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シ ス テ ム
 このゲームのシステムには独特な物が多いので解説しておく。

*Difficulty
 最初に選択可能な難易度はBoy Scout(Easy)とPrivate Investigator(Normal)の2つ。クリアすると様々なゲーム中の成績計算からMythos Rating RankがA-Eの範囲で与えられるようになっている。Private InvestigatorでクリアするとHardened Detective Mode(Hard)がアンロックされ、これをRank Aでクリアすれば最終難易度となるMythos Specialistがアンロックされる。

*Save
 Quicksaveを含めて任意の場所でのセーブは不可。セーブするにはマップ内に存在するElder Signの箇所にて行わないとならない(2種類存在するがセーブするという観点からは全く同じ機能)。これは或る程度の間隔を置いて存在しており、Useする事で6個有るスロットのどれかにセーブが可能。基本的には目立つ位置に有るが、中には隠されている物も存在する。回数には制限が無いので(スコアには影響する)、戻って来れば何回でも使用は可能である。
 Autosaveはマップ切り替え時等に行われ、これはロード画面からはアクセスが出来ない。死んだ場合にContinueを選ぶと選択出来るという方式。電源を切っても保存はされたままだが、別のデータをロードしてしまうと上書きされてしまうので注意が必要。

*HUD
 ゲームの最大の特徴と言えるのがHUD(Head Up Display)が存在しないという点。プレイ中の画面には銃の照準、残弾数、現在のHit Pointといったステータスが一切表示されない。ただし一部のデータはインベントリー画面を呼び出して参照可能であり、呼び出し中はゲームはポーズの状態になる。

*ダメージ・治療
 部位別ダメージを採用しており、Jackの体は頭部・腹部・両手・両足の6つの箇所に分けられていて、それぞれに4種類のダメージが加わるようになっている。治療にはマップ内で手に入るMedikitを使用し、その中にはBandages(止血)、Splint(添え木)、Stitches(縫合)、Antidote(解毒)という4種類のダメージそれぞれに対応するアイテムが含まれているので、これ等をインベントリー画面で赤くなっている怪我の箇所に使って治療を行うというシステム。
 治療はインベントリー画面からマニュアルで治したい箇所のスロット(全24個)をクリックしてやれば行われるが、Quick Healを使えば自動的に完全治療が行われる。治療時間は治したい箇所の数ではなく、4種の治療アイテムを何種類使うかで計算され、各2秒という時間が掛かるようになっている(最大で8秒間)。なおこの治療中は動く事やキャンセルが一切出来ない状態になる。

 ダメージを受けるとその箇所によって行動に制約が生じる。足が折れた(捻挫)の状態だと足を引き摺るので移動速度が落ちてジャンプ力も低下するし、手を怪我しているなら持っている武器の命中精度に影響。頭部や体全体のダメージが大きくなると視界が変になったりといった影響が発生する。治療を行わないと出血が多くなるのでダメージが加算されて行く為に、放って置くと死亡してしまう事もある。ただし現在どれだけ危険な状態にあるのかという判断にはECGメーターの波形と、画面がモノクロ(セピア色)に変色してくる事がある位しか具体的な目安として参考になる物が無いし、死の前の視界が薄れてくる状態になったらもう治療は間に合わない。なので経験で視界がどういう感じになったら危険なのかといった点を学んで行くしかなくなっている。

 怪我をしたら何時でもすぐに完全治療と行ければ簡単なのだが、幾らでもMedikitが存在する訳ではないし、また4種の治療アイテムは最大所持可能数が物によって異なる。そして一般的には治療を行わないと出血が多くなるのでダメージが加算されて行くが、一方で放って置く事で治って来る怪我もあるので、治療アイテムのマネージメントというのも必要になってくる。例えば縫合が必要な重度の怪我は時間が経過するとBandagesで治せる軽症になるので、Bandagesが多く余っているなら最大所持数の少ないStitchesを温存して回復を待つというのが有効になるし、逆にBandagesが少なくStitchesが多いのならば早く治してBandagesを使わないようにする。もっとも敵が近くに存在している場合には、治療を遅らせる事によって死に繋がる危険性を高くしてしまうという問題は孕んでいる事になる。

*Morphine
 最初から常に所持しており、使用回数にも制限は無い。現実同様にこのモルヒネを撃つ事で一時的に痛みを軽減させる事が出来るので、例えば怪我で移動速度が落ちているが、敵に追われているので治療をしているヒマが無いといった際に、痛みだけを軽減して運動能力を回復させる事が可能になる。その代償として一定の時間視界が脈打つように歪み、またMental Healthに悪影響を及ぼすので、過度な使用は逆に死を招く可能性を持っている。

*Mental Health
 ゲームの原作となるTRPGの有名な要素であるSanity(正気度)に関する設定。Cthulhu神話では「神或いは或る種の超越的存在」は人間の精神が耐える事が出来ない位の畏れを与える存在(人間の感覚を超越した物)と位置付けられている。よってそれを見たりとか、それに関する情報を知ってしまうと精神的におかしくなってしまうという風になっている。勿論その他何らかの恐怖に遭遇しても影響を受ける。

 DCotEではこのシステムを採り入れており、何等かの恐怖に遭遇する毎にプレイヤーは正気を失っていく。具体的には以下の様な変化が生じる。

・早くなった心音が聞こえてきたり、息遣いが荒くなる
・視界が揺れたり残像が生じたりする
・周囲の音が聞こえなくなる
・独り言を呟いたり、頭の中に幻聴で声が聞こえてくる
・移動等の動作がスローになる。真っ直ぐに歩けなくなる。

 このSanityが限界を超えた場合には、Jackは銃で自分を撃ったりして自殺してしまう。回復するのに明確な方法としては星型をした強力なElder Signの場所に行く事しかない(同時にこの印は敵の目を眩ませて近付けなくする効果を持っている)。しかしこれは数が多い訳ではないので、通常はその原因となる物から目を逸らしたり、出来る限り安全と思える場所まで逃げて回復を待つという位しか出来る事は無い。それが敵であるならば倒す事で回復は可能だが、同時に恐怖の源に対峙する事になるので危険も冒す事になる(おかしくなっている状態で戦わないとならないし、倒した後に自分も発狂してしまう可能性もある)。

 問題なのは「自分が今どれだけ正気を失っているのか」を具体的な数値として知る方法が無いという事。HUDは勿論のこと、インベントリー画面にも参照可能な数値は存在していない。よってどこまで行ったら危ないのかは経験から学んで行くしかない。

*基本動作
 基本的には走るという動作固定であるが、移動速度はあまり速くはない。ダッシュしたりは出来ない仕様。CrouchとLeanが可能。

 Sneak Modeへの切り替えを持っており、移動速度は歩きで遅くなるがFOVがやや広がって周囲がより観察可能になる。また緑色のエフェクトが掛かるようになるので視界は鮮明では無くなるが、反対にやや明るくなるので暗い場所は若干見え易くなる。

 高所から落ちるとダメージを受けるようになっており、しゃがめば幾らかは軽減される。酷い場合には足が折れてダメージを受けて治療が必要になるし、最悪死んでしまう事もある。しかしショートカットが可能になると言うケースも有るので、治療薬が多い際には有効な手段となることも。

*アイテム
 武器類はマップ単位でリセットされる事が多く、弾薬やMedikitは通常持ち越しされる。

*情報
 Journal機能を持っており、Jack自身の日記や操作で入手した文献等が参照可能。ゲーム中にObjective表示の機能は無しなので、次にやるべき事が分かり難い箇所も結構存在している。地図も無いのでマップによってはしっかり憶えないと迷う事になるだろう。




GAMEPLAY
 ゲームのジャンルはアクション・アドベンチャー。謎解き要素を含んだアクションゲームとアクション・アドベンチャーの境目はどこなのかというのは難しいし、実際にアクション・アドベンチャーと名乗っているゲームでもいろいろなタイプが有るのは確かだが、このDCotEは謎解きの要素が相当強いのでアクション・アドベンチャーと言って差し支えないだろう。
 ゲームのクリアは謎解きにどの位時間を費やすかで変化するが、初回だと20-25時間程度と思われる。詰まればもっと掛かるだろうし、ヒントに頼って進めるならばもっと早くなる。高ランク獲得には5時間以内でクリアといった条件が付くようだが、謎解きの答えを知って道順を憶え会話等を出来る限りスキップすれば可能だろうとは思える。マップ単位でのリプレイ機能は無しでメニューからの選択は不可。

 全体にアクション(戦闘)が占める割合が少なく、アクションゲームが好きという人には向かないとは言える構成。大きく分けてステルス(逃走)・謎解き・アクションの3つのパートに分けられるが、アクションで進めて行くシーンは全体の1/3程度。プロローグを含めて全11章から成るが、最初の4章では武器自体が手に入らないので一切の攻撃は不可能(ステルスで敵を倒すという事すら出来ない)。ここまでで全体の1/3程度なので、一般的に計るなら6-8時間の間戦わないで進めないとならず、戦闘がメインの人には辛いだろうと思える。
 その後もステルスを使って行動したりとか、謎解きを終わらせないと進めないとか、または敵が一切登場しないマップも有ったりと、長時間連続して戦闘で進めて行くというシーンはほとんど無いというデザイン。

 構造としてはアイテムを手に入れたりといった脇道は有るがほぼ一本道。クリアの為の自由度は低く、謎を解く方法は一つしかないし、正解となるルートも一つだけ。アドベンチャーゲームに近くリプレイ性は低い。
 難易度はゲーム全体としては高い部類で、最大の要因はセーブが自由に出来ない点。普段アクションゲームをプレイしていない層もプレイする事を想定して、ストーリー重視で楽しめるようにBoy Scoutという難易度を設けたというのは賢明な判断だろう。戦闘の難易度自体は全体的には普通だが、ボス戦を含めてかなり難しいアクションのシーンが何箇所か有るのと、後は純粋に謎解きが分かり難い・難しいというのも有る。

 当然このゲームにホラーの要素を求める向きも多いと思うが、残念ながらそれ程恐怖感が感じられるゲームではない。「人間の感覚を超越するような恐怖を与える存在」というのをグラフィックとして登場させるというのは不可能なのは当然の話だが、それはさて置いても恐怖感を与えるデザインの敵といった存在がほとんど出て来ない。魚人とでも言える存在は出て来るが怖さは感じられないし、他に気持ち悪い様な畸形の敵が用意されている訳でも無い。ラスボス的な存在も外観に関してはインパクトが薄いとなっている。ここは作り込みというかデザイナーの能力不足という感は否めない。
 むしろ前半のインスマウスの住人や街中の雰囲気の方が不気味さを感じさせる出来栄えで、こちらは高い点を与えられる。恐怖を狙ったイベントシーンも「恐怖感を与えるはずの海底の神秘的な存在」に比べて怖さを感じさせる出来の物が多い。多くはJack自身のフラッシュバックなのだが、彼は特殊な能力?としてMind Swapという物を体験するようになっており、これは他の人間の体験した出来事や、近くで起きている状況を別の人間の視点から体験するという物になる。


 ゲームを構成する3つのパートの内でまずはステルスについて。特にゲームの前半は武器が無いのでこれを使うシーンが多くなっており、後は最後のマップでも結構使う事になる。その他では戦闘するか出来るだけステルスを使うかにはそこそこの自由度は存在している。
 基本的にはSneak Modeに切り替えて気配を消して移動する。敵は巡回ルートを移動しているタイプと位置固定タイプが存在するが、敵の視界はそれ程遠距離には届かないようになっている。敵の巡回が無い場所やすぐ近くを通る時などは、SneakとCrouchを組み合わせての足音を消す状態で移動。ただしこれは相当遅くなるので、巡回の視点をかわすのには間に合わないとなったら立ってSneakで切り抜けるという風になってくる。
 攻撃に関しては警戒態勢に入っていない敵に対して背後から攻撃すれば通常は一撃で倒せる。特にナイフはAlt FireでStab Modeに切り替えて威力を増す事が可能。

 ステルスに関しては後ほど詳しく述べるがAIの問題も有ってそれ程良く出来ているとは言えず、見付かるかどうかの判断基準もハッキリしていない。HUDが無いというシステムなのでステルス・メーター類を付けられないのはしょうがないが、それであればもっと視覚的に分かり易い基準を設けるべきではないか。それと全く動かない敵も多いので、武器さえ持っていれば簡単に背後から倒せてしまえて緊張感が無いし、そもそも死体はすぐに消えてしまうので隠すといった概念が存在していないという点自体が、ステルスというシステムを採り入れるには問題あり。
 またステルスではないが、反撃手段を持たないので逃走するというシーンも結構多い。最初からそういう設定になっている事も有るし、ステルスの途中で発見されても逃走状態になる。これは緊張感も有ってなかなか面白い要素となっているのだが、やはりシステム及び追っ手のAIに問題を抱えている。

 ステルスと逃走のシーンの欠点の一つとしては、やってみないと分からない、即ち死んで憶えるというパターンが多くなっておりストレスが溜まるというのが挙げられる。単に逃げる・ステルスで切り抜けるとしか設定されておらず、何処へ行ったら良いのかが分からない。正解は一つのみだが、複数有るルートのどっちへ行けば良いのかや、どこのドアが開くのかといった情報が与えられないので勘しか頼る物がなくなっている。ステルスを維持した状態で全てのルートが調べられるなら変ではないが、敵に発見される事無しには通過出来ない箇所(或いは巡回パターン等の突破する為に必要な情報が得られていない状態では運に頼るしか無い箇所)が存在しているので、死んで前のセーブまで戻って何回もやり直しながら、ここはダメだとか敵の配置箇所を憶えたりして解決に辿り着くようにしないとならない。


 謎解きに関してはゲーム内での比重が大きい。頭を使って考える時間を含めるとゲーム中で最も長い時間を費やすパートと言えるだろう。一般的なアクションゲームに有りがちな装置を動かす為のボタンを探して押すといったタイプだけではなく、純粋に頭を使うパズル的な箇所も含まれている。

 論理的に考えれば分かる物が多いが、「基本はよく観察する事」というのは一般的なアドベンチャーゲームと変わりない。動かせるオブジェクトの場合には床に傷が付いていたりするし、周囲をUseする事でJackが言う言葉がヒントになったりもする。例えば典型的な例としては、Jackが翻訳用の本を持っている場合には、読めない文字の前でそれを使うと翻訳が行われるようになっている。

 しかし中には結構難しい物も含まれているのは確かだ。第一にObjectiveが表示されないので、何をして良いのか分からない時がある。目の前に解くべき問題があからさまに与えられているのなら良いのだが、そもそも次は何処へ行って何をしないとならないのかが分からないというケースもある。アイテムを取り忘れているとロードしてやり直しというデッドエンドは無いのだが、何かアイテムが足りないのか、それともアイテムは足りているが何処かへ行かないとならないのか、そもそも何をすれば良いのかという点からして分からないという状態。最終マップを含めて広く複雑なマップで、あっちこっちへ行ったり来たりして解決しないとならない謎解きにて生じ易い。その為に「後に何か出来るのではないか?」と思われるような場所を憶えておくのが重要となっている。

 次にテキスト量がそれなりに多く、大半はゲームをクリアするのには必要の無い要素なのだが、中には謎解きに関して重要な情報を含んでいる物も存在している。また会話量が多いのだがこれはログには残らず、この会話に次にするべき事へのヒントが含まれている事が多くなっている。よって一度だけ話されるそのデータを聞き逃してしまうと解決が困難になるという可能性が有る。
 それとドアの類には幾つか種類が存在しているのにも注意が必要。Useで開けようとして"Won't Budge"ならそれは基本的に開かない。"Locked"なら鍵が掛かっているので、鍵を見つけてくれば開く可能性が有るし、何かが起きた後なら開いているかもしれないドアとなる。"Bolted Shut"とはボルトでロックされているドアになるので、反対側からそのボルトを外せば開く。或いはこちら側のロックしているボルトを解除すれば開く(あまりハッキリと目立たないのと、物によって付いている位置が異なるので、向こう側にボルトが有ると思い込んで見過ごしてしまうという人も多いようだ)。最後にインターフェイスの問題も有るのだが、これは別の項にまとめて書かせてもらう事にする。

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