<GAMEPLAY>
1.自由度
このゲームの革新的な部分、それは”自由”ということである。全てにおいて行動は自由、プレイヤーに任されているという点に尽きる。
このゲームの開発に当たり、Spectorを中心とした開発チームは「パズル的要素を出来る限り排除しよう」という点を念頭においてゲームを作成していったという話である。例えばあるRPGであれば「宝石を手に入れないとならない」という問題に対し、その持ち主の頼みを聞いてモンスター退治をしてやって、その代償に宝石を受け取るという風になっていたりする。また3DFPSであれば「ドアを開かないと進めない」という問題に対しRed
Keyをどこかから探して来るか、どこか別の場所にある仕掛けを操作すると開くとかという風になっている。つまり或る問題に対する解答は基本的に一つであり、それを解決する為にプレイヤーはパズル(広義の意味での)を解き続けるという形式になる。
この事自体は別に悪い事でも何でもなく、要はそれが面白いのかどうかという問題になる訳だが、DXの開発チームはこういった要素を出来る限り排除しようという姿勢でゲーム全体を作り上げた。インタビューによるとそれは気が狂いそうになる位大変な作業だったという事だが、見事にそれはゲーム内に実現されている。
RPGにおいてはかねてより自由度というのは重要視されていた。例えば無数のサブクエストを設けてプレイヤーが自由に冒険出来るようにしたりとか、或いはキャラ選択に幅を持たせて戦士・魔術師・盗賊等どのキャラでもクリア可能になっているとか。しかし結局の所上に挙げた例でいえば、核心部分では宝石を手に入れる為にモンスターを倒したり、情報を持っているNPCを探し出さなければならないのは同じである。それとキャラが変われば戦い方は変わってくるが、結局の所戦ってモンスターを倒さなければならないというのは同じ。
それに対してこのゲームは一般的なRPG同様に自分の思うようなタイプのキャラクタを作成して成長させていくのだが、行動の自由範囲がまるで異なっている。それは例えばこういう事である。
先の例でいくと「モンスターを倒してきてくれれば代償に宝石をあげよう」と言われたとする。あなたが戦士であればお易い御用だと討伐に向かっても良いだろう。しかしあなたが盗賊であればどうだろうか? この男が宝石を持っているのであれば部屋に忍び込んで、自慢の鍵開けの技術でそれを盗んでしまう方が手っ取り早いのではないかと考えるのでは? 或いは魔術師であれば魔法を使って姿を消し、宝石を守る防御の魔法を解除したりとかでそれを手に入れれば良いのでは?
3DFPSの例でいけば、ドアを開けるのにはキーが必要だと表示されたとする。しかしあなたがロケットランチャーを持っているのであれば、そんな物を探さずにドアごとロケットでぶち破ってしまおうと考えないだろうか? 或いは鍵が掛かっていると言われようがあなたにそれを上回る鍵開けの技術があるのならば、出来合いの鍵を探すなど面倒な事をせずに自前の能力で鍵を外してしまえば良いだろうし、開けるのにカードが必要なタイプならばセキュリティシステムにアクセスして電子ロックを解除すればそれでOK。どれもダメならば別の入り口を探し回ってみれば良いのではないかetc。そして結論からいうとこのDXはそういう事が出来るゲームなのである。
このゲームにおいても必ずやらなければならない事は幾らでも出てくる。そういう意味でのシナリオ的自由度はRPGに比べると低い。ただしある命題を解決するのに用意された方法が複数存在するというゲームとなっている。与えられた問題を、何を使ってどのように解決するかはプレイヤー次第、それが自分の得意な方法であっても苦手な方法であっても、簡単な方法であろうが敢えて難しいものを選ぼうが、
そこに到達するまでに存在するどのルートを通ろうが、すべてプレイヤーの自由である。
自分の行動自由度とそれによりダイナミックにその後の展開が変わったりする3DFPSというとSinが思い出されるが、このゲームの自由度はその比ではない(Sinについては別項のレビュー参照)。
1.マップ移動の自由
後半はほぼ一本道になるものの、中盤までは行動順序にかなりの自由度がある。このゲームでは大きな本体マップに大小の枝道マップが接続されているような形態が中盤までは多く見られ、その接続されたマップをどのように回って行くかでストーリーに変化が起きたりする。先に或るマップに行ってからだと別のマップでイベントが起こったりとか(逆に先に行かないとその時しか見れないイベントがあったり)、行く順序によっては有用な情報が手に入ったり入らなかったりとか。また行きたくなければ行かないで済むマップも存在する。更にそれまでの行動によってマップのスタ−ト地点が違う事もあるし、出口も複数有ったりする。
2.ミッション行動の自由
基本的な指令というのはGoal/Notesに書き込まれていつでも参照する事ができ、そこにはPrimary
ObjectとSecondaryが存在する。通常のゲームだと2ndは達成した方が良い物で、Primaryは達成する事が義務付けられている物である。しかしこのゲームではPrimaryの達成に失敗してもそのままゲームオーバーにならずに進んで行ってしまう場所が少なからず存在する。失敗してもそれはそれ、という事でゲームオーバーにならないのだ。言い換えると自分が死ぬ以外はゲームオーバーにはならない。
例えばであるがデモで遊べる最初のミッションでは[テロリストのリーダーを生きたまま捕らえる事]と[地下に囚われたエージェントを救い出す事]の二つが任務として与えられるが、どのように対処するかはあなた自身が決めるようになっている。テロリストのリーダーを命令に背いて殺してしまってもゲームオーバーにならないし、エージェントを救い出さなくてもOKである。その後の展開やシナリオに変化があるだけの話だ(ただし達成した方が有利になることは言うまでもない)。或いは[捕えられた人質をテロリストから救出せよ]という命令に対して、失敗して人質を死なせてしまおうが、また爆薬で自ら意図的にテロリストごとぶっ飛ばして殺そうがゲームオーバーにはならない。「失敗したからやり直すというのは現実ではあり得ない事でリアルではない」という意味合いからそういうゲームデザインを心掛けたそうだ。
3.行動ルートの自由
あるマップ内において、どのようなルートを通って進もうがそれはプレイヤーの自由に任されている。様々な場所を回ってアイテム集めをしてもいいし、アイテムが十分に有るのであればとっとと先に行っても構わない。とにかくマップそのものが複雑な多層構造をしており、そのどこを通ろうが構わないということである。場合によっては相当なショートカットが可能な場所も存在する。
4.戦闘の自由
このゲームは一般的な常識である「結局の所ボスキャラを倒さないとならないとなると、その為にはどんなキャラであろうとレベルを上げて戦えないとならない」という常識が存在しない。戦いたくなければ戦わないで良いし、全員倒したければそうしても良い。ボスキャラに当たるような存在の敵は存在するが、全く戦わずに倒す方法がほとんどの場合存在するし、武器による戦闘でなくても強力な破壊力を身に付けられるのでそれで倒しても構わない。逃げて済むなら逃げれば良いし、戦うかどうかという事自体についても大きな自由度が与えられていると言える。
5.会話選択の自由
RPGではNPCとの会話が重要視されている。このゲームも幾つか選択肢が登場して選ぶという形なのだが、その会話を”成功”させる必要はない。正解の選択肢を選ぶと有用な情報をくれる場合が多いのは確かだが、このゲームでは”失敗”の物を選んでも問題はない(またやり直しも出来ない)。ここでその情報をもらわないとゲームを先に進める事が出来ない、という個所が無いからである。言い替えるならば、これは会話に限ったことではないがゲームクリアに必要な情報がそこでしか手に入らないというケースが無いとも言える。プレイヤーは結果がどうあろうと気にせずに(もう一度会話の前までロードして戻さずに)、先に進む事が出来る。
6.反モラル行動の自由
一番具体的なのは一般人を殺す事だろう。これもこのゲームでは自由となっている。ただの一般人を好きな時に殺す事が可能だ。或いは警官等の味方の人間を殺しても構わない(弾薬が欲しいからでも、ただ単に気が向いたからでもOK)。ただし見回りの人間がいる所でやれば攻撃を受けるのは言うまでもない。またゲーム進行上重要と思われる人物を殺すことも可能である。殺した場合というか、殺せた場合はちゃんとそれによって先のストーリーが変わるようになっている。ただしシナリオ進行上殺せない人間も多く、そういう人間は不死身状態になっているのですぐに分かる。
2.デザイン
各レベルについては現実世界という印象を重視したようで、特別に奇抜な構成の物は存在しない。時代的には結構未来になる訳だが、ほとんど現代という感じの場所ばかりである(随所に見られるテクノロジーを除けば)。また世界を舞台にと言ってもそれほど多くの場所を周る訳ではなく、ロケーションのバリエーションはあまり多くない(発売段階で幾つかの国がカットされた)。中盤くらいまでは同じ場所に何回も来る事もある構成になっており、構造自体もゲームのコンセプト上(複数のルートが存在する)結構複雑な物が多くなっている。
自由度の項でも述べたがプレイヤーの行動順序や取った行動によってマップ自体の構造や要素が変化するといった方式を導入しているので、動的な変化が起きる為にリプレイ性は高い。マップは全く同じ構造で、単純にプレイヤーの成長要素だけが変化していくのでは無いという意味である。能力によって通る事の出来るルート自体が変化するので、数あるFPSゲームの中でも屈指のリプレイ性を持ったゲームと言う点も大きな魅力である。
会話や情報量が相当多いので、それらをキチンと読んだりしていればコンプリートまでには35-45時間程度は掛かるのではないかと思う(初回)。2回目のプレイでもキャラクタの性質を変化させると初回は通らなかったルートを通ったりとかもあるので、全部分かっていても結構な時間遊べると思う。
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