STAR TREK |
まず最初に明らかにしておくと、私自身はスタートレックのファンではないし、その内容についても良く知らない。世代的には初代シリーズに登場するMr.スポックは当時その外見からも有名人だったので知っているのと(思い出せない人にはDr.スランプに出て来るパロディのスコップ君と言った方が判り易いか?)、Klingon Honor GuardというFPSをプレイした事があるのでクリンゴンについては少し馴染みがあるのだが、このゲームの扱っているシリーズについてはほとんど判らない。(昔それを扱ったアドベンチャー&シミュレーションをプレイした事はあるがコンプリートしていない)。 取りあえずゲームをプレイする前に基本的な事項をざっと頭に入れてみた程度である。よってこのレビューはスタートレックをほとんど知らない人間が書いた物であり、「シリーズを良く知らない人にも楽しめるのか」という視点からのレビューとなる。なので批判している点について、中には「原作の設定ではそうなっているのだから仕方がない」というものも有るかも知れない事をお断りしておく。反対に「スタートレックの世界の雰囲気をどれだけ忠実に再現しているのか」については書く事が出来ないので、それを知りたい方にはあまり役に立たないと思われる。 開発側からは、「これは確かにスタートレックを題材にしたゲームだが、その前に一つのゲームである」とのコメントがあり、スタートレックに親しみの無い人や前作をプレイしていない人でも楽しめるという点がコンセプトとして挙げられている。実際にゲームをクリアする事に関して言えば、スタートレックの予備知識が一切無い人でもちゃんと可能なのは確かだ。しかし様々な要素について完全にゲーム側が解説してくれる訳でも無いし、マニュアルにはスタートレックに関する説明はほとんど掲載されていない。 例えばゲームの冒頭はボーグとの対決になっているが、このボーグという種族について何も知らないと意味が分からない点も出て来る。「こちらを敵と見なさない限りは無視して襲って来ない」、「他の種族の持つ文化や技術を同化(Assimilation)して進化する生命体で、個という概念を持たない共同意識を持っている」、「こちらの攻撃に適応する能力を持っており、同じ弾を数発受けると対応してしまって、以降はその攻撃ではダメージを与えられなくなる」、「その適応能力に対応する手段として、各弾のエネルギーを変化させて適応させないようにする為の武器としてI-Modが用意されている」といった点。 逆にFPSはプレイしないが、スタートレックのファンなのでやってみたいという人に対してはどうなのか? デモが出た時点では難し過ぎるという声がファンからは挙がって、製品版では武器の正確性等が調整されており、難易度としてはEasyも選択可能になっている(デモはNormal固定)。だがEasyでも難しくてクリア出来ないという箇所も幾つか存在しており、中には最後の手段としてのチートが使えないというシーンもあるので、とにかくアクションゲームは苦手というファンに対しては問題も残る出来と言える。 |
GAMEPLAY |
ミッションの数は12個で、それが更に細かくマップ単位で区切られており、非戦闘シーンも含めるとマップ数は80を越える。クリアまでの時間はシークレットをどれだけ探すかにもよるが、私の場合はNormalで12時間程度掛かった。シークレットは序盤は探したりもしていたが、あまりの難しさに途中からはほとんど無視して進めてこの時間である。 前作が短かった事から今回はゲームのボリュームには期待が寄せられていたのだが、15-25時間程度という発売前の開発側のコメントとは裏腹に、10時間以内でクリア出来てしまって物足りないという声も多く見られた。これに対して「セーブデータに付加された時間は正確なクリア時間を表してはいない」という弁解のコメントも出ていたが、15時間以上掛かるゲームとはちょっと思えない。難易度が高い, 徹底してシークレット探し, FPSは初心者なのでよく死ぬ、といったプレイヤーでもないと長時間は遊べないだろう。 ゲームの進行及びマップのデザインはほとんど一本道となり、事前にアナウンスされていた自由度についてはほとんど存在していない。構成の特徴としては、一つのミッションが終わると原則的に宇宙船へと帰還する様になっており、船内でのストーリー進行の後に次のミッションへと向かうという形が繰り返される。普通のFPSならばこういった間のパートはカットシーンのみで済ませたりもするものだが、このゲームではプレイヤーが実際にU.S.S. エンタープライズに乗り込んでいるという雰囲気を出す事を重要視している為に、カットシーンの合間にはプレイヤーが船内を実際に移動して情報を集めたり、次の目的地へとターボリフト等を使って向かう必要があるという風にされている。 実際に計った訳ではないが、この船内パートが合計で2時間程度含まれているという話で、その分当然戦闘のパートは少なくなる。ここは純粋に戦闘だけを楽しみたいという人や、スタートレックのファンではないという人にはマイナス点になるかも。またミッションが終わると長い中休みが入る様な形になるので、緊張感が一度切れてはまた最初からという感じとなる構成でもある。一応船内パートでのカットシーンはスキップ出来るがストーリーは判らなくなるし、船内を移動して次の目的地に向かうシーンでは実際に部屋を探して歩き回らないとならない。 なお船内に登場するNPCは200人以上が用意されているそうで、中には話し掛けると特定の発言を返してくれるキャラクタも存在する。このキャラクタとの会話のボリュームや、原作に登場するキャラクタがどれだけ含まれるのかは私には判らない。 ドラマがそうであるようにストーリーを非常に重視しており、そのシナリオには力を入れている。イベント用のスクリプトシステムも専用に開発しており、その構成には2015からMedal of Honor: Allied Assaultのスクリプト面を担当したメンバー2人を雇い入れている。そのストーリーはFPSとしては結構複雑な構成であり、誰が事件の真の黒幕なのかを追って二転三転し、内容的にも面白い物となっている。この辺はカットシーンが長い点や、船内での各キャラクタとの会話パートが有ったりする点が、ストーリーや各キャラクタに深みを与える効果を挙げていると言える。 ゲームの内容としては、第一に扉のアンロックやルート探しの要素が強い。開かない扉を開ける為に電源ユニットの稼働を目指して探索したり、ダクトを通ってルートを探したりする箇所が多く出て来る。元々の原作が「宇宙の悪漢共を倒して回る」といった内容ではなく、異種族間同士での交流やトラブルにまつわる人間ドラマが中心であって、上に書いた船内探索の非戦闘パートが多いというのもファンからの意見を反映しての物だが、それだけではなく実際のミッション中でも戦闘オンリーという印象にはしたくなかったのだと思われる。 更に戦闘に偏るのを避ける為の要素として、パズルや謎解きが一般のFPSに比べて強調されている。トリコーダーの項で説明したようなパズルを解くシーンや、毒ガスやトラップワイヤーを避ける為の素早いアクション。他には定番の落ちると即死のジャンプアクションも随所に登場。それはそれとして、かなり難易度高い場所が存在しているのは問題と言える。一つ目は点滅する電子ブリッジの床の上を飛んで向こうまで行くというパズルの中のある場所で、点滅パターンを読み切るのが難しい。もう一つはバイオスキャンで敵の生命探知サーチライトをかわして進むシーン。両方ともクリア出来ないという声が各種掲示板で散見される程の難所になっている。 以上の様に意図的に戦闘に特化したゲームにしないというデザインが採用されており、総プレイ時間の中でも結構な部分が敵との戦闘シーンではないし、また戦闘が連続して続く密度が高い箇所もラスト以外には出て来ないというゲームである。故に戦闘シーンに期待する人には物足りないゲームに終わる可能性は持っている。 シークレットは相当に難しい部類で、シークレットに気を掛けない場合にはほとんど見付ける事が出来ないというレベル。クリア後に解説を見ても「そんなの分かるか」という物まで含まれている。発見の難易度という点ではPainkillerに近いと言えるが、あのような難易度の高いアクションは要求されない。難易度を上げているのはトリコーダーが関わっている点で、これを使わないと発見は無理という物がある。これの破壊可能箇所を見付けるモードを使わないと、見た目として壊せるとは分からない箇所が出て来るのがその原因。しかしこのデバイスをずっと破壊箇所探索モードONにしたまま歩くというのは面倒(困難)なので、エリアをクリアしたらその都度内部を徹底して探すという気構えでないとコンプリートは困難。更にはナイトビジョンで暗い場所を探したりもしないとならず、このモードはトリコーダーと併用出来ないので探索はより大変となる。 |
COMBAT |
*武器の所持制限はないが、ミッションによって初期装備は固定となる *武器はスロット制の管理で、1-5までのグループ別に分かれての選択となる(選択方法はオプションで2種類から選べる) *移動しながら撃っても照準の大きさに変化無し *ズームやアイアンサイトは持っていない *リコイルは無し *左右へのリーンは可能だが、その状態からは武器を撃てない *スプリントは無し *一時的にアーマーを上昇させるスーパーアイテムが一部に在り 操作性でユニークな物としてWeapon Aim modeというのを持っており、対応キーを押下すると照準の位置がプレイヤーの動きによって画面中央からシフトするようになる。普通のFPSでは照準の位置は常に画面の中央に在るが、このモードだとマウスの動きに連れてある程度照準が画面上を上下左右にシフトして動いていくという意味。要は通常よりもマウスの動きが少ない状態で敵を狙う事が出来る。再度キーを押すと照準は元に戻る仕組み。デフォルトではOFFになっており、使いたい場合にはオプションから有効にしないとならない。普段FPSをプレイしている人には特に意味のない機能だろう。 HUDがかなり小さいという印象で、数値が若干見難いのは気になった。 用意された弾薬は全てエネルギー式でタイプは4種類となり、多くの武器で共通して使用される。よってどの武器がどのタイプを使うのかを把握しておかないとならない。第一が基本武器のPhaserで使われるバッテリーで、これは無限にリチャージされる。次にプラズマ系(紫)で、アサルトライフル等のFederation(惑星連邦)の基本武器が使用する。第三がIdrylliumを元にしたエネルギー(緑)で、これはArk GunといったAttrexiansの世界が起源の武器で使用される。最後がゲーム中に開発されて使用可能になるグレネードランチャー等の武器用のFederation Ammo(青)。 基本武器用のエネルギー(紫)はマップ内に有る補給用のステーションでしかリチャージ出来ない。このデバイスは内容量が無くなるまでは繰り返し使える。Idrylliumも同じく専用のステーションを使用するが、こちらはステーションの数が少ない代わりに、弾がマップ内に落ちているのでそこでも補給が可能。Federation Ammoはマップ内のテレポーター表示(青い波)のある地点に近付くと転送されて来る仕組みで、それ以外の補給方法は無い。いずれにしろ特定の武器の弾薬をなるべく切らさないように、使用弾薬別の武器グループの使い分けが重要なゲームである。 回復はヘルスステーションを使って行われ、置いてあるメディキット等は存在しない。HPが100にアーマーが100という仕様でターミナルは共通。HPが100を越えた分はアーマーにリチャージされていく。容量分は繰り返し使用可能な点はエネルギー端末と同じだが、残容量の確認が出来ない点も同じ。ダメージについてはシールドが弾の種類によって何%かを吸収してくれるという形式。なおこういったステーションは最初にUseすれば後はそこから離れてもOKであり、チャージが終わるまで前で待っている必要はない。(最初はこれを勘違いしていて、乱戦中に回復やエネルギーのチャージを前で待っていてやられるというケースがあった)。 注意点としては、このヘルスやエネルギー用のステーションは見落としようがない場所に設置されているとは限らず、場合によっては重要な補給地点を見逃してしまう可能性もある。通過する部屋の離れた壁に付いていたりといったよく探さないと見逃すというケースはともかくとして、それ以外にも原因が潜んでいる。「通常の状態では閉じているので目立たない」、「ステーションはその世界によって薄型だったりとデザインが異なる」、「カバーの色が壁と同じで保護色になっている箇所あり」等。補給箇所が無くて厳しいという際に、戻って探すと見逃していたというケースが数回あった。プレイ中に明らかに変だと感じたら戻って探してみた方が良いだろう。トリコーダーを持っている状態ならば、注目デバイスがミニマップに表示されるので見落とす可能性はずっと低くなる。 武器は全部で14種類と多い。ただミッションによって所持武器は固定で、半数の7個程度が大半という構成。最後に行くに連れて所持数は多くなるが、それでも10個程度である。SF設定だけあって打撃武器を除くと全てがエネルギーやプラズマ系であり、弾丸を撃ち出すタイプの武器は用意されていない。大抵の武器は2ndary Fireを持っており、その多くはエネルギーを溜めて撃ち出す形で威力を増した攻撃となる。 まず常に携帯している基本武器のPhaserが相当強い(特に2ndary)。エネルギー切れが早いので多数の敵相手には不向きなのと、射程距離が短いという弱点を持つが、単体相手ならば十分に使えるレベル。無限リチャージなので他の武器用のエネルギー節約としても有用である。その他の特徴的な武器を幾つか紹介。 *I-MOD: 先に書いたように対ボーグ用の武器。他の敵には特に有用ではないが、近距離で撃ってもスプラッシュダメージが無い事が利点。 *Attrexian Arc Launcher: 2ndaryでガス弾を発射し、それを撃つ事で爆発させて多大なダメージを与える事が出来る。 *Tetryon Gattling Gun: 数本のビームを回転させて照射するエネルギー系ミニガン。2ndaryでは反射するエネルギー弾を撃ち出す。 *Quantum Burst: エネルギー弾を撃ち出すロケットランチャー的武器。強大なスプラッシュダメージを持つ。2ndaryでガイドビームを照射。 *Grenade Launcher: エネルギーの固まりを撃ち出し、直撃させれば即爆発。数発転がしておいて2ndaryで起爆させる事も可能。 *Radiation Disruptor: いわゆるEF版BFG。2ndaryで最大の破壊力を持つスローな弾を撃ち出す。エネルギー消費量が莫大なのが欠点。 *Mystical Energy Staff: 1stではエネルギー弾。2ndaryでは敵を数秒間停止させるショックウェーブを放射する。 戦闘は移動しながら撃っても命中率が変わらないというアクションFPSスタイル。更にこのゲームでは敵の遠隔攻撃がエネルギー弾や毒液系となり、プレイヤーに即着弾する訳では無いので、その攻撃を見切ってかわしながら攻撃するというよりアクション性が高い物となっている。難易度的には普通の場所での戦闘は特に問題無いレベルで、ある程度の間隔を置いて難しい場所が登場するという形式。回復ステーションの数は十分に在るが間隔は離れているので、危ない状態になって前のステーションに戻るという事はそこそこあった。(使い切っていなければだが)。決して道を戻らないという姿勢だと少々難しくなるかも知れない。 戦いに制限や問題を設けて難易度を上げているというのが一つの特徴。具体的にはまず達成までに時間制限がある箇所が出て来る。次に敵のラッシュから特定の端末を操作したりするNPCを守る箇所が幾つか在って、その為には出来るだけ短時間で敵を倒せるようにかなり強引に攻めないとならず、その無茶なド突き合いから死んでしまったりもしばしば。場合によってはNPCの盾となって敵の攻撃を受けないとならないケースもある。もっと難易度が高いのが目的地点まで生かして連れて行くというNPCのエスコートで、彼等は敵に進んで突っ込んで行ってしまうので守るのが大変。敵の出現パターンを覚えて素早く殺さないと厳しいというレベルで、下手をするとFFでNPCを殺してしまう事もある。 その他には手摺りが無かったり一部が切れていたりする場所での戦闘で、敵の体当たりや攻撃によって吹き飛ばされて落ちたら即死。或いは誤って移動中に落ちてしまう事もあるという状況。または溶岩が所々に露出していて、地面を見ながら戦闘は出来ないので移動中にうっかり入ってしまうとダメージを受けるし、敵に跳ね飛ばされて入っても同じくダメージとなる箇所。他には周囲のデバイスを撃ってダメージを与えてはいけないという設定で、敵への攻撃が外れてしまうと不味い事になるという場所等、プレイヤーを戦い難い状況におくというシチュエーションがよく出て来る。 ボス戦が多いというのも目立つ特徴である。一度切りしか出て来ないボスだけで10体程度いた筈。その他にボス格の強い敵で(HPのメーターが出る)、何回か登場する物が数タイプ存在している。エリアの手前にステーションが用意されているか、戦闘エリア内にステーションが設置されており、その中で弾やHPが尽きる前にボスを倒せるかという戦いがとにかく多いゲーム。ラストのミッションではボスラッシュが最後まで続く。(ただしラスボスは弱い)。ボス戦好きには見逃せないゲームと言える。 問題点としては非常に難易度が高い場所が幾つか在るというのが挙げられる。ボス戦ではラスト近くのあるボス戦が極端に難易度が高く、敵をハメて攻撃するというある意味卑怯な作戦を使わないとNormalでもクリアは困難と思われる。そして最も掲示板でのHELP要請が多いのが、キャノンを操作して敵宇宙船の攻撃からエンタープライズを守る戦闘シーン。有効な戦い方が分かれば難易度が下がるがそれでも難しい。 敵はエイリアン系と人間タイプが混在しているが、割合としてはエイリアン系の方が多い。エイリアン系は登場する種類が多いのは良い点だが、基本的に死ぬまでこちらを攻撃してくる形で知性は感じられない。人間タイプも一応隠れたりは出来るようだが、こちらも高い知能は持っていない。アクションFPSの敵として見れば特に問題は無いが、高度なAIとの戦闘は味わえないゲームである。 |