GAMEPLAY |
WWIIからこのゲームの舞台となるベトナム戦争へとシフトした理由は、個人や部隊を中心としたストーリーを重視したかったので、WWIIの戦場よりも小規模の部隊で行動する事が多いベトナムの方が適しているという判断があったそうだ。実際の所スポンサーのVivendiは最初ベトナムという設定に難色を示したそうである。 特にこの戦争に対して批判的な立場を取るという意図は無くメッセージ性は持っていないそうだが、純粋にベトナム戦争を舞台にしただけのゲームという感じだったVietcongに比較すると、ドキュメンタリータッチでゲーム内容とは関係が無い部分においても当時のベトナム情勢を描くというスタンスにはなっている。 主人公と故郷の両親との間の手紙における当時の本国とベトナムでの認識のズレ。挿入される実写フィルムでは怪我人や転がる死体が映されたりもする(グロでは無いが)。敵の中には女のベトコンも存在。取材の為に部隊に付いて来るレポーターとの軍が行なう行為に対する口論。戦闘中に混乱してパニックを起す司令官。軍の中での喧嘩。1968年には現地の売春婦を連れ込む隊員や、敵が攻めて来ているのにマリフォナでトリップしていて何にも出来ない兵士達といった事実が淡々と描かれていたりもする。 ゲームのプレイ時間はNormalで15-20時間程度。難所でどれだけ詰まるかによって結構クリアまでの時間にはバラ付きが出ると思われる。 全体は4つのキャンペーンから構成されており、合計で12ミッション、マップ数なら60以上が用意されている。ミッションの設定は史実に沿った流れとなり、実際に行われた作戦を元に作られている。薄暗いジャングルだけでなく、山間部や沼地・明るく開けた農村地帯・都市部・ベトナムと言えば有名な地下トンネル内の探索(マップとしては1個だけだが)等多彩。どうしてもVietcongと比較してしまうが、大きく異なるのは市街戦が含まれている点になるだろう(Vietcongの初代はその前の年でゲームが終わる)。最後のキャンペーンはテト攻勢におけるフエ市街の戦闘をメインにしており、ここはキャンペーンとしては一番長くて全体の1/3程度を占めている。 進行はスクリプトで一本道というMoHAAスタイル。間違えたルートを進もうとすると警告が出るようになっており、ルートを選んで進めるようにはなっていない。敵の出るパターンは一緒で、その後の動きには変化は有るようだがそれ程ダイナミックに変化しているようには見えず、その点ではリプレイ性はあまり高くない。またMoHAAやCoDの様に、「スクリプトで一本道だが、その分徹底してイベントとして盛り上げるようにデザインされている」のではなくて、単に一本道という感じなのは弱い点。 サイズはマップにもよるがそれ程広くなく、周囲は絵が描かれた壁で行き止まりにされており、左右の壁に挟まれて相当狭いという印象を受ける事も多い。Xboxとの平行開発との弊害でマップを大きく出来なかったという事だと思われる。 最初から最後まで全て部隊での行動となり、単独行動のミッションは存在しない。一部に自分だけが建物内をクリアに乗り込むというシチュエーションは有るが、基本的にはたった一人でというような不自然さは感じられない。バランスとしてはタクティカル寄りなのだがステルス要素は薄く、ほとんどが戦闘状態から始まるという設定となっている。御馴染みの双眼鏡の様なアイテムも無いので先の様子を探る事も出来ない。 WWII物に比べると単独の部隊を中心とした小規模戦闘を軸にしているというデザイン通りに、ゲーム全体に派手さは無くて地味な印象は付いて回っているのは確かだ。丘の上の拠点を奪おうとしたり、逆に次々に大量に攻め寄って来る敵相手に上から迎え撃つといった激戦タイプのマップも幾つかは含まれているが、スケール感という点ではそれ程凄い物でもない。また先に似た感じのVietcongやMoH: Pacific Assaultなんかをプレイ済だと余計にマップの類型さを感じてしまうかも知れない。 ジャングルにおける草の描画については専用のプログラムを作っただけあって優れており、相当な量の草が覆い茂っている状態を実現している。プレイ中に敵が見えなかったり、倒れた死体があまりの草の量に見つけられなかったりとフラストレーションを感じる程だが、この場合にはそれは褒め言葉として使っても良いと思える。この様にジャングルでのゲリラ戦の大変さを実感させられる点は評価出来る。またマップ毎のデザインについてはバラエティに富んでおり、草木の多いジャングル一辺倒にはなっておらず、ここは頑張っているのを感じさせる。 最後のキャンペーンでは数年後の市街戦が舞台となり、ここではゲーム性がそれまでのジャングルとは大きく変化する。市街なのでインドアでの戦いが増えるのも特徴となるし、敵に戦車が出て来たりとガラリと雰囲気が変った感じになる。時間帯も明るいので視界はクリアとなり、敵の位置については明確に判る事が多い。一方で建物の上階とかに隠れてこちらを狙っていたりというのは多くなっているので、幾ら視界が良くなったとは言え慎重な行動が要求されるのには変りは無い。しかし戦闘の感覚が大きく変るのは間違いなく、この変化はともすれば終盤に来て飽きかけていたプレイヤーを再度ゲームに惹き付けるのに十分に効果的だろう。このテンポの変更には上手さを感じる。 AIの出来については良い点と悪い点が入り混じっている。先に味方のAIだが、障害物をカバーに使う事はちゃんと出来る(プレイヤーと同じ場所を使おうとして来るので困る事も有るがそれは許容範囲だろう)。指示が出来ないのでプレイヤーの周囲に固まるような形で動くが、常に後方に居て前には出ないというようにはなっておらず、オープンな戦闘になれば勝手に前に出て行って撃ち合ったりも行なう。だが単純に周囲を警戒する形で配置されるようになっているらしく、全員で前方を攻めるべき時なのにソッポを向いていたりする事もある。味方へのFFは無いし、固定メンバーについては死によるゲームオーバーを考慮する必要も無いので、その意味ではストレスになるような存在ではない。 中距離程度までならそこそこは敵を倒してくれるが、全体的にはそれ程射撃の腕は頼りになる方ではない。また遠距離戦主体なので、そうなると敵を倒すのは主にプレイヤーの役割となってくる。一応敵との撃ち合いになって相手の注意が逸れている所をプレイヤーが狙って倒したりには使えるし、自分が危ない時にわざと前へと釣り出してやって不死身を良い事に敵を削る役割にも使える。 敵のAIの動きは完全にスクリプトでは無いようだが、固定されているらしい敵は同じ場所を動こうとしないので、ダイナミックに動いて来るAIという感じはしない。前に積極的に出て来てこちらにプレッシャーを掛けて来るような動きもスクリプト以外ではほとんど見せない。敵の認識については妙な所も結構あって、近くに居るのに全く異なった方向を向いていたりするのを見受ける。移動中に障害物への引っ掛かりも時々有り。 プレイ中に特に目に付く不自然な点は、どうもAIは移動ルートを決めたらまずはそれを実行する事に専念するらしく、移動中に撃たれたりしても反応しないようになっている。例えば完全にこちらの背後を取って撃ちさえすれば良いだけなのに、自分の後ろをそのまま通って前に向って走り、目標と思われる地点に到達してから、初めてこちらに向き直り撃って来る。またはスクリプトで物陰から登場した後に、最初の停止地点に到達するまでは反撃して来ないので撃ち放題で簡単に倒せる等。移動中に撃って来る敵も存在はするが、それは最初からそうするように決められている時のみのようだ。 製作中の話では「優れた人口的なAIではなく、人間的なAIを作る事を第一としている。幾ら訓練を受けた兵士であっても彼らはスーパーマンでは無い。他のゲームで見られるように、敵の攻撃に正確に立ち向かう事などまず出来ないし、生きるか死ぬかといった攻撃を仕掛ける事はまず無い。実際問題として敵から攻撃を受けた場合にまず人間がやる事は隠れて被弾しないようにする動作であって、冷静に敵を見定めて撃ち返すなど普通は無理である。銃だけを障害物から出しての前を全く見ない盲撃ちも頻繁に使われていて、当たれば儲け物といった無駄弾の数が多かった。AIは死を怖れないが実際の兵士は最もそれを怖れる。MoVのAIにはそういった様式に沿った行動を出来るだけ取らせる事で、”彼らが人間である”という事をプレイヤーに意識させるようにしたい」という事だったが、実際のゲームではとてもそういった慎重な行動をしているようには見えない。その逆にお互いにカバー無しの近距離でド突き合いをしているAI同士を見る位。言っては見たが結局はそこまでのAIは出来なかったという事なのだろう。 全部ひっくるめるとAIの出来は標準的なレベルで、AIの優秀さで楽しめるというレベルには到っていない。ただし単純さや馬鹿な点も持っているが、ゲームの難易度との兼ね合いに於いてはこれよりも利口になると反って困るという感も有るので、適当と言えば適当な範囲にはちゃんと収まっているとは言える。 |
問 題 点 |
問題の筆頭に来るのは何と言っても難易度。相当難易度が高いゲームであり、特にXboxでは同機種用のFPSゲームの中でも”最凶”クラスの難易度として知られているようだ。PC版との比較は未プレイなので判らないが、こちらも難しいゲームの部類に入るというのは確かである。その難易度が高い原因は「難しい場所が多い」、「Easyでも難しい」、「セーブが出来ない」の三要素が主。 難所というのは大抵のゲームには有る物だが、このゲームではそういった場所の数が比較的多いのが難易度が高い原因となっている。こういったミッション形式のゲームの典型として最後の方に行くほど段々と難しくなって行くのではなく、難易度はミッションによって異なって、特定のミッションか或いはその中でも特定の箇所が非常に難しいという形である。 どんな難易度でプレイするのかはユーザーの自由なので、こういったゲームが得意ではない人用にEasyが用意されていたりする訳だが、そのEasyでも相当に難しいとなっており、到底終わりまで到達出来ずに投げ出してしまう人間が多かったようである。難易度が変ると敵の数以外に何が変るのかは未検証だが(私はNormalでしかクリアしていない)、ダメージが高くて簡単に死ぬというのには変わりが無い模様。 そして最も叩かれたのが任意にセーブが出来ないという点。任意セーブを許しては緊張感が無くなるという考えは理解出来るが、それは全てバランスの問題であってちょっとこのゲームではそこが極端過ぎる。ちゃんと難所の前でメモリーセーブしてくれるケースも有るのだが、10分以上続くようなセクションにてセーブが行なわれないなど非常にアンバランス。そこに敵が居るというのを知っていないと辛いという憶えゲーの要素を含むのは別に構わないのだが、それが長時間プレイして来た後のセクションに出て来たりするのは勘弁してもらいたい。それとセーブされた時の状況によっては(HPが少な過ぎて)デッドエンドで、マップの最初からやり直すしかないという可能性も持っている。更にはラストのミッションでは意図的なのかセーブの感覚が長いという感じで、純粋な難易度としてはそれ程でも無さそうな物が極悪と化している感がある。 正直な感覚として「これちゃんとプレイテストをしたのかな?」と感じさせるレベルで、とにかく売りたいと思っているゲームをよくこのバランスで出すというのにVivendi側がOKを出したなと思えてしまう。それ故に改造したエンジンの仕様上、特定のポイントでないとセーブが出来ないという事になってしまっているのではないかとも想像してしまう。それともテストの段階で期待外れというのに気が付いてしまったが、もうここから直すというのに金を掛けるのは諦めたという意味なのか。 次にその難易度の高さと関連する問題点に言及してみる。このゲームではマップ内に最初から敵を置いておくのではなく、スクリプトによって敵をマップ内にSpawnさせる方法を採用しており、この点は多くの類型ゲームと変りは無い。そしてその出現方法として、マップの区切りとなる周囲の立て板である壁からAIを出すというやり方を主に使っている。もし敵がプレイヤーの前方エリアから出て来るのならば、これは突然前の建物の角から敵が湧いてくるのと意味的には変らず別に問題は無い。 ところがこれがプレイヤーから見て横や後ろに位置する壁から敵が出て来るケースがあって困る事になる。典型的な例としてマップの最後等に、据付マシンガンを撃つ敵のバンカーに空爆を要請する為に、プレイヤーがそこまで近付いてSmoke Grenadeを目印に投げるという箇所が繰り返し登場する。この場合にマップの端を周り込んでそこに近付こうとすると、周囲の壁から出て来た敵に間近から撃ち殺されてしまうケースが増えるので、正面から近付くという困難なルートを余儀なくされるという状況に陥る。 戦闘の項で述べた遠距離戦主体という点にも深く関わっており、死体からのアイテム欲しさに迂闊に前進してしまうと、それがフラグとなって壁からのAIの出現のトリガーとなり、通り過ぎた後の死角となる背後の壁から出て来たAIに撃たれてしまうという危険性が生じる。出現の不自然さを防ぐ為に草が茂った箇所の壁からしか出て来ないのだが、それが反って出て来ても気が付き難いという事にもなっている。後は場合によっては壁の中から弾だけが飛んで来るという箇所も存在しており、非常に不自然さを感じさせる設定である。 プレイヤーはジャンプ出来ない様になっている。その理由として「戦場ではジャンプをする兵士などいないから」という理由を使うFPSが一般的だが、どうもこのゲームではプレイヤーの移動ルートを限定する為に採用しているような印象。段差の部分を登れるのかどうかは「可能とデザインされている」のかどうか次第で、ダメな場所だとちょっとした段差に支えて移動が出来ない。落ちている板や棒程度で支えてしまったりと、不自然だしストレスを感じる部分にもなっている。 敵が無限なのかが判別出来ない箇所が有るのも厄介。例えば据付式マシンガンを撃って来る敵がいた場合、それを倒すと後ろからまた別の敵がやって来て使うという時に、その出現が無限の場合と決まった人数を倒すと止まるケースの両方があって判別が出来ない。試せば良いとも考えられるが、貴重な弾を使ったりする場合も有るので容易く出来るという訳ではない(セーブしてから試す事が出来ない)。 ストーリーを重視してメンバーを固定制にし実際の人間と一緒に行動しているかの様な連帯感を生み出すのが目的だったようだが、それが成功しているとは言い難い。部隊の多くのメンバーから受ける印象が希薄である。それぞれのメンバーの個性を印象付けるようなカットシーンとかがほとんど存在しておらず、交わす会話が少ないので単に戦闘中に一緒に居るだけという感が強い。この点は曲者揃いで印象的だったVietcongには大きく劣る部分。 MoHやCoDのシリーズは、ゲームへの評価とは別にして「プロの仕事」を感じさせる出来映えになっているが、それに比べるとこのMoVは全体的に完成度が今一つであり、アマチュアっぽさを一部に残したままで終わっている。実はこのゲーム発表当初からすると途中で多くのデザイン変更が行なわれており、その意味で最後まで一本筋の通った物にはならなかったらしく練り込み不足の感は否めない。参考までにデザインが変った点を幾つか挙げてみると、「基本的にステルス重視」、「スクリプトを排してリプレイ性をアップ」、「ゲーム内にMedikitは無し」、「部隊は指示によって動かせる」、「死んだメンバーは生き返らない」、「生き残るとメンバーの経験値が上昇し、死ぬと新兵が補充される」、「Smoke Grenadeが煙幕の役割を果たすので使い所が重要」といった感じで、同じゲームとは思えない位に変っている。 これを見る限りは最初は相当リアル寄りの少人数同士の緊張感の有る戦闘というゲーム性を目指していたようだが、それでは売れないという事になったのか、ステルス要素を捨て去りもっとアクション性を高くする方向へとシフト。敵が大量に襲って来るような派手なアクション・シーンを取り入れたりもしたが、或る程度はリアル系の要素を保った上での変更だったので、そういった場所では対処が難しくなり難易度的にはアンバランスになってしまっている。MoHAAの様なアクション性を高くするのか、ベトナムのジャングル戦におけるステルス要素を強く推すのかが一本化出来ず、両方の要素を中途半端に混ぜてしまったように思える。 部隊操作が出来ない点やSmoke Grenadeが使えない事なども大衆に受ける為の簡略化と思わせるが、それはゲームに奥の深さを感じさせなくなっている大きな要因と言える。またXbox版とは大きく差別化すると言っていた点も実現されていない。両者は異なったユーザー層を持つからという理由で差別化して作ると話していたのに、結局は一本化して同じ様にしたのでは自分から作品が未完成という事を言っているようなものである。 インターフェイス系の問題。死んだ後に故郷の両親に対して手紙が届けられるという演出が含まれているのだが、これとその後のステータス表示が瞬間的には飛ばせない為(少し待たないとならない)、死亡回数が多いこのゲームではストレスになっている。ゲーム中のカットシーンも飛ばす事が出来ない。後は些細と言えば些細な点だが、Tutorialがバリューソフトかと思える程にショボくて手抜きを感じさせる。 バグとしては一部に弾が壁を透過したり、同じくAIが透過して相手を認識してしまうバグ有り。死亡すると戻ってやり直しのゲームだけに余計に問題となる。他には仕様ではなくバグと思うのだが、マップが切り替ってから進めていて死んでしまい最初の地点に戻された場合、そこまでに使った弾がそのままになってしまうというケースが有る。つまり切り替った時点では300発有った弾が、そのマップ内で100発使った後に死んだ際に、ロードされた時点で200発しか残っていない状態にされてしまうの意味。これはメニューからセーブされたデータをロードし直せば復旧する。 |