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GAMEPLAY
 このゲームの一つの特徴として、主人公が単なる一介の人間に過ぎないという点を強調している。それまでの多くのFPSにおいては、主人公は非常に強いスーパーヒーロー的な位置付けである事が多かった。数多くの敵を次々になぎ倒していく程の強者という意味である。しかしHLの主人公であるGordon Freemanは基礎的な戦闘訓練は受けているものの、超人的な強さを持ったスーパーマンでは無い。本業は科学者の殺し合いとは無縁だった人間である。

 つまりこのゲームのコンセプトは「事件に巻き込まれた一般人のサバイバル」とでも言える物で、通常のFPSとは感触が大きく異なっている。大部分ではそれほど強力な火器を所持している訳でもないし、多数の敵相手に正面から撃ち合って勝てるというバランスでもない。戦闘能力よりも”知恵”を武器にして戦い、何とか生き延びるといった色合いが強いゲームとなっている。


 そのデザインからこのHLは3DFPSとしては非常に難しい部類に入る。一般的なFPSに比べたら3-5倍は平気で死ぬ事になるだろう。主人公のヘルスを一時的に最大値よりも上げるような、メガヘルスやスーパーアーマーといったアイテムの類は存在しない。むしろ通常のゲーム中の値が両方ともMaxの100近くになるケースすらあまり無いと言っていいバランス設定。「エリア内の敵を倒しては、そこに用意されているヘルスを補給して回復」といった繰り返しで進めて行ける様なゲーム性ではない。加えてこのゲームでは”弾道を見て目視でかわせる”タイプの敵の攻撃がそれ程無いので、無傷で敵を倒すというのが難しくなっており、戦闘の度に幾許かのHPは削られていってしまうという風に作られている。

 言うなればHLではサバイバルがテーマの為に、常に死と隣り合わせといった感覚で進行するようなゲームバランスになっている。通常のFPSでのMedium程度の難易度ならば、死にそうで危ないという様な状態に置かれる事は全体の割合からするとそうは多くない。ヘルスやアーマーをフル装備すれば余裕すら出来るというのも別に珍しくはなくなる。だがHLでは回復系のアイテムが多くない為に、ギリギリの状況で緊迫してプレイしなければならない時間がとにかく長い。ちょっとした失敗が死につながるような厳しい設定になっている。

 何とか生き延びて次の補給地点まで到達して、そこそこ回復させた後にまた次までがサバイバル、といった感じに構成されていると考えて良い。よって先に書いたように難易度は高いし厳しいゲームなのは確かだ。ただこの「ギリギリで生き延びられるバランス」の調整が実に上手く出来ており、異常に難しくて先に進めないといった理不尽なレベルにまでは至っていない。その為に最後まで手に汗握ってのプレイが可能になり、ゲームへの没頭度合いも高くなるという点が優れているのである。


 その高い難易度からどの程度途中で詰まるかによっても大きく変わってくるが、ゲームのプレイ時間は初回で25-30時間程度。当時としては珍しくは無いが、ボリュームは結構多い。サバイバルがテーマなので最も上の難易度のDifficult(Hard)にしても楽しめるゲームだが、初回プレイはMedium(Normal)でないと相当厳しいかも知れない。このゲームの難しさはどこに補給ポイントが在るのか等の先が読めない所にも関係しているし、DifficultだとMediumほど接近戦が出来ないので敵の配置をある程度把握しておく必要も出てくる。ただしDifficultだと兵士相手の戦闘は面白いのだが、ゲームの終盤が非常に難しくなってしまうのが問題点。


 通常のFPSとは違ってリアリティに重点を置いたデザインになっているので、奇抜なデザインのマップは終盤の異世界まではほとんど無い。現実的に有りそうな範囲内で上手くバリエーションを付けているという風になっている。それまではプレイヤーに最後まで飽きさせないようにする為に、章単位で全く異なるロケーションを幾つも用意したり、各マップ毎でも大きくデザインを変更して面白さを演出するといった手法が主だった。しかしHLではその逆にマップが連続してずっと繋がっているという印象をプレイヤーに与える事を優先しており、Black Mesaという巨大な施設の中を延々とさ迷っているというデザインにして、実際に本当の施設内を行動しているかの様なリアリティを醸し出すという見せ方を用いている。

 それ故にマップの純粋な見た目的にはバリエーションはそれほど多彩ではないのだが、その中で繰り返しを感じさせないような多彩なエリアを用意している点は見事。インドアからアウトドアへと変化を付けたりといった飽きさせない様な工夫も見られるし、その上に全体としてデザインは優れている物が多い。この手法は失敗すると「すぐ飽きられてお終い」という事にもなりかねない危険性があるが、HLではその優れたゲーム内容によって見事に面白さを持続させる事に成功している。同一施設内を連続してゲームが進行して行くという感覚は、中々ゲームが途中で止められないというのにも繋がっており、それもこのゲームを傑作として位置付けた重要な要素の一つである。

 パズル要素は高目であり、どういう風にクリアするかというのを考えさせられるシーンが多い。また通常は解法が分かっても、それを実際に行うには或る程度のアクションも要求されるという構成になっている。その解法は現実世界の障害を取り除く時と同じ様にして解決するというパターンがほとんど。ここでも実際にゲーム内世界でのトラブルに巻き込まれているという感覚が良く出ている。


 基本的な動作に関しては一般的なアクションFPSと大きな変りは無いが、一部独特な仕様が存在している。

 第一にすぐにピタっと止まる事が出来ない。移動すると止まっても慣性によって或る程度は滑って体が動いてしまう様になっている。よって落ちないようにジャンプして足場を移動する時などは、飛び過ぎると降りた後に滑って落ちてしまう事もある。確実にするには着地する瞬間にShiftキーを押してWalkにして止まるという事をしないとならない。(Walk modeだと端まで近付いても止まって落ちない)。

 それと同じくジャンプでは、他のゲームと比較して飛び移った際に空中で姿勢制御がかなり出来るようになっている。もちろん大きくは無理だが、若干飛び過ぎたという時に空中で後退キーをちょっと押すことで着地点を調整する事が出来る。

 箱等の段差を登る場合、ジャンプした直後にしゃがみキーを押して脚を縮めないと上れないという箇所がかなり多い(Crouch Jump)。またゲームの終盤になるとLong Jumpという特別な操作も必要となって来る。

 箱を押すだけでなく引いたりも出来るのだが、この辺の操作はあまりやり易い感じではない。同様に梯子の上り下りも慣れないと非常にやり難い。特にハシゴの先端が口から出ていない物を降りるのは、やり方がわからないと難しい。どうやるのかというと、まず梯子の付いている面に回りしゃがんだ状態で下を見ながらゆっくりと近づく。下を覗き込むようにして一歩一歩近づくと、落ちる!という直前で梯子に張り付く事が出来る。そのまま前進キーで下を見ながら降りていく事が可能になる。

 水中では酸素の量が減っていくと共にヘルスが減少していくので焦りがちである。しかしHLでは減った分のヘルスは水から上がれば回復するようになっている。

 まとめとしてプレイ前には基本動作のTutorialとなるHazard Courseを受けておくのを強くお薦めする。


COMBAT
 武器は実際に存在するのをモデルにした物が多く、そこに特殊な武器が何点か加わるという形になっている。非常に良く使う事になるサブマシンガンは照準通りに全弾が飛んでくれる訳ではないので簡単には敵は倒せないし、破壊力の有る武器の弾数は結構少なめ。全体としてこちら側がかなり苦戦するようなバランスになっており、通常のFPSとは印象が大きく異なる。製作者側の意図として正面から体を曝しての撃ち合いばかりではHPが持たないようなバランス設定がされているので、慎重に考えて戦わないとならないゲームである。

 使い勝手もリアルな感じの武器と特殊な物が混在しており、使いこなすのにある程度慣れないと上手く使えない物も多い。リロードに掛かる時間も把握しておかないとならないし、飛び道具としての手榴弾も非常に重要な役割を果たすので、これも練習して上手く投げられるようにしておかないと苦労する。総じてそれまでのFPSと比べて戦闘面で大きく異なった感触を持ったゲームだったと思う。

 派手な戦闘シーンはそれなりに用意されているが、アクション系FPSによく出て来る物凄い破壊力を持った必殺兵器や、高い連射性を持ったダメージの大きな武器というのが存在せず、そういった物は使い難いか弾が少ないという風に設定されている。よって強力な武器は使い所を考えないとならないという風に、常に状況を分析しながら戦って行くという感覚は当時としては新鮮な体験を与えてくれた。


 FFはONなので攻撃が当たってしまうと警備員や科学者達は死んでしまう事もあるし、おびえてこちらと会話をしてくれなくなるケースもある。ただしそのNPCがセキュリティシステムを解除してくれる等の進行に必須な存在でない限りは大きなペナルティは無い。だがアイテムの入っている倉庫を開けてくれたり、科学者なら時には回復用の注射を打ってくれたりもするので、無意味に殺すのは避けた方が良いのは確かだ。

 このゲームには明確なマップの区切りが存在しないので、データをローディングする切れ目へ逃げるという手は通用しない。つまり(仮想の)隣のマップへ逃げても敵は追って来るし、切り替えポイントの向こう側から攻撃して来たりもする。

 シングルプレイ用にAuto Aim(自動照準)機能が付いているが、これは速く動く敵には有効な代わりに、最も大きなダメージを与える頭部への狙いを付けるのには不向きである(ボディーに照準が合うため)

 武器の選択はグループ制なので一発では切り替えられない仕様であるが、直前に使っていた武器に切りかえられるLast Used Weaponが用意されているのは便利。


 戦闘の最大の基本は何時でもまともに戦うなという点である。ハッキリ言って全ての敵と正面から普通に戦っていてはクリアは難しいゲームバランスになっている。このゲームの目的はエイリアンや軍隊を”全滅”させる事では無い。無理して戦わなくても通れる個所は結構存在している。戦わなければならない場面も勿論多いが、そういう場合でも被害は最小限に留めておかねばならない。

 まず逃げられる所は避けて先へ進んでしまうのが利口なやり方である。例えばエイリアンと軍隊が戦闘になっている場合は戦いが終了するまで待って、それから行動に移るという方が良い。またはどうしても倒すことが出来ない, 倒せるor突破は出来るが大きな犠牲を払う(ヘルス・弾薬), くぐり抜けられないようなトラップや兵器が存在する等で、「あまりにも難し過ぎる」と感じられる場面が出て来た場合。大抵は別の上手いやり方があるので、何か戦いを有利に進められるような物(地形や装置)がないかを探すのが大事なゲームとなる。こういった頭を使っての戦いが有効な事が戦闘に深みを与えており、それが他の多くのゲームとの差を生んでいる理由でもある。

 このゲームのモンスターや兵士のAIは”音”を重点に製作されている。つまり彼等は音を頼りに場所を検知する能力を身に付けている。よって移動する時にずっと走ったままだと、それだけ敵に気が付かれ易くなるので、敵が居そうな新エリアに入る際には慎重に歩いて角を曲がってみるというのも重要になる。
 当たり前の話だが敵の視界に入れば気付かれる。だが敵がそっぽを向いているような場合なら、音を殺して座って近づけば相当の距離まで気付かれずに近寄る事が出来る。そうなれば不意を突けるし、攻撃のバリエーションも増える。逆に常に真正面から突っ込んで行けば近付くまでに気が付かれて、倒せたとしても相応のダメージを受ける事になる。またそういう観点からも、音を立てない武器であるCrossbowの有効利用も考えないとならない。この戦闘におけるノイズの重要性も、戦闘にリアリティを与えている点の一つになる。


 HLを語る上で外せないのが敵のAIである。当時の「おそらく存在する全てのゲームの中で最も良く出来たAI」という評価には私も同意する。今でもこのレベルに達しているゲームがそうは多くない事を考えると、当時としては革命的だったと言えるだろう。その後数年はFPSゲームのAIを評価する指標としてよく取り上げられていたものだ。

 まずモンスター系では、戦闘中に危なくなると一旦逃げたり、仲間を呼びに行く能力を持つというのが新鮮だった。音を頼りにこちらを追い回したりという能力も高い。それまでの単純で攻撃的な思考回路から、感情や状況分析を加えた能力を持たせるというシステムが上手く働いている。
 しかし真に優れていると言えるのは軍の兵士達(Grunts)である。彼等は障害物に身を隠し攻撃したり、武器をリロードする時には安全な所へ一旦退却して、体勢を立て直してから再度こちらに迫って来るという具合に基本的な動きが優れている。こちらが遮蔽物に身を隠すとそこへきっちり手榴弾を投げ込んで来たりもするし、こちらの投げた手榴弾にもちゃんと反応して逃げられる。更にこのゲームでは集団行動のAIを導入しており、彼らは攻撃時にもチームを組んで襲いかかってくる。例えば一人が突っ込んで来て、他の者が援護射撃に回るといった戦法を使って来たり等。

 またよくゲームで戦闘になった時に”引っ掛ける”という戦法がある。これは自分と敵との間に障害物や段差を挟んでしまう事で、これによりモンスターは自分のいる方向に直線的に向かってくる為にそこに引っ掛かって止まってしまい、その間に体力回復をしたりするというものだ。だがHLの兵士達はちゃんと障害物を迂回してこちらに迫って来られるし、その上階段さえ上り下りして逃げたり追っかけたりも可能である。その動作のアニメーションといい振る舞いといい、実際の人間と戦っているような感覚を味わえる。如何にもスクリプトでコントロールしているという感じではなく、同じ箇所の戦闘でもこちらの動きに対して行動を変化させたりまでも行ってくる。


 NPCのAIも同様に優れている。警備員はUSEキーで待機と同行を切り替えられて、一緒に敵と戦ってくれる際にはその正確な射撃は非常に頼りになる。複数のNPCを連れて歩く事も可能。この一緒に戦えるという要素もアクセントとして面白い要素である。NPC同士が会ったりすると、その間で会話になったりするのもリアルで良い点。

ENEMY

◎Headcrab

 小さな弱い敵で、暗闇やダクトの様な狭い場所によく存在している。飛び付いて来る所をタイミングを合わせればバールでも倒せるが、まとめて来られると意外とダメージを受けてしまう可能性も。遠距離からピストルで確実に倒す方が安全。

◎Zombie
 Headclubが頭に取り付いて乗っ取られた人間。遠距離攻撃を持っていないので武器さえあれば怖くない敵。

◎Barnacle
 天井に張り付いて触手を伸ばし、下を通る者を引き上げて食べてしまう。気を付けていれば問題無い敵だが、大抵は集団で張り付いているので弾が無いと厄介。

◎Houndeye
 まとまって行動している小さな生物で、こちらを発見すると仲間を呼んで多数でやって来て、体を震わせた後に衝撃波を放つという攻撃を仕掛けてくる。非常に弱いが多数になると面倒。

◎Bullsquid
 高速の毒液を放つ大きな4本足のモンスター。迂闊に近付くと跳ね飛ばされる。比較的体力も有るので遠距離から倒すべきだろう。

◎Ichthyosaur
 水中に存在する巨大な魚型のモンスターで相当なヘルスを持った強敵である。HLでは水中では使える武器が少ないので倒すのには苦労させられる。また水中を見る事が出来ない個所が多く水上からの攻撃も難しい。

◎Alien Slave
 緑色の電撃で大きなダメージを与えるモンスター。電撃を放つ前にモーションが入るのと耐久力が無い為に一対一であればそう怖くはないのだが、突然背後に異空間から出現したり集団で現れたりすると、交しきれずにダメージを食ってしまう。また遠距離からでも攻撃してくるので発見する前に突然攻撃を受けるというケースも。

◎Alien Grunt
 ごつくて耐久力がある上にHornet Gunという昆虫を飛ばしてくる武器を使用する。やっかいなのはこの弾がホーミング機能を持っている事。飛び出して攻撃し即座に物陰に隠れるというHIT&AWAY戦法は耐久力が無い時に非常に有効なのだが、この弾は隠れてもある程度追いかけて来るので厄介。更に適当に撃たれても壁に反射して数発は当ってしまう事も多い。一発のダメージは少ないのであるが、連射が効くためにあっという間に大きなダメージを受ける羽目にも。特に複数でいる時に正面から突っ込んで行くと、即座に50程度のヘルスは削られることになるであろう難敵の一つ。

 手榴弾等で出来るだけ体を出さずに倒すのが理想。体力が無い場合は攻撃される前にロケット等で倒した方が良いケースもある。Gauss Gunの弾があれば楽だが。

◎Alien Controller
 空を浮遊する敵で火の玉を放ってくる。不規則に揺れているので攻撃は当て難く、その上結構耐久力も持っている。一番有効なのは弾さえ有ればMagnumでの攻撃になる。

◎Gargantuan
 巨大な敵で両手から炎を放つ。動きが遅いしこちらを見失ったりするという鈍さも見せるが、高い耐久力を持つので倒すのは大変である。注意点として銃器系の攻撃は一切通用しない。ロケットやC4といった爆薬以外は効果無し。

◎Grunt
 政府派遣の海兵隊ことMarines。集団で行動している事が多く、まともに出て行くと簡単にやられる可能性が強い。一対一で正面切って戦えば勝てるが、それでも普通は所持しているマシンガンはかわせないのでダメージは受ける事になる。物陰に隠れてもそこにいると気付かれたら手榴弾(或いはグレネードランチャー)で攻撃してくるし、かと言って隠れたままだと今度はダッシュで駆け込んで来て直接攻撃を仕掛けてくる。しかも逃げればドンドン前に出てきて次に隠れるところが無いと直接攻撃されてしまう。ダクトや梯子の上がり口のようなところから顔を出して攻撃しても、それを認識してそこへもGrenade系を投げ込まれる為に厄介。

 真っ向から勝負に行けば、ただ撃ってくるだけでなく手榴弾を投げる者とのコンビネーションで攻めてくる。特に放物線を描いて飛んでくる手榴弾は直前まで視認しにくい上に、武器の発射音で落ちた音が聞こえない事もある。とにかく居場所を知らせたら一瞬たりとも油断は出来ない。Grenade Launcher等で上手く倒す等、体を出来るだけ曝さずに速く倒す事が必要。上手く逃げて敵を分断するのも一つの手だ。リロードの時に無防備になるのでそこを狙うのも良いだろう。

◎Assassins
 目にも止まらぬ速さで移動する女性の暗殺者。ジャンプして高い場所へ上ったりもするので捕らえにくい。更に集団で登場するので非常に手強く、Magnumが無いと辛い相手。無傷で倒すというのは困難である。ただゲームの中でも非常に面白い戦いになる相手でもある。

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