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GAMEPLAY
 キャンペーン数は3つでミッション数は各4個。その後ラストのミッションが加わるので合計3*4+1=13ミッションの構成。私はバグで何度もミッションを最初からやり直しとなったが、ゲームのボリュームは凡そ5-7時間程度と思われる。それプラス別のキャラクタでのリプレイ時間が加わる。

 難易度はキャンペーンによってかなり差が有り、Normalだと最初の北アフリカ戦線のパートは簡単。その後段々と難しくなって行き、ラストの物はそれらしく結構難しくなる。ただしこの難易度にはチェックポイントによるセーブ間隔も大きく関連しており、ミッションによっては死ぬと相当前まで戻されてしまうので、それが時間が掛かる原因ともなっている。アクションFPSはテンポも重要なので、高難易度ではセーブ間隔が長くても構わないが、普通の難易度で長時間のセクションを繰り返しやらされるのはマイナスにしかならないと思える。


 ロケーションは北アフリカ戦線、雪のアルプス地方、終戦間近のベルリン、敵の本拠地の4箇所なのだが、この内で最初の北アフリカが短く、そして簡単である。他と同じく4ミッションを含むので見た目は1/3の要素なのだが、実際のプレイ時間としては1時間も掛からずに終わってしまい、1/5以下の分量しか持っていない。4ミッション全部合わせても普通のFPSならば一つのマップで扱える程度。ゲーム自体が長いのならば最初のキャンペーンがこの位でも別に構わないが、3つしかないキャンペーンの内の一つがこれだけでは拍子抜けである。

 マップの構成にも問題あり。WWII物ではアウトドアでの戦闘がその設定を活かす上では有利と思うのだが、このゲームではインドアの戦いが多いのが大きな弱点となっている。マップ数だけで見るのならばアウトドアとインドアはほぼ釣り合っているのだが、実際には全部アウトドアとなる北アフリカが相当短い上に、アウトドアには戦車でのミッションも含まれるので、徒歩でのプレイ時間としてはインドアのパート方が遥かに長い構成となっている。理由は不明だが、発売前のムービーでは見られたアウトドアのロケーションが幾つか製品版には入っていないという状態。ちなみに最後の4つのミッションは全てインドアとなり、この様に変化に乏しいとプレイ感も単調にならざるを得ない。

 マップは全体的に小さ目で、同じルートをまた戻ったり、すぐ見える場所に到達するまでに障害物により遠回りさせられるといった設計の場所も多い。一部作り込みが細かいと感じさせるマップも含まれているが、多くはインドアなので同じ様な場所の繰り返しパターンも目立っている。


 メインの特徴となる三人の兵士の使い分けについても、あまりその特性の違いはゲーム上で活かされていない。それぞれが独自に通れるルートが設けられてはいるものの、例えばTaggertならば最後までずっとステルスのルートを通れる訳ではなく、Bullのスナイパーライフルもインドアマップがこれだけ多いとその力を活かし切れない。マップ途中の合流地点では結局は普通に撃ち合いとなる構成なので、各人に使用可能武器等の通常戦闘能力の違いは設定されておらず、結果として三人のキャラクタに大きな操作感の違いが生まれていない

 キャラクタによってマップの一部では異なるルートを進めるという点においてリプレイ性は持っているが、劇的にプレイ感が変わるという訳ではないので、大して面白さは向上していない。BullやTaggertでも普通の武器に持ち替えれば(HPを除けば)そのまま戦えてしまうので、Rossが通るスタンダードなルートでも通れてしまうといった具合。敵を迎え撃つ拠点防御スタイルの戦闘にて、Bullは高台に登っての戦闘、Taggertは地下の部屋に潜んでの戦いが可能だったりというのが変化としては記憶に残る程度。キャラクタを選べない専用ミッションが含まれているが、やはりその位に特定のキャラクタの能力を活かせる様なミッションのデザインにしないと面白くするのは難しいだろう。どうしても複数キャラクタでのリプレイ性を入れたいのなら、巨大なマップで3人とも通るルートがほとんど異なるというようなデザインにすべき。技術的にマップを広くは出来ないのでルートも同じにするなら、ヘビーやライトクラスといった使用可能武器と身体能力の変化を付けた三人のキャラクタにした方が良いと思う。


 制作のnFusionではDeadly Dozenシリーズからの伝統として"you can see it, you can drive it in"というのをモットーとしており、マップ内に置かれているVehicle類は実際にプレイヤーが運転出来るという点を、他のWWII物との差別化された自分達の特徴としていた。そしてこのゲームでもその特徴を組み込むと宣言していたのだが、完全にそれはカットされている。プレイヤーが好みで運転出来る乗り物や兵器類は今回は存在していない。戦車に乗るミッションは2つ用意されており、そこでは降りて戦っても良いという自由度が在るのみ。アウトドアのマップが少ないのが原因なのか、それともこのVehicle要素の方が原因でアウトドアのマップが減らされたのかその辺は不明であるが、何にせよ他との差別化となる特徴を一つ失ったのは痛い。

 ラスボス戦というのもWWII物としてはどうだろうか?という疑問符が付く。最後の敵は高いHPを持った人間となり、狭い部屋の中でその他の敵とも相対しながら、多大なダメージを与えてそのボスを倒すまで戦うという設定。その戦闘自体も特に面白くないし、達成感も湧かないで終わってしまう。


 最後にPCへの移植作業も適当な感じとなっている。それと合わせてインターフェイスの問題も挙げておく。

*操作キー設定はゲームスタート後でないと行えない
*画面上の操作キーガイドは、変更していてもデフォルトのキーを表示してしまう
*マウス感度設定はゲージのアナログ方式になっているが、実際には幾つかの固定された値しか選べない(動かしても戻ってしまう)
*ミッション開始前のムービーはスキップ不可
*Useを実行するには一定距離が必要で、指示が出ない場合には位置調整しないとならない
*ムービー中のキー操作を拾ってしまうので、プレイ再開後にキャラクタがおかしな方向へと勝手に動き出してしまう


COMBAT

*照準は大きなコントローラー仕様で、赤くなりさえすれば攻撃は当ると判定される
*動いたりしゃがんでも照準の大きさは変化しない
*アイアンサイト可能。命中率は増すが若干揺れる。
*発射モードの切り替えは無し
*敵の位置とその状態はミニマップ上に表示される(消す事は出来ない)
*武器はメイン武器を2つとグレネードを携帯可能
*交換用の武器は武器用の箱の近くに置いてあるが滅多には存在しない(Rossは重い物を動かして敵の武器部屋にアクセス可能)
*左右へのリーン可能
*スタミナの続く間はスプリント可能
*ダメージからは自動回復方式


 戦闘の仕様に関してはいろいろと問題を抱えている。第一にこのゲームでは、死んでチェックポイントに戻ると所持武器が常に初期状態にリセットされるというシステムになっている。これは利点となるケースもあるのだが、逆にチェックポイントまで持っていた強い武器が無くなってしまう事もあって良い方式とは思えない。

 第二に自動回復を行う場合には止まらないとならないというルールである。銃を撃ったりは可能だが、どこかに止まっていない限りは回復動作が進行しない。だから危ないとなった際にカバーへと逃げ込もうとしても、その移動中には一切の回復が行われないので、他の同系列のゲームと比較して逃げている最中に死に易い設定になっている。よってある程度の安全を見越して早期に逃げないとならず、アクションFPSとしては上手く機能しているとは思えない。
 加えてその回復までの時間が長めともなっているので、ダメージを完全回復するまでは結構待ってからでないと再度戦闘には入れない。またカバーの背後で待機している際に、こちらまでやって来た敵との戦闘においても動けないので危険である。いずれにせよ戦闘のスピード感を削ぐ要素となっているので、これもまた設定としては良くない。

 第三にダメージの表示システムなのだが、Xbox 360では一般的な赤色表示なのに、PC版では黒の霧の様な表示方法に変わっている。(ゲーム内の説明文では赤となっているが、PC版のマニュアルでは黒いもやと書いてある)。その為に現在のダメージ量が視覚的に見え難いケースが生じる。明るい場所ではまだ良いのだが、暗い場所になるとダメージに気が付かずに突然死も有り得る(特に体力が低い方の二人)。何故わざわざ黒に変更したのかは謎である。


 左側が明るい場所でのダメージ表現で、右が暗い場所での一例。


 第四にリロードではクリップごと捨ててしまうというリアル方式を採用。つまりクリップ内にまだ弾が残っている状態でリロードすると、その残りの弾を一緒に捨ててしまう。SMG系については敵の武器を幾らでも拾えるので別に問題ないが、例えばスナイパーライフル等だと困るケースも在る。次々に敵がやって来る防御地点にて、敵が切れた際にその都度長いリロード時間を嫌って行ってしまうとクリップの中身が無くなるので、6個ほどのクリップ数を考えるとやり難い。かと言ってリロードしないと敵との戦闘中に長いリロード時間が挟まってしまうとなる。
 同じくオートリロード機能も無し。マウスのボタンを押し続けて連射している場合、弾が無くなったら一度離して押し直さないとリロード動作を行わない。更にHUDの弾数が薄くて灰色なので見辛く、リロードのタイミングも掴み難い。その結果として、敵の前で撃とうとした瞬間に、前の攻撃で弾が切れていたのでリロード動作に入ってしまうという状態に頻繁に遭遇する。どちらもタクティカルなゲーム性であればこういった要素も面白いと思うのだが、アクションFPSにおいては面倒なだけでマイナスになっているという感は否めない。

 第五に一定の距離に近付くと自動的に殴り攻撃が発動するようになっている。ところが間に障害物が挟まると空振りで攻撃が当らなくなってしまうケースがあって、しかもこの殴り攻撃は自動なので撃つ事も出来ない。あえて離れるか、回り込むしかなくなってしまう。その他には敵が殴りをスウェーして避けてくるのだが、別にこれも要らない機能だろう。


 銃撃戦の感覚は、武器の振動の方はまあ普通として、敵に出血表現が一切無いというのはやはり痛い。売上げを考えるとTeenのレーティングを取るのが非常に重要だというのは分かるのだが、せめて当っている際に簡易な血飛沫のエフェクト位は付けて貰いたい。また死体が消えるのもかなり早く、時には倒した瞬間に消えてしまうようになっているのも不自然。

 血を出せないのならば撃たれた際のリアクションや死亡時のアニメーションが重要となるのだが、こちらも大いに問題あり。このゲームでは死んだ際にはアニメーションで処理して、その後の死体をラグドールで扱うという方式なのだが、まず死亡時のアニメーションがパターンが少ない上に変。例えば撃たれると大の字になってジャンプするように吹き飛ぶ事が多いのだが、銃撃の方向と合わせていないので突然前方にピョーンと飛んだりと非常に奇妙である。ガックリと膝を突いて死ぬシーンも多いのだが、その後のラグドールとの兼合いでそのまま立ってしまう形になる事が多いのもおかしい。更にラグドールの処理では地面に倒れた死体がブレイクダンスを踊る様にクルクルと回転し出したりと、明らかに処理が正常に働いていない。


 多くの場所では敵の無限湧きを採用しており、インドアならば行き止まりとなっている小部屋が沢山設けられていて、その中から一定の間隔で敵が出現して来る。問題はその湧き出る瞬間が見えてしまう場所が時々あるという点で、特にアウトドアでは目の前の空間に敵がスポーンするのが見えたりもする。無限湧き自体は悪くはないが、もうちょっと考えて出現場所を選択して欲しいところ。

 味方兵士が居るマップも有るが、その数は2,3人程度と少なく、死ぬと応援が無限にやって来るという方式。射撃能力は低く役に立たないばかりか、自分が前に出ると平然とFFをして来るので面倒なだけという印象。更に厄介な事に、スクリプト関連の移動でスタックしてしまうケースがあって、重要なキャラクタが押したりしても動かなければゲームオーバー。なお自分自身もオブジェクト等にスタックしてしまう事が有るが、私の場合は座ったり立ったりの操作で抜け出せて完全に嵌るというのは無かった。いずれにしろ御粗末であるのには変わりは無いのだが。

 なおステルスでの行動についてもルールは単純であり、死体がすぐに消えるという事からも判るようにAIは目の前に死体には気が付かないし、音も無く目の前の味方が倒されても反応しない。そもそも普通に武器で撃って倒していっても進められる程度の難易度なので、ステルスでの行動自体にあまり意味は無くなっている。ステルスでの背後からの殺害も普通に撃てば良いだけで、実績の獲得以外には意味が無い行為と言える。


 敵AIは基本能力として、カバーから身を出して撃っては隠れる、別のカバーポジションへと移る、側転してプレイヤーを幻惑する、グレネードを投げ込む、こちらがカバーに隠れていると前進して来て側面から攻撃を仕掛ける、といった動作を行う事が出来る。しかし大きな問題として、リアクション速度が遅めであるという欠陥を持つ。不自然にスローモーな動きの上に、更には命中精度も低い部類。その為に多数で攻めている時はまだしも、一対一での近距離戦だと非常に弱く感じられる。またゲーム上の穴とでも言える欠点として、プレイヤーのスプリント速度が結構速くて持続時間もそこそこなので、難易度がNormal程度だとこの敵の狙撃能力の低さと反応の鈍さを利用し、一切戦わずに敵の中を走り抜けて次のエリアまでをクリアしてしまう事が可能な箇所が幾つか出てしまっている


 またこのゲームの大きな欠陥としてAIのバグ絡みの変な動きを挙げない訳には行かない。まずは軽度な物からだが、他のゲームでも見られる物として射線の計算がおかしいというケースが見られる。プレイヤーの体の一部が見えていると、前にオブジェクトが有るのに射線が通っていると判断して撃ち続けてしまうという現象。このゲームではその計算がかなり単純らしく、特に複雑な形状ではない壁の角の様な直線的な箇所でも、判断ミスで当たりもしないのに撃ち続けてしまう事が見られる。

 次にオブジェクトとの衝突計算もおかしい。開くドアにめり込んでしまうのは時々他のゲームでも見られるが、一般的なオブジェクトにもめり込んでしまって尚且つそこから撃ててしまう。よって障害物が薄いと敵の弾だけがオブジェクトを透過してこちら側に当ってしまい、こちらからの攻撃はオブジェクトに遮られて当らないという状況も発生してしまう。または中に入り込むのではなく、高いオブジェクトの上に乗り上げて立ってしまうというのも見られる。

 更にはカバーを使える能力はあるのだが、単に持っているだけで状況判断をするだけの能力を持っていない。例えば戦闘中に横や後に在るカバーに突然張り付いてしまい、こちらとは別の方向を向いてしまったりが起きる。(ただし油断していると画面上の姿勢はそのままに横や背後にグレネードを投げてきたりするので注意)。或いはカバーの高さとこちらの位置関係が認識出来ずに、こちら側から撃てるのでカバーの意味が無い場所に戦闘中に張り付いてしまい、ヘッドショットをして下さいと言わんばかりに止まってしまったりもする。

 棒立ちも良く見かける現象で、プレイヤーが近くにやって来てもこちらを向いて反応しない。時にはその場で銃撃戦が起きているのに反応しないケースもある。或いは完全に正面からこちらが近付いているのに動かなかったりと、処理落ちなのかバグなのか何とも言いようが無いシーンにも遭遇してしまう。

 こういった現象は物凄く頻繁に発生するという訳ではないのだが、一方で稀なバグとして片付けるには発生が多過ぎるというのも事実。おそらく先にAIの基本的な行動プログラムを制作したが、発売までにその行動に伴うバグを取り切れなかったという話なのだろう。ただ一応弁護をしておくと、エラーに見える行動が無いからといって、「どんな時でも検知エリアに入ったらプレイヤーの存在に即座に気が付き」、「最初の場所から一歩も動かずに死ぬまで攻撃して来る」タイプのAIの方が優れているのかとなると、そういう事でもない。個人的にはそういうAI処理自体が最初から極度に簡素化されている物に比べれば、多彩な動きが可能な分まだこちらの方がマシだと考える。一般的なFPSの中では相当下に位置するレベルのAIなのは確かだが、バリュー系の様な物の中にはもっと酷いレベルの物も在るので“最低”とまでは言えないだろう。


 左) 戦闘中にそこにカバーが在ったので付いてみましたの図。では向こうの敵は君に任せた。
 中) ドア越しの透過で敵からの攻撃だけが当ってしまう。こちらはTaggertじゃないからそのドアは通れないのを分かって欲しい。
 右) 制圧射撃で敵の注意を引き付けてから、側面に回り奇襲攻撃と某ゲームでは教わったが、HoVでは味方無しでもエア制圧が可能


 左) 左側の敵は攻撃姿勢に入っているが、照準の位置の敵は全くの無反応。疲れ切った様な姿が哀愁を誘う。
 中) オブジェクトに入り込める敵。「ナチスの科学力は世界一ィィィ!」とは聞いていたがこんな事まで。
 右) 走って来てそこに隠れられても....。中には反転してカバーに背中を付ける奴もいる。



 PC版にはデモが無いので、Xbox 360での最初のミッションのプレイ動画を紹介。

 画質はあまり良くないが、本元には高画質版もあり。

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