戦 闘 |
やはり他のゲームと最も異なる要素としては、HUDが無いので各種情報が与えられないという点になる。 Iron Sight(Aim Mode)を採用しておりこのモードにすると命中率を上げる事が可能なのは当然なのだが、通常視点では照準が表示されていないので敵を正確に狙い難く、命中率が減る上にプレイヤー自身が狙いを合わせ難いとなるのでより不利となっている。なおIron Sightに切り替えても移動速度は落ちないという仕様で、視界もそれ程は妨げられない。 次にHUDに情報が表示されない事で問題となるのはクリップの中の残弾数。このゲームでは現在どれだけクリップ内に弾が残っているのかを知る方法が無い上に、Auto Reloadの機能を持っていない。よって自分で頭の中で数えて管理する以外になく、気が付かずに切れたら弾が出なくなり、リロードに掛かる時間も短くは無いので戦闘の最中だと不味い事になる。基本的には余裕のある時にリロードしておくのが基本となるが、武器を持ち替えた時とかに忘れてしまうと、再度選択した際に全弾装填されている状態と勘違いして弾切れという事態にもなってしまう。 ・連射するとリコイル(反動)で命中率が落ちる ・武器にもよるが硝煙やマズルフラッシュのエフェクトが派手で、納まらないと前が見えない位にまでなる ・敵にも部位ダメージ有り。脚を撃つと速度が落ちるし、Headshotは最も強いダメージを与える。 ・座って撃つ事で命中度は増す ・移動しながらだと精度は落ちる ・死体からは武器や弾薬は取れない(すぐに消えてしまう) ・武器の所持制限は無いが、マップ単位でリセットされたりするので全てを所持しているという事はそれ程無い 武器は1920年頃の実在の武器であるColt, Revolver, Double Barreled Shotgun, Springfield M1903 bolt-action rifle, Tommy Gun等が用意されている。武器は使い勝手に結構癖が有り、最も正確で強力なのがRifle、次がRevolverとなる。Shotgunは強力だが2発しか撃てないので危険性もあり、Tommy Gunは数多くの敵相手には有効な武器だが、相当近距離でないとなかなか当たらないという欠点を持っている。Ammoは他のゲームに比較すると少ないが、戦闘シーン自体が少ないこのゲームに於いては十分に有るといって良い程度は用意されている。 その他の一般的な仕様としては上記の様になるが、何より困るのがフィードバックが与えられない点である。リアルさを導入してちゃんと理に適った安定した状態で撃たないと当たり難くなるゲームというのは有るが、このゲームではどれだけ当たり難くなっているのかを知る事すら出来ない。例えばリコイル一つを取っても、照準がダイナミックに変化するシステムならば、広がった弾の散る範囲がどの程度で元に戻るのかを知る事が可能である(銃口が元の位置に戻ってから0.5秒後に完全に収束する等)。しかしそういったガイドが一切表示されないので、銃口が元に戻った時点で直っているという仕様なのか、その回復には若干の間が有るという風にされているのかの判断が出来ない。Decalが無いので壁に撃ったりして比較も出来ないし、その他の要素も絡んで来るので実際の戦闘中に純粋にこの要素だけの変化を観察する事も不可能なのだ。 そしてそこに更に大きな影響を与えるのがシステムの項で解説した怪我とSanityの要素である。目に見える影響としては構えた銃が揺れたりするのは狙いが付け難いし、移動速度やリロード等の動きがスローになってしまうのも問題となる。しかし厄介なのは目に見えない方で、怪我をした箇所によって命中率が落ちるが、これも照準が出ないので具体的にどの程度影響しているのかの判断が非常に難しい。 ダメージによる視覚的な影響も極めて大きい。ダメージが重くなると視界がボヤけたりはするがこちらはそれ程問題ではなく、Mental Healthが落ち込む事により及ぼす効果が厄介となる。恐怖を感じるような敵と、或いはそういったシーンの直後に戦ったりした場合、視界が定まらずに残像が残るような状態となって正常に見えなくなってしまう。またJackは高所恐怖症の気があるようで、ちょっと高い所から下を見ただけで眩暈を起すようになっており、この状態から下の方の敵に対して攻撃するのは困難である。一時的に運動能力を正常に戻すためにモルヒネを使った場合も、呼吸するように周囲の背景が歪んで近付いたり遠のいたりするので、命中させるのは別の意味で難しくなる。そしてまたこういったマイナス効果は全て、今どれだけ命中率が落ちているのかというフィードバックすらも与えられないようになっている。 HUDによるガイドが無い上に、死ぬまでの限界が分かり難いのでフラストレーションが生じるというのは確かだが、逆にここがゲームとして面白い部分となっているのも間違いない。戦闘中に怪我をしたからといって目の前での治療は無理なので、一旦逃げて隠れてから行うか、それとも相手を倒し切るまで戦うべきかという判断をしないとならない。または怪我が重くて動きが遅い場合、モルヒネを撃って一旦は逃げるべきか、モルヒネで運動能力を回復させて歪んだ視界で戦うか、それとも普通の状態で戦闘を続けるのが良いのかという選択を迫られる事になる。Mental Healthについても同様であり、逃げて回復するまで待つべきか戦うべきかとなってくる。この辺の判断の必要性が緊張感を生んでおり、その独特のゲーム性が新鮮に映る。 総合的には戦闘はAIの問題もあってそれ程難しくはなく、敵が無限の場所に気が付かないでMedikitを無意味に使ったりする可能性がある箇所が難点となる程度。後は特定の作業が要求されるボス戦が難易度が高い。武器さえ揃えば最後のマップに到っても一般的な戦闘についてはそれ程難しくはならない。 最後に敵の種類は少なく、人間は数種類モデルに変化が有るだけで能力的には同じ。人間外の海底の存在についても敵のタイプは少なく変化には乏しい。元々原作の設定では人間が極度に弱い存在とされており、最下級といった存在のThe Deep Oneにならば強力な武器をもって何とか対抗可能という程度のバランスだが、ゲームなので或る程度は人間側を強くしないと成立しないというのは分かるし、強大過ぎる存在には対抗出来ては変なので、何等かの魔法や儀式を行ったりして倒す(謎解きで倒す)というのも理解出来る。しかしもうちょっとバリエーションや敵のデザインをそれらしく(恐怖を与えるような存在)するというのは必要だろう。これは大きな弱点であり、戦闘の迫力を削いでしまっている。 |
問 題 点 |
敵のAIの出来は標準以下と言わざるを得ず、ゲーム中にはバグを含めて様々な奇行が見られる。 ・何事も無かったかのように元の巡回ルートに戻ってしまう(仮に撃たれていても) ・こちらを見付けて敵だと騒ぐが、全く撃たずに2つの地点を移動ループ状態となる ・追っている最中に、見えている距離なのにこちらを見失う ・戦闘中に戦っていた事を忘れて普通の状態に戻ってしまう ・すぐ近くの銃声に気が付かない ・横にいる仲間が撃たれても反応しない ・正面に行っても反応しない ・至近距離から攻撃をこちらに当てられない 一応書いておくと全く正常に動かないのではなく、ちゃんと動く時も有るが変な時も有るというレベル。酷い場合には本当に酷く、4人位でやって来て銃撃戦になり、他の3人が死んだ後に戦闘が終わったと判断したのか普通の状態となり、目の前から歩いて巡回ルートに戻ろうとした事も有ったし、正面に立ったこちらにShotgunを連発するが全く当たらないというケースも有る。 その為に妙な結果に終わるケースも有って、例えばかなり難しいステルスでの行動を要求される箇所に置いて、ステルスでの行動を全く無視して普通に走って移動。当然すぐに発見はされるが、「追え・どこだ」と叫ぶだけで見当違いの方向へと走って行ってしまう者、曲がり角でUターンループ状態に陥ってこちらに来られなくなる者、すぐ横を通り過ぎるこちらに銃を連発するが全く当てられない者等々で、結果的にはステルス無視で楽々逃げ切れてしまったり。 或いは多人数相手の戦闘において、何人もが団子状態になって動き回って叫ぶだけで攻撃してこなくなったり、こちらに向かって来るのに目の前からわざわざ大回りのルートを描いて移動するので到達するまでに全員撃ち殺せたり、銃撃戦の最中に淡々と自分の巡回ルートを回っていたり。 結果的に言えばゲームの難易度からするとバランスは取れている。ただでさえ難易度が高いこのゲームに於いて、AIの知能が高くて正確だったら余計にクリアが困難になるからだ、しかしこの点は別に良い事でも何でもなくて、人間的に見えるちゃんとしたAIが先に有って、それを基準に配置人員やマップ構造を調整してバランスを取るのが正当であり、ゲームとしては明らかに不自然さを感じさせる出来。恐らくはもうこれ以上のAIを自分達の能力では作れないとなってそこから難易度調整をしたのだろうが、これではもうスタート地点からしておかしいとしか言いようがない。 任意にセーブが出来ない上に、場所によってはその間隔が長いという問題点。各ゲームサイトのレビューにおいて最も強く叩かれていた点がこれである。常に難所の直前に用意されているなら良いのだが(そういう場所も有るが)、そこまではしばらく移動しないとならなくなっているとか、次のポイントまでが非常に長いとかという箇所が結構多い。コンソール用のゲーム(特にHDが標準装備で無い機種)では、セーブ用のメモリーカードが高価なので任意にセーブが出来るようにはしないというデザインが多く(言い換えると金を持っている人間ほどセーブが頻繁に可能になるのは好ましくないという判断から)、或いは何時でもセーブ可能にするとなると、必ず正常にセーブされるという保証の為のテストが必要になるといった観点からも好まれない。このゲームもXbox版ではそうなっているのだが、それをそのままPC版にも持ち込むという必然性は無い。多分デザイン面というよりも修正を行うだけの時間が無かったのだと想像されるが、ゲームの難易度を上げるのに悪影響を及ぼしている。 そして死んで憶えない限りは勘でクリアする以外に無いというシーンが多いのと、この任意でセーブが出来ないというのが組み合わさってしまったのが問題を悪化させている。緊張感を維持するにはQuicksaveは不可にするべきという意見は認めるが、単に移動するだけのパートを何回も繰り返さないとならないような不必要な箇所はストレスが溜まるだけ。 Vertigo(眩暈)の表現が極端で、ちょっと下を見ただけで発生してしまう。その為に高い場所に渡した木の上を移動したりジャンプしたりが非常にやりにくくなっている。勘で上を向いて移動したりとかしないとならないケースも。 段差に嵌ったり引っ掛かったりしてしまう場合がある。特に座った状態だとなり易い。 ラストのマップは起きる事が少ない割には広過ぎるのと、謎解きが漠然としていて分かり難い。また戦闘が多い訳でもなくクライマックスにしては盛り上がりに欠ける。 異世界に於いて、何故こんな場所にMedikitやアイテムが有るのかという疑問。ゲームとしてしょうがないというのは分かるが、雰囲気を損なっておりもっと他にやり方が有ったのでは。 |