COMBAT(続) |
Chromeにおける戦闘の最大の特徴はインプラントである。制限時間内ならば特殊な能力を使用したりパワーアップが可能というゲームは珍しくもないが、ユニークな点の一つ目はこれが必殺技では無いという所にある。戦闘に直接関連する能力としては、正確性アップ,
スコープ機能, 耐久力の上昇, リコイル&ノックバックの軽減の4種類が存在するが、これをONにすると能力が上がって強くなるのではなくて、使ってやっと戦闘でまともに戦えるレベルになるという意味合いで導入されている。逆に言えばこれらは全て戦闘における基本的な能力なので、インプラントで能力を上げずに戦うのは厳しいというバランス設定。しかし使用時間には制限があるし、同時に使うほど持続時間は短くなって行く。更にはメーターが回復するまでにも時間が掛かる。このデザインがゲームを難しくしている理由でもあり、どれを選んで使うかという作戦面が重要且つ面白い要素となっている理由でもある。 その他ではReflex Boosterはポピュラーなスローモーションの能力だが、プレイヤー側も射撃, 移動, リロード, 広がった照準の戻り等のあらゆる動作はスローなままなので、他の多くのゲームとは異なり大きく優位に立てるというインプラントではない。(要するに銃の命中率が低くて、飛んで来る敵の弾が見えないのならば、スローになっても大して変わらない)。透視能力も非常に役に立つが、これとスキャナーを使って室内の敵の位置を予め知っておいた状態でようやく互角というレベルで、絶対的な優位に立てるような能力ではない。 プレイヤーがどれだけ速く照準を敵に合わせられた所で、照準は広がっているので一発で当たるかどうかは運の要素が入る。だから正確性をアップさせるインプラントを使用して照準のサイズを小さくする。離れた敵を確実にヘッドショット出来る様にスコープ機能を使う。多数の敵に一斉に撃たれては身が持たないのでダメージ低減の能力を使う。撃たれると反動で照準がブレるのでリコイル低減の能力を使う。短時間で確実に敵に照準を合わせられるようにスローモーションにする。以上全てが戦闘において重要な要素であり、使わないとその能力面に関してはむしろ不利になるというレベルのバランス設定。しかし持続時間には限りがあるし、同時に使うほどそれは更に短くなる。そこで何を使って何を切るかを、所持武器とその場の状況をにらんで選択し戦わないとならない。そういうゲームである。 ユニークな点の2つ目は能力が全部で7つも存在しており、しかも多くの場合リアルタイムでの操作が要求される。スローモーション一つならば単にON/OFFのキーが一つなので操作はシンプルだが、それが7つの能力別々に切り替えキーが用意されている。そしてリアルタイムでの素早い切り替え操作も重要であり、一連の戦闘の最初から最後まで切り替え無しに戦っても構わないが、それは戦闘能力の低下や死の危険性を増大させてしまう事になる。 使用例を一つ。先に透視を使って室内の状況を把握→スローをONにしてからドアを開けて先制攻撃を可能にする→エイムアシスタントをONにして正確性をアップさせる→近くの敵を倒したところでスコープをONにして遠くの敵にズーム→HPが危なくなってきたのでメディキットを適用→しかし回復速度が遅いので危険回避の為に防御能力をON→しかしインプラントの負荷が高くなるので代わりにスローをOFF→HPがやや上がったのでここで防御をOFFして更に負荷軽減→敵が倒しきれない内に負荷メーターが相当高くなったので、一端全てをOFFにしてからアドレナリンをONにして高速移動で物陰に逃げ込んで回復待ちの待機....という様に進められる。エイムアシスタントよりもリコイル低減の方が有効だったりするケースもあるし、スローよりも他を重ねた方が良いという時もある。これしかないといった正解が一つだけのケースはまず無いし、またどういう物を使うのは個人の好みにもよる。 いずれにしろこれを見ても分かるように、キーの操作が大変忙しいゲームでもある。戦闘中に移動キーの操作はあまり使わない代わりに、7つの能力をON/OFFするのは頻繁に行われる。面倒ならば使わないとか、どれか限定された物だけを繰り返し使うという手法も可能だが、それだけ戦闘の難易度は増していく。この操作性を気に入るかどうか、シチュエーションに応じたリアルタイムでの複数の能力切り替えを面白いと感じるかどうかが、ゲームの評価を大きく分ける点の一つになる。 戦闘の感覚はアウトドアをメインにした遠距離戦とインドアでの近距離戦では大きく様相が異なる。アウトドアで周囲が平穏な状態のケースでは、敵の視界はプレイヤーよりも短いので、先にプレイヤーの方が気が付いて先制攻撃を仕掛けられる。また遠くの敵を発見するには双眼鏡が非常に有効で、敵の近くに来ると自動的にロックオンして居場所を知らせてくれる。スロット数は減るが初期装備には必ず入れておいた方が良い。 先に発見している状態からならプレイヤー側有利であり、伏せるかしゃがんでからズームとエイムアシスタントを使い攻撃を仕掛ける。アウトドアではこの2つの能力がメインとなり、素早い切り替えも滅多に起きないのでその意味ではインドアに比べて遙かに楽である。敵の攻撃は遠距離からだとあまり当たらないし、いざという時でも離れているので逃げ易い。障害物としてカバーが近くにあればなお良いだろう。スナイパーライフルを持っているケースでは、他の武器に比較して正確性が著しく高いので圧倒的に優位に立てる。 草木が多い場所では視界が遮られるので、それに影響されない敵側が有利ではあるが、スキャナーで敵の位置を大体は把握出来るので対抗は可能。ただしスキャナーに捉えられない高台に居る敵からの攻撃や、敵が徘徊しているエリアの中心部に入ってしまって囲まれると厳しくなる。特に監視塔の敵はこちらがライフル系の武器を持っていない場合にはかなりの難所で、スナイパーライフルは命中精度が段違いに高いので危険となる。カバーを上手く使いながらアドレナリンで速度アップ&防御力アップしたりして出来るだけ近付き攻撃するしかない。ロケットランチャー^があるなら遠くからそれを当てるという手もある。 一方で狭いインドア戦は難易度が高い。大抵の場合敵は部屋の中でこちらを向いて待っており、それを防ぐには出来るだけステルスを使って音を立てない様にしないとならないが、それに関わらず敵がこちらを待っているというケースが多い。しかもプレイヤーとの距離が近いほど認識までが速いというAI設定らしく、内部が暗くてプレイヤー側からは見辛い状況であっても、ドアが開いた瞬間に認識されて攻撃されてしまう。(よってスローの能力を使うのはこういう時に役に立つ)。アウトドアに比較して大勢が固まっている事も多いので、まともにドアから入ると集団に一気に撃たれて瞬殺されたりもしばしば。その際にはインプラントを使用した戦闘に慣れないと対抗が難しい。 アウトドアとは違って室内戦ではグレネードが有効であり、敵は逃げるのが下手な上に爆風範囲が広いのが利点。上手く使えれば部屋に入る前に敵の数を減らす事が出来る。また部屋の中央にある四方から丸見えのエレベータに乗って敵の待つ上階へ行かないとならない構造が結構有るので、そういう時には先に上階へ投げ込んで倒すのは重要。敵を減らせればその後の戦闘でもインプラントに頼る必要性が薄れるので、インプラントでの戦闘を好まない人には特に有用な武器となるだろう。一方でインプラントを使う場合には特に必要性が無く、1,2個程度携帯していれば十分である。 しかし使い方には難しい面もあって、クリックしてからちょっと間を置いてポーンという感じで強めに投げられるので(近くに転がす事も出来る)、ドアを開けてから投げる際にはドアが開いた瞬間に飛ばすタイミングを掴まないと、投げる前に室内の敵に滅多打ちにされてしまう。入手は敵から容易に行えるが、あまり持つとスロットが圧迫されてしまうのは欠点。 総合的にこのゲームの戦闘では、こちらの銃の命中率にバラツキがあるし、敵側からの攻撃がどれだけ当たるのかもランダム性を持っているので、勝利がどっちに転ぶか判らないという面を多分に持っている。こうすれば確実に勝てるという保証はないが、同時に何回やっても勝てないという箇所はまず無い。負ける事も多いので死ぬ回数は相当増えるから難しいとは言えるのだが、詰まってしまう様なゲームでもないのは確かである。この辺の「手応えはあるけれども、進めない訳ではない」というバランス感覚は優れていると感じられた。 |
問 題 点 |
書き残している点を補足。 避けようのない攻撃で死ぬケースがある。例えば角を曲がった瞬間に備え付けのオートタレットで瞬殺されたりや、見えないような遠くからロケット直撃で死ぬ等。或いは敵が数人突然沸いて出るパターンで殺される事もある。それとこのゲームでは草木の様な障害物をAIだけは透過してこちらを見られる分、スキャナーでの生体探知機能でそれを補っているのだが、この機能は一定以上の高低差があると機能しない。つまり丘の上や建物の屋根の様な高台から、或いはインドアでも高いプラットフォーム上から撃って来る敵に対しては無力である。そして撃たれた方向を示す機能はあるのだが、4方向のみとアバウトで且つその表示が薄く短時間なので見難い。よって敵の位置が判らないままに撃たれ続けたりするケースも出て来る。 特に厄介なのが監視塔にいるスナイパーで、他のAIよりも探知距離が長く、またスナイパーライフルの攻撃は遠距離からでも相当正確である。すぐに塔の場所が判れば良いのだが、木々や霧等に隠れてプレイヤーからは見えない状態になっていたりもする。対応策としては双眼鏡で適当に見てオート検知機能で見付けられるまで待ち、見付かったらその位置に近付いて攻撃するようにする。こちらもスナイパーライフルを持っていれば敵に合うと照準が赤くなるので、敵が見えていなくても赤くなる位置を撃てばいいので多少楽にはなる。 これは欠点と言うよりは好みの問題になるのだが、クイックセーブを多用して進めていかないと厳しいというゲームである。個人的にはそれはそれで良いとして気にならなかったのだが、やたらとセーブを繰り返しながら進めるのを嫌う人もいると思うので一応書いておく。 高い難易度への埋め合わせとして、チェックポイントではなくクイックセーブを可能にしたのは利口な選択だと思うし、履歴も4つ保存するので戻る場所を選べるのも便利。短い間隔でセーブをしておけば、理不尽な死やイベントでクリア不可能状態になってのゲームオーバーでもあまり腹は立たない。とにかく死ぬ回数が多くてやり直しになる点もそれで緩和される。セーブをあまり行わないで進める事は可能だが、プレイヤーの責任ではない死亡も起きるので、それで相当戻ってやり直しだとストレスが溜まるはず。そもそもステルスのパートはセーブ無しでは無理。戦闘面でも上手い人ほど勝率を上げられるのは確かだが、自分及び敵の弾がどれだけ相手に当たるのかにはランダム性も含まれるので、注意しても死なないように進めるというのは困難だろう。マゾ仕様のゲームが好きとかでない限りはクイックセーブの多用は避けられないと考えた方が良い。後はそれを気にするかどうかが分かれ目になる。 AIの出来には大きな不満が残る。 *スクリプトで決められているのか、音に反応してやって来る者もいれば、決して持ち場から動かない者もいる *オブジェクトに対して半身の状態ではこちらを認識出来ない(半分だけ体が見えている状態ではこちらに気が付かない) *遠方からライフル系の武器で目の前の味方が殺されても気が付かない *戦闘が繰り広げられている部屋の中で、障害物の陰に居ると全く反応しない者がいる *2つの地点を行ったり来たりするだけで、そのルートから外れられない者がいる *近くになるほど反応速度が上がる設定らしく、近距離で出会った際の撃ち合いでは異様にリアクションが早い *ドアの向こうで既にプレイヤーの存在を検知しており、位置を変えるとそれに連れて向きも変えてくる *「グレネード!」と叫ぶが逃げられないケースが多い 最後にラスボスというかメインの敵は、その時の所持武器にもよるがあまりに呆気ない。(最後の選択ミッションによってはかなり強いのが出て来たりはするが)。 |
GRAPHICS |
自社オリジナル開発のChrome Engine使用。DX8の新機能は全面的にサポートし、Virtex & Pixel Shadersにも対応。同社は現在でもこのエンジンを使用しているが、これはその最初のV1.0に当たる。 基本的にはアウトドア中心のゲームであり、このグラフィックエンジンも広大なアウトドア描画に適した物になっている。特に強調されているのが森林の表現。大量の木々を描画する事に関しては独自のテクノロジーを導入しており、100万本以上の木々をこの軽さで描画可能なエンジンは、2003年現在これしかないと述べている。ジオメトリ設定だけでメモリに大きな負荷が掛かる所を、独自のアルゴリズムで数分の一に使用量を減らしているのが特徴。この森林の描画は確かに木の数も多いし良く出来ていると感じられた。ただ細かい草については、プレイヤーの位置に応じて2Dのスプライトが回転するという方式でやや興醒め。 逆にアウトドアに特化したエンジンの問題として、インドアのクオリティはあまり良くない。ライティングの処理が簡素だし、テクスチャの質も良くはなく繰り返しも目立つ。モノトーンで暗くて色褪せた場所が多くてパッとしない印象。 キャラクタのモデリングやアニメーションは当時としては普通レベル。しかしキャラクタの顔の造形が粗っぽいのが目に付いた。特にクオリティが低いのは武器のモデリングや乗り物の形状で、単純で格好悪いと感じられる。エフェクト系にも特筆すべき物は無し。爆発の表現も地味だし、水面の描写もシンプルである。 総合するとアウトドアの描写にはかなり優れたものを持っているが、それ以外を含めると平均的なレベル。発売前の宣伝に比べるとちょっと失望させられる出来と言える。 プレイしたのは発売から時間が経過した2006年なので重さについては何とも言えないが、当時としては結構重かったようだ。問題とされていたロード時間も特に気にならないレベルだった。 1600*1200まででワイド画面には対応していない。FSAAも無し。 |
SOUND |
デモをプレイした際には3Dサウンドの効果は薄かったのだが、製品版に最終パッチの状態では普通レベルに戻っている。(サウンドカードが異なるのでそれが原因かも知れない)。問題は弾が自分の体に当たった時のエフェクト音が大きく、敵が撃って来ている方向を銃声で知りたい際に邪魔になるという点。 武器系のサウンドは全体的には普通レベルだが、武器によってはサウンドの出来が悪く、ショットガンやCAF5などは水準以下だと感じる。それと若干バランスが小さめなのでボリュームを大きくしないと迫力が出ないという印象。 声優ではLoganとCarrie以外はあまり良くない。ロシアなどと同じでネイティブでは無い人も混じっているのではという気がする。 |
MULTIPLAYER |
32人までが参加して、Assault, Capture the Flag, Deathmatch, Team Deathmatch,
Team Dominationのモードでプレイ可能。最新バージョンの1.2.0.0の方で見たところサーバーは幾つか出て来たがアクセスは不可。おそらくサーバー情報を更新するマスター側がもう稼働していないと思われ、今後のプレイは難しいと考えた方が良い。 デモでちょっとプレイした事はあるが、乗り物やメックに乗り込んで広いマップでプレイ出来るというのが特徴。ただその時にも感じたのだが、マップが広い分だけ16人以上の人数が集まらないと面白くならないように思える。 |