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対戦モード
 VSモードでは最大で8人までが参加して、生存者チームと感染者チームに分かれて4vs4にて戦う。基本的なルールは以下の通り。

*キャンペーン内の5つのチャプターを連続して戦う
*生存者チームはチャプターのクリア、感染者チームは生存者チームの全滅を目指す
*攻守交替方式を採用しており、双方が生存者と感染者を入れ替わって同じチャプターを計2回プレイする
*5*2で計10戦戦い、ポイントが高い方が勝利
*スコアは生存者チームならば、どこまで進めたかやゴール時に残っていたヘルスの値等で決められる
*対戦に使えるのは"No Mercy" と "Blood Harvest"の2つのキャンペーンのみ(パッチで他の2つも追加された)
*難易度は(現在)Normal固定で動かせない


 当然感染者チームは生存者側とは大きく操作感覚が異なっている。感染者チームが操作可能なのはWitchを除いた4種の特殊感染者(Hunter, Smoker, Boomer, Tank)となり、AI Directorによって感染者チームの各人にその内のどれかの役割が割り振られるので、その特殊感染者の操作を引き受けるとスタートとなる。ゲーム内には生存者チームのすぐ傍にゴーストの状態でまず出現。その後チャプター内を透明な状態のままで移動して出現が可能な(許可された)エリアの中で希望のポジションを見付けて、決まったらOKボタンを押せば実際にその場にスポーンして行動出来るようになる。死亡したら待ち状態に入り、再度自分に役割が与えられるのを待つという繰り返し。待ち時間はチームの人数によって変化する。なおVSモードでは各チャプターのデザインがキャンペーン用とは若干変更されており、壊せる壁やよじ登れる壁面等が追加されている。


 しかしこの対戦モードはかなりの問題を含んでのスタートとなった。基本的にCo-opに力を入れたゲームとしてアナウンスされており、対戦モードの充実については言及されてはいなかったのだが、Co-op用のキャンペーンの少なさと、想像していた程の高いリプレイ性が無かった件から、対戦モードに流れてくるプレイヤーが多くなった。だがその多数のプレイヤーを満足させるレベルの内容が用意されていなかったという状況である。公式掲示板から問題点を拾って簡単にまとめてみると(発売当時は)以下の様になっている。

*一ゲームの持続時間が長く(1時間前後)、最初から最後まで同じメンバーでのプレイがやり難い
*途中で人が抜けるとチームが再編成されてしまう恐れがある
*Co-opのメニューからクイックマッチを選択したプレイヤーでも、区別無くVSモードに繋げたりするマッチングシステム
*成績によるサーバー分けが行われていないようで、初心者と慣れた人が混在してしまい、求めるレベルが違うので双方共に面白くない
*生存者チームに比較して感染者チームの方が協力しての攻撃が重要なのだが、それが分かっていない人が多い
*チームが最大でも4人なので、初心者が入って来た際の影響が大きい(1チーム10人以上とかの規模のゲームなら目立たないが)
*感染者チームはbotに未対応なので空きスロットがAIで埋まらない
*スコアのシステムが明確では無い


 他に使用出来るキャンペーンが4個中2個だけというのもある。何故2個しか遊ばせてくれないのかという抗議に対して、「VSで使っているチャプターは単にCo-op用の物を流用しているだけだと思っているならそれは間違いで、それぞれ専用にテストを重ねて対戦専用に一部が作り直されている。つまりL4Dには20個だけではなくプラス10個の30個のチャプターが同梱されている。」と、2個しか遊ばせない様に制限したのではなくて、2個を対戦用にちゃんとした形で遊べるようにしたのだと説明している。


 チュートリアルの欠如も大きな問題となっている。感染者チームの方が感覚的に操作は分かり難いので、事前にオフラインでプレイ可能な簡易チュートリアルを設けるか、感染者チーム側でのシングルプレイ(練習モード)やCo-opを設けるべきだったと思うのだが、そういった物は含まれていない。(Xbox 360版にはマニュアルが存在し、簡単な感染者操作の説明は書いてある)。よっていきなり入って来たルールも操作も分からないプレイヤーと熟練した人とのギャップが大きいという件が生じている。

 対策として公式掲示板でValveに代わってVSモード用の初心者用ガイドを作ったりしている人はいるが、L4Dに限らず対戦ゲームにてそういうガイドを制作しても、一番そういったガイドを読んで欲しいカジュアル層はそもそも公式掲示板にまでガイドを探しに来ない人が多い。よってそういった意見や知識を交換し合っている層との差が、むしろ開いて行ってしまったりする。なのでやはりゲーム内でのガイド機能の充実か、仮想的に対戦モードをオフラインでプレイ出来る様な環境をサポートするのが重要となる。


対戦モード(続)
 そもそものL4DにおけるVSモードの位置付けについておさらいしてみると、TRSの創設者でL4DのリードデザイナーでもあるMichael Boothによれば、2005年の開発開始以来長い期間L4Dには特にCo-opモードとVSモードの区別が無かったそうだ。言わば“Left 4 Dead”とでも呼ばれるたった一つのモードが存在するのみで、最大8人までの空きスロットをどういう風にプレイヤーが埋めても良いという仕様だった。4人用のサーバーならば、4人でCo-opを行っても、分かれて対戦をしても自由という設定。しかしどちらのモードでも楽しめるようするには調整が困難と判断し、途中からCo-opとVSを分離する事になる。

 しかしこの分離後にVSモードの位置付けは大きく低下したようだ。CEOのDoug Lombardiによれば、その後のVSモードの制作は開発終盤に集中して行われており、その理由としてCo-opモードにおける特殊感染者の能力設定と各チャプターのマップデザインが概ね完了するまでは、それを使ってバランス調整をするVSの方には取り掛かれなかったからだとしている。


 この様な非対称型のチーム編成のVSモードでは、両チームの持つキャラクタの能力, ゲームモードのルール, マップのデザインがバランス調整の上では非常に重要である。このゲームで言えばまずはゲームモードをどんな風にするのかを決定し、生存者チームと感染者チームの持つクラスの能力を公平になる様に決めて、その上で各マップをデザインして勝敗が公平になる様に全体を調整していくというのが手順となる。

 生存者と感染者チームの対戦で、単体マップをクリア出来るか阻止するかの勝率を5割に近付ける様な調整は可能であり、それが対戦モードの在るべき姿である。しかしそれには感染者と生存者の能力値, 登場アイテム, マップのデザイン等を対戦に合わせて調整しないとならず、その仕様を使ったら今度はCo-opの方でのバランスが崩れてしまう事になる。結果的にL4DはCo-op優先なので、それ用に調整した様々な設定値は大きく変更は出来ないという方針となり、そうなったら対戦用のバランス調整にも限界がある。その制限から単体マップでの五分の勝負方式を諦めて、「マップ単体では平等ではないが、立場を入れ替えてプレイするからゲーム上は平等」という対戦形式に妥協したのだろう。



<参考> 感染者側をオフラインで試す方法

 オフラインで感染者チームに入ってプレイする方法を解説する。ただしこの方法はチートモードになるので、実績関連にはカウントされない。

1.事前にオプションから開発者コンソールを有効にしておく
2.メインメニューにて半角・全角キー(デフォルト)を押して開発者コンソールを表示させる
3. sv_cheats 1 を入力してチートを有効にする
4.続いて map l4d_vs_hospital_01_apartment の様に入力して希望の対戦チャプターを呼び出す
5.対戦モードがスタートするので、続いて sb_all_bot_team 1 を入力
6.チーム切り替えキー(デフォルトではM)を押して感染者チームを選択
7.その後生存者チームはAIだけの4人で進み出すので、自分は感染者側としてプレイが可能になる
8.一戦終わると攻守が切り替わるので、続けて感染者側で練習したいのならば再度キーム切り替えを行う
9.二戦終わると次のチャプターに切り替わる


 このやり方では基本操作は学べるが、感染者チームは自分だけになるので実際のコンビネーションを学ぶのは難しい。Co-opをプレイしても分かると思うのだが、HunterやSmokerが2人以上の通常の状態の生存者相手に攻撃を仕掛けてもすぐに殺されてしまうので、連携して攻撃しないと意味を成さない。だが自分以外の特殊感染者を呼び出してプレイしたりは可能。コンソールから z_spawn hunter の様に入力すれば、照準の指す位置に任意の者を出現させられる。もし自分が待ち状態の時ならば、自分自身がその指定した特殊感染者として出現する。

 これもシングルプレイの項で解説した擬似Co-opルールでのオフラインと同様に、トリガータイプのイベントはAIだけで実行可能な物とそうでない物があるので、動かない場合にはチーム切り替えで乗り移ってから実行するしかない。また出現させる位置がズレるとチャプター外部のエリアに出てしまう事があるので、その場合にはコンソールから kill コマンドでの自殺や、Noclipでの移動になる。

GRAPHICS
 Valve自身の制作したSource engineを使用。The Orange Boxのエンジンよりもバージョンアップされているが、暗闇が多いというゲームの特性に合わせての改造が主となっており、正統的なソースエンジンの進化バージョンなのか、このL4Dにのみターゲットを絞った物なのかは定かではない。DX10には未対応。しかしDX9以上を必要とする等、昨年のThe Orange boxの仕様よりも最低動作環境は高くなっている。

 初期のグラフィックス面にはそれ程大きな力は入れないという立場から、ゲームのバランス調整の方が年単位で延びたというのもあって、その間のグラフィックス開発部門の努力により、かなり最終版は高度なレベルに出来たとされている。


 第一に力を入れた点として、大量のゾンビを撃って倒すゲームなので、その敵のアニメーションが単調であってはならないという観点から、単純な物理エンジンによるラグドール動作を用いていない。まずスタントマンを雇って、撃たれた部位, 銃弾の飛んで来た方向, 弾のスピード等の要素を考慮した数百の死亡時動作をモーション・キャプチャー。それを物理エンジンと組み合わせて、敵のリアクションがリアルに見えるように作っている。

 とにかく死んだら単純に後に吹っ飛ぶのではなく、高速でこちらに向かって走って来る時ならば、撃ち込んだ弾薬の運動量が勝るのならば後に押されて死ぬが、突っ込みの運動量の方が大きいのならばちゃんと前のめりに倒れる。同様に右半身を打てばその方向に体が捩れる等、敵を撃った際に撃った部位とその強さによってアニメーションを変更している。そのレベルはこれまでのゲームの中でもトップクラスという印象。敵に弾が当たっているという感覚が非常に良く出ている。

 一般的な動作アニメーションについても、高速ダッシュ時の走行方向の変化による体の微妙な傾き加減や、高さの異なるオブジェクトの乗り越え動作時等、細かな部分にまで気を使って変化が付けられている。顔付きの変化も恐怖感を生むには重要なので、個々の感染者の顔もアニメーションで動くようにされている。


 4人の生存者のデザインは当初(左SS)からは大きく変化しており、面影があるのはビル位か。これは初期のデザインだと密集しての戦闘時に敵と味方の区別が付け難いので、ハッキリと分かるようなシルエットと色使いに変更したそうだ。

 ゲーム内での4人の主人公は当然ながら精密にモデリングされており、顔の表情の変化もちゃんとシチュエーションに応じて変わるようになっていて人間味が感じられる。装備しているアイテムが実際に体に装着されているのが画面上でも確認出来たりと、その変化についても細かい。


 エフェクト系は暗い場所が多いだけに、普段は聞かないような特殊な技法がメインに使われている。公式サイトのブログに比較画像入りの解説が掲載されているので、そちらを見てもらう方が分かり易いだろう。

*状況に応じてカラーの度合いを変化させるカラーコレクション
*暗い場所でのディテールを上げるグレイン(フィルム粒子)効果
*背景をボカすVignetting
*激しい戦闘のシーンではローカルコントラスト機能で、画面のシャープ度合いを上げて緊張感を出す


 フレームレートの維持には非常に気を使ったと言うだけあって、大量のゾンビが画面上に出現しても落ち込みは見られない。明るい場所が少ないのでそういった一般的なゲームとの比較は難しいが、グラフィックスのクオリティは高いと感じられるし、このクオリティでのフレームレートの安定性は評価出来る。ライティングの効果も良質で、チャプター内の雰囲気描写も良い感じに仕上がっている。

SOUND
 サウンド面では新機能としてSound Directorとでも言うべきシステムを導入している。これはシチュエーションに応じてBGMや効果音を自動的に変更してやる機能で、普通のゲームの様にサーバーサイドで固定されていない。接続しているクライアント別に管理されており、各人の状況に応じて流れるサウンドは個別に変化するようになっている

 各キャラクタの台詞はシチュエーションに応じて細かく用意されているので、その数は合計で700から900程度にもなる。例えば現在誰が死んでいるのかで発する台詞が変わったりもするし、唯一生存者と遭遇する教会のシーンでも、誰が話し掛けるのかで対応がちゃんと変わったりもする。

 サウンドはクリアで音質も良く、各人の声優もイメージに合った物でこちらも出来は良い。3Dサウンドの定位も良好である。

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