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GAMEPLAY
 マップが広くまた行動の自由度が高い為に、クリアまでのプレイ時間がどの程度かを語るのは難しい。大幅にショートカットしてクリアが可能なミッションも有るし、脇道となる周辺部分を全て回ると相当な時間を費やせる様な物も有るからだ。Gamespotのアンケート等を参照する限りでは凡そ15-20時間程度と思われるが、高速クリアを目指せば10時間程度でも可能だし、徹底してマップ内を探索するなら30時間とかにもなるだろう。

 2006年の中盤辺りまではその年の末にでも出す予定になっていたのだが、その後一年掛けてゲームの内容や構成に大幅に手が加えられている。実際問題としてその修正を適用して内容を再構成するのに時間が掛かってしまい、2007年末のリリース時点でもまだ未完成さを指摘される部分が有った位である。その修正はゲームのストーリー構成についても例外ではない。
 本来ならばゲーム内容は三部構成となり、最初が普通の環境の島でのKPA(Korean People's Army)との戦闘。次にエイリアンの力により凍り付いた島でKPAとDelta Forceが組んでの対エイリアン戦。最後に姿を現したエイリアンの冷気の制御圏である巨大なSphere(球体)内に乗り込んでの戦いとなっていた(これを書いている時点では、公式サイトはまだこの情報のままである)。しかし実際の製品版では二部構成に変えられ、前半のパートは対KPA戦というのは変らないが、後半はDelta Forceがエイリアンと戦うという設定に変えられていて、敵のSphere内に乗り込むというパートはカットされている(全三部作に変更されたからだろう)。


 全部で11のミッション(エピソード)から構成され、M6までがKPAとの戦い。その後が対エイリアン戦となっている。この前後のパートはまるで別のゲームと言っても良い位にプレイ感が異なっているので、別々に解説して行くことにする。

 前半部分はKPAの警備する南海の島でのプレイになっており、見た目や雰囲気は前作のFar Cryとかなり似ている。ほぼアウトドアの構成で所々に中に入れる建造物が在る程度となり、リニアに進んで行くインドアのパートはほとんど含まれていない。このパートの特徴は高い自由度で、ミッションのクリアには様々なルートが用意されているし、加えてプレイヤーの採った行動による展開の変化も含まれている。FCも自由度にこだわった作品だったが、Crysisはそれを更に拡張したゲームと言える。

 第一に選択ルートの自由度。例えばデモに収録されている最初のミッションを例に採ると、このミッションでは自由行動となってからの最終ゴールとなる地点がマップの最奥部ではなく、もっとマップの中でプレイヤーに近い側に存在しており、半分位のエリアを端折って一直線にクリアを目指すというルートも可能になっている。その他に幾つかマップ内に在る敵の拠点については、自由に全部或いは幾つかを潰して回れる上に、その際には陸路を通って順に回る事も出来れば、ボートを使って大回りして一番遠くから逆に戻って来るというルートも可能と非常に進行の自由度が高い。

 全般的に目標地点間のルート選択はバラエティに富んでおり、山を登ったり川を通ったりとまるで離れたルートを幾つか選んで進められたりや、完全に裏側から回り込んで来るルートまで有ったりと多彩である。一気に最短ルートを車に乗って強行突破という手が使えたりもするし、徒歩で大回りして林の中を静かに隠れながら進める手法も採れたりと、本当にプレイヤーに用意されている選択肢は多い。その他ではマップ内に散ばる複数用意された目標を自由な順番で回れるミッションも用意されている。

 FCでも敵の居る拠点を戦わずに通り抜けてしまうという要素は含まれていたが、このゲームでは更にそれが可能な箇所が増やされている。Vehicleについてもそれが言えて、制作側の意図としてルートがブロックされていて車を捨てないとならないというケースが減り、乗り回したければより広範囲を車やボートに乗って移動が出来るようになっている。
 攻め込む位置も自由度が高くなった。敵の拠点に一方向からしかアプローチ出来ないという設定は減らされており、周囲の様々な方向から侵入する事が出来る。或いは正面から戦わずに。周囲の高台に上って狙撃を行うという攻め方が出来る箇所も設けられている。または対空砲等の設備を破壊する場合、普通のFPSの様に実際にその場所にまで行って爆薬をセットして破壊という方法の他に、それが見える別の場所を探してやり、そこ(時には百メートル以上離れた場所)からロケットを使って破壊してしまう事が可能なケースも有ったりする。

 第二にナノスーツによる自由度。高所から飛び降りれられるArmor、高台をジャンプして上れるStrength、高速で突破してしまうSpeed、ステルスで隠れて抜けてしまうCloakという能力が用意されているので、FCでは不可能だった様な大胆な行為も可能である。敵陣の背後の岩場を登って奇襲を掛けたり、高所から飛び降りてショートカットしたりという新たなルートの開発。或いは迂回ルートが無ければ戦闘を余儀なくされたFCに対して、敵が多い場所でもCloakやSpeedでの突破という方法が用意されている。同様に戦闘を始めてから不味いと感じたら逃げられるという選択肢も増えたと言える。

 第三にプレイヤーの行動によって展開に変化が生じるようになっており、これはFCでは希薄だった要素である。

*達成するのは自由な2nd Objectivesが用意されている
*通るルートに応じて発生する2nd Objectivesは異なる
*PrimaryのObjectivesを含めて失敗に終わる事も有り、そのままゲームは進んでしまう
*プレイヤーの行動によっては、PrimaryのObjectivesの達成方法が変るケース有り

 2nd Objectivesには情報収集の類でプレイに自体には影響を与えないオマケ的な物も有れば、マップ表示を妨害する装置を停止させる等の影響が大きい物も含まれている。影響と言えば脇道部分に武器のアタッチメントや希少な弾薬等が用意されている事が多いので、探し回るほど戦闘面で有利になるというメリットも用意されている。目標の達成方法の変化については、例として“敵の拠点を空爆する為に先に対空砲を破壊しないとならない”というミッションで、それに失敗すると「自らその拠点まで出向いて破壊しろ」という風に指令が変るという物が存在する。
 この要素はリプレイ時の面白味を増すのに効果的に働いており、別のルートを通ると初めて目にする指令が与えられたり、新たな敵の拠点を発見して戦闘になったりと飽きが来ない。ゲーム中でも最も有効な点の一つとして高く評価出来る


 以上の様に前半部分は非常にバラエティに富んでおり面白い。各ミッションはストレートに進めると1時間程度でもクリアは出来るが、マップ全体をくまなく回るならば何倍もの時間遊べるといった構成であり、ゲーム全体に費やす時間の2/3程度は前半パートとなる人が多いと思われる。


GAMEPLAY(続)
 エイリアンとの戦いとなる後半部分ではゲーム性が一変する。端的に言えば普通のFPSの様にイベント(スクリプト)によって進んで行く形式となり、マップ内をプレイヤーの思うままに動くという自由度は失われる。最初にAというイベントが発生してそれに対してどうしろという命令が出され、クリアすると次はBという指令、その後は同様にC,Dと続いて行くというスタンダードなスタイルでのプレイになるという事である。
 味方との合同で戦闘を行う箇所が多くなり、また向かって来る敵を全て退けないとならない拠点防御形式の戦闘も増える。よってプレイヤーには個人行動で別の場所に行ってしまったり、戦闘を回避したりする自由度は無くなる。次の地点に向かうのに若干のルート選択や寄り道が許されている程度。ボリュームとしても、非常に特殊な設定のM7とVTOLを操縦するミッションを除くと3つしか残らず、前半部分に比べるとプレイ時間が短くなっている。

 純粋にこの部分だけを取り出して一本のFPSとして評価するなら別に悪くはない。しかし前半の自由度が高かったゲーム性から一転して自由度の少ないスクリプトによる進行へと変ってしまうので、何故そのままの自由度を保ったゲーム性にしてくれないのかという不満が発生してしまう事になる。実際にこの後半の対エイリアンのパートは、ゲームの評価の中で問題点として指摘される事が多かった部分である。


 何故この様な構成になったのかという点については、ストーリー展開を重視した為とCrytekサイドは述べている。前作のFCはそのストーリーがB級映画と批判されていたのを受けて、このCrysisではストーリーに力を入れるというのを最重要事項の一つに挙げていた。しかしゲームが大きな売りとしているプレイヤーに自由に行動させるという要素は、ストーリー展開をプレイヤーに対して語る上ではマイナスに働いてしまう物である。前半部分では状況を調べる為に敵の拠点を探ってPCをハッキングするという指令が複数出るのだが、その達成は自由なので全てのプレイヤーに対してストーリー上の情報を与える事は出来なくなっている。そこで後半部分ではプレイヤーに行動の自由を与えず、カットシーンを含めて今起きている事が必ず伝わるような展開へと変えたそうだ。前半を非常に自由に行動させる故の代償である。
 「自由度が失われる事への不満が発生する可能性が有るのは理解している。だが全てのユーザーを満足させる事は不可能であり、実際に後半部分が面白かったという反応も多数もらっている。しかし正直に言って、前半から後半へとシフトする際の繋ぎ部分はもっと上手いやり方が有ったのではないかと反省している。」

 個人的にも制作側の意図は理解出来るのだが、ここまで一本道の構成にはしないで、或る程度の自由度は保ったままでゲームの進行が可能になるようには調整が出来たのではないかという不満を感じる。前半が面白いだけに急に変化するそのゲーム性には違和感が感じられてしまい、やはりこの後半パートの収束のさせ方は問題有りと言わざるを得ないだろう。不満の原因は自由度のみならず敵が人間からエイリアンに変る点にも有るのだが、これは戦闘のパートで述べる事にする。


 物理エンジン関連についての評価。自社製の物理エンジンを採用。簡易な作りの小屋ならばスーツの力を借りて殴って壊せたり、或いはロケットを撃ち込んだりして派手に壊したりも出来るようになっている。建物を完全に壊したり中に居る敵にダメージを与えられるゲームは珍しく、また物理エンジンが適用されるオブジェクトの種類も多い(設定にもよる)。
 攻撃して木々を倒したりが可能なのが大きな特徴として挙げられていたが、これは想像していたよりも強力な攻撃が必要で機銃の様な物を使わないと困難。そこら中の木を次々と薙ぎ倒して道を塞ぐような真似は出来ない。その他のカバーへの破壊要素は特に無く、箱の様な動くオブジェクトの陰に隠れている時に機銃等で攻撃されるとそれが動いてしまう程度。ただ全般的には物理エンジンのゲームプレイへの関与が大きいゲームと言え、単にテクノロジーを見せるだけには終わっていない。

 ラグドール表現はあまり派手ではなく、死体は設定にもよるが時間経過で消えてしまう(武器は残る)。箱を投げたりして敵に攻撃を行えるようにもなっており、これは確かに威力は有るのだが見た目的にはスピードや重量感がさして感じられず変な印象も。

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