問 題 点 |
このゲームの特徴の一つとして、アクション・パズルとでも言うべき物が非常に多いというのがある。これはプラットフォーム・アクションとかジャンピング・パズルとも呼ばれ、例えば落ちないように足場の上をジャンプして渡ったり、壁から噴出する火炎や蒸気のタイミングを読んで触れないように通過したりといった類のアクションを要求される箇所である。近年のFPSではあまり見なくなった要素だが、当時は定番の様に含まれていたりした。しかしこのHL位その数が多いゲームも珍しい。マップによってはほぼ全体がこういったアクションの連続という物まで含まれている。 こういうアクションが好きな人なら良いのだろうが、私の様に特にそうではない人間からするとあまりにも多過ぎるという事でマイナスの印象を持った。確かにクイックセーブは可能だが、難所ではロードの繰り返しにもなったりするのでテンポが崩れて面白さを損ねている。 終盤になってプレイヤーは、時限の裂け目からモンスター達のやって来る側のXenの世界へとテレポートするのだが、このXenの世界はそれまでのBlack Mesaのパートに比べるとクオリティが落ちる。端的に言えば難し過ぎる。それまでは緊張感の感じられる絶妙な難易度バランスを保っていたのが、ここへ来てオーバーキルとでも言うべき難しさへと変化してしまい、一般的なFPSの終盤という感じのインフレ的な難易度のアップ状態に陥っている。アクション・パズルの方も格段に難易度が増しており、タイミングの難しいLong Jumpを使わないとならなかったりとストレスが溜まる構成。 |
GRAPHICS |
Quake engineをベースにしているが、70%以上のコードを書き換えているのでほぼ別物と言っても良い位に変っている。(現在このエンジンはGoldSrcと呼ばれている)。 レンダリング関連ではOpenGLとD3Dの両方に対応しており、Software modeでの動作も可能である。基本はOpenGLなので、これで問題が在るならD3D、Softwareへとランクを落として行くのが基本。1998年当時はまだ3Dアクセラレーションを可能にするビデオカードの普及率はそれ程高くなかったのだが、このゲームはソフトウェアモードでもクオリティが高いという評価を受けていた。 当時はこういう仕様が多かったのだが、ゲーム内には細かくビデオのオプションを設定する項目が存在しない。細かくいじりたいのならばValveフォルダにあるconfigやautoexec等の内部の設定ファイルをマニュアルで編集する必要がある。 HLの一番の見所は独自に導入されたSkeletal Animation機能だろう。モーション・キャプチャーでは無くて、骨組みで制作された体型をベースにして肉付けした物を内部から動かすというシステムである。それまでのアニメーションのやり方としては、予め制作しておいたグラフィックスのパターンをメモリに収録しておいて、その表示を切り替える事でアニメーションさせるという方式だった。しかしこの方法だと、アニメーションが複雑化するほど収録する画像データ量が多くなり、メモリ内に収まらなくなってしまう。そこで内部に骨組みを持ったキャラクタモデルを制作してやり、その関節を動かす事でアニメーションさせるというやり方を編み出した訳である。これによって喋る時に口を動かすというレベルのアニメーションも可能になっている。 これを使ったモンスター達のデザインには非常に力を入れたらしく、そこからは生体的なリアルさが感じ取れる。その動きの滑らかさはそれまでのゲームでは見られなかったものだ。長い間ゲームをやっているが、敵の動きに真の生物らしさを感じたのは初めての事かも知れない。アニメーションが非常に多彩上に自然であり、本当に画面上で生物が動いているような感じである。登場する科学者や警備員の造形も素晴らしい(ちょっと人間が短足過ぎるのが気になるが)。しゃべる時にはちゃんとリップシンクで口を動かすし、状況によって表情も変わる。話す際には顔の向きまでちゃんと動くという凝り様である。 マップのデザインは全体的に非常に細かく精密に出来ていて、リアル指向のグラフィックスとなっている。舞台となる場所は大部分がBlack Mesaの施設内部になるので、より現実風に見せる方向に力を入れている印象。一方で終盤に行く異世界Xenの方は幻想的なイメージとして製作されており、こちらのクオリティも高い。 パフォーマンスも優秀な部類であり、同年のUnrealほどの凄いグラフィックスではないが、その分それほどは重くなく快適にプレイ出来る点も評価出来る。 エフェクト系では様々なカラーの光源効果や爆発時や発砲時のエフェクトなど(当時としては)素晴らしい出来と言える。また当時は重い処理だったが、影の描画を行える(r_shadows "1")のもポイントが高い所。ただしこれは最新のバージョンでは機能自体が削除されており実現出来ない(1.0.1.6までなら可能なはず)。2004年にDoom 3が出るまでのQuake系エンジンは影の描画に関しては遅れており、ONにすると描画異常が発生したりするのでデフォルトでは切られているというゲームも多かった。このHLでも一部影が変になる箇所は発生する。 既に2008年現在ではもう相当に古い感じであり、特にテクスチャのクオリティは粗が目立つ。これに関してはHigh Definition Packを入れる事である程度は改善されるのでその項を参照してもらいたい。 |
SOUND |
これはクオリティが非常に高くトップクラスの出来。これだけ細かい部分まで作り込んでいるゲームは当時としては珍しい。中でも各種環境音がよく出来ている。歩く床の材質によって足音も変化するし、様々なノイズがいろいろな方向から聞こえてきたりする所も凝っている。武器のサウンドは当時としてはリアルなものに聞こえる部類で音質も良い。モンスター達の不気味な声も秀逸だ。その空間の広さや場所によって音の響きまで変化するようになっている。 更に特筆すべきは3Dサウンドの素晴らしさで、3Dサウンド対応カードがあれば全く別次元の音が聞こえる(EAX及びA3D 2.0以上に対応)。当時Sound Blaster Live!のバンドルソフトになっていたのも頷ける出来だ。 一方でBGMは普段は完全にOFFになっており、場面によって突然音楽が流れ出す仕様。その音楽もよく出来ているし効果的にゲームの盛り上げに一役買っている。だが全体を通すと鳴るシーンが少なくて若干寂しい感じがするのも確か。 |