GAMEPLAY |
Crysisの11個に対してこのWHは7つのエピソードから構成されており、ボリュームとしては6-8時間程度の長さを持っている。拡張パック的なゲームでは相当短い物が増えている中、それなりの分量が用意されていると言える。ただしこのゲームはプレイヤーのスタイルによって、広いマップ内を隅々まで探索する事も出来るし、逆に戦闘を省いて車両で一気に突っ走ってしまうという風にも出来る。またCrysisをプレイ済みかどうかによっても結構変わると思うので、クリアまでの時間には大きな幅が生じるのは確かである。EAの話ではテスターの実プレイ時間(セーブデータに付加される時間合計ではなく)の平均は8時間程度だそうだ。 Crysisからの変化についてだが、これを前作の反省点から見ていこう。まずはゲーム全体の構成について。Crysisでは前半が「自由度が高い進行, 対北朝鮮兵士, 南国の風景」、対する後半が「スクリプトによる進行, 対エイリアン, 凍て付いた世界」という風にクッキリとゲーム性が変化していた。「ストーリー性を盛り込むにはスクリプトによる一本道の進行箇所は必要だし、プレイ途中でのテンポの変化も必要である。しかしそれを極端に前半と後半に分けてしまったのは不味かった」とCrytekでは話している。 そこでWHではスクリプトによるイベント等で自由度が低いパートと、行動やルートの自由度が高いパートを適度に混ぜて進行させるようなっている。一つのエピソードの中でも、最初はスクリプトで進んだら次は自由度が高くなり、更にまたスクリプトになるといった感じで、自由度が低いパートが長い時間連続しないように構成されている。ロケーションも南国のシーンから早目に凍った世界へと一旦移り、その後また帰って来るという形にして変化を付けている。それに応じて敵のタイプも混ざって登場するようになり、同じエピソード内でも場所によってエイリアンが出たり敵兵士が出たりするようになった。この構成の変化については確かに改善されたという印象を受ける。 その一方でゲーム全体の持つ自由度は減退したという感想である。自由度の有無を段階的に分けるとすれば、「ルートが固定でどうやって戦うかという選択のみ」、次に「ゴール地点が与えられて、そこまで何所を通るかやどういう風に進めるかは自由」、更に「広いエリア内に複数の目標が存在し、その中をどういう風に回って行くのかは自由」というように拡大して行く。Crysisの面白さはこの三番目の広大なマップ内を好きな様に進められるという高い自由度が大きかった。 しかしWHではリニアな箇所と自由度の高い箇所を切り替えて出している関係で、一つのマップ全体が広大な自由度を持っているという物が無くなった。典型的な例で言えば前作のM4(Assault)の様な、「幾つかの施設を破壊せよという指令が最初に与えられて、それをどういう順番で回っていも構わない」、「プレイヤーがアクセスしたエリアに応じて、次々にサブとなるミッションが目的に追加されて行く」という構造のマップが消えている。次のゴール地点が与えられて、そこまでは戦闘で行こうがステルスで進めようが自由。進行ルートも複数用意されているという箇所は多いのだが、それ以上に広範囲に渡って進行の自由度が与えられる箇所が無い。例えば目標A, B, C, Dが用意されている際に、今回はA→B→C→Dという形で進めないとならないケースがほとんどで、その間の部分の進行方法にのみ自由度が与えられているという形なので、広い視点でゲーム構造を眺めるとリニアにゲームが進んで行くという感が強い。 前作に幾つか存在していた、それを達成するかどうかによってその後の展開や状況がやや変化する、という設計の場所も減ったように思われる。ハッキリとそれが確認出来たのは一箇所のみ。他にはロケーション(風景)の変更についてだが、前作とは異なったエリアを登場させるとは宣言されていたものの、同じ島の中なので劇的に変わった場所を出せる訳も無く、異なった雰囲気を持つ場所は出て来るがあまりインパクトを持っている所は無い。 第二の反省点としてストーリー、具体的にはエンディングへの批判が非常に多かった。三部作という点が良く伝わっていなかったので、明らかに途中というシーンで終わってしまう点が相当叩かれていたのである。今回は重要な積荷を目的地まで運搬しようとするリー大佐と、それを奪おうとするサイコとの対決の図式が描かれており、ちゃんとその決着が付くまでのストーリーは用意されている。特別に面白いというストーリーではないが、少なくとも中途半端ではないとは言える。なおCrysisの最後のシーンの前までの時間帯なので、Crysisのラスト以降については進展も情報も無い。 だが問題が無い訳ではない。それはオニールの存在である。WHではサイコの友人である空軍パイロットのオニールが出て来て、彼は数多くのシーンに登場するしセリフもかなり多い。サイコ、オニール、そして前作の主人公ノーマッドの間にはある因縁が存在しており、それは4年前の出来事としてカットシーンの一部に音声テープの形で挿入されている。またその件についてはゲーム中の会話でも何回か言及されている。ネタバレ無しでその辺を詳細に説明するのは難しいのだが、要はゲームのストーリー構成を見る限りでは、このオニールという人物は非常に重要な役割を果たすというのを予感させるような扱いになっている。 ところが結局最後まで行ってもその点はストーリーには別に絡んで来ない。なので「それなら何故ここまでオニールが特別に重要な人物であるかの様に扱われているのか?」という大きな違和感を受けてしまう。異様に彼の存在はゲーム内で浮いていると言ってもいい。この扱い振りへの考えられる理由としては、「今後のCrysisの続編において重要な役割を果たす存在として想定されており、その為に今回予告編としてその人物像を詳しく紹介しておきたかったから」、位しか思い当たらない。仮にそうだとしても、ちょっとこのWHでの彼の扱いはあまりに奇妙過ぎてマイナスになっていると言わざるを得ない。 もう一点、私個人としてはオニールという登場人物に対してかなり悪い印象を持ったというのもある。命令に従わずに勝手に行動するシーンが結構出て来て、そういうタイプは主人公クラスには多いのは確かだが、彼はその様な主人公格に比べて高い能力を持っている訳でもなく、出過ぎた行動を行うの理由というのも個人的な欲に絡んでの物となっており、そうなると当然ながら良い印象は持てない。 ただしキャラクタの設定として嫌なタイプの人間が含まれるのは別に悪い事ではない。問題はこのオニールの理解者という形でサイコが設定されている点にある。そして最終的に「サイコがオニールの事を買っているのは、実は彼にはこういった一面もあるからだ」というのを見せて終わってくれたら良かったのだが、そういう展開は無いままに話は終わってしまう。よってオニールに対するイメージの悪さが、それと仲の良いサイコへの印象にも影響してしまってマイナスに働いていると感じた。 それとこれは特に批判があった点ではないが、ストーリーを解説する為のカットシーンの見せ方も変わっている。ゲーム内エンジンを使用したカットシーンなのは同じだが、今作では外部カメラによる視点を導入しており、サイコ自身を三人称視点で描くようになった。よって一人称視点では難しかったタイプのカットシーンの演出も増えている。またCrysisでの顔の用意されていない無個性な人間だったノーマッドに対して、個性の強いサイコの描写は三人称視点により効果を挙げているとも言えるだろう。 ただしこれは前作の方法とは一長一短でもある。代表的な所ではHalf-Lifeシリーズにおける主人公ゴードン・フリーマンの扱いの様に、カットシーンも一人称のままでセリフすら一言も喋らないという見せ方もある。Valve曰く、「三人称視点にしないとカットシーンの演出面で制限が加わるし、一切のセリフが無いのは不自然でもある。しかし外部からその姿を見せたり何かを喋らせた瞬間にプレイヤーは、“ゲーム内世界に存在しているフリーマンを、実世界にいる自分が操作しているのだ”、という点に気が付いてしまう。よって“ゲーム内世界に今自分自身がフリーマンとして存在しているのだ”という没入感を最大限に高める為には、全てのカットシーンは一人称でセリフも無くさなければならない。」という考え方もある訳だ。実際にこのWHではサイコをカットシーンでふんだんに見せて、また彼が喋ったり感情を顕にしたりするシーンが多いので、プレイヤー自身がサイコであるという感覚は持ち難くなっている。この三人称視点での演出をどう見るかは個人の嗜好によると思うが、私としてはこれだけ個性的なキャラクタであれば、今回の様な三人称視点での見せ方の方が効果的ではないかと感じた。 物理エンジンそのものには大きな変化は無いが、マップ内部の爆発したり動いたりするオブジェクトの数が増加しているのでリアリティは増している。ガスタンク等は撃っても爆発しないという点に不満が出ていたので、今回は爆発しそうな物は実際に爆破可能にしたそうだ。破壊自体も特定の爆薬系に限らず、銃器での破壊も可能にされている。 |
COMBAT |
主人公のサイコはノーマッドと同じナノスーツを着用しているので、その基本的な能力面に変化は無い。切り替えて使用可能なスーツの能力もCloak,
Speed, Strength, Armorの4種類で、その仕様も変わらない。(Strengthでのジャンプがやや高く飛べるようになった気はする)。自動回復やスプリント能力、武器の所持制限やModキーでの機能切り替え等も一緒。 新武器も加わったがこれも劇的にゲーム性を変える物ではない。最も性能に優れた自軍のSCARは途中で弾薬を拾えるケースが少ない点は不利とか、Precision Rifleは精度が高いがサイレンサーを装着出来ないとか、FY71は火炎弾を入手すれば大きくパワーアップするとか、その辺の武器の感覚も同じである。仕様で変わった点としては、難易度Delta以外ではUseしなくても自動的に弾薬を拾うようになっている。これはかなり便利になったと言えよう。 そんな中で変化した点を挙げてみると、前作でも一部にあった敵側のナノスーツ兵士との戦闘がかなり増えている。(何故敵側が持っているのかの説明は今回も無い)。そして彼等はこちらと同じ様にスーツのモード変更をして来るのだが、デフォルトであるアーマーの状態だとこちらと同様に自動回復機能が働いている。つまり短時間の間に大きなダメージを与えないと倒せない。例えば普通の兵士をヘッドショットの一撃で倒せるようなPrecision Rifleでも、ちょっと間隔を空けてしまうと相当体に撃ち込んでも倒れない。或いはミサイルランチャーならば戦車並に2発連続して当てないと倒せないとか、通常の武器での攻撃では効率が悪い相手となっている。 そこで特別な攻撃方法で対処する事になる。一つ目は短時間に大量の弾を撃ち込めるタイプの武器で、近距離でこちらが全回復状態とかならば近付いて両手持ちのAY69を一気に叩き込むというのも有効。次にFY71の火炎弾で、これは特にアーマーに対して効果があるらしくナノスーツ相手には向いている。もっと適切なのがGauss Rifleで、これは劣化ウラン弾を超高速で発射するので非常に貫通力が高く、ナノスーツのアーマー機能を破ってヘッドショットならば一撃で倒せる。火炎弾よりも弾は入手し易いし直撃タイプの武器なので当て易くもあり、持っているのならばこれが一番のお薦め。連射性が低いのだけは難点。 そして最後に新アイテムのEMPグレネードかGLによるEMP弾で、後者の方が逃げる間を与えないのでより効果的である。これの爆発範囲内に入るとスーツの機能が一時停止してしまうので(視覚的には青い電流がバチバチと暴走している様に見える)、その間は通常兵士と同じに普通の銃弾で簡単に倒せるようになる。ただし近距離過ぎると自分のスーツの機能も停止してしまって大ピンチになるので注意。稀にEMPグレネードを使って来る敵も存在している。 次に前作でも無かった訳ではないが、味方と一緒に戦うシーンが増えている。また今回は実際に集団で移動しながら進めて行くシーンも含まれている。その味方は倒れても時間を置いて立ち上がって来るので特に気にする必要は無い。指示コマンドも無く勝手に戦ってくれる。併せて北朝鮮軍がエイリアンと戦闘するシーンもやはり存在しており、時には3つ巴の戦闘になったりもする。この辺はゲーム内の変化として面白い点と思えた。 更に氷の世界において、銃に備えられたサイトの一部が凍って見え難くなるという要素が加わった。ダットサイトが凍って見えなくなるので、それよりはマシなスコープにしないとならない等。それとこれは前作に在ったか定かではないのだが、自分が冷凍攻撃を受けると視界が凍るまでは一緒だが、更に凍ると倒れてしばらく動けなくなる。マウス高速で左右に振ると回復が早められる点は同じ。 実際のプレイ感について。難易度については、Crysisを未プレイの人だと変わって来るのかも知れないが、Normalだとやや簡単な部類に入るという印象。既に前作をプレイしている方はHard以上で始めるのが良いと思われる(難易度はプレイ中に何時でも変更が可能)。若干一度発見された後の再クロークへの反応が変わったようにも感じられるが、やはりクローク機能の強力さは相変わらずだし、自動回復機能を持つので距離を取れば死に難い点も変わっていない。こちらの嫌なGauss Rifleを持った兵士も少ないし、ミニガン兵士も今回は出て来ない。 武器や弾薬が要所に置かれているので、弾薬切れは少ないし武器の交換も気軽に行える。その武器交換の自由度が高いのは良い点だが、それにより攻撃力が上がり過ぎるという感は否めない。例えばGauss Rifleの弾はその威力を考えるとちょっと多過ぎるのではないかと思える。グレネードも16個持てる上に次々に投げ込める位に数は多い。マップ内を細かく探す事でレアな弾や武器を入手も可能になっているが、それをしなくても十分に戦えるという程度のバランス。 敵に攻撃が当たった時のリアクションは、その部位によってちゃんとそれに合ったアニメーションが表示される様で良く出来ている。一方で衝撃によるモーションブラーが強いのは相変わらずであり、特にエイリアンの氷攻撃による視界のブレは相当見え難くなる。この辺は嫌ならオプションから調整するしか無いだろう。 Vehicle系は前作に比べてやや有利になったように感じられる。Crysisでは敵兵士が積極的にグレネードでの攻撃を仕掛けて来たのだが、今回はそれがあまり感じられない。故に対歩兵戦ではバランスが崩れたようにも思えるし、走りながらの攻撃は威力が高過ぎるとも言える。壊れてもその辺に沢山有るので乗換えにも困らない事が多い。Hard以上にすれば運転と同時に機銃が撃てなくなるのでそういう面は治まるが、止まらないと機銃が使えないというのも面白味が無いように思える。 しかし場所によっては車両が存在せず、徒歩を余儀なくされる箇所というのは増えている。また私がプレイした限りでは海路を進むボート類が一切見付からなかった。よって全編を通して車両が強過ぎるという問題にはなっていないのだが、逆に言えば車両を選択する自由度がカットされたエリアが多いとも言えて、その意味では自由度の減退に繋がっている。 敵の兵士のAIについては、反応速度を早くしてより流動的に動けるように改善したとされている。印象としてはこちらを発見した後に積極的に前に出て探しに来るケースが増えたのは確かだ。逆に背中を向けて一旦走って遠くまで逃げてしまうというのも良く見られるようになった。難易度によって動き方を変えるという要素はそのままらしいが、前作と同じレベル設定なのかは未確認。しかしスーツの機能を認識出来る訳ではないのでクロークによる攻撃に弱かったり、段差が高い位置から攻撃するとその下に皆集まって来てしまうという問題点は解消されていない。基本的なAIのレベルは高いのだが、Crysisの時に書いたような「こちらの特殊能力を考えての攻撃が出来ない」という点はそのままである。 感触が変わった点としては、エンジンの改良により最大でマップ内に40人のアクティブなAIを存在させる事が可能になっている。それにより同時に攻撃を仕掛けて来る敵の数は目に見えて増えた。これは多数の敵相手に激しい撃ち合いをしたいプレイヤーには良い点であり、同時出現数の増加はWHの大きな売りと言っても過言ではない。なお多くの兵士は建物の中に待機しているというケースが多く、攻撃して騒ぎになると続々と出て来る様になっている。なのでステルスで進めるならば、多くの敵の中を進まないでも済む。 エイリアンのAIも不満が多かった点の一つ。制作側としては映画“Starship Troopers”の様に次々と直線的に敵が襲って来る事によるプレッシャーを与えたかったそうなのだが、そういう設定自体のプレイヤーへの受けが思ったほど良くなかったのと、想像していたよりもエイリアンが倒されてしまうのが早かった為に、プレイヤーに接近出来る数が少なかったので緊張感も生まれなかったとしている。 そこで今回はエイリアンにも知性を持たせるようにして、人間の兵士ほどではないがオブジェクトの陰に一旦隠れたり、一度引いて別の方向から回り込んで襲って来たりという動作を行うようにされている。同じく集団行動の概念も採り入れ、皆で固まって動いて来る傾向も強まった。種類もシールドを張るタイプが加わり、EMPグレネードを使った対処をしないと効率的には倒せなくなっている。更には兵士同様に同時出現数は増やされており、その結果としてそれ程怖さが無かったノーマルタイプのエイリアンも、前作よりも高い攻撃力を持つようになったので戦闘の面白さは増している。 また空を舞う巨大なタイプのエイリアンについては攻撃が当て難いという不満が出ていたので、飛ぶ高度を低くして弾を当て易くするという修正が行われた。動きの早さやランダム性、また耐久力も若干落とされているような気がする。 |