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GAMEPLAY
 全部で7チャプターとなり、それぞれが幾つかのレベル(マップ)に分割されている。チュートリアルも兼ねた冒頭のプロローグが最後のチャプターにおけるシーンとなり、そこから八日前となるストーリーの最初に戻ってスタートするという構成。初回プレイ時は難易度Normalにて14時間位掛かった。

 ここで一つ言及しておくと、ネット上には個人の感想を含めて「マルチプレイも無いのに短過ぎる」という批判が見受けられるが、これはプレイスタイルによるもので正確ではない。このゲームはアイテム収集を重視しているのもあって脇道部分が多く、一直線に進む人と探索を重視する人ではプレイ時間に大きな差が出るようになっているというのが正しい。例えば一直線に進めると8時間位で、寄り道してもせいぜい+1,2時間程度のゲームは「短い」という批判も的を射ているが、このMetro 2033は一直線に進めると8時間だとしても、脇道部分が+5, 6時間分位はあるといったデザインになっている。

 更に直線的な進行を加速する要素に、「コンパスが付いているので迷い難い」, 「フィルターが少なくなると急がざるを得ない」, 「戦闘を避けて急ぐ事で高速クリアも可能なマップがある」があるのも影響している。一方で探索の方はと言うと、「マップによっては完全な別ルートが用意されていて、徹底探索にはかなりの時間が掛かる物が登場する」, 「直線的な進行ルートに比較して、脇道エリアが数倍広いマップがある」, 「リソース不足の設定なので、脇道を廻ってのアイテム探しが一般的なFPSに比較して遥かに重要な意味を持つ」、といった事から脇道エリアの探索を重視するプレイヤーには時間が掛かるようになっている。それと“実績”にアイテム回収系の項目が多いので、初回プレイ時に多くの実績達成を狙う人だと更に長時間が必要になる。

 いずれにせよ、あなたが脇目も振らずに直線的に進めるタイプのプレイヤーならば「短い」という不満を持つ可能性があるのは確かだが、探索重視型のプレイヤーならば短さの批判についてはそれ程気にする必要は無いと言える。


 リプレイ性はそれなりにあるという感想で、個人的には2周目までプレイした。武器を数多く持てない設定上一周目では使わない物が出てくるので、その辺を変えてプレイするという楽しみ方はある。或いはステルスor戦闘でのクリアを切り替えたりも同様。直線型クリアのプレイヤーは探索重視に切り替えれば、初回時には行かなかったエリアが広いので楽しめるとは思うが、武器だけを変えてあくまで直線的に進めるのが好みとなると変化は少ないだろう。ただし『Ranger Pack』のリリース後はゲーム内部の設定(敵の数等)が変更された難易度が2種類追加されているので、これを選べばまた違った形で楽しめるかも知れない。

 ストーリーを重視しているので基本的に進行は一本道であり、スクリプトによるイベントを所々に絡めて進められるという形式。枝道が多いマップや分岐ルートを持つマップも出て来るが、S.T.A.L.K.E.R.の様にオープンに広がったフィールドで自由な行動が行えるゲームでは無い。あくまでも一般的なFPSと同様に、通れる本筋は一つだけという構成である。アウトドアのマップの中には広く見える物もあるが、実際には行かれないエリアである事がほとんどで、通常サイズか或いは狭い物が大半となる。


 プレイ前に想像していたほどカットシーンによるストーリー解説のパートは存在せず、もっと濃い話が延々と語られるのかと思っていたら拍子抜けで、それ故にあまり奥深さは感じられなかった。原作小説からどれだけ端折ったのかは未読の為に不明だが、もうちょっと背景世界を語っても良かったのではないかと思える。なおクリア後でもハッキリしない点も残されているが、掲示板のストーリー論議スレを見る限りでは原作を読んでいても解らない点があったりするそうなので(原作でも明らかにされていないという意味)、それはこのゲームではしょうがないと言える。

 最後はマルチエンディングで、ゲーム内でのプレイヤーの行動によって2つの結末が用意されている。簡単に言うと隠しパラメータであるモラルポイントの値によるのだが、その仕組みを知らずに真エンディングとされる方に到達するのは初回プレイでは相当に難しい。相当探索をしないとならないが、その反面やってはいけない事が有ったりするので、攻略ガイドを読んでそれに従って狙わないと厳しいと考えられる。なお原作小説のエンディングはデフォルトの方のエンディングだそうだ。


 ロケーションは文字通りにメトロ内のトンネルのパートや、S.T.A.L.K.E.R.における地下施設マップを想わせる暗い地下エリアが多く、ライトかNVGが必須という場所が大半を占める。インドアとアウトドアとの比率は7:3程度で、その為に閉塞感も強く感じられる。アウトドアの方も暗く曇っている場所ばかりなので、終始陰鬱な雰囲気が漂っているゲームである。

 しかしその雰囲気や空気感は素晴らしく、実際に暗く重苦しい地下世界で行動している感じが良く出ており、世界観の再現という点では高評価を与えられるゲームである。だが一方で生活している人々の設定は簡素化されており、マーケット等に人は沢山居るのだが、反応してくれるのはごく一部のみ。大半は背景のような扱いなのでリアリティは薄くなっている。


 最初からマルチプラットフォームでの開発となるゲームとは異なり、このゲームはPC版がメインでそれを移植する形を採っている為に、いわゆるコンソールっぽいFPSではなくてPCゲーム寄りのFPSという印象が強い。自動回復, リーンは無し, コントローラー対応といったトレンドを採用してはいるものの、「売れ筋の大衆向けコンソールFPSとは全然違うゲームであり、ユーザーに対して過度に親切には作っていない。」という言葉通りに、無骨で突き放した様な感を受ける。確かにS.T.A.L.K.E.R.と比較すればかなりカジュアルになっているが、近年のマルチプラットフォームで出るFPSの中では、PCのFPSという色が濃く出ているゲームである。システムのカジュアル化についてはコンソール版を意識したのではなく、原作小説のファンだが普段はゲームをやらないという層向けに簡易化したという気がする。

 別の見方をすると「コンソール市場でこんなの売れないだろ」という感触で、洗練されていないしサービス精神も感じられない(PCゲーム風と捉えるなら悪い意味ではないが)。イベントシーンは結構登場するのだが、ゲーム全体として淡々と進むという感が強く、何より暗いエリアばかりなので変化にも乏しい。コンソール市場で売ろうという考えのプロデューサーが付いていたなら、もっと派手な演出とかロケーションの変化をより重要視してデザインされただろう。難易度的にも近年の簡単化に反して難しめの設定で、例えばコントローラー使用時にもオートエイムは非常に少量しか効かないように設定されている。それだと高速なミュータント相手の際に相当辛そうだと思えるのだが、実際に「Normalでも相当難易度が高い」という評価も幾つか受けている。


 その他の要素について列挙。イベントシーンや敵にのし掛かられた際にQTEが発生するが、常にUseのみを連打するという単純なもの。

 トラップが随所に仕掛けられており、種類としてはワイヤーを引っ掛けると即死の恐れもあるグレネード類と、触ると音が出てしまう吊された鳴り物系に分かれる。ワイヤー系は仕掛け部分に近付いて解除アイコンが出ればUseで外せるが、半分位は解除する事が出来ないので飛び越えるしかない。何しろ暗い場所が多い上にライトを点けていると敵に見付かってしまうので消さざるを得ないケースもあって、それを利用して幾つかの場所では実に嫌らしい箇所に設置されていたりする。

 また純粋な意味でのトラップではないが、プレイヤーがその上を移動しようとすると崩れ出したり、接近すると上から物が落ちてきたりする、対処が遅れると死亡するゲーム上でのトラップも登場する。


GAMEPLAY(続)
 ゲームプレイにおいて大きな特徴と言えるのはガスマスクのフィルター交換が必要な件であり、それについてより詳しく解説しよう。他のFPSにおいて類似例を挙げるとしたら息継ぎが必要な水中エリアなどがそれに当たるが、こちらのケースではそこの区間限定の制限になるので、「死亡するという焦りを与えつつも、ちゃんとクリアは出来る」というバランスに息継ぎ場所を設けたりする調整はやり易い。

 ところがこのゲームでは息継ぎに必要なフィルターの数はゲーム全体を通して管理されており、その持ち数で繰り返し出て来る対象エリアを乗り切らないとならない。なので「仮にクリアまでに最低10個はフィルターが必要なエリアで、内部に拾える物が5個置いてあるとしたら、マップに入ってきた時点でフィルターが5個以上なければその場でもう詰んでしまう」のをどう処理するのかがゲーム開始前は疑問だった。ゲーム内でフィルターが多目に入手出来るのならば詰みの可能性は減るが、死亡するという緊張感は低くなるのでそもそもこのシステムを導入した意味が無くなる。逆に厳しい設定だと詰んでしまうケースが増えて、そうなるとフィルターをある程度は持っているセーブ地点まで戻ってやり直さないとならない事が多くなってしまう。


 そこでこのシステムがどういう風になっているのかと言うと、実は詰みを防ぐような補正システムが組み込まれている。マップ内に有るスペアのフィルターには3種類あって、何時でも同じ数が拾えるようにはされていない。

1.どんな状況で拾っても同じ数が手に入るフィルター
2.入手数はランダムで、手持ちの数が少ないほど得られる数が多くなる確率が高くなるフィルター
3.残り数が非常に少なくないと拾う事が出来ないフィルター

 それと手持ちの数が一定数よりも少ない場合には、同行しているNPCが分けてくれるという数調整も含まれている。これはゲーム内でどの程度あるのか未確認だが、少なくとも一箇所は確認した。以上の様になるべく詰まないようにしながら、同時に過剰な数を持たせて余裕を作らせないような機能が働いている。最大所持数は場所や難易度によって変化する様で30〜40個程度だが、通常のプレイでは20個を超える状況は少ない。

 置き場所の方に関しては、マップの先頭の様にセーブ履歴が残る地点では、スタート地点から(窒息死するまでの)30秒以内に到達可能な範囲内に、少なくとも一箇所はフィルターが置いてあるという調整が行われている。これは新マップに入った時点でチェックポイントが上書きされるので、そこでフィルター切れで詰むと前のマップの先頭まで大きく戻る以外に無くなるという観点からの設定だろう。しかしマップ途中のチェックポイントではその点は考慮されていないので、直前のチェックポイントに戻ってもどうしようもない詰み状態になってしまい、(直前のチェックポイント以外には戻れないので)セーブ履歴からマップの先頭地点まで戻るしかない状態に陥る恐れは持っている。

 その他に幾つかのマップでは、フィルターが残り少ない際に敵との戦闘やアイテム回収を無視してひたすらゴールを目指す高速クリアが可能になっており、このデザインもプレイヤーへの救済措置の一つではないかという気がする。

 なおフィルターを購入可能な店も存在するが、序盤のチャプター2に二箇所あるだけで、何時でも買えるようにはなっていない。理由は店で買えてしまうと、危険な状態のプレイヤーがすぐに安全圏へと逃げられてしまうからであろう。このCH2で買い貯めする事で後のフィルター切れの危険性を大きく減らせるのは確かだが、金があまりない序盤なので他の物に金を回せなくなるというデメリットあり。


 実際のプレイにおいては、直線的に進むプレイヤーは消費が少ないが、その反面メインルートに置いてあるフィルターしか入手出来ない。探索重視のプレイヤーはフィルターをより多く入手出来る可能性が高まるが、逆に時間を掛けるほどフィルターは消費されてしまう事になる。個人的な感想としては、この“フィルター切れ”のみについてならば直線スタイルの方が有利だと思える。探索をしてもフィルターはそれ程多く入手出来ないので、長時間うろついている分の消費量の方が多くなったりするからだ。探索重視のプレイヤーはフィルターの残数を見ながら適当な所で切り上げて先に進まないと危うくなるケースもあり、普通のゲームの様にじっくりと探す事が出来ないという面は難易度が高い。ただし探索を行う事で各種アイテムや弾薬の入手は増えるので、ゲーム全体として見るならばフィルター数が少なくなるような危険を冒してでもなるべく探し回った方が有利である。

 総合的には特にシビアではないし、プレイスタイルよっては影響度が低いが、適度な焦りを生む程度には効果を挙げていると言える。難しいバランス調整の中で上手くやっていると評価出来るだろう。



 続いてはステルスと戦闘のバランス調整について。このゲームではステルスで行動するか、戦闘するかを選択可能なシーンが存在しているが、何回か他のレビューでも書いたように、このシステムはそれに応対する敵のAIに関して難題を抱えている。それを簡単にまとめると、敵にある程度近付いたらそれを感付いてくれないと認識能力が低い馬鹿なAIになってしまい、戦闘するつもりでいるプレイヤーにとっては変に見えてしまう。しかし逆にステルスで行動したいプレイヤーにとっては、遠距離からでも簡単に感知されてしまうのでは非常に難しくなる。

 つまり戦闘を望むプレイヤーから見て「正面からこの距離まで接近したら気が付かないとおかしい」という距離と、ステルスを望むプレイヤーから見て「この距離までは正面からでも気が付かないようにしてもらわないと辛い」と考える距離は異なっている。どちらか一方のタイプしか考慮していないゲームではそのAIの認識距離(能力)を調整し易いが、プレイヤーに選択の自由を持たせたゲームでは、どちらに合わせても反対のスタイルを採るプレイヤーからはAIの知覚能力に不満が出てしまう事になる訳だ。


 ではどういう風にその問題を解決しようとしているかと言うと、一つはライトメーターによる暗さの概念を導入し、暗闇に隠れる事で敵から感付かれ難くなるように設定している。暗ければ認識能力が低下するので、敵に近付いてもステルスでの行動が容易になっており、この点は多くのステルスゲームと同じ。ただしステルス専用ゲームとは異なり戦闘を望むプレイヤーもいるので、あまりにステルス寄りのマップ構成にするのは問題がある。例えば暗い場所ばかり, AIの配置数が少ない, 後ろや横を向いている者が多い等。しかしここで明るい場所や正面方向を向いている敵を増やすと、今度はステルスの維持が困難になってしまう。

 そこで用意されているのがステルス用のスーツで、これは一般的なゲームでの迷彩スーツと同様の意味を持つ。このスーツのシステムは効果的に機能しており、着ている状態ではどんな場所でも敵からの認識能力が落ちるので、敵のAIが気が付かなくても不自然さが発生し辛くなっている。戦闘を望むプレイヤーにはちゃんと遠距離からでも気が付くが、スーツを着てなるべく暗い場所を移動すれば同じ距離でも感付かれずに突破が可能になったりと、過度に片方寄りにマップ内のAI配置や暗い場所の数を調整しないで済んでいる。その反面、スーツ無しでのステルス維持は非常に難しいという設定になっており、先に書いたようにスーツの購入場所を見逃してしまうと困った事になる。


 しかしこのシステムも万能ではなく、その代償として欠点も存在している。実績に2つの「マップ内をノーキルでクリア」項目がある事からも、制作チームは「ステルス=敵に気が付かれたりせずに、また誰も殺さずに通り抜ける」という意識が強いようで、上記のステルススーツを利用する事でそれを達成可能にしている。

 ところがこの状態ではステルスで通り抜けるのに有利なのと同様に、敵を襲うにも最適な状態を作り出してしまっている。更に音を立てないナイフという武器が用意されているので、スーツを着た状態での殺害がかなり簡単に行えるようになったのが問題と言える。具体的にはランプ無しのステータスだと敵に気付かれないというシステムなので、この状態から敵を倒す際には周囲のAIが「今のに反応しないのはおかしいのでは?」という風になってしまって見た目に奇妙である。とは言えこの完全ステルス状態を無くしてしまうと、今度はノーキルを目的としたステルスの維持が困難になる訳で、何かが犠牲になるのは仕方のないところだろう。



 最後にステルスそのものの感想。ライトメーターを確認しながら暗い場所を選んで移動し、音を立てない様にするにはしゃがみ移動を使う(歩きはない)。手の届く範囲の明かりはUseで消せるし、全てではないが撃って壊す事も出来る。光度は光源に応じてちゃんと計算される方式で、倒して転がった敵のヘッドライトの照射によっても変化するので確実に消していくのが重要になる。自分がライトを点けるとそれが反映されてしまう為に、ステルス時には消して闇の中を移動する事になるので、NVGが登場するまではステルスで行動するのは相当難しい。

 ステルスでの行動を想定しているマップでは、巡廻警備をしている兵士の移動パターンを読んで通り抜けるというシーンも含まれる。そうではないマップでは敵の配置的に無理な事もあるし、常にステルスを選択出来るようにはなっていない。ミュータント相手でも最初から敵が配置されている設定で、且つこちらに気が付いていない場面では通用したりもする。

 敵に攻撃を仕掛ける場合には、5本まで所持出来て回収も可能な投げナイフが理想的だが、マスクやアーマーを装着している箇所はガードされているので、出来るだけ首筋等の剥き出しにされている場所を狙う必要がある。またこのナイフは距離でダメージが変化するという厄介な設定になっており、確実に最初の一撃で殺せるかどうかの判断が結構難しい。本当に確実にやるなら相当な近距離まで近付くべきだが、明かりの状況によっては近付けない事もある。離れた場所からならばサイレンサー付きの武器類も使用可能だが、リボルバーなどは構造が剥き出しなので高い消音効果は得られず、他の武器でも周囲の仲間に気付かれずに確実に殺せるのかどうかの判断は困難である。

 なお最初の一撃で殺す意味とは、気付いていない敵へのダメージが非常に高いという仕様なので、一発目で殺せなかった場合には連発して当てても即座には倒し難くなったりするから。そして狙った敵が即死せずに反応してしまうと、周囲の仲間の反応はかなり過敏なので、一気に多数の敵を呼び寄せる形でステルス状態が崩壊してしまう。なので殺さずに気が付かれないようにして抜けるという選択肢の方が良い事も多い。

 結論としてステルスのパートだけならばステルス好きの人にも楽しめるであろう内容だが、ゲーム全体としては自由に戦闘とステルスを切り替え可能なエリアは少ないので、ステルス好きに向いているゲームとは言い難い。反対に戦闘好きでステルス嫌いのプレイヤーにとっては、強制されるシーンは出てこないので問題とはならない。

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