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シ ス テ ム

キャンペーン
 難易度設定は無し。マップ単位でのリプレイ機能も持っていない。

セーブ&ロード
 オートセーブの他に、クイックセーブを含めて任意の地点でのセーブが可能。ただしセーブ用スロット数には制限あり。オートセーブは全ての履歴を保持する方式だが、前に戻って再度通過しても新たに作成されるので、繰り返し元に戻ったりすると結構な数となる(メニューから削除も出来ない)。またセーブデータのサイズも結構大きめ。

OBJECTIVES
 現時点での目標を示す機能や、向かうべき方向を示すシステムは存在しない。

EXTRAS
 アンロック系要素は無し。

英語
 字幕機能有り。ゲーム中に入手出来るストーリーが書かれたカード等は、後でトップメニューのDiaryから参照可能。

THERMODYNAMICS SYSTEM
 このゲームの最も基本的な特徴とは、極寒の船内での温度の変化に重要な意味を持たせているという点である。ここでは通常のヘルス(ヒットポイント)という概念が存在せず、それは主人公の体温によって管理される。そしてその体温の変化は、周囲の環境温度に左右されるというシステムになっている

 画面左下には温度のメーターが表示されており、その外枠が周囲の環境温度で、内側が主人公の体温を表している。環境温度が高い場所ならば体温の低下は少ないが、温度が低い場所ほど体温が早く低下して行くようになっている。そして敵の攻撃は冷気による温度低下として計算され、ヒットすると体温がダメージ分下がって行って、最終的に体温のメーターが下限を切れば死亡となる。

 プレイヤーが体温を回復させるには、暖かい物の近くに行って手をかざすという方法を使用する。燃えている火や白熱電球等の熱源に近付くと手をかざす動作を行うので、そこでUSEキーを押下すれば周辺温度と同じ値まで体温が回復する。温度が高い物ほど体温及びスタミナの回復速度は早い。ただし最初船は凍り付いている状態なので、熱源が幾らでもその辺に存在している訳ではない。そこで停止している内部のタービンやエアコン等のシステムを動かしてやり、温かい状態のエリアを段階的に増やして行く事が必要となっている。そうやって新たに出来た熱源で定期的に暖まりながら、徐々に船の内部の探索可能地域を広げて行くというのがゲーム進行の基本である。


 この温度変化のシステムについては、アイディア自体は面白いと思うのだが、その折角のユニークな設定を活かし切れていない。事前の情報よりも相当単純化されたシステムに変えられており、それが原因でいろいろな問題が生じている。

 第一に体温は確かに低下するのだが、HPが1程度の下限まで低下した所でそれは止まってしまう。つまり通常の船内移動の際には、決して体温低下による凍死は起きない。凍死は「制限時間以内にそのエリアを抜けるか熱源を見付けないとならない」と事前に設定されている場所でのみ発生する事になっている。また体温が落ちた事によるハンデも発生しない。スタミナの回復が遅くはなるがそれは特に不利な要素では無い。おそらくこれは一定時間以内に熱源を見付けないと凍死するというルールだと、落ち着いて船内探索を行えないという観点からの変更と思われる。

 第二に敵が出現する前には必ず熱源が存在する(或いはイベント後に対戦となるなら、自動的に一定値まで体温が上昇する)。これも上と同じ理由で、もし敵と遭遇した時点で体温が低い場合には一撃で死亡して終わってしまい、再度ロードした地点から体温が下がる前に急いで対決地点まで到達する事をプレイヤーに強制する事になるからだろう。また常時敵に備えて急いで船内を進まないと不利という事にもなってしまう。よってプレイヤーを常に急かさないようにするには、敵の出現前には適当な値まで体温を回復させられる場所を用意しておく必要がある訳だ。

 以上の様に自分の体温を注意して高く保つという必要が無い為に、ゲーム中に体温を気にする必要が無いというゲーム性になってしまっている。どれだけ下がっても死なないし、敵が出る前には熱源が用意されているので、現在の体温がどれだけなのかは特に意味を成さないのである。なのでそれが判った時からは温度メーターは見ないで進められるようになり、ゲームのテーマでもある低温との戦いという雰囲気が失われてしまう。これは非常に残念に感じる点。プレイヤーの船内探索を急かさないようにする為のデザイン変更というのは理解出来るのだが、多少なりともプレッシャーが存在していないと、低温に対する恐怖感というのが生まれて来ない。もうちょっと複雑なシステムにして、プレイヤーに対してプレッシャーを与えるようにした方が良かったとに思う。

 一例だが最低まで体温が低下した状態だと一定時間後には死亡するように設定しておいて、同時に回避策としては体温回復アイテムを用意しておく。例えばウオッカを飲むと一時的に体温が上がる等。ただし乱用は出来ない様に持ち運べる量は制限し、また飲むと短時間は酔いで銃の正確性が落ちる等のハンデが生じるといった調整を加える。或いはアイテムとして燃やせる燃料を携帯可能にしておき、これを使って任意の場所で暖を取って体温を回復させる事が出来るが、その熱によって目を覚ましたという設定の敵がランダムに襲って来る危険性が増すとかでも良いだろう。


 第三に熱源と回復の関係も単純化されている。元々の設定では外部の環境温度と熱源の温度は別物で、白熱電球等では大して体温回復は出来ないが、炎の様な物ならば大きく回復が可能という話だった。つまりメーターに示される温度はそのエリアの温度であり、熱源に近付くとその強さに応じて体温の値が最大で環境温度の値まで回復するというシステム。しかし実際には環境温度の概念は存在せず、プレイヤーの周囲の限定されたエリアの温度がメーターに示されるという形になっている。よってどんな熱源であっても、それに近付けば外部温度のメーターはその熱源の温度まですぐに上昇し、プレイヤーの体温も常にその温度と同じまで回復可能である。その結果として白熱電球の様な小さな物でも回復値が大きかったりと不自然な感じになるケースが生じている。

 そういった単純化の反面で妙に凝っている点もあって、熱源による温度メーターの値は、時にはしゃがんだり位置を変えたりして距離を変更するとちゃんと変化するようになっている。よって出来るだけ高い体温にするには、ベストのポジションを探して体の位置を調整しないとならない事も。


MENTAL ECHO
 謎解き要素が強いゲームであり、それに絡んで導入されているユニークな物が“Mental Echo”と呼ばれる主人公の特殊能力である。まず主人公は特定のオブジェクトに触れたりするとフラッシュバックの形で過去の映像を見る事が出来る力を持っており、これは砕氷船の座礁時にどんな事が起きていたのかというストーリー面の説明にも使われている。そしてその更に進んだ能力として、死んでいる人間や動物、更にはモンスターの凍り付いた記憶の中にダイブして、直接過去の出来事を体験出来るという能力がこのMental Echoである。死亡直前の数分程度の間の過去の出来事を、その人間の視点から見る事が可能という意味。

 この時にその人間に乗り移った状態で実際に行動する事が出来るようになっており、その行為によって変更された過去の状態が現在の時点にも反映されるという仕組み。(過去を変更する事で未来を変えられる)。進行に関わる数多くの障害は、この能力で解決するという謎解きのシステムが使われている。例えば船員の死体が凍り付いて通路を塞いで通れないという状況にて、その死体の精神に入り込んで過去の状況を再現し、その場で当の船員を操って死なないように行動してやると、それが現在に戻った時には反映されていて死体が無くなり通れるようになるといった具合。様々な船員に乗り移って行動するので、逆の立場から当時の出来事を体験したりといった視点が逆転する面白さも持っている。

 ゲームのシステムとしては、赤く光る部位を持った対象の前でUSEすると過去に戻るMEが発動して、そこで自動的に(メモリー)セーブされる。過去の世界で失敗した場合にはその場所に戻され、クリア出来るまでそれを繰り返す事になる。その過去の世界ではセーブは行えないが、繰り返しプレイする際にはスクリプトのシーンはカットされたりはする。


 このMEによる過去の世界での行動は、パターンとしては何等かの仕事を達成したり、危機から脱出するというのが目的の物が多い。同時に制限時間が設けられているチャレンジが多くなっている。内容としてはバラエティに富んでおり、戦って敵を倒さないとならないシーンも有れば、頭を使って解決方法を探さないとならないというチャレンジも含まれている。奇抜な物では動物に乗り移るというタイプまで出て来る。なお解決に当っては、システムとして明確に文章で現在の目的を示す機能や進むべき方向を示すガイドが無いので、他のキャラクタからの命令・指示を良く聞いて従うか、それが無いなら自分でやるべき事を判断する必要がある。

 時間的には数十秒程度の物から、長い物だと5分位掛かるタイプも存在する。難易度的には丁度良い感じで、大抵は数回繰り返せばOKという範囲内のレベル。中には難しい物も含まれるが、「何をすれば良いのかはハッキリしているが、それを達成するのが難しい」というタイプの場合には、極度に達成が困難という難易度の物は無い。詰まるとすれば「何をするべきなのか(どうやって解決するのか)が分からない」という方で、こちらは引っ掛けなどもあって比較的難しくなっている。一つの発想にこだわると解決方法が見付からずに詰まるとという可能性も有り。ただ総合的には謎解きがメインのアドベンチャーゲーム程には頭を悩ませるゲームではない。


 問題としては非常に暗いシーンが結構含まれているという点が挙げられる。(なお製作者側の意図する明るさに合わせる調整画面は無いのだが、明るくし過ぎると吹雪のシーン等では前が真っ白で見えなくなるので、そこでちゃんと周囲が見える程度の明るさにしてのプレイでの感想となる)。過去の世界の船が衝突後のMEでは、メインの明かりが消えてしまっていて周囲が良く見えないという状況が多い。この時の暗さというのが本当に周囲が見え難いという位のレベルだったりするので、どこにドアや通路が在るのかすら相当近付かないと分からなかったりという事も。よって見えていれば簡単なのだが、道自体が見えないので何回かリトライしないとクリア出来ないケースがある。(MEの世界にはフラッシュライトが無い)。

 総合的には様々な種類の人物に乗り移って、その過去の世界を体験したり改変するという要素は面白く、ひたすら船内を探索するという本編の単調さのテンポを変える意味でも効果的に働いている。パズルのクオリティも多種多様で飽きが来ない。


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