルに作られた世界と自由にインタラクトする事が可能になる。
 それとTrainingが何時でも選べるが、これは必ずやっておく事をお薦めする。マニュアルを読む事も重要なのだが、これをやっておかないとゲームの基本的な操作が分からないので困る事になるだろう。結構分量はあるのだが、それでもやらずに飛び出して困る時間を考えたら大した事はない。それとゲームの主要なキャラクターに事前に会う事が出来るという点も、ストーリーを楽しむ上では大きい。また最後の最後に結構有用な情報が得られるので(ガラスケース内の説明部分)そういう意味からもやっておくべき。

 情報画面はF1,F2にアイテムGoal/Notesがあるのだが、これは頻繁にアクセスするので近くのキーにも割り当てておいた方がいい(F・Gとか)。またその他の情報画面についてもメニューから選択するよりはショートカットキーから呼び出した方が便利である。それとしゃがみ動作を ロック出来るのでこれはONにしておくべき。相当長時間屈んで移動する事になるので。Lean動作(左右への覗き)は有効ではあるのだが敵にはしっかりと見えるてしまうし銃弾も当たるので万能ではない。相当な数の操作キーが存在するので、キーの割付も結構重要である。

 使っていて気になったのはDrop動作について。死体等を探ると何でも拾ってしまうので、アイテムBoxはすぐに一杯になってしまう(なおアイテムBoxはかなり小さく、そのやりくりには相当苦労させられるはずである)。そこで要らない物をDropする必要があるのだが、現在持っている物以外(TABで捨てられる)はアイテム画面を呼び出してやらないとならない。まとめて捨てる事は出来るとはいえ、場所によってはDrop出来ないのと、元に戻した時に何故か現在の所持武器がクリアされてしまう点が気になった。またアイテムスロットをギリギリで使う場合、Drop動作は頻繁にやらないとならなくなるため煩雑な感じになってしまう。

 最後にSaveについて注意。ほとんどの人はゲームをフルインストールすると思うのだが、そのドライブにはインストール後でも大きな空き領域がある事を確認しておいた方がいい。このゲームのSaveファイルは非常に大きく、仮に各マップ毎にSaveをしていったりすると1GBを越える可能性もあるので注意が必要だ。かといってQuickSaveだけで進んで行くのは、動作環境の項で解説したようにトラブルが起きた際に困るので止めよう。5-10程度の履歴を保持しながら進んでいくぐらいが良いのではないか。なおHDの空き領域はゲーム中のSave画面から確認出来るようになっている。



<英語>

 このゲームをやろうと考えている人に取って一番気になるのがこの問題だろう。まず分量という事で言えば出てくる英語の量は非常に多い。分類すると、まずゲームを進めていく上で最も重要な会話文と情報(主にDatacubeから得られる)はログとして自動記録されるようになっており、後で好きな時に参照可能である。ただし会話文の方は大きな区切り(単体マップではない)が切り替わるとクリアされてしまうので、過去を参照するにはその時のSaveを呼び出して読むしかない。この他にはコンピューターにアクセスして読めるEmail、新聞や公共アクセス端末にて得られる情報があるが、これらはログには記録されない。もう一つ言っておくと会話には画面が切り替わる重要な会話タイプと、下にセリフが表示されるだけの簡易タイプがあり、記録されるのは前者だけである。

 基本的には記録される分だけを理解すればOKなのだが、それだけでも相当な分量がある。情報量が多いというのではなく、キャラクタ造型のために個性を出すような、あるいは味のある会話をするようにしており、その為に分量が多くなっている。つまり普通の映画でも本当に必要とされる情報は少ないが、ただそれだけを出演者が話していたのでは味も素っ気もない。それで実は別に内容とは関係ない会話が「雰囲気作り」として大量に挿入されている訳だが、このゲームはそれと同様の理由で非常に会話が長くなっている。
 また一般会話については必ずしも必要ではないがゲームの背景を知る上で重要な情報も結構あり、出来れば読んでおいた方が良い。ただし平均して5パターン程度、多い人では10種類ぐらいの返答を持っているので全部理解するには相応の能力が必要だろう。それと一つ付け加えておくと会話表現という事で独特の言い回し(いわゆるイディオム)が存在するのも少々厄介な点だ。Emailや新聞等の情報については読んでおくとゲームがより楽しめるというレベルなので重要度は低い方。読んでおかないとゲームクリア出来ないという物はないが、たまに重要な事(読んでおくと役に立つ)が書かれている事も。

 肝心の英語が分からなくても大丈夫なのか?については正直な所「大丈夫ではない」という事になるだろうか。全部とは言わないがある程度は辞書を引きながらでも理解する努力をしないと、ゲームクリアは可能だろうが面白さは半減すると思われる。英語を無視するという事は言ってみれば字幕無しで映画を見る事と同じであり、これがアクション映画(ゲームでいうならシューティング系)なら全く無視してもある程度は楽しめると思うが、これはそういう類のゲームではなくストーリーそのものに面白さがあるので、内容理解度に比例して面白くなるからだ。という事で苦手という人は辞書を用意して出来る限り理解するという意識で臨んでもらいたい。そしてそれだけの事はあるゲームであると私は確信している。



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