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COMBAT
 戦闘の特徴というか前作からの変化を順に挙げていく。まずマップが広くなり、限定された幅の細いエリアを一直線に進んで行くというパターンが減少し、プレイヤーが進行方向から外れて自由に動ける余地が増えた。広いエリア内に建造物が数多く建ち並んでいる場合には、道を外れてその中にも実際に入れるし、また敵も中に居たりするという設定となっている。

 そしてこの変更が自動回復方式の欠点を補うという良い方向に働いている。自動(無限)回復方式の欠点とは、ある一線を境にプレイヤー(軍)側と敵側とが向かい合って戦う場合、側面や後方からの攻撃を考えなくても良いので、カバーに隠れて無限に回復しながら安全に戦えてしまうという件である。これを回避する為に同シリーズでは、無限沸きやグレネードスパムでプレイヤーをカバーの陰に安住させないという仕組みを採用してきた訳だが最良の手段とは言い難い。

 しかし今回はエリアが広く、また建造物の陰やその内部に存在する敵が多いので、完全に周囲をクリアリングしながら前に進んでいくというやり方が難しくなった。大抵は味方軍も進んでしまうので、一人だけ遅れてウロウロするという訳にも行かない。そして味方に付いて前進すると側面や後方に敵が残ってしまうので、カバーに隠れて前方だけを注意していれば良いという事ではなくなっている。それと移動途中での敵の発生も、全方位の中の何所かからというパターンが多くて方向を絞れない。更に建物の屋上等の上方から攻撃してくる敵も増やされており、カバーに関係無く上から攻撃されるケースにも備えないとならない。他には狭くて入り組んだ路地等のシーンでも同様で、マップ全体での敵の位置が把握し難く、また全方位から次々に出現して攻撃して来るのでカバーの効果が薄れている。

 つまりカバーに隠れて戦うのが基本だが、敵が全方位からの攻撃を仕掛けて来るので、カバーに隠れてさえいれば安全という設定ではなくなっている。これは移動中でも同じ事で、周囲の敵をクリアしているのかがハッキリと判らない状況が多いので、突然思いもよらぬ方向から撃たれ急いで対応する必要も発生する。総じて全体的に死への緊張感が高まっており、戦闘での面白味が増していると言えるだろう。特に今回は打撃(ナイフ)攻撃のダメージが高く、側面から回り込んできた敵が銃撃せずに接近し、突然殴られて一撃で殺されるというシーンが増えた。


 第二に敵の無限沸きシーンが無くなった。これは進化した“dynamic AI”の効果によるもので、詳細は不明だが「AIの進化によりデザイナーが無限沸きを導入する必要が無くなった」と話しているので、概ね以下の様なシステムなのだと思われる。

 例えばプレイヤーがA地点に到達するのが目標のシーンで、デザイナーの設定としてはその中間に位置する敵軍との激戦を意図していたとしよう。しかしアウトドアで開けているエリアの場合、自動回復方式だと幾らでも無限に回復出来るので、後方からカバーを使いつつ遠距離攻撃で安全に敵をクリアしてから前進する作戦が可能になってしまう。昔のアイテム回復方式ならば、A地点までの途中にメディキットを配置する事で、ダメージを受けたプレイヤーを前に出させる様に仕向けられるのだが、近年流行の自動回復ではあえて前に出る必要が無い。
 そこでどれだけ倒しても敵が無限に沸く様に設定してやり、プレイヤーがその無限沸きが止まる地点まで前進しないとならなくし、強制的に敵陣の中に突っ込んで戦わせるという“デザイナーの意図”を実現させる目的で使われている。

 そこで今回はプレイヤー側の動きに応じて、臨機応変にAIがその挙動を変えられる能力を持たせている。このケースで言うならプレイヤーが積極的に前進して来る場合、初期位置付近でカバーを使いながらシンプルにそれを迎え撃つ。もし後方に下がって出て来ない場合には、カバーや裏道を使って積極的に前進してプレイヤー側にプレッシャーを掛けるように動いてくる。よってプレイヤーが前進しない作戦を採っても、その待機場所付近に大挙して押し寄せてそこで激戦にする事で、“デザイナーの意図”がどんなケースでも実現されるようにしている。

 なお無限沸きの廃止自体は良い事だと思うのだが、“非常にスマートになったAI”が実現されているのかどうかは疑わしい面も在る。例えばこちらが前進しないと次々にやって来る様にはなっているが、常に安全なルートや方法で走ってくる訳ではないので、やはり後方からそれらを攻撃するのが有利になるというエリアも出て来る。またプレイヤーが出て来ないならばプレッシャーを掛けるという動き方から、わざと騒ぎを起こして迎撃し易い場所に敵を誘き寄せるという作戦が有効にもなっている。それと実際には完全なる廃止は無理だった模様で、無限沸きは確かに無いが、時間制限を設けてプレイヤーを無理矢理前に出させるという方式は数カ所で使用されている。


 第三に上記のAIの改善と関連して、敵の動きがよりランダム化した。移動可能パスが多くなり、その中の何所を通るのかを状況に応じて、或いはランダムで決定するので、リプレイしても変化の幅が広がっている。またここを通れば敵は近くに居ないので撃ってこないとか、お決まりのやり方が通用しない場所も増えた。しかしこのランダム化の方も、「同じ動きしかしないが、行動が設定されているだけあってもっともらしい」のに比較して、その都度判断しているとしてもその状況判断が的確というレベルでは無いので、妙な動きにしか見えないという事もある。

 それと敵味方を合わせたAIの同時出現数が多いというのはこのシリーズのプラス面であり、今回もそれは実現されているのだが、AIの挙動がおかしくなるという点は改善されていない。CPUの制御が間に合っていないらしく、相手側や味方が周囲の敵を認識しないで素通りしてしまうという状況が時々見受けられる。特に現在の目標が切り替わった際に、中途半端に取り残された兵士同士の間でよく発生する模様。


COMBAT(続)
 部隊や大規模な味方軍と一緒に行動するシーンがほとんどで、単独行動をするシーンは稀。味方AIの動きはこれまでに比較して自然になっており、プレイヤーが先頭を切って進まないと付いて来ないという不自然さは解消されている。昔はプレイヤーが「AIはここまでは進む」という最前線のラインを越えると、彼等も一緒に前に動き出すという設定が多かった。しかし今回は勝手にドンドン先には進まないという点は変わらないのだが、プレイヤーの現在位置よりも前に最前線のラインが置かれる事がほとんどで、前進すると共に前に居た仲間達が更に前へと動き出すので、最前列で味方を引っ張らないとならないという事は無くなった。

 また味方AIは飾りでは無く、結構敵を倒してくれるように設定されており、プレイヤーがその大半を片付けないとならないという風にもされていない。特にTask Force 141との行動時における仲間は射撃精度が高く、また無敵設定にもされているので難所では頼りになる存在である。FFについては当たってしまうだけなら問題は無いが、殺してしまうとゲームオーバーになるケースもあるようだ。敵味方の区別が付け難い場所もあるのでそういった場所では慎重さが要求されるし、味方が前に出るようになったのでそれだけFFの機会も増加している。


 新武器の追加によりその種類は相当多くなり、またマルチプレイにおけるアタッチメントの導入で同じ武器でもタイプが増えた。敵の落とした物も拾えるので、使用武器の選択肢は幅広い。しかしシングルプレイではマルチプレイほど武器選択はゲームに影響せず、特に難易度が低いほど選択がシビアでも無くなる。アサルトライフル等の同じジャンルの武器内ならば、好みで選んでもほぼ問題は無いレベル。

 武器の正確性は高目でまた威力も高く、敵にもよるがアーマーを着込んでいないタイプならば数発で簡単に倒せる。弾薬も十分に用意されているし、もし無くなれば落ちている物と交換すれば良いだけで弾切れの心配はほぼ無い。なおシングルプレイとマルチプレイでは武器の性能や仕様が異なっており、リコイル等のブレはシングルプレイの方が全体的に控え目に抑えられている。


 カバーに使われているオブジェクトを破壊したり、壁越しに撃ち抜いたりする貫通の要素がより強化された。武器によっては相当硬そうなオブジェクトを通しての攻撃が可能なので、その意味で貫通性能が高い武器を持つ事に意味合いが加わっている。なおシングルプレイでは敵の攻撃による自分側の障害物の貫通を心配をする必要は無い。


 自動回復の仕様は変わっておらず、割と早期から画面全体にボヤけるエフェクトが掛かるのでギリギリまで粘って撃ち続けるのは難しい仕様。また被弾すると(その弾にもよるが)大きなノックバックを受けて銃身が派手に跳ね上がるので、連続で当てられている状態では撃ち返す事はまず出来ない。よって撃たれている状態では早めに隠れたりして回復を待つというパターンになる。その回復速度の方は早めの設定で戦闘時のスピード感を保っている。

 前作から変わったのは左右へのリーン動作が出来なくなった点で、カバーから体を曝さないと攻撃が出来なくなっている。それに因り特に難しくなっているとは言えないが、リーンが出来ないというのは基本的な戦場での動作として不自然な感じもするし、個人的には無くなったのは不満。敵を見付けるのにリーンが出来ないので、自動回復なのを利用しわざと体を大胆に曝して撃たれその方向を知り、それから隠れて回復し攻撃するというやり方が有効になってしまうのも問題。


 敵への命中は血飛沫によるエフェクトで表示される。被弾した際の敵のアニメーションは実に多彩で、また物理エンジンと組み合わせた死んで倒れる際のアニメーションも豊富で自然である。よって敵を撃って倒しているという感覚は良く出来ている。一方で連射中に銃の振動は表現されているが、銃身全体が派手に跳ね上がる様なアニメーションは一部の武器以外にはないので、銃が軽いという印象は受ける。


 その他の幾つかの要素を記しておく。サーマルスコープ付きの銃が手に入り、これを使うとスモークや吹雪等で前が見え難い状況でも敵を捉えられるし、単純に敵を素早く発見する際にも非常に役立つ。

 ライオットシールドを使う敵が登場し、立っている時には脚を狙えるのだが、屈んで前進されるとかなり厄介な相手となる。側面や背後に回り込めれば楽なのだが大抵は難しく、爆破系の武器&アイテムやグレネード等で対抗するのが常道となる。倒せば拾って自分が使えるようにもなり、これを持って敵に向かって前進し(壊れない)、近距離での殴り攻撃で敵を倒せたりする。武器を持ち替えて背負っている場合は背中側を防御してくれたりと面白いアイテムとなっている。

 犬がこちらを攻撃するシーンは前作同様に出て来るが、そこでの不評を受けたのか攻撃されてからの反撃タイミングが大分甘くなっており、一瞬のカウンターで対抗するしか無かった前作よりも怖くはなくなった。

GRAPHICS
 グラフィックスは自社製のIW Engine 4.0を使用。データをリアルタイムで読み込むストリーミング機能を改良しており、一つのエリア内で使えるデータ量と、同一マップ内で使用可能なデータ量が大幅に増えている。前者によりキャラクタに使うテクスチャの重ね枚数と精度がアップし、また今回初めて武器に全面的にノーマルマッピングを施している。後者では広大なマップをクオリティを落とす事無く実現している。なおPC版でもこのストリーミングが使われているのかは不明。旧エンジンとの比較画像はModern Warfare 2 Texture Streaming Examplesで見られる。

 テクスチャの解像度が高いのが目立ち、全体的にシャープでクリアな印象を受ける。スモーク等のエフェクトも綺麗。それでいて結構軽い点も高く評価出来る所である。


 グラフィックスの設定項目は多い方で、テクスチャの解像度等細かく調整が可能。アンチエイリアシングもあり。

SOUND
 Dolbyを使用しているので、3Dサウンドにするにはスピーカー設定を5.1ch以上にしないとならない。

 銃器のサウンドは物によってちゃんと分けられているが、全体的に軽い感じで重量感はあまり感じられない。

 BGMは前作とはトーンが変わったという印象。前作よりもこちらの方が好みである。メインテーマ他をあのハンス・ジマーが担当している。

MULTIPLAYER
 マルチプレイ関連の詳しい情報は、大人気ゲームだけあって日本語のサイトでも数多く見付けられるのでそれらを参照して欲しい。


 主な仕様変更としてはIW NETを使うようにした点で、これはコンソール版の機能をPC版に移植した物。サーバーリストから好みを探して入るよりも、自動的に適したサーバーを見付けてくれるというコンソール系のメッチメイクがメイン。Dedicated Server機能は持っておらず、当然パフォーマンスとしては以前よりも劣る。その為に最大参加人数も18人に制限。クローズドの一元管理体制なのでModの導入やユーザー制作マップの導入も困難。

 現在どんな状況なのか知らないが、仕様発表からリリース初期までは相当な批判を浴びていたのは確かである。

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