GAMEPLAY |
前作のCoD(もっと遡ればMoHAAも)は広い層に渡って非常に高い評価を受けた作品だが、その一方で問題点として指摘される要素も存在していた。それはスクリプト主体のゲーム進行と、単独行動でのランボープレイについてである。前者はプレイヤーに効果的にドラマチックな演出を見せる事で感動や面白さを味あわせようというデザインの意味で、その為にカッチリと決められたシナリオ上を進行しながら固定されたタイミングでイベントが発生して行くというスタイルになる。これはプレイヤーの反応を計算し尽して各種イベントを発生させられる為に、成功した時にプレイヤーに与えるインパクトは大きく、実際にMoHやCoDの成功はこの部分の構成が上手かったからというのは確かだ。ゲームへの高い評価からも判るように気にしない人には全く問題にならなかった点ではあるのだろうが、一方でこれを嫌ったり問題点として挙げる人も存在していた。 一般的なFPSにおいても進行に自由度がほとんど無いゲームの方が実は多い訳だが、大抵は自分が操作するキャラクタ一人で思うままに進めているのであまり行動が縛られているという感覚は無い。しかしCoD1では劇的な効果を狙う為にプレイヤーの行動範囲を強く縛る傾向にあり、横道に逸れたり可能に見える別ルートを進んだりが出来なかったりと、自由度が低いデザインになっている。また周囲に仲間が一緒にいたりする分、逆に全てが演出の為にセット(背景)として配置された中を進んで行くという感覚が強く、また急いで(時間内に)「あれをしろ」、「これをやれ」といった指示が次々に出たりするので、余計に決められたレールの上を製作側の思うがままに進まされている感が出てしまっている。このスクリプト多用を良く言うならば映画的であり、その一切の自由度が無い映画でも感動したり面白かったりする訳だからスクリプト自体が悪い訳ではない。要はゲームにおいてはプレイヤーが自分でキャラクタを操作しているのに、敢えてその行動範囲を映画の様に縛る事はゲームとしてどうなのか、といった意味の議論になる。 もう一つのランボープレイの方は、ミッションによっては主人公が単独で行なう物が存在しているという批判である。数十人という数の敵相手に勝ってしまうのはリアルな戦争を謳うゲーム性にそぐわないし、また作戦的にもそんなに敵が多い場所に一人で乗り込むというのは不自然という点になる。 CoD2では上記の様な批判に対して改善する方向でデザインされており、まずは単独行動でのスーパーマン的な振舞いについてだが、基本的に今回は一人で行動するという箇所は無くなっており、全てのレベルが味方部隊と一緒の行動スタイルとしてデザインされている。最終的に目的地点の建物の中に乗り込んで残った5,6人程度の敵を一掃したりする役目は時々出て来るが、少なくともNormal以上ではプレイヤーが超人的な力を発揮して長時間一人で進めて行くという感じの箇所は無くなっている。 スクリプト多用や自由度の低さへの対応についても大きな改善が見られる。進行自体はこれまで同様にブロック化されたエリアを順に進んで行くというスタイルが中心であり、最初に広いマップが与えられてその中を自由に動けたりする訳では無い。しかしマップが広くなったので、例えば2つ用意されている目的地へのルート(道)のどちらを選んでも良いとか採れるルートの自由度は高くなった。敵が立て篭もる家の中に入るにも、正面以外に裏口から入る事も出来たりする構造が多くなっているのも同様。またルートが一本でも道幅が広くなったり周囲の建物内に入れるようになっているケースが多く、正面は味方軍に任せて左右に大きく回り込んで側面から攻めたりや、周囲の建物の上階に登って有利な窓から攻撃したりと作戦の幅が広くなっている。 同時AI処理数の増加も大きい。これまではプレイヤーが進行上通らないとならない場所にだけ敵が居て、周辺には敵が存在しないというデザインが多かったのでよりシナリオに沿った一本道という感覚が強かったが、CoD2ではそれ以外の建物や場所にも敵が多数存在しているケースが多い。よって周囲の建物を順に落として行って進み易くするか、一気に目標の地点を落とすかといった選択も可能である。前者だと別箇所をクリアした時点でセーブされたりもするので進行上は有利になったりもするが、それだけ最終目標までには時間が掛かってしまう事になる。後者だと成功すれば時間は早くなるが、周囲の建物等からの攻撃も有るので到達が難しくなるし、死んでしまうと戻されるセーブ地点がより前になってしまうという欠点あり。この様にプレイヤーの攻め方に幅が出ている。 味方の進行設定も大分良くなった。今回もAIが勝手にゲームをクリアしないようにする為に、プレイヤーが先に進むまでは待機常態になるというシステムにはなっている。ただ「ちょっと進んでは待機」という感じでプレイヤーの進行フラグを待っているのが見え見えだった前作に比較すると、マップが広いので待機から待機までの間隔が長くなっており、また配置される場所もランダムに多数の箇所から選ばれているのでわざとらしさは軽減されている。 プレイヤー自身が目標の敵を倒さないとならないというシーンも減っている。戦車の破壊や、自分だけがスナイパーライフルを持っている時に敵を倒す役割を請け負ったりは有る。しかしMG42の攻撃をプレイヤーが止めない限りは味方(ゲーム)が進まなくなるという事は無いし、ほとんどの敵については味方が倒してくれたりもちゃんと起きるようになっている。例えば最終的にプレイヤー自身が敵を倒して目標を達成するだけではなく、プレイヤーが横道に外れている間に最後の敵を味方が倒してくれて目標達成となるケースも見られる。単なる背景としてAIは御互いに撃ち合っているだけで、肝心な敵はプレイヤーが倒さないとならないという感が強かった1に比較して、ちゃんと双方が戦っているという感覚を得られるようになっていると言える。また難易度が上がるほど、仲間のAIが敵を倒してくれる事を計算に入れないと突破自体が厳しいというバランスでもある。 急いで時間内にこれを達成せよという強制イベントも無くなった。制限時間内に達成しないとならない目標は無かったはずで、プレイヤーのスタイルに応じて行動は選択可能である。MG42を使って湧いて出る敵を倒さないとならないといったイベントシーンも減った。近くに有れば使って優位に進めても構わないが強制ではなく、味方AIが自動的にMG42を使ったりもするので自分は別の方法で攻撃しても構わない。 その一方で発売前に宣伝されていた程では無い要素も幾つか見受けられる。これはゲーム内容には直接関係無いが、キャンペーンの進め方については「自由に選んで進めて行ける」ようにはなっておらず、選択が可能とは言っても相当に限られている状態でしかない。基本的にミッションの年代に応じてアンロックされる様な形態なので、大戦の前半を扱ったロシア編が終了するまでは終盤をテーマにした米編がプレイ出来ないといった具合。 Objectivesが複数表示されてそれをクリアする順番が自由という要素も想像していた程ではなかった。相当広い範囲(例えばマップ全体)に渡って目標が散ばっており、それをどういうルートから攻めても良いという様な構造と思っていたのだが、実際には限られた区域内での複数のObjectivesをクリアする順番が自由なだけである。確かにそれなりの自由度は生んでいるのだが、ABCと有る内でどれからクリアするかによって展開が大きく変化するといった感じではなく、単にどれからクリアするかが自由なだけという感じになっている。 以上の様にエリア単位でクリアしながら進んで行くというリニアな進行には変りは無いが、個別のエリア内では行動が縛られているという感覚は大幅に減少しており、決して自由度が高いゲームではないが、スクリプトでガチガチという感じのゲームでもなくなっている。 |
GAMEPLAY(続) |
ゲームが目的としている大規模な戦場の表現は、大きくグレードアップしたグラフィックスとBattle
Chatter Systemによって数段騒々しさと迫力を増したサウンドの効果も有って、その出来映えは相当なレベルとなっている。特に前作と異なるのはマップが広くなったので作られた箱庭で戦っているような感覚が薄れたのと、同時出現AI数の増加によってよりリアルさが増したという点になる。単なる背景的な扱いでの最大表示数としたら前作と大きな変化は無いような気がするが、実際に周囲で戦っているAIの数とその範囲は大幅に増加しており、戦場の真っ只中に居るという感じがより強く感じられるようになっている。激烈な戦場の雰囲気の表現という点では、これを書いている時点(2007/05)でCoD2を上回るFPSは無いと思われる。 味方のAIは補充システムなのは変らず、幾ら死んでも後から補充されるようになっており、残りを考えて戦って行かないとならないという風にはなっていない(1の様な数が限定されているシーンは含まれていない)。その為に周囲を気にせず戦えるが、逆に言えばリアリティはやや薄まっている。なお死なないAIも居るが司令官等と数は少数。AIへの指示も前作同様に出来ない仕様。 AIは敵味方共に動きもダイナミックになっており、常にプレイヤーの後ろに控えて背景の如く撃っているという感じではなくなった。プレイヤーが自由にObjectivesの順番を選べるシーンではそれに合わせてちゃんと動いてくれるし、常にピッタリとプレイヤーの後ろにしか付かないという事も無い。Objectivesが固まっているシーンではAIがそれをクリアしてしまう事も有ったりする。また行動範囲が狭くて一箇所に固まってしまうのでプレイヤー自身が動き難くなるというケースも減少している(もし邪魔ならUSEでどかせば良い)。或いはプレイヤーが背後に控えてMG42の攻撃を避けていると、AIがそれを倒してくれて先に進み易くなったりする事も有るし、Smokeを使うのが勿体無いのでじっくりと戦っているとAIが代わりにSmokeを投げてくれるケースも有ったりする。 敵のAIはそれなりの出来で、カバーをちゃんと使って姿を見せたり隠したりしながら攻撃して来る事もあれば、オープンスペースで全く普通に立って攻撃をして来たりと、場合によってそのスタイルは異なっている。スクリプトでマップ内に出現した後の動きには或る程度の変化は設けられている様だが、こちら側がピンチになったからといって前に出て来るという事は無く、攻めて来るように設定されているシーンでは戦況に関わらず突っ込んで来るし、防御のシーンでは建物の中に篭ったままで攻撃を続けるようにされている。Grenadeを多用してきて、またそれを近くの壁等に当てて自爆したりしないのは優秀だが、プログラムとして当らないように投げているような感じもあってAIがちゃんと周囲を計算して投げているのかは不明。 このゲームでは難易度による難しさの変化が激しい為に、どの程度のミッション(レベル)をどの難易度でプレイするかによってプレイ時間は大きく変ってくる。Normal(Regular)なら10時間前後と思うが、それ以上だと倍掛かるかも知れない。難易度の変化は死ぬまでにどれだけの被弾に耐えられるかに関わっており(敵の正確性や数については未検証)、当然難易度が上がるほど死に易くなっている。ただそのカーブがかなり急な感じで、Normalの一つ上のHardenedにすると急激に難易度が上がるというようになっている。最高のVeteranについてはこれでも良いのだろうが、その間に位置するHardについてはもっと難易度を落とした方が良かったのではないかと思わせる厳しさだ。 Normalでは簡単に思えるならば何時でもHardにしてレベルをプレイ出来るが、格段に死に易くなるのでゲーム性が一変してしまう。とにかくカバーに隠れて慎重に次のカバーへと前進するというスローなゲームスタイルになり、戦場のリアリティを高めるという点では正解なのだろうが、それには更に上のVeteranという難易度が用意されている訳だし、もっと被弾への許容範囲の広い程度でのHardという設定にするべきだったと思う(或いは中間の5つ目の難易度を設けるか)。そもそもリアルなシミュレーターを作ろうという狙いのゲームでは無い訳だし、あまりこの難易度設定が上手く行っているとは思えない。 一般的なアクションFPSだと難易度が上がっても上手い人ならそれなりのペースでクリアして行けるが、このゲームでは敵の弾を目で見て避けられないし弾が常に照準の位置に飛ぶ訳でも無いから、上手い人であっても戦闘能力には限りがあるのでペースは落とさざるを得ない。しかしそれなりにスピード感が感じられるNormalに比べて、Hardでは一気に慎重さを求められるレベルにまで難しくなってしまうので、アクション性を保ちつつ難易度を上げたいという人にとってはリプレイ性が薄れてしまうという問題になる。 10個のミッションの内一つは戦車のコマンダーとして参加する物となっているが、操作性はやり易くてストレスは特に無い。またこれ以外にプレイヤーがVehicleを操作するシーンは含まれていない。対空砲を使って敵機を撃ち落したり、AIの運転するVehcileに乗り込んで攻撃するという定番のシーンは今作でもやはり含まれてはいるのだが、その場所は限定されており歩兵戦がほとんどとなっている。 ステルスの要素は一切無く、またそれと関連してなのか純粋な夜間のミッションも含まれていない(薄暗いシーンは有るが)。最初から敵が居る完全な戦闘状態から始まるケースがほとんどである。 |
問 題 点 |
これは問題点と言うよりも代償とする方が適当と思うが、スクリプトによる進行を抑えて自由度を高める方向で調整した為に、当然の事ながら演出の効果が薄れている。言い換えると劇的でドラマチックなシーンが減少しており、インパクトという面では後退しているという印象を受ける。前作ではスクリプトによる構成なのでその通りに動くしかないという箇所が多かったが、その分プレイヤーに感動や面白さを味わってもらおうと計算されて作られていたので、それが上手く行った場合には記憶に残るシーンというのも存在していた。 一方でCoD2ではプレイヤーの動きを縛る事を軽減しているので、それに伴ってドラマチックな演出が影を潜めている。確かに戦場のリアリティの再現度は遥かに高くなっているし迫力も満点。全体的な出来も向上している。しかしCoD2では全体の何処を取っても80点クラスという印象のゲームで、90-100点の点数を感じさせる飛び抜けたミッション(レベル)が存在していない。 同じくこのゲームではダレたシーンが少なくなっており、緊張感を持って戦える激しい撃ち合いが占める割合が多くなっている。それは良いのだが、逆にそういうシーンが多過ぎて平板な印象を与えるのも確かだ。一般的なFPSでも多数の敵相手に生きるか死ぬかの激しい戦闘シーンは面白い箇所になるが、それがゲーム全体を通じてやたらに出て来るとなるとどうなのか?というのは有る訳で、通常のバランスの場所が有ってこそ山場での盛り上げが活きて来るはず。その点でこのゲームでは全体を通しての緩急による盛り上げが上手く行っていないように思える。いきなり激戦になって、クリアまでそのまま激戦が続くという感じの構成になっている箇所も多い。 これは同時にミッションが変ってもプレイ感が大して変わらないという点にも繋がっている。何しろ敵の能力や自分の武器性能が大きく変えられないので、ゲーム全体を通じての変化の付け方は他のFPSよりも難しい。前作ではドラマチックなシーンを演出したり、リアリティを欠いてでもユニークなミッションを設けたりしていたが、今回は戦場のリアリティを重視している為にあまり変ったミッションが無い。実際に戦場で行われていた様な、敵の拠点を奪う・自分の拠点を守るの繰り返しであり、そのロケーションや対象が変って行くだけという印象が強くなっている。リアリティという観点からはそれは正しい選択とも言えるのだろうが、ゲームとして見た場合には変化不足と感じた。 こういった戦争がテーマのゲームで仲間の扱いをどうするのかというのはどの会社も頭が痛い所で、例えば個性的な仲間を揃えてストーリー・部隊行動の面白さを追求するというやり方が一つ。MoH: Pacific AssaultやVietcongなどはその典型例となるが、この場合にはその仲間を途中で殺す事が出来なくなるので、戦闘中に不死身となりリアリティに欠けるという問題が出て来てしまう(或いは隊員が一人でも死ねばゲームオーバーにするという不自然さを採るか)。他にこの様に個性的な隊員を用意するタイプでは、そのミッションでは使えなくなるが次からは復帰するとか、死んだら二度と使えなくなるといったパターンが存在するが、どれにも欠点が存在している。 一方でCoD2では特定の少数のキャラクタを除いては隊員(兵士)は無個性な存在とされており、幾ら死んでも次が出て来るというシステムになっている。ただ当然そうなると演出面では弱くなってしまうのは否めない。よく兵士のドラマチックな活躍を含まないリアルな戦争映画と呼ばれる物が有るが、そういったタイプでも個性的な兵士を用意してその行動を描く事で様々な演出(人間ドラマ等)を盛り込もうとしているのが現実。要は何処の誰だかも分からない俳優がリアルに戦争をしているシーンだけを2時間延々と見せられても、それはドキュメントに近く映画とは言い難い。だがこのゲームはそういった無名の兵士達が延々と戦争をするだけのドキュメントというイメージに近い物となっており、あまりにも淡々と進んで行き過ぎるように感じてしまう。 或る意味でこのCoD2は、スクリプトを減らして映画的でドラマチックな演出をも削ると、リアリティは高まるがゲームとしては無機的な物が出来上がる。逆に感動や面白さの演出の為には、不自由と言われても計算されたスクリプトに沿ってプレイヤーを動かしたり、リアリティを欠いてでも個性的なミッションを含めるのが効果的。という事を証明したゲームであるとも言えるだろう。どちらが良いのかは好みなので、ドラマチックではなくドキュメント的な味わいなのは欠点とは言えないが、CoD1の様な演出を期待していた人には満足の行かない箇所になると思われる。 その他に気になった点を幾つか。敵の出現が無限か有限かハッキリしない箇所が有り、近付かずに撃っていれば倒し切れるのか、それとも突っ込まないとダメなのかの判断が難しい。このゲームでは倒すと次が出て来るが、それを数回繰り返すとクリアされるというケースも多いので、余計に判断が難しくなっている。 兵士のユニフォームはリアリティにこだわったという話だが、場所によっては色合いが似ていたりして敵味方の区別がつけ難いので、咄嗟に誤って撃ってしまうというケースも出て来る。「それがリアリティだ」というのも判るが、誤射によってゲームオーバーになったりする事も有るので困るのも確かである。なおこのFFについての基準もハッキリせず、殺してしまった場合にすぐにゲームオーバーになるケースと、そのまま見過ごされるケースが有って良く分からない。 |