問 題 点 |
まずは特殊な問題点としてDLCの『Ranger Pack』に言及しておく。PCでは無料配布なのは良いとして、Steamでの配布でもあるので(アップデートを止めない限りは)必ず適用されてしまう為に、これからプレイしようとする人はこれ無しにはプレイが出来なくなっている。それの何が不味いのかというと、これを入れると2つの新武器がキャンペーン内に登場するようになるのだが、その武器が両方共に強力過ぎる感がある。新規導入される高難易度向けの武器という意味なら解るのだが、これまでの難易度でも登場してしまうのが問題点。 限定版特典でもあった20発連射機能を持つHeavy Automatic Shotgunの方はともかくとして、Volt Driverはレイルガンの様に複数の敵を貫通させられるし威力も強力。両方共にゲーム内で入手可能な所で見逃しても、武器を貰えるシーンで登場するので誰にでも手に入ってしまう。それとその貰える場所の内の一つはマーケットの在る場所なので、片方もしくは両方を売り捌いて大金を手に入れる事も出来てしまい、それだと金銭面のバランスの方も崩れる事になる。(「あえて獲らない」か「難易度を上げる」という対処法は一応あるが)。 チャプター6からいよいよクライマックスかと思わせるのだが、そこからの終盤戦が物足りない。チャプター6は全般的にそれまでよりも簡単になってしまうし、最後の7についてはそもそも戦闘自体がほとんど無い。QTEの連続とある種の特殊なシーンのみで構成されている。また中盤戦に比較してチャプターの長さも短くなっている。 金としても実際の弾薬にも使えるMGAという概念は独特で面白いと評価出来る。しかしゲーム内での金銭に関わる内容の出来は悪い。あまり金が手に入らないという設定自体は、サバイバルという設定に合致しているので問題無い。このゲームの駄目な点は、第一に金がどれだけ手に入るのか見当が付かない事。金を入手して様々な物を購入可能というゲームには例えばBioshockがあるが、こちらは進行に連れて手に入る金の額が把握し易い設定である。ところがこのゲームでは、ミッションクリアで金が貰える訳ではなく、倒した敵から金が奪える訳でも無い。脇道に隠された物を探し出したりする事が多いので、「これからどの位の金が、どの程度のペースで入手出来るのか」がよく判らないし、それ故に「今どれだけの金を使っても大丈夫なのか」も判断し辛い。結果的に「金が足りなくなるかも知れないし無駄遣いはしない方が良いだろう」と考えると、買い物がやり難いという状況になる。 それに関連する第二の問題として、最後の購入可能場所が明示されない。MGAを使って物を売買出来る最後の店は結構早めの地点にある上にそれが示されないので、「この先で高価な良い物が買えるのでは」などという考えだと、結局大金を使わないままに終わってしまう可能性が高い。弾薬としても使えるので完全に無駄ではないが、ここが最後というならそれをプレイヤーに明確に知らせるべきだと思う。金の使い所が漠然とし過ぎているという印象で、リプレイ時には把握出来るという考えなのかも知れないが、リプレイするプレイヤーの方が少数派だろうし、そうなると金銭によるアイテムの売買の要素をあまり味合わずに終わってしまう人も増える事になる。 第三に武器の売買についても問題あり。武器は持っている物をジャンル別に一つしか持ち運べないので、オプション付きの武器を買ったり売ったりするのはそれだけでギャンブルになる(サイレンサー等は外せないし、売ってしまうと次に何時手に入るか判らないので)。それと購買時の一覧表示では性能が良く解らないし、貴重な金を使って買ってもすぐに拾えたりする物もあれば、実はたった一箇所でしか買えないタイプもあったりするので、その観点からも武器の買い換えはプレイヤーに対して不親切過ぎると言える。 幾つかの地点ではプレイヤーがそこに到達するとイベントが発生して先に進んでしまったり、背後のドアが開かなくなったりする事があり、更にチェックポイントが一箇所を上書きするタイプなので、その後にオートセーブされてしまうともうマップの先頭地点以外には戻れなくなる。よって倒した敵のアイテムをまだ回収していないのに進んでしまったり、脇道探索をする前に終わってしまったりが発生する。同様にマーケットなどの買い物が可能な場所で、「もう先に進んでも良いか?」というReadyの選択が出ない場所がある。 コンソール版の存在はともかくとして、コントローラーでもプレイ出来るようにしたかったようなのだが、それが不味い方に出ている件がある。必要ボタン数が多いので同じキーを“長押し”と“普通押し”で二通りに割り当てたりしているのだが、マシンガン系の武器装備時にリロードのキーを長押しすると、MGAに弾薬を入れ替える操作を行う仕様。その為に戦闘中にうっかり長押ししてしまうと通常弾からMGAに切り替わってしまい、気が付かないとそのまま貴重なMGAを弾として消費してしまう。もしオートセーブされるまで気が付かなかったら、やり直すにはマップの先頭まで戻るしかない。PCでキーボード操作の場合には、一般的な弾薬タイプ変更キーで切り替える方式を採用して欲しかった。 探索を重視したゲームなのだが、開ける事が可能なオブジェクトの形状を憶えておかないとUseの連続で面倒になるのと、形状は同じなのに開いたり開かなかったりする物も存在したりという意地の悪い設定。 照準色がオレンジで色も薄い為に、背景の色との関係で見え難い場所も多い。色と透過度を調整可能な方が良かったと思う。 何故かは解らないのだが、ムービーが飛ばせる場所と飛ばせない場所があり、場合によってはリプレイ時にかなりの時間待たされるケースもある。 |
GRAPHICS |
自社製作の4A Engineを使っている。S.T.A.L.K.E.R. におけるX-Ray Engine(V1.0)は2001〜2002年頃の物がベースになっていて、CPUのマルチコアに対応していない等の弱点を持つので、ライセンスはせずに全く新しいエンジンを一から制作しようと考えたそうだ(X-Ray Engineを改造した物ではない)。なおUnreal Engine 3のライセンスも検討したそうだが、エンジンの構造自体が古臭くて想像していた程には良くないし、もっと多人数での開発に向いており自社の様な少人数チームには合わないとして止めたとコメントしている。 UE3やX-Rayと同じくDeferred shadingを採用しているので、DX9モードではMSAAを使う事が出来ない。しかし他のエンジンではDX9で擬似的なAAを使用しているのに対して、4A Engineではanalytical anti-aliasing (AAA)という技術を開発しており、DX9でもより精度の高いAA処理が行われている。 DX11に対応しており、キャラクターモデルにはテッセレーションを使用。このDX11関連は私の環境では試せないのでそのクオリティは評価出来ない。metro 2033, DX11, comparisonといったワードで検索すれば比較画像やムービーは幾つか見付けられるので、興味のある方はそれらを参照してもらいたい。 CPUのマルチコアに対応というかそれを前提としており、またコアの使用方法が一般的なゲームよりも高度だとも話している。通常はその方が易しいので、処理によってコアを固定してしまうという手法が採られる。メイン処理, レンダリング, サウンド, AI, 物理演算等を、用意されたコア数に応じて固定で割り振るというもので、これだと空いているコアがあってもそこを使わないので最適化という面では劣る事になる。それに対して4A Engineでは空いているコアを利用して全ての処理が全てのコアを使用するシステムを用いているので、マルチコア使用時はそのコア数が多いほど高速化が目に見えて達成される(ただし実際のベンチマーク結果ではそれに反する結果もみられる)。 Xbox 360版との違いは以下の通り。 *テクスチャの解像度が2048*2に対して、コンソール版では1024*2 *シャドウマップの解像度が高い *影描画時のフィルタリング処理が遥かに高度 *パララックスマッピングを全てのオブジェクトに適用 *ボラメトリック処理が高度(粒子が舞ったりするタイプの演算) *物理演算の単位時間はPCの方が二倍細かい 設定は個々の項目ではなくプリセットから選択する方式。DX9モードでの“High”と“Very High”を使用したが、とにかく暗い場所が多いので一般的なゲームとの比較はちょっと難しい。ライティングや影描写は綺麗だと感じるが、その分光源が多い場所では重くなるのがハッキリと分かる。テクスチャ類は特に精度が高いとは思えないレベル。キャラクターのモデリングやアニメーションは予算と人員が割けるかどうかで大きな差が出る部分になるが、残念ながら同じ様な死体がよく転がっていたり、似た人間が多かったりとこの点はマイナス。フェイシャルアニメーションも予算と人員の問題から、低価格のツールをライセンスして使用している。 一番の見所はAdvanced PhysXで、有効にするとより細かい演算が行われる様になるが、これにはNvidiaのビデオカードが必要になる。この演算では破片の描写が細かくなる他に、霧, 煙, 粉塵の様な粒子の動きをPhysXで処理するようになり、それが非常に綺麗に見える。NVGを着けた時の揺れる大気に光が当たる際の描画もリアル。 ワイドスクリーンに対応。FOVの値は16:9や16:10だと70〜75程度だが、4:3のモニターだと60位とやや狭い。設定ファイル内のFOVの値を変える事は出来る。なおデフォルトは45になっているが、これは水平ではなく垂直方向の値。この値と解像度を基にして自動的に水平方向のFOVが計算される仕組みである。 |
SOUND |
3Dサウンドの定位感は良好。環境音が中心でBGMは少なく無音の場所も結構出て来る。人気の無い場所が多いだけに、静けさが感じられてゲームの雰囲気には合っており、その意味では良い出来だという印象。PC版ではXbox
360のほぼ2倍の音数を再生している。 気になったのは主人公であるアルチョムの語りが淡々とし過ぎており、声質からも20歳だとは思えない点(英語音声)。日本語版の音声の方がちゃんとしているが、やはりこちらも若さは感じられなかった。 |