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問  題  点
 ストーリーについては開始時点から漠然としており、最終的に或る程度の事実は明らかになるが、不明のままで残される点も多いとスッキリしない。それと絡んでエンディングも中途半端であり、次作以降へ持ち越しという印象が強くなっている。

 特殊なタイプの戦闘となるのがガンシップやストライダーとの対決で、倒すにはRPGを当てるしかないのだが、その最大の所持弾数が3発しかないのに5,6発当てないと倒せない。そこでRPG用の弾を無限に補充出来るケースが近くに用意されていて、無くなったらそこへ補給に行きながらの戦いという設定が成されている。またガンシップは不規則に飛び回るので当て難く、一方のストライダーはそれよりは当て易いが攻撃が激しいので発射のタイミングが難しいとなっている。更に他の敵の攻撃も有ったりするので近距離のベストなポジションから常に狙える訳ではないし、またRPGが誘導式なので当てる事自体が結構難しい。よって連発で全て当てて早期決着というのは稀であり、そこそこ撃ってようやく倒せるという方が多くなる。
 その為に多くの場合は高いダメージへの補完の意味合いでMedicが近くに存在しており、Medicが死んだら再度別の者が来るのを待って回復してから再度出て行っての対戦となる。巨大な敵なので倒すのには苦労するという演出にはなっているが、何回も繰り返し弾を補給に行ったり、回復が完了するまで隠れて待ったりと冗長性を感じてしまうこともしばしば

 大きな問題とまでは行かないが、戦闘について他に気になった点を幾つか挙げておく。第一にPistolの威力。Pistolは連射性能が劣る代わりに、マシンガン系に比較して遠距離での正確性に優れるという仕様はFPSでは結構見られるものであり、このHL2でもそうなっている。しかしこのゲームではPistolの弾の単発での威力が結構高く設定されており、それはヘッドショットによって更に上昇する。なので遠くに居る敵に対してPistolでの攻撃が相当有効となってしまうバランスで、また敵はそれを行っては来ない。よって敵がこちらに押し掛けて来ないシーンでは距離を取ってPistolで戦うのが有効に働き過ぎるという風になってしまう。

 次に武器の数が少ない。前作での未来型の兵器となるGauss Gun, EGON。敵エイリアンの武器となるHornet Gun, Snark等が無くされている。今回はエイリアンの異世界との関わりが薄い設定での話なのでそういった物は排除したと思われるが、それなら現代的な物で構わないので数点武器を追加してもらいたかった。Gravity Gunというアイディアで足りない分をカバー出来ているとも思えるが、やはり武器の少なさはちょっと寂しい。

 AIの問題と言うよりもデザインの問題と思うのだが、狭いインドアの場所に4人程度の味方AIが出現してしまうので、自分が通ろうにもつかえて自由に動けないという事態が時々発生する。出すつもりならばもっと広い部屋や廊下を製作するか、広さが変えられないなら同時に出す人数を減らすかにすればもっとストレスが減ったと思うのだが。混んでいると突然仲間に押されたりするのもj難点。

 発売時点で海外版でもちゃんと日本語に対応している点は評価したい。また日本語訳自体もそれ程奇妙な点は感じられない。ただ字幕表示の男女が逆になってしまう事がたまに発生する。翻訳自体の誤りなのか、プログラムのエラーで男女を取り違えているのかは不明。また複数の音源が重なった際に、字幕が重って表示されてしまうというのも有った。

MULTIPLAYER
 発売当初はCounter-Strike: Sourceがプレイ出来るのみとなっていたが、その後Half-Life 2: Deathmatchが追加されており、製品版所持者はダウンロードしてプレイが可能である。CS:Sは人気が有るとは言え新しさは無いし、DMも物理エンジンの導入以外は革新性は薄くマルチプレイ面は弱いとも言えるが、シングルプレイ目当ての人にはそれ程気にならないだろう。



 

GRAPHICS
 自社開発のSource Engineのグラフィックス機能をそのまま使用しており、これはDirectX 9.0世代の高度な機能はもちろんだが、その他に「人間のキャラクタのリアルな描画」、「物理エンジンとの融合」、「様々なPCへの幅広い対応性」を重視して作成されている。

 キャラクタのFacial Animationでは、メインとなるキャラクタは顔だけで40個程の筋肉(表情筋)が設定されており、非常に細かいニュアンスまで出す事が可能。特に「感情と眼球との動きの関係」について研究しているグループと協力して作成されているという、キャラクタの眼球の動きは実にリアルである。更に顔の表現にはモーフィング機能が加わっており、例えば前作では科学者の顔は3つのパターンを使い回していたが、HL2ではパラメータを微妙に変化させる事で、基本パターンから多くのNPCの顔を違う物にする事が可能になっている。またリップシンクについては音声を解析して自動的に口元の形状を変化させるプログラムが組み込まれているそうで、英語以外の言語であっても自動的にシンクさせる事が出来る。

 (当時としては)先進的な機能として地形を隆起させたりするDisplacement mapを持っており、これは複雑な地形を作成する際に少ない頂点部分をモーフィングしてつないでしまって滑らかな地形を生成する能力。これを使うと複雑な形状を少ないポリゴン数で生成可能なので、広大なアウトドアのマップ等にて威力を発揮する。なおHDRレンダリングも導入されてはいるが擬似的なレベルに留まっており、これは後のLost CoastやEP1にて完成されている。

 グラフィックス系で一番優れていると思うのはアウトドアのリアリティで、自然な光というか空気感まで感じられて実際にその場に居るかの様な雰囲気を出しており、それまでのレベルから大きく脱したと言える出来である。それと併せて建造物の作り込み(モデリング)が非常に細かく、それも風景のリアルさを醸し出している。
 キャラクタのアニメーションも多彩で良く出来ており、プレイヤーが移動するとそちらに向けてちゃんと顔を動かすようにもなっている。ギクシャクとした関節を感じさせないし、感情に合わせて動かされる手の動きも細かい。エイリアン系ではやはり巨大なストライダーの動きが見物。

 Blood系は体に付着するようになっており、撃つと背後の壁に血が飛んだりもする。当たっている際のアニメーションも分かり易い。ラグドールを使用している為にGoreの要素は人体には無い。


 一方で同2004年にリリースされた高度なグラフィックスを売りにしたタイトルであるDoom 3Far Cryに比較すると、テクノロジー的に突出した点は目立たない。ライティングはダイナミックには行われておらず、Normal Mappingの使われている箇所もキャラクタ中心でクオリティもそれ程高くない。Texture系も場所によっては結構粗い。エフェクトでは水面表現やBloomの効果は良く出来ていると思うのだが、炎の描画はあまりリアルでは無いという印象。綺麗さに対する軽さという点では優れており評価出来るが、ハイエンドクラスのマシンを使っている人には「もっと重くしても良いから進んだテクノロジーを」という物足りなさが残るエンジンとなっている。

 元々Modサポート重視という立場(低スペックマシン対応)から、Valve側はとにかく最優先でグラフィックス面の強化という風には考えておらず、DX7世代まで幅広い層をサポートというスタンスを採っている。これはグラフィック・エンジンの最適化という観点からは不利な点であり、Vertex & Pixel Shadersに最適化されたエンジンには劣る可能性が高い。またライセンスしてゲームを製作する際にDX7レベルは切り捨てて高度な物にしようと思ったら、大幅に改造しないとならないという不利な面も持っている。その代わりに相当広範囲のPCでの動作を可能としており、売り上げという観点からは有利となる。

SOUND
 サウンドはMiles Sound Systemを使用しており、3DサウンドはサラウンドかDolbyに対応でEAXは使用していない。よってSPの数が4個以上ならば定位感は出るが、マルチSPで無い場合の擬似3Dの再現度には疑問が残る。同じくヘッドフォンで擬似的な3Dサウンドの再生機能を持っているのかは未確認。

 サウンドは全般的にクリアな音質でクオリティは高い。特にキャラクタのボイスが相当に多く、またその質も高いのが大きなプラス面。しかし全般的に音数が少ないという感じがして、これはゲームのストーリーとも関連しているのだろうが(人々はコンバインの目に付かぬように静かに暮らしている)、ちょっと寂しいとも感じた。武器のサウンドについては物によって差が有り、Pulse Rifleの2ndの様なユニークで出来が良い物も有れば、SMGやPistolの様に迫力が足りないと感じる物も含まれている。

 BGMは特定の場所でのみ鳴り出すという前作と同じスタイルでこちらの出来は良い。

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