GRAPHICS |
描画の重さとしては現時点でのFPSゲームの最高レベルと比較すると軽い部類で、元になったDoom
3エンジンの登場時とは大分印象が異なる。これには影の描画がそれ程複雑に行われていない、マップがコンパクトでメモリの使用量が少ないという点が影響していると想像される。或いは元のDoom
3エンジンの改造における技術力が高いからなのかも知れない。 空気が揺れて歪んで見えたりするようなエフェクト系が使われている箇所が多くなっており、Glow Effect(柔らかく広がって光る効果)と合わせてプレイ中に目に付く。Textureのクオリティは標準的と思うが、Doom 3やQuake 4では近付いて見ると結構粗さが目立っていたのに比較すると粗は無い方と言える。Bump mapping, Specularといった機能はD3同様に使用されており、更にShaderに関する設定が加わってよりオブジェクトの表面をリアルに見せている。 ただし影描画が簡素になっている感がある分は差し引かないとならない。最近ではゲーム内の影の描画を全て光源からのリアルタイムで行う物(Fully Dynamic Lighting)が増えているが、Preyでは影の描画をリアルタイムとスタティック(Shadowmap)で使い分けており、また持っているライターの灯りからの影は反映されない等その分リアルさは失われている。 モンスターのデザインは悪くないと思うのだが、アニメーションについてはやや簡素化されているという印象を持った。モデリングについてはマルチプレイのSkinの作り込みが不満点(パッチで増やされた)。 Doom3エンジンでのフレームレートの60fps制限はこのゲームでも同様。またどうもこのゲームはVertical SyncをOFFにした場合に画面の断裂(乱れ)が起き易くなっているようだ。 クオリティとしては合格点だが、テクノロジーとして凄いと感じさせるような点が無いのも事実。カラフルになっているので綺麗さは出ているが、オリジナルのD3よりも本質的に上かとなるとそういう感じはしない。ただしグラフィックスについては、テクノロジー的に凄いと言うのとアート的な意味での素晴らしさがある訳で、その意味ではアートとしてはクオリティは高いと思う。独特な雰囲気で魅力の高いデザインの箇所が結構含まれている。 |
SOUND |
OpenAL及びEAX Advanced HDに対応しており、特に最新のEAX 5.0をサポートしているのが特徴。現時点では唯一対応しているSound
Blaster X-Fiシリーズをベースにしてサウンドは構築されており、Creative側からも推薦タイトルとしてEAXのサイトに特集されている。個人的にはこれは所持していないのだが、4.0のレベルでも音源の定位感は良好だった。 武器の音質は低音はそれ程効いていないが、非常にクリアな感じでキレの良さが印象的。他にはTommyの頭の中に響いて来るサウンドのエフェクトなどは良く出来ている。 BGMはゲーム業界では有名人のJeremy Souleが手掛けており(Morrowind, Oblivion, Baldur's gate, Neverwinter Nights他多数)、2時間以上に渡る量の音楽が収録されている。内容としてはアクションFPSには定番のハードロック調の物ではなく、オーケストラを使用した荘厳な雰囲気の曲が多い。サントラはdirect songで購入可能。 |
MULTIPLAY |
Multiplayならぬ"Multiprey"はDeathmatchとTeam Deathmatchのみをサポート。シングルプレイがメインのゲームなのでマルチの方に割ける人員・時間には制限が有り、焦点を絞っての提供となっている。今後はSDKやMap
Editorを早期にリリースして、ユーザーのModによって新モード等を発展させて行くという期待を持っているようだ。なおオフラインでのbotはサポートされていない。 (追記)Editorはリリースされているが、Modコミュニティの活動はそれ程盛んではないようだ。大物のModもリリースされていない。 ただし適当に作られているという訳ではなく、シングルプレイにおける要素がマルチにも組み込まれており、そのユニークさを前面に押し出してアピールを行っている。重力による影響を取り入れて上下左右方向での戦闘が行われるし、Spirit Modeで抜け出して敵と戦ったり通常では取れないアイテムを入手したりするようになっている。 マルチプレイではSpirit Modeがシングルプレイとは異なっており、Respawn時には少しのエネルギーしか持っておらず、本体から離脱している間は徐々にエネルギーが減って行ってゼロになると本体に戻されてしまうという風になっている。その代わりにエネルギーをフルにするアイテムが置かれている。 ゲームのマップの多くは4-8人向けに製作されており、かなり狭くてすぐに敵と遭遇するといった感じで作られている。デフォルトの武器が弱く、またWeapon Stayの設定が無いので、強い武器を所持した人がRespawnしてから次の武器を取る前のプレイヤーを次々に狩っていくという展開になりがち。人数が増えると余計に武器を拾い難くなるので、一度殺されると連続でやられてしまう可能性が高くなる。逆に言えば武器の場所を記憶して回収して廻り、敵に武器を拾わせないというのが重要になるゲーム性。このデザインそのものは昔のQuakeなんかに似ているという印象なのだが、プレイヤーの移動速度がそれ程速くないのでちょっと違和感有り。もっと言えばこの移動速度には合っていないゲーム性、またはこのゲーム性ならばより移動速度を上げて高速アクションにするべきだと思う。 武器はシングルプレイと同じでスタンダード過ぎる感有り。重力通路といったSF設定にも関わらず(外観はともかく)クラシックな使い勝手の物ばかりだし、これといった特徴的でユニークな武器が存在しないのも痛い。アンバランスさも気になる点で、例えばLauncher(通常のゲームではロケランに相当する)は弾速が速くて強過ぎる。Leech GunのLighteningやSunも同様。開発側もその辺は考えてこういった武器を減らしているが、そうなると今度は使う武器が限られてしまうので単調になりがち。 マップは8種類収録されており(パッチで追加されている)、基本的には重力通路が存在している物で構成されている(Roadhouseのマップという例外有り)。8個中2個はShuttleにも乗れる物なのだが、ちょっと生身のプレイヤーとの戦闘力がアンバランスな印象がある。最大の特徴となる上下左右の全方向の敵との戦闘は新鮮で最初の内は面白さを感じさせるが、もう一工夫何か欲しかった所。中に一つプレイヤー自身が重力パッドを撃って床の位置を変えられるマップが有るのだが、こういったタイプをもっと増やした方が面白そう。人口重力の存在と言う点からするとCTF系のチーム戦にして、戦略として重力のコントロールが重要というゲーム性にするのも良かったかも知れない。 やり込めば重力通路を上手く使っての武器の高速回収ルートの開拓とかマップを活かした戦略面等も分かって来るのだろうが、何しろ重力が変な方向に働いているのでマップの構造理解が相当に難しくなっている。それ故に構造を最も掴み易いRoadhouseのマップに人気が有ったりと矛盾した結果も生じている状態。 他には多くの方向から攻撃されるので、どこから撃たれて死んだのか分からないという死が多発するという点も評判が良くないようだ。他にはキャラクタのSkinの出来が良くない、チーム戦でカラースキンが無いので固まると味方の識別が難しいといった問題も。 ネットコードに関してはDoom 3エンジンという事で、悪くは無いが特に良くもないという出来。Pingが高くなるとラグを感じるのは当然だが、その限界が早いというか比較的Pingの良い海外サーバーでもラグが発生する事が多い。また問題が何かは不明だが、マルチになると大きな負荷が生じてfpsが落ち込むというレポートも出ている。 何より現時点(2006/07)で最大の問題点は人が少ない事。オフィシャルのサーバーが20個位用意されており製作側は準備万端だったようなのだが、とにかく人がいないのでプレイが楽しめない状況に置かれている。多い時でも2,30人程度が5,6個のサーバーに固まっているというレベルなので、ちょっとこれだけ少ないと発展も望めないし、Mod製作を考えているグループも尻込みしてしまうかも知れない。 |