GAMEPLAY |
前作MOHAAの構成は全6章から成り、それぞれが設定として区切りとなる数個のミッションに分かれ、更に個々のミッション内ではマップ数が複数だったりもするという形をしていた。この構造はPAでも変っていないのだが、Pearl Harbor, Makin Atoll, Guadalcanal, Tarawaの全4章となっており、特別なイベントとなる最初の真珠湾攻撃はそれ程長くないので、残りの3章がゲームの大半を占めている事になる(比率としては3:5:2位)。 AAは全体を通してのストーリー面の流れにはほとんど気を使っておらず、ロケーションやミッションのタイプにバリエーションを持たせるという点を重視して製作されていた。年代もロケーションも統一性が無い代わりに、プレイヤーに飽きさせないという狙いである。一方でPAはストーリーを重視しているので使える場所は1941-43までの太平洋戦争の戦場のみとなり、しかもFPSというゲームの性質上この戦争において数多かった海戦を選ぶ事は難しい。そして舞台となるMakin Atoll, Guadalcanal, Tarawaは全て南太平洋上の近隣の島であり、当然それ程景観が異なっている訳ではない。その為にマップのバリエーションに乏しいという結果になるのは止む終えない。 ゲームの8割程度を占めるMakin Atoll, Guadalcanalの2つの章において、その半分近くは木々の茂ったジャングルでの戦闘であり、ジャングル以外の場所もそれ程大きな変化はない。最後の2割程度を占めるTarawaはPA版のオマハ上陸といった感じの章になるのだが、ここは章全体を通して変化に乏しい。勿論ジャングルならジャングルで茂り度合い・地形・時間帯・天気等その範囲内で様々なバリエーションをつけようとはしているのだが、AAに比較すると変化に乏しいと言うのは明らか。このマップのバリエーションに乏しいという点はAAのファンから大きな不満として挙げられていた箇所であり、ゲームの弱点の一つと言える。 このバリエーションに欠けるという面については、もうちょっと変化が付けられたのではという疑問は残る。「実際に現地にはこの程度のバリエーションしかなく、リアリティにこだわってこうなった」、「多用なマップを用意するのは大変という製作負荷の軽減」といった理由なのか、それとも「後編も製作されるのを前提に製作したので、全てのバリエーションを出し惜しみの意味で温存した」結果なのか。いずれにしろ残念な点である。 ゲームのプレイ時間はGamespotのアンケートを見てもバラツキが有るようだが、これはどんなプレイスタイルで望むかによって差が大きくなるからだろう。出来るだけ死なない様に慎重に進めて行く人なら時間が掛かる事になるし、行き詰ったら戻るだけという姿勢で突進するタイプのプレイヤーであれば短くなる。その意味でプレイ時間の幅は相当広くなると思われるが、慎重に進めるなら概ね15-20時間程度のゲームとなると思う。 AAと言えば(対抗作のCall of Dutyも含めて)スクリプトが多過ぎるという点を不満としては挙げる人は多かった(逆にそこが面白さを生んでいるという人も多いのだが)。製作者のデザインする通りにゲーム内の重要なイベントを体験してもらう為にプレイヤーの行動には制限が付けられるようになり、進行中に横道に逸れる事も出来無いし、何回プレイしても全く同じ様に進行するシーンになるという場面が多くなっていた。 このPAでもスクリプトによるイベントシーンは導入されており、例えば冒頭からいきなりハイライトの一つとなる真珠湾攻撃のマップは、多くの部分がスクリプトによる進行というスタイルになっている。ここは派手で迫力も有り演出としては上々なのだが、反面今までと変り栄えのしないデザインでもある。その後のゲームにおいても仲間の運転する車の座席から攻撃を行ったりとか、或るポイントに達した瞬間に湧き出てくる敵相手に据付のマシンガンで攻撃したりとか、対空兵器でゼロ戦と戦ったりといったスクリプトのシーンは幾つも登場してくる。 しかしゲーム全体からすると鼻に付くほどの量ではないし、他のFPSにおけるスクリプト・シーンの量と大して変わっていないレベルに抑えられているという印象である。これは後述する部隊システムと敵のAIの影響が大きいのだが、他にも或る程度の自由度が加えられているのも”やらされている感”を軽減する原因となっている。例えば典型的なパターンとして大量の敵が迫って来る場面で据付マシンガンが置いて有るという時に、必ずしもそのマシンガンを持って戦う必要はなく、マシンガンは他の隊員に任せて普通に戦っても良い(AIが勝手に使ったりもする)。逆にAIが使っているマシンガン等をUSEキーでどかして自分が使う事も可能という風に自由度が与えられている。 ガチガチのスクリプトという印象を薄めているのは、ルート選択の自由度という要素も関係している。今回は「ルートは一本のみで、攻撃を仕掛ける方向も一方向のみ」というデザインではなく、進行の自由度が与えられているケースが結構多い。目標地点に到達する為に別のルートが存在しており自由に選べたりとか、正面ではなく側面ルートから敵の拠点を攻撃したり、隊長の指示に従わずに別の行動を取ったりといった事が可能な地点もある。ただしルートが有るのに気が付かないというケースもあるというのは問題(ジャングルで道がそちらに有るとは分からないとか、隊長の指示通りに動いてしまい気が付かない等)。または敵がマップ内を移動していて、どのタイミングで攻撃を仕掛けるのかを選択出来るという時もある。総合的には自由度が高いというレベルまでは行っていないが、スクリプト的な動きを強いられる箇所は他の一般的なFPSと大差無いという風にはなっている。 難易度はNormalでの比較としては高い部類。特にAAの感覚で進めようとするとより苦戦する事になるだろう。FPSスタイルでの難所は武器にパンチ力が無い上にジャングルで敵が見え難いMakin Atollの前半部分や、敵にSniperが存在するマップ、敵の攻撃が激しくなる最後のTarawaとか。ここで問題なのは突出して難易度が高い箇所が幾つか有るのだが、それが通常のFPSスタイルでの戦闘シーンでは無いという点にある。 最も批判されているのは航空機を操縦して戦うというミッションで、ここは敵が強いのではなくて操縦が難しくて達成が困難となっており、目先を変えたかったという意味合いは理解出来るが、この操作性の悪さをテストで分からなかったのかと疑いたくなる。他にもゼロ戦を対空兵器で迎え撃たないとならないというシーンに難易度が高い箇所が多くなっており、FPSにおける戦闘シーンならともかくとして、どうも納得が行かないという感じはする。 最後に数点補足。発売少し前に「検討を重ねた結果、最終的にプレイヤーが運転出来るVehicleを導入する事になった」とコメントされていたのだが、結果的には航空機以外にはそういった箇所は無くなっている。 |
SQUAD |
前作AAにおける批判の一つとして、たった一人で大量の敵がいる拠点に乗り込むというのはリアリティに乏しいというのがあった。それに応えてこのPAでは常に部隊(Squad)で行動するのが基本であるという観点から、ミッションには部隊で臨むというデザインになっており、単独行動で何かを行うというシーンは最初の真珠湾攻撃等ほとんど存在していない。 行動は2人だけというケースも有るし、10人程度いる場合も有ったりと多種多様だが、基本はConlinを含む4人チームでの行動となる。Conlin以外の3人の仲間は不死身の設定となっており、その他の兵士については死んでしまう者もいれば無敵の者もいて、足りなくなった分だけ何処からかやって来て補充されるといったCall of Dutyの方式は採られていない。 PAでの部隊の機能はそのAIシステム無しには語れないのだが、一応先に指示体系を整理しておこう。もしコマンドを出すのが面倒という人には一切それを気にせずにプレイしてもらいたいそうで、OptionからこれはOFFにする事が可能である。 コマンド自体は非常に単純であり、Advance(前進), Fall Back(退却), Covering Fire(制圧射撃), Assemble(集合)の4種のみ。指示は常に出せる訳ではなく、画面上にコマンド表示が出ているシーンでしか行えない。戦闘の最中には出せるが、通常の移動シーンでは不可というのが一般的。同様にして他の隊員が要請を出す事も有るので、それに従って自分が動いても良い。 *Advance 味方を前線に送り出すというコマンド。後方から他の隊員との戦闘に気が向いている敵をライフルで倒したり、自分のHPが低くて出来るだけ安全に行きたいという際に主に使用。ただし味方が倒される危険性が増すので、仲間が倒れている状態で敵に攻めて来られてしまう可能性が高くなる。 *Fall Back 戦況が不味い時に立て直す為に後退させるコマンド。まず自分がSniper Rifleで脅威を取り除いてからという時にも使う。問題は敵がその場に留まってくれるとは限らない点で、押されてしまって不利になるというケースも。 *Covering Fire 敵のトーチカの破壊や作戦的に良いポジションを取る為に、自分が前に出たい時に援護要請として使用する。欠点は味方がそれに集中する余りに他の方面からの攻撃に弱くなる点。 *Assemble 散っている仲間を呼び寄せて全員で固まって攻撃したい時に使う。自分のHPが危ない時にCorpsmanを近くに置いておくという目的にも有用。シチュエーションによっては集中砲火を浴びて不利という問題あり。 出来ない点としてはHold Fireが不可となっているので、徹底してステルスでという訳には行かない。このゲームではよく有りがちな「何故かプレイヤーが或る地点に到達するまでは皆が待っていて先に進まない」という不自然なシーンは少ないのだが、その代わりにプレイヤーを待たずに次のポイントまでは進んでしまうケースが多く、そしてFall Backは通常の移動中は指示出来ないので、ステルス行動で先制攻撃をしたいという作戦が取れない事が多いというのは残念に感じる点。 しかしプレイヤーに負荷を掛けないように仲間は勝手に動くというデザインが多い中、シンプルながらアクション寄りなゲーム性の中での指示形態としては上手くバランスが取れているという印象で、コマンド一つで戦況が有利にも不利にもダイナミックに変化するというのは面白く、ゲームにおいて成功している要素の一つである。 ここでは隊とは離れて別の方向から攻めるという方法も取る事が出来る。部隊との戦闘に気を取られている敵に側面から奇襲を掛けたりが可能。ただしCorpsmanから離れるほど死の危険が増すというデメリットも抱えているので、作戦的には面白そうでもそれが常に良い選択とは限らない。なお本来のルートから外れて別ルートを選択した場合、特に指示を与えなくても部隊全体が付いて来てくれるというケースもある。 それとこの部隊行動については、隊員が多くなるほど攻撃力は増すが、Corpsmanの出番が多くなるので自分が倒れた時に救護が間に合わなくなる可能性が高くなるという欠点を持っている。作戦という意味合いからすると、倒れた味方が多くなった場合には担いでCorpsmanの近くまで運んでやったりという行為も可能であり、自分を危険に晒す代わりに全体での復旧を早める事が出来るようになっている。 PAを面白くしているのにはAIの出来の良さが深く関わっており、これは"Dynamic Procedural Squad Artificial Intelligence"と名付けられている。この機能は味方の部隊は勿論の事、敵のAIや部隊にも適用される。敵は始めからマップ内に配置されているか、スクリプトによってアサインされた地点にSpawnしてくるかになるのだが、その後どういった行動を取ってくるのかはプレイの度に変化するというのがこのシステムの意味となる。相手の作戦と位置、自軍の状況によって動きが変化するようになっており、Loadしてやり直しても同じ様に攻めて来るとは限らないのだ (稀にBanzai Attackで突撃するといった様にSpawn後の行動もスクリプトされているシーンは有り)。。 日本軍の場合には人数的に不利になるか或いは自軍のCorpsmanが倒されると退却を選択する事が多くなり、またはBanzai Attackで攻めて来る事が増える。こちらが退却を選ぶと前進して攻めて来たりもするし、2つ以上に分離して攻撃を仕掛けてくるケースもある。自軍のマシンガンの掃射が有効な内は積極的に前に出てこようとするが、それが倒されたとなると動きを止めて、別の者がマシンガンの位置に走って移動したりとその変化は理に適っているし多彩。或いはこちらが左サイドから攻めようとすると、反対の右側のルートを通って背後に回りこむという作戦を取って来たりするので気が抜けない。 こちら側の部隊の行動も基本的には同じであり、プレイヤーが何も指示を与えなければ、その時のリーダーが指示を与えるので(画面に表示される)それに従って行動する。プレイヤーが進んで前に出て敵を多く倒して優勢になれば強気に前に出てくるし、反対に背後から攻撃しているが上手く敵を倒せない場合には退却して来たりもする。味方AIは死なない兵士が多いとは書いたが、それでも怪我人は治療を受けないとならないので、倒れる人間が多くなると戦況にも変化が生じ、プレイヤーは即座に対応方法を考えないとならないという点もダイナミックな変化として面白い点。 こういった両軍の動きが絡み合ってその都度異なった状況が生まれるという点は、PAが今回のデザインとしてメインに据えていた要素であり、それは見事に成功していると言えよう。別に素晴らしく頭が良いというのではなくて、変化に富んでおり予測が付かないという意味で優れている。見張り台の上とか可動範囲の狭い場所に居る敵でも無い限りはかなり広い範囲を動き回ってくるので、プレイヤー側もそれに対して臨機応変に対応しないとならなくなっており、その辺の緊張感は良く出来ている。 部隊操作とは異なる面になるが、今回は多人数での行動が多いというのが雰囲気の盛り上げにプラスに働いている。死亡しないという点や、部隊とは言え対抗する敵の数は多過ぎるという点でリアリティに欠けているのは確かだが、単独行動が常だったAAに比べると戦場という感じが出ており面白さに一役買っている。特に十数人で100人を超えるかと思われる敵の総攻撃を迎え撃つBloody Ridgeのラストは、Vietcongのラジオタワー防衛を思わせる迫力でゲームのハイライトの一つでもある。 AIの基本的な動作に関しては、無防備に突っ立って撃って来るだけではなくて、物陰に隠れて時々こちらを攻撃するようにもなっている。また手榴弾に対する反応も早く、逃げてしまうかこちらに投げ返して来たりするので、持ったまま時間を稼いでから投げるようにでもしないと効果が薄い。Satchelも付近に置くと蹴り返されてしまうようになっており、頭が良いのはいいのだがちょっとやり過ぎではという感を持つ位だ。 |
問 題 点 |
その他の気になる問題点について。 ストーリーはConlin他の3人を中心に進んで行くのだが、独白シーンの用意された主人公はともかくとして、他の3人の人物造形の魅力に欠ける。原因は合間に挟まれる会話等のムービー等が少ないので、どういった人間なのかがよく伝わって来ないというのと、どうも人間的に癖が感じられないのでインパクトが少ないという点も挙げられる。Vietcongの様に曲者揃いで忘れられないというのとは対照的。 個人的にはEAがストーリーを重視すると言う以上は、相当な量のミッション間での人物描写等のムービーが盛り込まれるのだろうと想像していたのだが、意外な位にアッサリしており拍子抜け。彼等がプライベートなレベルでの会話を交わすシーンはあまり無い。それ故にストーリーも盛り上がりに欠けるし、エンディングも中途半端で「ここで終わり?」という感じ。これは先に書いたように、後編の製作を前提としたデザインなのでそれ程盛り上げを図るような事をしなかったという意味合いなのかも知れない。 プレイヤーの進行に応じて敵がSpawnするのは良いのだが、これが視界内で行われてしまう箇所が存在している。見えない所から出て来るのではなくて、プレイヤーから見えている空間に突然出現したりする事が有るという意味。 Medikitが置いてあるマップに於いてはそれは貴重な存在なのだが、これが目立たないので見逃してしまう可能性有り。白く光るようなデザインであれば確実なのだが、汚れたバッグの様なデザインなので保護色になっていたり暗かったりすると目に付かなくなる。 特に最後のTarawaで発生するのだが、仲間が周囲に固まって動作がやりにくいという事が起きてしまう。目の前にいるならUSEキーでどかす事が可能なのだが、バックしようとした時にぶつかって支えてしまったりでストレスが溜まる。 マップのローディング時間が長い。これはグラフィックの設定とメモリ容量の関係によって変化するようで、今回2GBのメモリでちょっとプレイ直してみた限りでは、1GBに比較してかなり改善されるという印象である。ただし標準的なシステムと設定においては長くなるのは確かであり、相当不満の声が挙がっていた点になる。 更に悪い事にこのゲームはSource Engineでも有名な3D Menuを採用しているので、死んだ状態等からメイン・メニューに戻る際にメニューの背後に表示されるゲーム画面と同様の3Dマップをローディングとなり、それにも時間が掛かるようになっている。 バグと思われるがToggle AimをONに設定しておいてもLoadすると解除されてしまう。他にはゲームをLoadしたりすると弾数が変化する事が有るという問題も。 |