GAMEPLAY |
ゲームは全13章から構成されており、序盤の2章はイントロの様な形になる。プレイ時間は15-20時間程度と思われ、近年の短縮化が進む中では長い方のゲームと言える。難易度的にはやや難しい程度で、前作のハードさに比べると大分緩和されている。また難易度が何時でも変更出来るので、難し過ぎて先に進めないという事態は置き難いという親切な設計にもなっている。 全体として章単位での変化が明確になるようデザインされており、それぞれの章毎に大きく毛色が異なっている。更に同じ章の中でも頻繁に場面転換は行われており、FPSとして考えられるパターンを出来るだけ多く詰め込んだという感じで、最後までプレイヤーを飽きさせないようにバラエティに富んだシーンが効果的に配置されている。基本的に進行は一本道でスクリプトも多く使われているのだが、組み込み方が自然な感じで鼻に付くような印象は無い。この辺は構成の上手さを感じる箇所である。ムービーを使ってのストーリー解説は一切無く、ゲーム中のキャラクタに実際に喋らせる事で状況等が分かって行くというデザインなのだが、こういった解説パートも激しい戦闘の間に上手く挟み込まれていてプレイに緩急を付けている。 マップの連続性を意識した構成は変っておらず、新しいマップに入ると新たなスタート地点に切り替わって始まるという一般的な構造ではなく、新しいマップへの切り替わりは連続して行われるようになっている。切り替えは普通にマップ上を移動中に行われて、ロードが終わると別の場所に立っているという様な箇所は少ない。全てではないが切り替え地点からマップを元に戻ったりも可能。 HL1と同様にパズル性は高く、アクションとパズルを解きながら進むシーンがミックスされている。全体に占めるパズルの比率はFPSゲームの中では多い方。ただしHL1では多かった失敗すると即死のタイミング・ジャンプの類はほとんど無くされている。 章単位の印象という事で言えば、良くも悪くもエアボートとバギーを大幅にフィーチャーした2つの章が特徴的である。単純にずっと乗っているばかりではなく、一旦降りてルートを作る為の戦闘パートもミックスされていたりと変化が加えられており、開発側の「新規の要素なので相当練り込んだ」と言うコメント通りに力を入れて調整が行われていると感じさせる。 その操作については、相当高速になる分難しくなっている面も感じられる。特にバギーの方は引っ繰り返ると起す為に一回降りないとならないのだが、このマップでは周囲にAntlionが存在しているので厄介である。またスタックしてしまう事も有って、そういう場合に上手く取り出すまでに時間が掛かるという事も起きる。しかしアクセントして面白いシーンを幾つか演出しているというプラス面も有るし、総合的には上手く行っていると言って良いだろう。 章別の出来としては、敵がほぼゾンビでそれと対峙するユニークなキャラクタであるグレゴリー神父が登場する"We Don't Go To Ravenholm..."は、全体でも異彩を放っており個人的には好きな章。他にはAntlionを味方に付けて戦う"Nova Prospekt"、多くのStriderとの戦いを含んだ"Follow Freeman!"辺りが印象に残っている。 そして最後の二章は前作と同様にそれまでとは異なったスタイルのゲームへと変化する。前作でのXenの世界は賛否両論有って、私自身もあまり出来が良くないと考えているのだが、それに比べると今回は比較的受け入れる事が出来るタイプの変化となっていた。その他の章ほど面白いとは思えないが、最後に来ての捻りとしては悪くないと思う。 これは実際のゲームプレイとは関係が無いのだが、特筆すべき点としてはアウトドアの描画の綺麗さというのも大きなプラスとして挙げておきたい。実際にその場に居るかのようなリアリティが感じられる出来栄えであり、戦闘中においても臨場感を高めるのに非常に効果的に働いている。本当に足がすくむ様な怖さを感じさせる場所とか、City 17の街並みの綺麗さとか見所は多い。 |
COMBAT |
*一人称固定。Vehicleに乗っても三人称への切り替えは出来ない。 *CrouchのみでLeanやProneは不可 *スタミナの続く限りはSprintが可能(スーツ要) *Suit Zoomを使って遠くを見る事が可能。ただしこの状態で武器は撃てない。 *照準に命中精度のガイドは表示されない(サイズ一定) *走ったりしても命中精度に変化は無い。また座っても安定性は向上しない。 *特別なパワーアップ用のアイテムや、発動可能な特殊能力は存在しない *武器の切り替えはHL1と同じグループ切り替え方式と高速切り替えを選択可能 回復系ではHL1と同様にHP以外にHazard Suitの持つArmor機能を持っている。両方とも置いてある回復アイテムを取るか、敵の落とした物を拾うかで補給可能。壁掛け式のチャージャーで補給出来る点も変っていない。他には一緒に行動する仲間にMedicが居るなら、彼等から一定の間隔を置いて補給してもらう事も可能である。 水中でスタミナが切れるとダメージが加わるが、水中から出ればダメージは元に戻るというのは前作同様。今回はこれに毒によるダメージが加えられている。毒を持った敵に攻撃されるとHPが1に下がってしまい、そこから徐々に回復するという風になっている。実際のダメージ自体は少ないのだが、回復前に再度攻撃を受けてしまうと死んでしまう危険性が高い。 アクション系のFPSである事には間違いないのだが、戦闘に関してはかなりタクティカルな方向へとシフトしている。まず基本的な要素として、メインで使う事になるSMGとPulse Rifleはアクション系にしては集弾性能があまり高くないので、撃つ弾数は必然的に多くなるし敵を倒すまでにも時間が掛かるようになっている。また武器のクリップ当りの弾数が少なく、更に最大所持弾数も前作に比較して大幅に減らされているので、弾切れでのリロードにも結構気を使わないとならない。例えばPulse Rifleは威力も高く正確性もあるのだが、最大で90という弾数なので、多数の敵との戦闘シーンで使っているとすぐに撃ち尽くしてしまうという事態にもなりかねない。その為に戦闘中に武器の切り替えが結構発生するゲーム性であり、特定の武器に偏って後々の弾を切らさないように、今何を使うべきかを考えながら戦うという風になってくる。 敵に接近する事で効果的に働く武器は増えるし、命中率も増す事になるので出来るだけ近付きたいのだが、多数の敵相手にオープンなスペースでの戦闘は得策ではない。かと言ってLeanが出来ないので、隠れて慎重に戦いながら先に敵を減らすというのも難しい。障害物を利用して進んだり建物等を回り込んだりも考えないとならず、次の場所までスプリントで移動するというのも重要な手となる。他にはGrenadeを投げ込んで敵を移動させてその間に近付くとか、作戦行動が重視されてくるゲームである。特に敵の数が多い場所では強引に力技だけで押し切るのが難しいバランスとなっている。 作戦という観点から意図的に配置されていたりするのが爆発性の火薬缶や近接性の地雷で、こういった破壊力の高い物にどうやって敵を巻き込むかというのも重要となる。それと併せて戦闘におけるGravity Gunの果たす役割が非常に大きくなっており、盾になる物を掴んで突進しそのまま持っている物を叩き付けて敵を倒したりと効果的に使える。単純に撃ち合いに持ち込むよりもこれを使った方が効率的というシーンも多くなっており、まずはGravity Gunが使えないかを考えてみるというゲーム性になっているのも、タクティカルな面を強調していると思える。 それともう一つタクティカルな面を象徴する物として、数ヶ所では有るがタレットを配置してから大量の敵相手の戦闘となる場面が用意されており(Unreal 2にも同様の物有り)、攻撃を受けたりして一度ひっくり返ったTurretは使えなくなるので、どこに置くかの選択が相当な重要性を占めている。自分一人では対処出来ないような数の敵がやって来る為に、置き場所が悪いとクリアが出来ないという事にもなりかねない。敵の出現位置からの効果的な配置の分析が重要となる戦闘シーンである。 こういったいろいろと上手い作戦を考えながらの(特にGravity Gunの使い方)戦闘は個人的には面白いと思うのだが、その反面純粋なアクション性はHL1よりも薄れているというのも確かである。ショットガンは変らぬ爽快感が有るが、SMGは命中率が低いし、Pulse Rifleはすぐに弾が無くなってしまうのであまり連射出来ないとなっていて爽快感は減っている。他にマシンガン系では派手で面白い2ndの攻撃は強力だが、弾数が少ないので危機的状態の最後の手段として温存するのが有効となり、それ程気前良く使えないという面もその点からはマイナス。 全体のボリュームはあるので戦っているシーンの合計時間はそれなりに多いのだが、パズルが挟まったりと戦闘から離れる時間の方も長いので、ずっと戦闘が続いて行くゲームという印象が薄くなっている。 仲間のNPCと組んでの戦闘シーンも後半になると結構出て来る。命令体系は単純でFollowか指した地点に向わせるかの切り替え。命令が少ないのもあって大して作戦的な行動は取れず、わざと敵の方へ進めさせて自分を楽にする為の犠牲となってもらうのが有効になる程度。偶に弾を補給してくれたりする者もいるが重要なのはMedicで、自分を含めて仲間を治療してくれるので優先して守るのが有効となる。ただしMedicを待機させておけば役には立つが、個別に命令が出せないので彼を待機させてしまうと他のメンバーも付いて来なくなってしまい、戦闘の応援を減らしてまでとなると問題も有り。 応援が合流後早期に死んでも乗り切れない事は無いし、応援が無いと無理と思われる箇所では幾ら死んでも自動的に待っていれば補充されるシステムになっている。臨場感を出すという意味でもNPCが参加するのは面白い要素と思うし、実際にその出来も悪くは無いが、連携しての多対多の対戦は正直言って期待していたほどの面白さは生んでいない。 敵(兵士)のAIについては良く出来ている部類とは思うが、それ程優れているとも思えない。HL1はFPSのAIのレベルを一気に引き上げたゲームとして有名だが、今回はそういう訳には行かなかったようだ。まず見た感じとして部隊としての作戦行動を行っているようには見えないのが難点(声はそれらしき物が聞こえたりはするが)。単に個々が判断して動いているようで、上手く連携してこちらを攻めて来るようなシーンは見受けられない。それと戦闘が直接的であまり障害物を使わないで攻めて来る傾向にあるし、行動ルートについてもそれ程ダイナミックに変って来るとは感じられない。 全くの固定ルートを通って来る訳ではないのでリプレイ性は有るし、リロード時に一旦隠れたりとかはやって来るが、一方でシンプルにその場に立ったままで撃って来る事も有れば、側面に来ているのに平然としていて反応が遅れるというケースも見受けられる。物理エンジンにより動いた障害物を認識している様に見える箇所も有るが、その反面スクリプトなのか繰り返しプレイしても行動パターンがほぼ一緒という箇所も有ったりとバラツキが大きい。 |
前作との比較 |
このゲームの純粋な評価の着地点は確かにトップクラスの位置なのだが、発売前に「もっと遠くまで跳んでくれる」と期待して待っていたレベルまでは到達せず、その為に”その程度だったか”というネガティブなイメージが付きまとってしまっている感は否めない。では前作と今作は一体何が違ったのかについて分析してみたい。以下はあくまでも歴史的な傑作の一つに挙げられているHL1との比較であり、敢えてこのゲームの欠点というべき箇所では無いのをお断りしておく。 前作でユニークだった点として、主人公に一般人(科学者)を配置したというのが有る。ほとんどの場合アクションゲームの主人公と言えば超人的な能力の持ち主と相場が決まっていたのだが、そこに単なる(基礎的な戦闘訓練を受けただけの)科学者を持って来たというのが新鮮だった。メガネを掛けた外観もそれまでの主人公とは異質の者であり、それによって「否応無しに巻き込まれた一般人」のサバイバルというサスペンスを生んでいたのである。そして今回もValveは「フリーマンはスーパーマンでは無く、あくまでも一般人」という姿勢を打ち出そうとしたのが伺えるが、既に前作をプレイした人に取っては「単なる科学者ではあっても、あれだけの戦闘をくぐり抜けて来た超人的能力の持ち主」として認識されてしまっている。よって一般のFPSの主人公と変らない”超人”というイメージになった為に、HL1におけるユニークな設定の主人公という特徴が無くなってしまった感が有る。 同時に巻き込まれ型という事で何が起きているのかよく分からないままに進んで行くというスタイルを取っていた前作は、とにかく先に進んで状況を把握しようというフリーマンの心理と、同じ事を考えているプレイヤーの心理との一体感が存在していた。しかしフリーマンがヒーローの様な存在になってしまった今回は、その一体感は薄れてしまっている。 FPSゲームにおいてはプレイヤーに飽きられないように出来るだけバラエティに富んだロケーションを設けるのが一般的な中で、HL1ではゲームの大半がフリーマンの勤務する研究施設であるBlack Mesa内部のみで進行するという大胆なデザインを採用していた。そしてその試みは見事に成功し、同一施設内を脱出を目指して移動し続けるというゲーム構成のリアリティさと、その中で起きて行くストーリーとの一体感を生んでいたのである。それに対して今回は非常に多彩なマップによるその都度のプレイ感の変化が大きく、それはそれで面白いのだが全体を通しての連続性が感じられない。広いエリアを旅する感覚なので、全体的に散漫というイメージも付きまとっている。 HL1はNormalにおいても結構難易度が高かったゲームだが、その難しさが「単なる一般人の必死のサバイバル感」を上手く演出していたという面が確かにあった。また難しいのだがクリア出来ないほどではないという絶妙なバランスを保っていたのも事実(Xenの一部を除く)。しかしHL2はかなりそれが緩和されており、難易度はやや難しい程度に留まっている。難しい方が良いのかは場合にもよるし個人差もあるが、プレイしていてもサバイバル状態という緊張感が失われていると感じられる。 HL1ではフリーマン・エイリアン・海兵隊という三つ巴の戦闘というアイディアが上手く機能していたが、今回は単純な善対悪という図式に収まってしまっている。それと関係するが今回はエイリアン系の敵の出現が大幅に減少しており、基本的にコンバインの兵士達との戦闘というスタイルである。前作は様々なタイプのエイリアンに加えて、高度なAIを持った人間の敵も出現するという点が大きな魅力であったのだが、今回はその敵のタイプのバラエティさが薄れている。 |